仲野 翔悟

特定技能ビザで外国人を雇用するメリット

特定技能ビザで外国人の雇用を検討しているものの,特定技能ビザを使う真のメリットが分からないと悩まれたことはありますか?
特定技能ビザは比較的新しいビザであり,頻繁に法改正等されるため,正確な情報を得るのも簡単ではありません。
本記事では,これまで単純労働の現場で,多く雇用されてきた技能実習生と特定技能ビザ(1号)の比較を中心に,特定技能ビザのメリットを紹介します。
最後まで読んで頂くことで,外国人雇用の際に特定技能ビザを使うべきか判断する際の判断材料にして頂けると思います。

1.特定技能ビザ(1号)と技能実習生を比較したメリット

特定技能ビザ(1号)と技能実習生は,どちらも単純労働を主とする現場で外国人雇用が可能なビザです。
しかし,実際には多くの相違点があります。
それぞれの違いについて,表で比較すると共に,メリットもご紹介していきます。

  技能実習 特定技能1号
目的 発展途上国への技術移転を通した国際貢献 日本の人手不足の分野での外国人材の受入
費用 給与以外の費用が嵩む傾向にある 給与は高いがそれ以外の費用は抑えられる
受入れ対象 85職種 14分野
制度運用 煩雑な運用業務 運用が楽
業務範囲 技能実習計画で決められた業務 同じ業務に従事する日本人と同様
受入れ人数枠 制限あり 無制限
※ただし,介護と建設は常勤職員数まで
転職 不可能 可能
給与 安い 高い

・特定技能ビザの制度目的が明確である
特定技能ビザを使うことで,人手不足の解消という明確な目的のもと,外国人の雇用を実現することができます。
これまで単純労働の現場では,主に,技能実習生が雇用されてきましたが,労働者として就労させることはできませんでした。
しかし実際には,技能実習生の受入れを検討している企業は,単純労働力として外国人を雇用したいと考えている企業も少なくないのが実情です。
そのような背景から,制度目的と技能実習生を雇用する意図が合致せず,外国人の雇用を断念する企業も多く見られました。
入管法改正によって特定技能ビザの制度目的が明確となったことから,受入れ企業も安心して外国人の受入れすることができるようになりました。

・特定技能外国人の受入費用が安い
技能実習生と比べ,特定技能外国人を受入れする際に発生する費用は少ない場合が多いです。
技能実習生は,入国前後に実施する日本語講習,入国後,複数回の技能試験の受検などが法律で義務付けられており,それらで発生する費用も,全て受入れ企業の負担です。さらに,特定技能外国人の受入れと比べると,管轄機関も多く,それぞれの機関へ申請書類を提出する際の申請手数料なども発生します。

一方で,特定技能外国人受入れの際には,基本的に義務の講習などは無く,審査手数料の必要な管轄機関も少ないため,受入れ時の支払い項目は技能実習生と比べて,少ないのがメリットに挙げられます。

・外食分野でも受入が可能
特定技能ビザの受入れ対象には,外食分野が含まれています。
外食分野では,配偶者ビザ等の身分系ビザや留学生(アルバイト)が働き手を担ってきました。
しかし特定技能ビザにより,外国人雇用の門戸が大きく開かれました。
特に,留学生では週に28時間しか就労することができませんでしたが,特定技能ビザを活用することで,正社員として外国人雇用が可能です。

・技能実習と比べて運用が楽
適正な技能実習制度運用のためには,技能実習生が就労する事業所ごとに,技能実習指導員や生活指導員を選任するなど,簡単ではない受入れ体制を整える必要があります。
それに加え,受入れ企業が選任した技能実習指導員が,日々の実習内容を記録し,技能
実習中に,複数回行われる技能検定試験前には,職種にも拠りますが,試験準備のため
に1週間程度,試験練習に時間を取られるなど,制度運用のために費やす時間も多く必
要です。

一方で,特定技能外国人の場合,就労開始後は3ヶ月に1度の入管庁への定期報告書の提出程度で,受入れ企業が制度運用に費やす手間は,技能実習生と比べ断然少ないのが大きなメリットです。
また,特定技能(1号)ビザの外国人を雇用するのに必要な義務的な支援業務も,登録支援機関へ委託することで,自社で行う必要のある業務を大幅に省略することができるので,受入れ企業の手間軽減に繋がります。

・特定技能ビザは業務範囲が広い
技能実習生が従事することのできる業務範囲は,厚労省により公表されている,技能実習計画審査基準によって決められており,製造業職種の例を挙げると,業務で使用しなければならない機械の種類まで指定されています。

一方で,特定技能外国人は,同じ業務に従事する日本人が携わる関連業務についても,従事することができるなど,技能実習生と比べて,業務可能範囲に自由度があります。
もちろん,技能実習計画審査基準のように,日々の業務内容が細かく決められていることもありません。

・受入れ人数制限がない
技能実習生の受入れ可能人数は,受入れ企業の常勤職員数によって,一定のルールが決められています。

それに対し,特定技能外国人の場合は,ほとんどの分野で受入れ人数制限はありません。
そのため,数名の日本人従業員のみの企業が,数十名の特定技能外国人を雇用できるのがメリットの一つです。

なお,介護分野と建設分野のみ制限があり,それぞれ,事業所単位の常勤介護職員数と受入れ機関の常勤職員数が上限となっています。

・転職ができる
技能実習生は転職ができませんが,特定技能外国人は転職が可能です。
そのため,外国人の受入れ環境が整っていない企業は,特定技能外国人を雇用することが難しくなります。
一方で,人権面などで国内外から批判を受けることもある,業界の健全化にも繋がることが期待されています。
悪い評判は,外国人のSNSコミュニティなどですぐに拡散する可能性もあるため,今後は,受入れ企業もより一層,外国人の受入れ環境について整える必要があります。

・給与が高い
特定技能外国人は,技能実習生よりも一段階上の技能をもつ人材であるため,給与設定についても,技能実習生より高く設定する必要があります。
また,同等の作業に従事する日本人と同額以上の給与支払いも義務付けられているため,外国人本人も不公平感を感じること無く,モチベーションアップにも繋がりやすいと感じます。
また,既に紹介したように,特定技能外国人の雇用では,技能実習生を雇用する際にかかる多くの費用が無いため,外国人本人の給与として還元することもできます。

2.特定技能ビザ(2号)の外国人を雇用するメリット

・無期限就労
特定技能ビザ(2号)の外国人は,実質無期限のビザ更新が認められています。
そして,日本の永住ビザ申請要件のひとつ,「原則として引き続き10年以上,日本に在留しており,期間中,就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)または居住資格をもって,引き続き5年以上在留していること」も満たすことができるため,将来的な永住ビザ取得も視野に入ります。

特定技能ビザ(1号)で日本に在留可能なのは,通算5年であるため,転職者を雇用する場合,残りの在留可能日数を確認する必要がありますが,特定技能ビザ(2号)は
在留可能日数を心配することなく雇用が可能です。

・家族帯同
特定技能ビザ(2号)のもう一つの大きなメリットは,家族帯同が可能なことが挙げられます。
配偶者または子供のみという限られた範囲ではありますが,家族を日本に呼び寄せることができるのです。

無期限就労と併せて,家族帯同も可能となることで,受入れ企業としても,特定技能外国人の長期的なキャリアを考えやすくなります。

3.特定技能ビザで実現できること

・日本での生活経験のある外国人を雇用できる
技能実習生は,初めて来日する人材がほとんどです。
そのため,基本的な日本での生活に必要な情報(スーパーでの買い物方法,ATMの使い方,ごみの出し方など)についても都度,教える必要があり,それらが見えないコストとして,受入れ企業の大きな負担になっています。
一方で,特定技能外国人は技能実習生を3年間経験した人材が多いため,ある程度,日本の生活に関する知識もあるのが特徴です。

・早期の人材確保が可能
技能実習生を雇用するためには,人材選定から入社まで7ヶ月程度かかることも珍しくありません。
長期化の理由としては,技能実習生の場合には海外にいる人材を選定し,その後,日本語教育や多くのビザ申請手続きなどを経て入国してくるからです。
特定技能外国人に関しては,国内にいる人材を雇用することも可能なため,事前に技能実習3年間を修了予定の国内人材を選定しておいて,ビザ手続きを進めておけば,人材選定から入社まで,最短で2ヶ月程度で実現することができます。

・優秀な技能実習生を引き続き雇用できる
特定技能ビザの施行以前は,技能実習生を最長でも5年間しか雇用することができませんでした。
現在では,特定技能(1号)ビザを使ってさらに5年間,特定技能(2号)のビザを取得できれば,実質無期限で優秀な人材を雇用し続けることができます。

4.まとめ:特定技能ビザで外国人を雇用するメリット

今回は,特定技能ビザで外国人を雇用するメリットについて紹介しました。

技能実習生に代わるビザとして,特定技能ビザは多くの注目を集めておりますが,そのメリットが分かり辛く,新型コロナウイルス感染症の拡大も重なり,受入れ人数は当初,日本政府が予定していた人数よりも大幅に伸び悩んでいるのが現状です。

特定技能ビザを使って日本で就労する外国人は,主に発展途上国出身の外国人です。
母国との経済格差による大きな金銭的メリットのため,日本に出稼ぎに来ており,就労意欲が高く,能力も高い人材も多い印象です。

今回ご紹介したメリットを参考に,他社よりも早く優秀な特定技能外国人の受入れ検討されることをお勧めします。
特定技能ビザについてのご相談も無料で承っておりますので,ご希望の企業様は行政書士法人第一綜合事務所までお気軽にご相談く

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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