今井 幸大

介護ビザを申請するための要件

介護分野は,人手不足が深刻な一方で高いコミュニケーション能力も必要とすることから,言葉の壁などがある外国人雇用のハードルが比較的高いと言われている分野です。
今回は,介護分野で就労する外国人が取得を目指す介護ビザについて詳しく紹介します。

1.介護ビザとは?

介護ビザとは,2017年に施行されたビザで,介護職で就労する外国人に家族帯同や実質無期限の日本在留を認め,派遣契約での受入れも可能なビザです。

日本の介護分野は,特に人手不足が深刻であり,少子高齢化により今後も日本人の労働力だけでは,介護分野の人手不足を解消させることが困難であると考えられています。

そのような背景の中,介護分野へより多くの外国人を呼び込むために,既にある介護系のビザに加えて「介護ビザ」が新設されました。

また,介護職で外国人を受入れするためのビザは,後述するように介護ビザ以外にも主に3種類設けられており,このことからも,日本政府が介護分野での外国人労働力活用について,注力していることがわかります。

2.介護業界で仕事するには?

外国人介護人材受け入れの仕組み参照:厚生労働省(外国人介護人材受入れの仕組み)

外国人が介護分野で仕事をするためには,介護分野での就労が可能な上記4つのビザか,身分系のビザなどの就労制限のないビザを取得する方法が考えられます。

介護分野での就労が可能なビザには,本記事で紹介する「介護ビザ」以外にも,主に3種類のビザが用意されているので,それぞれ紹介します。

2-1.技能実習(1号・2号および3号)

技能実習制度を使うことで,最大で5年間,外国人を介護分野で受入れすることができます。

一方で,あくまでも「技能実習」を行うためのビザであるため,労働者としての受入れは認められていないことや,作業内容が細かく規定されているなど制度運用が簡単ではない
点などについては,技能実習ビザを使う前に知っておくべき必要があります。

また,後述する「特定技能」や「特定活動」と共に,訪問介護の現場では就労することができない点についても,注意が必要です。

2-2.特定技能(1号)

2019年に新設されたビザで,介護を含む日本の人手不足が深刻な12分野にて,人手不足解消のために外国人の受入れを認めたビザです。

特定技能1号では,最長で5年間の就労が認められており,技能実習ビザで介護職を経験した外国人については,特定技能試験などが免除されて特定技能ビザにて介護分野で就労することができます。

そのため,技能実習ビザと特定技能ビザを併せて最長10年の受入れを目指す介護施設も珍しくありません。

また,特定技能ビザではそれぞれの分野で設置されている特定技能試験に合格することで,簡単に別分野への転職もできるため,他分野から介護分野への転職者も少なくありません。

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2-3.特定活動(EPA介護福祉士候補者・介護福祉士)

日本とEPA(経済連携協定)を締結している国の外国人が,介護福祉士の資格取得を目指しながら介護分野で就労することを認めたビザです。

現在のところ,インドネシア・フィリピン・ベトナムの3ヶ国のみの外国人が,このビザを使って介護分野で就労することを認められていますが,年間の受入れ可能数は日本全体で各国それぞれ300人のみです。

また,ビザ取得要件は次の表のとおり3ヶ国それぞれで異なります。

国籍 要件
インドネシア 日本語能力試験N5以上+インドネシアの看護学校(3年以上)卒業または高等教育機関3年以上卒業,およびンドネシア政府による介護士認定
フィリピン 日本語能力試験N5以上+フィリピンの看護学校(4年)卒業または4年制大学卒業,およびフィリピン政府による介護士認定
ベトナム 日本語能力試験N3+3年制または4年制の看護課程修了

3.介護ビザの取得条件

介護ビザを取得するために重要な要件は次の3つです。

①介護福祉士の資格
日本の国家資格である「介護福祉士」の資格取得が必要です。

海外でも介護系の資格がある国がありますが,あくまでも日本での資格が必要であるため,母国で資格をもつ場合でも日本の介護福祉士の資格を取り直す必要があります。

②介護施設との適正な雇用契約
日本の介護施設と雇用契約を締結し,介護が必要な人に対して,食事,入浴,排せつなどの身体的介護および付随する介護全般業務を行うことが求められます。

また,外国人に対して不当な内容の契約を締結した場合には,介護ビザが許可されない理由となる点については注意が必要です。

③日本人と同等以上の待遇
介護ビザで就労する外国人は,日本人と同等以上の待遇で受入れされる必要があります。

そのため,外国人という理由で日本人と比較して不平等な待遇で受入れされる場合には,介護ビザの許可が認めらません。

同じ職場で雇用されている日本人従業員の業務内容や経験年数などを考慮して不利な給与設定でないことが必要です。

また,社内で賃金規定を設けている場合には,当然ですが規定通りの給与設定としなければなりません。

4.介護ビザに必要な介護福祉士を取得するためには?

介護ビザ取得の必須要件である「介護福祉士」を取得するためには,次の4つのルートがあります。

①実務経験ルート
②養成施設ルート
③福祉系高校ルート
④EPAルート

それぞれのルートについて解説していきます。

①実務経験ルート
介護現場で3年以上働き,実務者研修を修了後,介護福祉士の国家試験に合格して資格を取得する方法です。

技能実習生や特定技能外国人でも,3年の要件を満たすことができるため,介護福祉士の国家試験受験者の多くがこのルートで受験・合格をしています。

②養成施設ルート
介護福祉士養成施設(専門学校等)において必要な知識及び技能を修得した後に,介護福祉士の国家試験に合格して資格を取得する方法です。

また,2026年までに介護福祉士養成施設を卒業する留学生については,卒業後5年間継続して介護職に従事することで,介護福祉士の合格なしで資格取得をすることが可能です。

③福祉系高校ルート
介護福祉士養成施設(専門学校等)において必要な知識及び技能を修得した後に,介護福祉士の国家試験に合格して資格を取得する方法です。

④EPAルート
EPAにより入国し,受入施設での業務研修を修了後,介護福祉士の国家試験に合格して資格を取得する方法です。

EPAでの就労期間は,基本的に4年間であるため期間中に3年の実務経験を経て,受験要件を満たすことで,介護福祉士の国家資格を受験することができます。

4-1.重要ポイント①

これまでは,介護ビザを取得するためには,②養成施設ルートしか認められていませんでした。
しかし,2020年4月1日に介護ビザのルールが変更され,介護福祉士の資格を取得したルートに限らず「介護ビザ」の取得が認められました。

したがって,現在では,実務経験ルートおよび福祉系高校ルートから介護福祉士の資格を取得した場合も介護ビザを取得できます。

4-2.重要ポイント②

2026年までに社会福祉士及び介護福祉士法で規定された学校または養成施設を卒業する留学生については,介護福祉士の国家資格への合格なしでも,介護分野での就労継続が可能です。

2026年までの卒業生については,学校または養成施設を卒業した翌年の4月1日から5年間は継続して介護分野にて就労継続することが認められています。

5年間継続して就労した場合と期間中に介護福祉士の国家資格に合格した場合は,介護ビザを取得することができます。

4-3.重要ポイント③

実務経験ルートおよび福祉系高校ルートから介護福祉士の資格を取得した留学生についても,介護福祉士国家試験に合格した年度の翌年度の4月1日から介護福祉士登録証が交付されるまでの間,介護施設等で就労することができるように特例措置が取られています。

この措置は,介護福祉士国家資格の合格から登録証の発行までに一定の期間を要するために設けられています。

措置の適応を受けるためには,現在のビザから特定活動ビザへ変更する必要があり,ビザ切り替え申請の際に「介護福祉士登録証の写し」の代わりに「介護福祉士国家試験の受験票の写し」を提出する必要があります。

5. 介護ビザを申請する際の必要書類

介護ビザの申請書類は手続き内容によって次の3つに分けることができます。

5-1.海外からの呼び寄せの場合

  • 申請書
  • 証明写真
  • 介護福祉士登録証(写し)
  • 雇用契約書・条件書
  • 受入れ機関の概要書
  • 技能移転に係る申告書
    ※元技能実習生のみ必要

5-2.国内でのビザ切り替えの場合

  • 申請書
  • 証明写真
  • 介護福祉士登録証(写し)
  • 雇用契約書・条件書
  • 受入れ機関の概要書

5-3.ビザ更新の場合

  • 申請書
  • 証明写真
  • 住民税の課税証明書
  • 住民税の納税証明書

介護ビザは,最大で5年間の在留期間が付与されます。

基本的には,ビザ更新を経るごとに付与される在留期間も増えことが多いため,ビザ更新にかかる手間も減っていきます。

6.介護ビザのまとめ

今回は,介護ビザについて取得条件や必要書類などについて紹介しました。

基本的には,介護福祉士の国家資格への合格が,介護ビザを取得するための要件となります。

介護ビザを取得することで,最終的には日本での永住ビザ取得も視野に入るため,長期的な日本在留を目指す介護職の外国人にはおすすめのビザです。

介護分野でのビザ申請は,行政書士法人第一綜合事務所までお気軽にお問い合わせください。
ご相談は無料で承っております。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

特定行政書士 今井 幸大

・日本行政書士会連合会(登録番号第18080677号)
・東京都行政書士会(会員番号第11843号)
東京都出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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