依田 隼弥

特定技能ビザから配偶者ビザに変更はできる?

特定技能ビザから配偶者ビザに変更はできる?

技能実習ビザから配偶者ビザへ変更することは難しい…というのが定説になりつつあります。
技能実習ビザと同様,特定技能ビザについても配偶者ビザへの変更は難しいのでしょうか…?
特定技能外国人の増加もあって,特定技能ビザから配偶者ビザへの変更についてのご質問を受ける機会が増えてきました。
このような疑問を解消するため,本ページでは特定技能ビザから配偶者ビザに変更について解説しています。

1.特定技能ビザとは?

特定技能ビザは,日本の人手不足に対応するため,2019年4月に創設されました。
2021年3月の出入国在留管理庁公表資料によれば,特定技能ビザを保有する外国人数は,うなぎのぼりに増加している状態です。

2020年3月末に3987人だった特定技能ビザを保有する外国人は,2021年3月には,2万2567人まで上昇し,コロナ禍にありながら1年間で566%の増加率となっています。

日本の人手不足も相まって今後も増加が見込まれる特定技能ビザですが,仕事の種類が酷似する技能実習ビザとしばしば比較されます。
最大の違いは,技能実習ビザと特定技能ビザでは,その目的が大きく異なっていることです。

技能実習ビザは,日本の技能・技術・知識を学んでもらい,日本で学んだ技能等を母国に持ち帰って,母国の経済発展を担ってもらうことが目的です。

これに対し,特定技能ビザは,日本の生産年齢人口の減少によって深刻化する人材不足に対応することが目的とされています。

似通った業務に就く技能実習ビザ,特定技能ビザですが,それぞれの目的の違いによって,配偶者ビザへの変更の考え方は大きく異なります。

次のチャプターで,その点を詳しく見ていきましょう。

2.特定技能ビザから配偶者ビザへの変更

技能実習ビザについては,結婚するには制限はないものの,当然に配偶者ビザへの変更が許可されるわけではありません。
なぜかと言うと,技能実習制度は日本で学んだ技能等を母国へ移転することを目的としているため,そのまま日本で生活することを想定していないからです。

この点については,【解決事例】技能実習生と国際結婚して配偶者ビザを取得する方法 に記載していますのでご覧ください。

これに対して,特定技能ビザは,日本の人手不足に対応することを目的とするビザです。
技能実習ビザのように技術移転等の目的がないため,特定技能ビザを保有する外国人が日本人や永住者,定住者と結婚した場合,配偶者ビザへ変更することについて,入管法上の制限はありません。

もちろん,特定技能ビザから配偶者ビザへの変更についても,一般的な許可要件は網羅する必要があります。
日本人,永住者,定住者と結婚したからといって,必ず配偶者ビザが許可されるわけではありませんので,誤解の無いようにしてください。

まとめると,技能実習ビザから配偶者ビザへの変更については,その制度趣旨から様々な規制はあるが,特定技能ビザから配偶者ビザへの変更については,入管法上の制限はないとご理解ください。

3.特定技能ビザから配偶者ビザへ変更するメリット

特定技能ビザを保有する外国人の方が,日本人や永住者,定住者と結婚した場合であっても,必ず配偶者ビザへ変更する必要はなく,特定技能ビザのままでも入管法上は問題ありません。
しかし,特定技能ビザと配偶者ビザを比較すると,配偶者ビザへ変更する方が多くのメリットがあるため,配偶者ビザへ変更することをお勧めしています。

本チャプターでは,特定技能ビザから配偶者ビザへ変更するメリットを解説します。
なお,特定技能ビザは,1号,2号で在留期間や技能水準など様々な内容が異なります。
そのため,いずれの表記かを明確にするために,1号は特定技能ビザ(1号)と表記し,2号については特定技能ビザ(2号)と表記しています。
特定技能ビザという表記の場合には,1号,2号共通事項としてご理解ください。

①在留期間の上限制限がなくなる

特定技能ビザ(2号)(建設分野,造船・舶用工業)は在留年数の上限はありません。
一方,特定技能ビザ(1号)で在留できる年数は,5年間が上限であることが入管法で定められています。
つまり,特定技能ビザ(1号)を保有する外国人は,5年を上限として本国へ帰国しなければならないのです。
そのため,たとえ日本人や永住者,定住者と結婚した場合であっても,特定技能ビザ(1号)のままでは,5年以上は日本で生活することはできません。

これに対して,配偶者ビザは在留年数の上限がありません。
5年,3年,1年,6ヶ月のいずれかの在留期間の付与を受け,以後ビザ更新をすることで,引き続き日本で生活することができます。

そのため,特定技能ビザ(1号)を保有する外国人の方が,配偶者ビザへ変更することによって,在留年数の制限を受けなくなるのです。

配偶者ビザへ変更することで,在留期間の上限制限がなくなるというのが1つ目のメリットです。

②就労制限がなくなる

特定技能ビザは,転職することはできるのですが,入管法で定められた仕事でしか働くことができません。
そのため,仕事を選ぶ場合には,常に入管法を意識しながら転職活動を行う必要があります。

一方,配偶者ビザは,就労制限がありません。
留学生のようなアルバイト時間の制限もありませんし,会社経営をすることだって自由にできます。
違法な仕事でない限りは,入管法の制限を受けることはありません。
そのため,配偶者ビザをお持ちの外国人については,入管法を気にすることなく,自由に仕事を選ぶことができるのです。

就労制限がなくなるというのが,配偶者ビザへ変更する2つ目のメリットです。

③永住ビザの取得ができる

永住ビザの要件の一つに,「就労資格又は居住資格で5年以上日本に在留していること」というものがあります。

特定技能ビザも就労ビザの一種と考えられるため,就労資格に含まれるとも考えられます。
しかし,特定技能ビザ(1号)は永住ビザを申請する際の就労資格には含まれないとするのが入管の見解です(特定技能(2号)は就労資格に含まれます。)。
そのため,特定技能ビザ(1号)のままでは,永住ビザを取得することができません。

一方,配偶者ビザを保有する外国人の方は,永住特例に該当します。
永住特例に該当すれば,日本に生活の本拠があるとして,永住要件の緩和という恩恵を受けることができます。
詳細は,永住ビザの要件 の「3.配偶者および子に関する永住特例」「4.定住者に関する永住特例」に記載していますのでご覧ください。

外国人の方にとって,永住ビザを取得できるか否かは大きな違いです。
特定技能ビザ(1号)では永住ビザを取得できないのに対し,配偶者ビザを保有する外国人については,永住特例という恩恵まで受けることができるのです。

配偶者ビザへ変更することで,永住ビザが取得できるというのが3つ目のメリットです。

4.特定技能ビザから配偶者ビザに変更のまとめ

本ページの内容をまとめると,

  • 技能実習ビザと特定技能ビザは一見似ているが目的が異なる
  • 特定技能ビザから配偶者ビザへの変更については入管法上の制限はない
  • 特定技能ビザから配偶者ビザへ変更する方が多くのメリットがある
  • 特定技能ビザから配偶者ビザへ変更すれば在留年数の上限がなくなる
  • 配偶者ビザは就労制限がないので自由に仕事を選択できる
  • 特定技能ビザ(1号)は永住ビザを取得できないのに対し,配偶者ビザは可能である

今後も増加が見込まれる特定技能ビザ。
日本で社会生活を過ごす中で,恋愛し結婚するケースも増加することが予想されます。

そんな時には,ぜひ本ページを思い出してください。
技能実習ビザから配偶者ビザへの変更が難しいという情報が多いため,特定技能ビザから配偶者ビザへの変更も難しいと考えられる方が多い印象です。

しかし,特定技能ビザから配偶者ビザへの変更については入管法上の制限はありません。
そのため,配偶者ビザの要件に合致すれば,ビザ変更が認められる可能性があります。

本ページが,これから配偶者ビザへの変更を考えている方のご参考になれば幸いです。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 依田 隼弥

・日本行政書士会連合会(登録番号第24081844号)
・東京都行政書士会(会員番号第15335号)
山梨県出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,国際結婚手続き,永住権取得など国際業務を専門としている。

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