介護分野の特定技能ビザの活用方法|要件・必要書類、訪問介護の解禁まで解説

2019年に施行された人手不足解消のための特定技能ビザの該当分野には、介護も含まれています。この「介護分野」は受入れ実績・需要ともに非常に高く、2026年現在では7万人を超える外国人材が活躍しています。
本コラムでは、介護分野にて特定技能ビザを活用して外国人を受入れするための要件や注意点などを入管業務専門の行政書士が詳しく解説します。
Index
1.特定技能の介護とは?
特定技能ビザは19分野において取得が認められており、特に介護は政府が最も特定技能ビザ取得を推進している分野のひとつです。
従来ある介護分野での就労が可能な「技能実習」や「EPA」と違い、特定技能では転職が可能であり、介護技能評価試験などに合格することで特定技能ビザを取得できます。
そのため、他分野で就労していた元技能実習生などが試験に合格をして、介護職に転職するケースも見られるようになりました。
今後も介護分野の特定技能ビザは高いニーズがあると予想されます。
2.介護分野での特定技能ビザ取得状況
入管の公表資料によると、2026年3月末現在(速報値)における1号特定技能外国人の総数は全分野で404,527人に達しています。
このうち、介護分野の特定技能1号在留外国人数は74,745人となっており、全19分野の中で飲食料品製造業(96,367人)に次ぐ第2位の受入れ実績を誇っています。
また、政府が設定する今後5年間の受入れ見込数(2029年3月末までの期間で設定)においても、介護分野単独で126,900人(全分野合計805,700人)と大規模な受入れ枠が確保されています。
今後も日本政府によって、介護分野での積極的な外国人材受入れが行われていくことが予想されます。
3.介護分野の特定技能ビザ取得要件
介護分野で特定技能ビザを取得するには、特定技能ビザを希望する外国人と受入れ機関のそれぞれが満たさなければならない要件があります。
(1)外国人の主な要件
介護分野で特定技能ビザを取得するために外国人が満たすべき要件を紹介します。
①技能実習2号を良好に修了
介護分野において技能実習を2年10ヶ月以上修了した外国人については、技能実習2号を良好に修了した外国人として、介護分野の特定技能ビザ申請をすることができます。
技能実習を2年10ヶ月以上修了した上で、介護技能実習評価試験の専門級(実技試験のみ可)の合格証明書を特定技能ビザ申請の際に提出すると、技能実習2号を良好に修了したとみなされます。
仮に、介護技能実習評価試験の専門級に合格できなかった場合でも、技能実習中の実習評価について、受入れ機関と監理団体に評価調書を発行してもらうことで、技能実習2号を良好に修了したとみなされます。
②技能試験と日本語試験に合格
介護技能評価試験、介護日本語評価試験、および日本語能力検定N4以上に合格(国際交流基金日本語基礎テスト合格を含む)することで、介護分野の特定技能ビザ申請をすることができます。
特に、介護分野では、日本語能力検定N4以上に加えて「介護日本語評価試験」の受験も必須である点は、他分野と異なるため注意が必要です。
そのため、既に他職種の「技能実習2号良好修了者」が介護分野で特定技能ビザを取得するためには、「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」の合格が必要となります。
介護分野での最新の試験情報については、【特定技能ビザの試験内容】全12分野の解説もご確認ください。
③介護福祉士養成施設を修了
介護福祉士養成施設を修了した場合でも、介護分野の特定技能ビザ申請をすることができます。
介護福祉施設に通う期間については、入学前の学歴によっても期間が変わります。
④EPA介護福祉士候補者として在留期間(4年間)満了
EPA介護福祉士候補者として在留期間を満了した場合には、介護分野の特定技能ビザ申請をすることができます。
在留期間の満了をしていない場合でも、EPA介護福祉士候補者として就労・研修を3年10ヶ月以上修了し、直近の介護福祉士試験の結果で5割以上の点数をとることができれば、介護分野の特定技能ビザ申請が可能です。
ただし、EPA介護福祉士候補者は、フィリピン、インドネシア、ベトナムと日本が締結している経済連携協定に基づいて日本の介護施設で就労・研修をしながら介護福祉士の資格を目指す制度であるため、上記3ヶ国の外国人のみが該当します。
(2)受入れ機関の主な要件
介護分野で特定技能ビザの外国人を雇用したい機関は、主に下記の受入れ要件を満たす必要があります。
①介護の特定技能協議会への加入
初めて介護分野で特定技能外国人を受入れ後、4ヶ月以内に介護分野の特定技能協議会へ加入する必要があります。
介護分野の特定技能協議会は、厚生労働省が運営しており、厚生労働省公式サイト(外部リンク)の案内に従い、加入手続きを行う必要があります。
加入手続きの主な流れは次のとおりです。
②入会申請登録画面での申請内容登録
➂入会審査
④会員登録完了および入会証明書のダウンロード
申請手続きマニュアルの案内に従い、申請手続きをして1~2週間ほどの審査期間を経て、加入が認められた場合には、入会証明書が発行されます。
②日本人と同等程度の報酬
特定技能ビザの外国人を受入れする場合は、職場で同じ作業に従事している日本人と同等以上の報酬を支払わなければなりません。
特定技能ビザ申請の際には、報酬の算出根拠となった比較対象日本人の情報も提出する必要があり、雇用開始後も定期で比較対象として情報を提出した日本人の給与明細などを提出する必要があります。
③外国人受入れに支障のない経営状態
特定技能ビザの外国人を雇用するためには、受入れ機関がある程度良好な経営状況であることが求められます。
これは、雇用された外国人が雇用契約期間中に解雇されることを避けるためのルールで、もし特定技能ビザ申請を行う前年度末に債務超過がある場合は、公的資格を有する第三者による改善の見通しについての評価調書等の書面提出が求められることがあります。
④出入国、労働、社会保険及び租税に関する法令遵守
過去5年以内に出入国、労働、社会保険及び租税に関する法令についての違反がある場合は、特定技能ビザの外国人受入れをすることができません。
⑤1年以内の離職者・行方不明者なし
雇用契約の1年前、または契約後に非自発的離職者、若しくは行方不明者を発生させた場合は、特定技能ビザの外国人受入れをすることができません。
なお、受入れ機関に帰責性のない行方不明は該当しません。
⑥特定技能ビザの外国人を支援することができる体制
中長期のビザをもつ外国人の受入れ、または管理を適正に行った実績があり、特定技能ビザの外国人が十分理解できる言語での支援体制があることが求められています。
なお、ここでいう中長期在留者には、文化活動、留学、研修、家族滞在、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者は含まれませんので注意が必要です。
仮に自社にて支援体制を準備できない場合は、登録支援機関へ支援を委託することができます。
行政書士法人第一綜合事務所も登録支援機関として、登録されています(登録番号19登-000525)。
詳しくは【登録支援機関の総まとめ】行政書士の解説!をご参照ください。
4.介護分野の特定技能ビザ申請に必要な書類
特定技能ビザを活用して、介護分野で外国人を雇用するためには、多くの書類を準備する必要があります。
- 申請書
- 特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 雇用契約書・条件書
- 雇用の経緯に係る説明書
- 徴収費用の説明書
- 健康診断個人票
- 受診者の申告書
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書
- 特定技能所属機関概要書
- 登記事項証明書
- 業務執行に関与する役員の住民票の写し
- 労働保険料等納付証明書(未納なし証明書)
- 社会保険料納入状況回答票又は健康保険・厚生年金保険料領収証書の写し
- 税務署発行の納税証明書
- 法人住民税の市町村発行の納税証明書
- 個人住民税の課税証明書
- 住民税の納税証明書
- 源泉徴収票の写し
- 国民健康保険被保険者証の写し
- 国民健康保険料納付証明書
- 国民年金保険料領収証書の写し
※これらに滞納がある場合は、公的義務履行に関する誓約書でその理由を説明することで特定技能ビザ申請をすることができる場合があります。
- 専門性・技能を証明する書類
※特定技能ビザの取得要件で示した①から④のいずれかに該当する資料を指します。 - 介護分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書
- 介護分野における業務を行わせる事業所の概要書
上記が、介護分野で特定技能ビザを申請する際に必要な書類です。なお、その他に個々の事情によっても別途必要な書類が必要な場合があります。
5.介護分野で特定技能ビザを取得する際の注意点
介護分野で特定技能ビザの申請をする際には、手続きを開始する前に下記について特に注意する必要があります。
注意点➀受入れ方法により入社までの流れが異なる
特定技能の他分野と同様に、介護分野で特定技能外国人を受入れするまでの流れは、次の図のとおり主に次の2つに分けられます。
➀海外にいる外国人から人材選定
↓
②雇用契約の締結・申請書類作成・事前ガイダンス実施
↓
➂ビザ申請・在留資格認定証明書(COE)交付
↓
④現地日本大使館での手続き等
↓
⑤入国・生活オリエンテーション実施
↓
➅就労開始
↓
➆協議会加入(最初の受入れから4ヶ月以内)
➀国内にいる外国人から人材選定
↓
②雇用契約の締結・申請書類作成・事前ガイダンス実施
↓
➂ビザ申請・取得
↓
④生活オリエンテーション実施
↓
⑤就労開始
↓
➅協議会加入(最初の受入れから4ヶ月以内)
上記のとおり「海外にいる人材」と「国内にいる人材」では、入社までの流れがことなるため注意が必要です。
注意点②特定技能2号ビザへは移行できない
特定技能ビザには、特定技能1号ビザと特定技能2号ビザという2つのビザがあります。
2023年の制度改正により多くの分野で特定技能2号の対象が拡大されましたが、介護分野には「特定技能2号」が設置されていません。
その理由は、介護分野には、既に「介護ビザ」というほとんど特定技能2号と同じメリットを享受できるビザが既に存在しているためです。
そのため、介護分野の特定技能外国人については、最終的には介護ビザの取得を目指す方が多い印象です。
注意点➂訪問介護サービスへの従事解禁とその条件
2025年4月より、訪問介護における深刻な人手不足に対応するため要件緩和が進んでおり、特定技能外国人も就労可能となっています。
ただし、無条件で配置できるわけではなく、外国人本人に対する「従事要件(初任者研修修了+原則1年以上の実務経験)」に加え、受入事業所側には「5つの遵守事項(研修実施・同行訓練・キャリアアップ計画の作成・ハラスメント窓口の設置・ICT等の緊急時体制の整備)」の確実な履行と、事前の「適合確認書」の取得が義務付けられています。
注意点④介護分野特有の受入れ人数上限がある
介護分野では、他の多くの分野と異なり、「日本人等の常勤介護職員の総数と同数まで」と、事業所単位での受入れ人数上限が定められています。
これは、対人介護という業務の性質上、利用者の安全確保や質の高いケアの維持、そして現場での十分な指導・サポート体制を担保するために設けられている介護分野特有のルールです。
2章で述べた「国全体での受け入れ上限」に加え上記のようなルールもあるため、注意が必要です。
注意点⑤育成就労制度の開始に向けた「キャリアパス構築」の重要性
2027年4月からの運用が迫る新制度「育成就労」では、介護分野における本人意向の転籍(転職)制限期間が「2年」と設定されています。
今後の外国人採用では、
育成就労(3年)→ 特定技能1号(最長5年) → 介護福祉士取得・介護ビザ
という一貫したキャリアパスを見据え、入社初期から日本語学習や国家試験対策を施設側でサポートし、自施設へ定着してもらうための体制づくりがこれまで以上に重要となっています。
6.介護系ビザのメリット・デメリット比較
介護分野では、特定技能以外にも主に次の4つのビザがあります。
それぞれのビザを活用する受入れ機関にとっての主なメリット・デメリットをまとめた下記表をご確認ください。
| メリット | デメリット | |
| 介護ビザ | ・人材の質が高い ・無期限雇用が可能 ・家族帯同可能 |
・ビザ取得の難易度が高い |
| 特定技能 | ・入社までの期間が短い | ・最長5年の受入れとなる |
| 特定活動(EPA) | ・実質転職不可のため雇用が安定 ・技能実習生や特定技能より高いレベルの人材が多い(要件が厳しいため) |
・ベトナム、インドネシア、フィリピンの3ヶ国の外国人のみがビザ取得可能 |
| 技能実習 | ・実質転職不可のため雇用が安定 ・外国人の要件が緩い |
・受入れ費用が高額 |
介護分野にて、特定技能ビザを活用して外国人を受入れする際には、一度、他のビザでの受入れも検討してみるのが良いでしょう。
最終的なステップアップ先となることの多い「介護ビザ」については、介護ビザの申請要件と取得条件|外国人介護人材の受入・必要書類まで行政書士が解説をご参照ください。
7.介護分野の特定技能ビザの活用方法のまとめ
2019年に施行された特定技能ビザでは、技能実習生やEPAで就労しており、期間中に介護福祉士に合格するなどして就労継続することが叶わなかった外国人に対しても、就労継続の機会を与えるなど、介護分野で就労する外国人の増加に大きく寄与しています。
紹介したように、特定技能ビザ以外にも介護分野で就労可能なビザはあるため、受入れ機関と外国人の双方にとって一番良いビザを選択することが肝心です。
介護分野のビザの相談は、行政書士法人第一綜合事務所までお気軽にご相談ください。
ご相談は無料で承っております。




