仲野 翔悟

ネパールの二国間協定の誓約事項と受入れフロー

本記事では,ネパールと日本との間で締結された二国間協定の内容や特定技能外国人の受入れフローについてご紹介します。
ネパールの特定技能外国人のみに必要な手続きなども紹介していますので,ぜひ最後までご一読下さい。

1.特定技能の二国間協定とは

ネパールと日本の間で締結された特定技能の二国間協定は,特定技能外国人の保護や特定技能制度の適正な運用を実現するために締結されました。

2.二国間で共有される主な情報内容

二国間協定で共有される内容は次の通りです。

  • 特定技能外国人や家族・親族の金銭や財産の管理
  • 契約不履行時などの違約金に関する約束
  • 特定技能外国人に対する人権侵害
  • 特定技能ビザ取得時の不正な手続き
  • 特定技能外国人からの不当な手数料の徴収

特定技能外国人を保護するための事項を中心に,特定技能ビザを取得する際の手続き上の不正についても情報共有されます。

また,特定技能外国人の受入れ後は,受入れ機関が四半期ごとに賃金台帳などを添付した報告書を入管へ提出する義務があるなど,労働法についても日本人従業員以上に保護されています。

そのため,入管法やその他の法律に違反する行為が発覚した場合は,二国間で情報共有され特定技能外国人の受入れができなくなる可能性もある点には注意して下さい。

3.二国間で協議される主な内容

二国間協定では,次の内容について協議されることが誓約されています。

  • 二国間の政策実施・変更に関する事項
  • 採用プロセスや費用負担に関する事項
  • 特定技能制度の手続きに関する審査
  • 特定技能制度に関わる機関に関する事項
  • 特定技能試験の実施に関する事項

特定技能制度の適正な運用を継続して実現するために,上記の内容を中心に随時協議されることが誓約されています。

協議される内容については,採用プロセスや手続きに関する事項から,特定技能試験に関する事項まで特定技能制度全般にかかわる内容が協議されます。

4.二国間の特定技能試験に関する誓約

二国間協定で誓約された特定技能試験についての誓約事項は次の通りです。

  • 日本政府からの各種要請に可能な限り応じる
  • 技能・日本語試験の適正な実施
  • 試験などの不正を行った情報を共有

ネパール国内での特定技能の技能試験や日本語試験の実施に関して,日本政府からの要請などがあった場合の協力や,両国内で実施される試験での不正を防止するための情報共有をすることが誓約されています。

なお,ネパール国内では介護を含む4業種の技能試験の技能試験が実施されています。

5.特定技能外国人の受入れフロー(呼び寄せ)

特定技能外国人を呼び寄せする際の,受入れフローは次の通りです。

①採用する人材の選定
②雇用契約の締結
③特定技能ビザの取得
④在ネパール日本大使館での手続き
⑤健康診断・オリエンテーション受講
⑥海外労働保険等への加入手続き
⑦海外労働許可証の取得
⑧日本へ入国・就労開始

①採用する人材の選定
技能実習2号以上を良好に修了した人材や,特定技能の技能試験や日本語試験に合格した人材の中から採用する人材の選定をします。

なお,採用活動に際して,ネパールにいる人材を日本の受入れ機関が採用する場合に,送り出し機関を仲介する必要はありません。

そのため,受入れ機関や日本の人材紹介会社がネパールにいる人材へ,直接アプローチすることも認められています。

また,ネパール特有の求人方法としては,駐日ネパール大使館に求人の申し込みをすることで,人材確保を依頼することもできます。

その場合,駐日ネパール大使館が受入れ機関より受領した求人表を,ネパール労働・雇用・社会保障省海外雇用局へ取り次ぎして,求職者へ情報が開示されます。

②雇用契約の締結
採用する人材が決定した後に,日本で就労する際の雇用条件などを母国語で説明して雇用契約を締結します。

③特定技能ビザの取得
特定技能ビザの申請書類が揃った段階で,入管へ申請をします。

入管への申請は,日本にいる受入れ機関や登録支援機関が本人に代わって行います。

④在ネパール日本大使館での手続き
日本より郵送で受領した特定技能ビザの原本を,在ネパール日本大使館に提出することで正式な特定技能ビザが特定技能外国人のパスポートへ添付されます。

⑤健康診断・オリエンテーション受講
ネパール特有のルールとして,全ての特定技能外国人はネパール政府が指定する医療機関にて健康診断の受診をする必要があります。
また,ネパール政府が実施する出国前オリエンテーションへの参加も必要です。

⑥海外労働保険等への加入手続き
ネパールの特定技能外国人は,出国前に海外労働保険への加入と海外労働者社会福祉基金への支払いをする必要があります。
なお,加入する海外労働保険の種類についての規定はありません。

⑦海外労働許可証の取得
ネパールの特定技能外国人は,ネパール労働・雇用・社会保障省海外雇用局日本担当部門に対して,オンラインで海外労働許可証の発行申請をする必要があります。

発行された海外労働許可証は,ネパールを出国する際に空港で提示することが求められます。
出国前オリエンテーションなどを含めて,手続きに通常10日程度の日数がかかります。

⑧日本へ入国・就労開始
ネパールでの手続きを全て終えた後に,特定技能外国人として日本への入国が認められます。

6.特定技能外国人の受入れフロー(日本にいるネパール人)

日本国内にいる特定技能外国人を受入れする際の受入れフローは次の通りです。

①採用する人材の選定
②雇用契約の締結
③特定技能ビザの取得
④就労開始

①採用する人材の選定
日本国内にいるネパール人の中から,特定技能の要件を満たした人材を選定します。

ネパールに関しては,技能実習ビザを取得して在留している人数が少ないため,留学ビザを取得したネパール人が特定技能の試験に合格して,特定技能ビザを取得するケースも多くみられます。

②雇用契約の締結
採用する人材と雇用契約の締結をします。
特定技能外国人が遠方にいる場合などは,ビデオ電話を使って雇用条件などの説明をすることも認められます。

③特定技能ビザの取得
特定技能ビザの申請に必要な書類の準備ができた段階で,入管へビザ申請をします。

留学生など,日本で社会保険に加入していなかった外国人は,国民健康保険や国民年金の支払い状況などについても証明をする必要があります。

また,納税証明書類や源泉徴収票などの提出も求められるため,留学生がオーバーワーク
をしていた場合なども,特定技能ビザの取得ができない可能性があるため注意が必要です。

④就労開始
特定技能ビザ(在留カード)が発行された日より,就労を開始することができます。

7.まとめ:ネパールの二国間協定の誓約事項と受入れフロー

本記事では,ネパールと日本の二国間協定や特定技能外国人の受入れフローについて紹介しました。

ネパールの特定技能外国人は,介護や外食業などの人と接する業種での就労者が多いことも特徴であるため,新型コロナウイルスの終息とともに,特定技能外国人の人数が大きく増えることも予想されます。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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