仲野 翔悟

モンゴルの二国間協定の誓約事項と受入れフロー

本記事では,モンゴルと日本との間で締結された特定技能の二国間協定について紹介します。
二国間協定で誓約された重要事項や,受入れフローについて紹介していますので,ぜひ最後までご覧ください。

1.特定技能の二国間協定とは

二国間協定は,特定技能制度でのそれぞれの国の役割を明確にして,適正な制度運用や特定技能外国人の保護を目的として締結されました。

2.二国間で共有される主な情報内容

二国間協定で情報共有が誓約されている主な事項を紹介します。

  • 特定技能外国人やその家族の金銭や財産の管理
  • 契約不履行時の違約金契約
  • 特定技能外国人への人権侵害行為
  • 特定技能ビザ申請手続きの不正
  • 特定技能外国人の同意なしの費用徴収

二国間協定では,上記内容の事項について,随時共有されることが誓約されています。

共有される内容を見ると,特定技能外国人の保護に関する事項が中心となっていることが分かります。

これらの事項は,外国人技能実習生が被害を受けることで知られる項目でもあるため,特定技能外国人に対しても同様に,被害防止のための情報共有がなされます。

3.モンゴル政府が誓約した重要事項

二国間協定の中で,モンゴル政府が誓約している重要事項について見ていきます。

  • GOLWSをモンゴル唯一の送出し機関とする
  • 日本国内で処罰を受けた機関の情報をモンゴルで公表
  • 特定技能候補者をGOLWSのデータベースに登録すること
  • 日本政府からの要請により必要な情報提供をすること

〇GOLWSをモンゴル唯一の送出し機関とする
特定技能外国人をモンゴルから呼び寄せする際には,モンゴル労働・社会保障省労働福祉サービス庁(GOLWS)を仲介する必要があります。
そのため,民間の送出し機関がモンゴルにいる特定技能外国人の斡旋を行うことは認められていません。

なお,モンゴル政府は,GOLWSを特定技能外国人の送出しに関わることのできる唯一の機関として定めています。

〇日本国内で処罰を受けた機関の情報をモンゴルで公表
日本政府が登録支援機関や受け入れ機関に対して,指導や許可取消などを行った場合には,モンゴル政府に情報が伝達され,モンゴル国内でも公表することが誓約されています。

〇特定技能候補者をGOLWSのデータベースに登録すること
特定技能の技能試験や日本語試験に合格するなどして,特定技能外国人となる要件を満たしたモンゴル人に対してGOLWSの求職者データベースに登録することを求めることが誓約されています。

〇日本政府からの要請により必要な情報提供をすること
日本政府より特定技能外国人などに関する情報の照会を受けた際は,情報提供をすることが誓約されています。

4.日本政府が誓約した重要事項

次に日本政府が誓約した重要事項について紹介します。

  • 雇用契約や支援計画の適正な審査実施
  • 登録支援機関の厳正な審査実施
  • 雇用契約や支援計画内容の適正な実施状況の確認
  • 必要に応じて登録支援機関へ指導等の実施
  • 特定技能外国人の適正な労働環境の確保
  • 日本国内の悪質ブローカーの排除
  • GOLWSに関する情報を日本国内で公表
  • 処罰した機関の情報をモンゴル政府へ共有
  • 特定技能適格性を厳正に審査
  • モンゴル政府からの要請により必要な情報提供

〇雇用契約や支援計画の適正な審査実施
特定技能ビザ申請時に提出される雇用契約書や,その他の申請内容について入管法に適合しているかどうか審査することが誓約されています。
特に,受入れ機関と特定技能外国人の間で締結された雇用契約内容や,特定技能外国人に対して実施義務のある支援計画についての内容が厳しく審査するとされています。

〇登録支援機関の厳正な審査実施
登録支援機関に対して,営業の許可をする際に支援業務を適正に実施することのできる体制を備えているかについて,厳しく審査することが誓約されています。
また,許可をした登録支援機関については情報を公表することも誓約されています。

〇雇用契約や支援計画内容の適正な実施状況の確認
入管が許可した雇用条件や支援計画の内容について,内容通りの給与支払いや支援業務が実施されているかどうかの確認を行うことが誓約されています。
また,必要に応じて指導・助言を行い,適正に実施されていないと判断される場合には改善命令を出してその情報を日本国内にて公表するとしています。

〇必要に応じて登録支援機関へ指導等の実施
登録支援機関の支援実施状況について確認をして,法令違反がある場合は必要に応じて許可の取り消しを行うことが誓約されています。

〇特定技能外国人の適正な労働環境の確保
特定技能ビザ申請の際に許可した雇用条件の内容が,遵守されているか確認することが誓約されています。
労働法違反などがある場合は,受入れ機関や登録支援機関を指導・監督することとされています。

〇日本国内の悪質ブローカーの排除
違法な悪質ブローカーを排除するため必要な措置をとることが誓約されています。

〇GOLWSに関する情報を日本国内で公表
GOLWSに関する情報を日本国内でも公表して,モンゴル人を呼び寄せする際の適正な方法について周知することが誓約されています。
GOLWSについての各種情報が更新された際には,入管のホームページなどで情報が公表されます。

〇処罰した機関の情報をモンゴル政府へ共有
受入れ機関や登録支援機関に対して,改善命令などを出した場合は,その情報をモンゴル政府にも共有することが誓約されています。

〇特定技能適格性を厳正に審査
特定技能ビザを申請した外国人が,要件を満たすかどうかを厳正に審査することが誓約されています。
また,中長期在留者が申請をする際には,入管法の基準も満たしているかについても併せて厳しく審査するとされています。

〇モンゴル政府からの要請により必要な情報提供
モンゴル政府より特定技能外国人受入れに関する情報照会を受けた際は,必要な情報提供を行うことが誓約されています。

5.特定技能外国人の受入れフロー(呼び寄せ)

モンゴルから特定技能外国人を呼び寄せする際は,次の9ステップの手続きを行います。

①受入れ機関とGOLWSの双務契約締結
②GOLWSより特定技能候補者の情報受け取り
③採用する人材の決定
④雇用契約の締結
⑤特定技能ビザの取得
⑥大使館手続きの委任
⑦在ベトナム日本大使館での手続き
⑧出国前研修の実施
⑨日本へ入国・就労開始

①受入れ機関とGOLWSの双務契約締結
受入れ機関がモンゴル人を呼び寄せする際には,GOLWSと双務契約を締結する必要があります。
双務契約を締結することで,受入れ機関は,GOLWSの求職者データベースへのアクセス権が授与されます。

なお,GOLWSとの双務契約については,職業紹介会社が行うことも可能とされています。

②GOLWSより特定技能候補者の情報受け取り
GOLWSがモンゴル人の求職者情報である「特定技能モンゴル人候補者表」を作成して,受入れ機関に情報提供します。
また,受入れ機関はGOLWSのデータベースから情報の閲覧をすることもできます。

2022年5月現在,データベースは整備中のため「特定技能モンゴル人候補者表」は
メールでのみ受領することができます。

③採用する人材の決定
「特定技能モンゴル人候補者表」より,採用する人材の選定を行った後は,GOLWSへ採用者情報の通知を行い,GOLWSから採用されたモンゴル人へ結果通知されます。

④雇用契約の締結
雇用契約書を作成して特定技能外国人と労働条件などについて合意します。
雇用契約書などについては,GOLWSを介して特定技能外国人へ送付する必要があります。

⑤特定技能ビザの取得
雇用契約書の写しや他の申請書類を揃えて,特定技能ビザの申請をします。
特定技能ビザを取得した後は,原本を直接またはGOLWSを介して特定技能外国人へ郵送することができます。

⑥大使館手続きの委任
通常,特定技能外国人が行う日本大使館での手続きを,GOLWSに委任する必要があります。
特定技能外国人が委任状を作成して,GOLWSへ提出した後に,在モンゴル日本大使館での手続きを行うことができます。

⑦在ベトナム日本大使館での手続き
GOLWSが,日本入国のための正式なビザ発給手続きを終えた後に,特定技能外国人へビザを送付します。

⑧出国前研修の実施
特定技能外国人は,日本へ出国する前にGOLWSが主催する出国前研修を受講する必要があります。

⑨日本へ入国・就労開始
日本へ入国した日より,特定技能外国人としての就労を開始することができます。

6.特定技能外国人の受入れフロー(日本にいるモンゴル人)

①採用する人材の決定
②雇用契約の締結
③特定技能ビザの取得
④就労開始

①採用する人材の決定
日本国内にいるモンゴル人で,特定技能の要件を満たした人材より採用者を決定します。

②雇用契約の締結
特定技能外国人と受入れ機関が雇用契約を締結します。
この際に,特定技能制度で義務化されている事前ガイダンスについても実施する必要があります。

③特定技能ビザの取得
特定技能ビザの申請に必要な書類を準備して,入管へ申請します。
申請書類に問題が無ければ,1~2ヶ月ほどで特定技能ビザを取得することができます。

④就労開始
特定技能ビザを取得した当日より,特定技能外国人として就労を開始することが認められます。
なお,日本にいるモンゴル人を採用する場合は,上記の受入れフローとは別に,締結した雇用契約書などをGOLWSへメールで送信して登録手続きを済ませる必要があります。

7.まとめ:モンゴルの二国間協定の誓約事項と受入れフロー

本記事では,特定技能制度の適正な運用のためにモンゴルと日本との間で締結された,二国間協定の内容や受入れフローについて紹介しました。

モンゴル人を呼び寄せする際には,政府機関であるGOLWSを仲介する必要があるなど,他国には無いルールがあるため,手続きを始める前に受入れフローについても十分に確認しておきましょう。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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