特定技能1号と2号の違いとは?行政書士が解説
2019年4月に施行された「特定技能」ビザは,人手不足が深刻な業種を対象として,その労働力を補うために創設されました。
特定技能ビザで就労する外国人の人数は,2022年末時点で約13万人,2023年末時点では約20万人と,右肩上がりで推移しています。
特定技能ビザには「1号」と「2号」が用意されていますが,その違いについてご存知でしょうか?「2号」は「1号」のステップアップに当たるビザなのですが,取得している外国人はまだごく少数です。また,従来は特定の分野でしか「2号」は用意されていませんでしたが,最近の法改正で対象が大幅に拡大しました。本コラムでは,特定技能1号・2号の違いについて,最新情報も踏まえて行政書士がわかりやすく解説します。
特定技能ビザで外国人材の起用を検討されている方は,ぜひ最後までお読みください。
Index
1.特定技能ビザとは?
前述の通り,特定技能ビザは人手不足が深刻な「建設」「農業」「介護」など12分野(14業種)の労働力を確保するために創設されたものです。
就労ビザには他にも種類がありますが,特定技能ビザは就労できる業務内容の範囲が他の就労ビザよりも広く,単純労働を含めることができる点が大きな特徴です。
特定技能2号ビザは,1号よりも高度な技能を持っていることが認められた方向けのビザです。1号にはない,いわゆる「特典」があることが特徴です。
特定技能ビザの対象となる12分野を表にまとめました。
特定技能1号(12分野) | 特定技能2号(11分野)【改正版】 |
介護 | (2号ではなく,「介護」ビザへ移行) |
外食業 | 外食業 |
宿泊 | 宿泊 |
飲食料品製造業 | 飲食料品製造業 |
自動車整備 | 自動車整備 |
航空 | 航空 |
農業 | 農業 |
ビルクリーニング | ビルクリーニング |
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 | 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 |
建設 | 建設 |
造船・船用工業 | 造船・船用工業 |
漁業 | 漁業 |
これまで,特定技能2号は「建設」と「造船・船用工業分野の溶接区分」のみが対象でしたが,2023年6月9日に他の分野にも拡大されることが閣議決定されました。現在,改正法案成立に向けて進んでいます。
なお,「介護」分野については,特定技能2号ではなく既存の「介護」ビザへ移行できることにしました。
このコラムでは,改正後の内容で解説しています。
2.特定技能1号と特定技能2号の違い
ここからは,特定技能1号と2号の違いについて解説していきます。
まずは,主な違いを表にまとめましたので見比べてみてください。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
在留期間の上限 | 通算で5年まで (1年・6か月・4か月ごとの更新) |
上限なし (3年・1年・6か月ごとの更新) |
必要な技能水準 | 相当程度の知識や経験を必要とする技能 (試験に合格 or 技能実習から移行) |
熟練した技能 (試験に合格) |
日本語能力 | 試験等で確認が必要 | 試験等での確認は不要 |
外国人の支援 | 支援計画の策定と支援の実施が義務 | 支援計画の策定や支援の実施は不要 |
家族の帯同 | できない | 条件を満たせばできる(配偶者・子) |
永住ビザの取得 | できない | 条件を満たせばできる |
表の内容ついて,6つに分けて以下で解説します。
(1)在留期間の上限が違う
特定技能1号ビザは,通算で最長5年まで在留することができます。
「通算で」となっている点に注意が必要です。
例えば,特定技能1号で1年間働いた後,本国帰国して1年働き,再度特定技能1号で来日する場合も,過去の1年はリセットされず「通算5年」のカウントに含まれます。
一方の特定技能2号ビザには,このような上限規定はありません。
(2)必要な技能水準が違う
特定技能1号と2号では,2号のほうがより高度な技能をもっていることが必要です。
【特定技能2号】その分野に関する,熟練した技能を持っている
技能をもっているかどうかは,指定の試験で確認されます。
ただし,特定技能1号については,技能実習2号を良好に修了した場合は試験なしで特定技能1号ビザへ移行することができる仕組みになっています。
(3)必要な日本語能力水準が違う
特定技能ビザで必要となる日本語能力水準は以下のとおりです。
【特定技能2号】試験などでのレベル確認は原則不要
特定技能1号の介護分野では,これ以外に「介護日本語評価試験」にも合格する必要があります。
(4)外国人支援の必要性が違う
特定技能1号では,その外国人が従事する業務や生活について,円滑に行えるよう支援することが義務付けられています。
この支援は,雇用する受入機関が直接行うか,受入機関が登録支援機関に委託して支援を代行してもらうか,どちらかになります。支援内容を計画書にまとめて,ビザ取得申請の際に提出します。また,受入機関(または登録支援機関)から入管へ定期的な報告も義務付けられています。
特定技能2号では,これらの支援や報告は義務とされていません。
(5)家族の帯同可否が違う
特定技能2号では,扶養する配偶者や子を「家族滞在」ビザで帯同することが可能です。
【特定技能2号】要件を満たせば家族(配偶者と子)の帯同が認められる。
※1:留学生だった人が特定技能1号に変更する場合,配偶者や子が「家族滞在」ビザで在留中であれば,「特定活動」ビザに変更することで例外的にそのまま帯同できる可能性はあります。
(6)永住ビザの取得可否が違う
入管が公開している「永住許可に関するガイドライン」を見てみましょう。
ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし,この期間のうち,就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
(出典:出入国在留管理庁ホームページ)
上記のとおり,特定技能1号で就労した期間は,永住権取得で必要な「就労5年」の年数にカウントされないのです。一方,特定技能2号であれば年数にカウントされ,永住権取得に必要な条件を満たせる可能性があります。
3.特定技能1号ビザの取得要件とは?
特定技能1号ビザを取得するには,2つのパターンがあります。
(A)指定の試験に合格する
(B)技能実習2号ビザから移行する
それぞれについて見ていきましょう。
(A)指定の試験に合格する
指定の試験とは,大きく分けると「日本語試験」と「技能試験」の2種類です。
日本語試験には,「日本語能力試験」と「国際交流基金日本語基礎テスト」があり,どちらか一方でかまいません。日本語能力試験であれば「N4」レベル,国際交流基金日本語基礎テストであれば「A2」レベルが必要です。
技能試験は,特定技能の分野ごとに実施されています。実技の試験はなく,コンピュータ上で回答するCBT方式が採用されています。出題内容や試験の実施回数は分野によって様々で,「介護」や「農業」など毎月実施される分野もあれば,「建設」や「ビルクリーニング」など,年に数回しか開催されない分野もあります。
特定技能ビザの試験については,別コラム「【特定技能ビザの試験内容】全12分野の解説」で分野ごとに解説していますので,受験を検討している方はお読みください。
(B)技能実習2号ビザから移行する
技能実習2号ビザを良好に修了した方は,上記の試験が免除されます。
- 特定技能1号の業務が技能実習と関連性があるもの:日本語試験と技能試験の両方免除
- 特定技能1号の業務が技能実習と関連性がない場合:日本語試験のみ免除
4.特定技能2号ビザの取得要件とは?
特定技能2号ビザを取得するには,2号用の試験に合格する必要があります。
特定技能1号と違って,特定技能2号には日本語試験がありません。技能試験のみとなります。
また,特定技能1号より高い技能をもっていることが試験で確認されれば,特定技能1号以外のビザからでも特定技能2号ビザを取得することが可能になっています。
ただし,分野によっては追加の条件があり,特定技能1号として就労していないと受験が難しいケースもあります。
5.まとめ:特定技能1号と2号の違いとは?
特定技能1号と2号について違いを解説してきましたが,いかがでしたか?
特定技能ビザは制度自体がまだ新しく,2号についてはようやく取得できる外国人が出てきた段階なので,まだ馴染みがない部分が多いと思います。さらに,法改正も予定されており,インターネット上には新旧の情報が入り混じっています。最新の情報は,入管庁ホームページなどで公開されているものでご確認ください。また,特定技能ビザ申請に強い行政書士などの専門家にご相談いただくこともおすすめです。
外国人と企業の双方にメリットの高い特定技能2号への移行を実現できるよう,準備をすすめていきましょう。
特定技能2号が拡大されたことで,特定技能で働く外国人にも,永住ビザを取得するなど長期キャリアパスが描けるようになりました。特定技能ビザは,「いつか帰国しなければいけない期間限定のビザ」から,「いつまでも日本で働ける家族と暮らせるビザ」へ変わろうとしています。
特定技能ビザの申請のみならず,外国人雇用の人事設計構築も労働人口減少時代には重要になってきます。
行政書士法人第一綜合事務所は,国際業務の専門事務所として,企業様の外国人雇用のお手伝いをしております。
ご相談は無料で承っていますので,お気軽にお問い合わせください。