尾島 諒

技能ビザとは?

技能ビザとは,産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を有する方を対象とする就労ビザの一種です。技能ビザを取得すれば,日本にはない産業分野や日本よりレベルの高い産業分野などで,熟練した技能を有する外国人材を日本へ招へいすることが出来ます。

技能ビザの代表的なものは,料理人などがあげられます。
他にもパイロットやスポーツの指導者など,技能ビザはかなり広範囲の活動を網羅している就労ビザの一種です。

本ページでは,技能ビザについて,専門行政書士が審査ポイントなどを交えながら解説しています。
ぜひご覧ください。

1.技能ビザに該当する具体的な職業は?

技能ビザに該当する職業として,調理師,ソムリエ,外国特有の建築技術者,外国特有製品の製造又は修理,宝石・貴金属・毛皮加工,動物の調教,石油・地熱等掘削調査,パイロット,スポーツの指導者などがあげられます。

技能ビザの基準省令の1号から9号に,それぞれの内容及び要件が定められています。

2.技能ビザの実務経験は何年必要?

技能ビザを取得するためには,それぞれ行おうとする活動について,一定の実務経験が必要になります。
それぞれの職業別に,経験年数を下記の表でまとめていますので,ご確認ください。

基準省令 職業 経験年数
1号 調理師 10年以上[※1]
1号 タイ料理の調理師 5年以上[※2]
2号 外国特有の建築技術者 10年以上[※3]
3号 外国特有製品の製造又は修理 10年以上[※1]
4号 宝石・貴金属・毛皮加工 10年以上[※1]
5号 動物の調教 10年以上[※1]
6号 石油・地熱等掘削調査 10年以上[※1]
7号 パイロット(航空機操縦士) 250時間以上の飛行経歴
8号 スポーツの指導者 3年以上[※1]
9号 ソムリエ(ワイン鑑定等) 5年以上[※1]

※1 外国の教育機関において,当該技能に関する科目を専攻した期間についても含みます。
※2 実務経験に加えて,タイ料理人としての技術水準に関する証明書,タイ料理人としての妥当な報酬を受けていることが必要となります。
※3 当該技能を要する業務に,10年以上の実務経験を有する外国人の指揮監督を受けて従事する場合には,5年以上の実務経験があれば要件を満たします。

3.技能ビザの入管審査のポイントは?

技能ビザを取得するためには,「産業上の特殊な分野」と言えるかどうかという点が重要になります。技能ビザの基準省令に列記されているものは,いわゆる限定列挙とされており,たとえ日本にはない外国特有の産業分野であったとしても,技能ビザを取得することは出来ません。

外国に特有の産業分野(1号から3号まで),日本の水準よりも外国の技能レベルが高い産業分野(4号,5号,8号,9号),日本では技能者が少数しか存在しない産業分野(6号,7号)のいずれかに該当する必要があります。

次に,技能ビザは上述のとおり,実務経験が求められています。技能ビザにおける実務経験は,熟練した技能を有しているという立証になるので,とても重要です。10年の実務経験の立証が必要な場合などで,十分な書類が揃わない場合には,間接的な証拠を積み重ねていくことが肝要です。

4.技能ビザを申請する場合の必要書類

技能ビザを申請する場合の必要書類は以下のとおりです。

(在留資格認定証明書交付申請)

・調理師の場合
http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/shin_zairyu_nintei10_15_01.html
・調理師以外の場合
http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/shin_zairyu_nintei10_15_02.html

(在留資格変更許可申請)

・調理師の場合
http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/shin_henko10_13_01.html
・調理師以外の場合
http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/shin_henko10_13_02.html

5.技能ビザQ&A

技能ビザについて,ご質問の多い事項を以下にまとめています。

Q 技能ビザの実務経験には,外国の教育機関において当該技能に関する科目を専攻した期間についても含むということですが,日本の専門学校や大学などの専攻期間は,技能ビザの実務経験には含まれないのでしょうか?

A 技能ビザの基準省令は,「外国の教育機関」と規定していますので,日本の教育機関での専攻期間は,技能ビザの実務経験には含まれません。

Q 日本料理の料理人は,技能ビザを取得することが出来ますか?

A 料理人として技能ビザを取得するためには,「料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なもの」である必要があります。日本料理は,外国において考案されたものではないため,本要件に該当しません。したがって,日本料理の料理人は,技能ビザを取得することは出来ません。
なお,日本料理店で文化活動ビザを取得する事例が見られますが,文化活動ビザは就労ビザではないため,就労活動は出来ないのでご注意ください。

Q 料理の調理又は食品の製造に係る技能で,外国において考案され我が国において特殊なものとは,具体的にどのような料理を言いますか?

A 中華料理,フランス料理,インド料理などの料理人,点心,パティシエなどを言います。
もっとも,上記の料理に該当する場合であっても,熟練の技能を要しない調理方法を用いる場合,例えば電子レンジで温めるだけ,茹でるだけなどの単純調理の場合には,技能ビザは取得することが出来ません。また,日本国内で既に普及しているもの,例えばカレーライスやラーメン,焼肉などは,外国に特有の産業分野とは判断されず,技能ビザの取得は出来ません。

Q 中華料理店の経営を考えています。この場合の在留資格は,経営管理ビザで問題ないでしょうか。

A 経営管理ビザは,現業を禁止していることから,経営者の方がオーナーシェフとして,主として料理を作るのであれば,経営管理ビザではなく,技能ビザを取得する必要があります。他方,自らは中華料理店では稼働せず,専ら経営活動に従事する場合には,経営管理ビザに該当することになります。

Q コース料理がない料理店では,料理人を技能ビザで招へい出来ないと聞きました。本当でしょうか。

A コース料理はあった方が好ましいでしょう。しかし,コース料理がなくても,特別な方法で調理している等,本格的な外国料理と言える程度の料理であれば,技能ビザを取得できる可能性はあります。

Q 料理人の実務経験の立証は,どのような書面で行うのでしょうか。

A 海外で在職していたレストラン店舗の内装,外観の写真,厨房の写真,在職証明書,職業資格証明書など,どのような業務をしていたのかわかる書面で実務経験の立証を行います。

Q 外国特有製品の製造又は修理とは,具体的にどのようなものを指すのでしょうか。

A ヨーロッパ特有のガラス製品,ペルシャ絨毯など,日本にはない製品の製造又は修理に関する技能を指しています。

Q ホテルのレストランでソムリエを採用したいのですが,通常のソムリエ業務以外に配膳などのサービスを行うことは出来ますか?

A ホールスタッフとしてソムリエ以外の業務に就くことは,法定外業務とされ,技能ビザの在留資格該当性を有しません。実際の入管の審査でも,ソムリエ以外にホールスタッフが確保されていることは重要な審査ポイントとなっています。

Q ソムリエを採用するには,5年の実務経験があれば問題ないでしょうか。

A ソムリエとして技能ビザを取得するためには,下記のいずれかに該当している必要があります。
①国際ソムリエコンクール(例えば,国際ソムリエ協会が主催する「世界最優秀ソムリエコンクール」など)において入賞以上の成績を収めたことがある
②出場者が1国につき1名に制限されている国際ソムリエコンクールに出場した経験がある
③ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む)若しくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含む)又はこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めているものを有している

Q プロスポーツ選手の指導を行う場合,在留資格は技能ビザに該当しますか?

A プロスポーツ選手とは独立した形で行う,トレーナー,コーチは技能ビザに該当します。一方,プロスポーツ選手の活動と一体性を有する活動の場合,例えばプロ野球の監督やコーチは,チーム一体として興行活動に出場し,プロスポーツ選手に随伴する活動とみられることから,興行ビザに該当します。

Q 気功やヨガの指導は,技能ビザに該当しますか?

A 肉体的な鍛錬を目的とするのであれば,スポーツの指導者として技能ビザに該当する可能性はあります。一方,病気治療を目的とする気功治療,美容や健康を目的とするヨガの指導は,スポーツの指導とは判断されず技能ビザには該当しません。

6.技能ビザの相談&解決事例

技能ビザに関する当社の相談&解決の事例をご紹介します。

①外国人の料理人を採用したいけど,どのように実務経験を立証すれば良いかわからない
②新規にオープンする料理店で外国人の料理人を雇用したい
③技能ビザを申請したが入管から追加資料の要求があった
④技能ビザを申請したが不許可,不交付になってしまった
⑤外国の建築技術者を採用したいが事例が少なくてわからない
⑥スポーツの指導者を日本へ呼びたいがビザの種類がわからない
⑦ホテルのレストランでソムリエを雇用したが技能ビザが不許可になってしまった
⑧海外からヨガのインストラクターを技能ビザで招へいしたい

7.技能ビザのまとめ

技能ビザは,長年の修練と実務経験によって身につけた技量を必要とする業務に就くためのビザです。私見では日本にはない熟練した技能を有する外国人には,積極的に日本へ入国してほしいと考えていますが,技能ビザの基準省令で列記されている以外には,残念ながら認められません。

長年の修練,実務経験と産業上の特殊な分野であるかという点は,技能ビザの許可を取得する上でとても重要です。また,実務経験の立証は,入管実務では特に重視をされています。

技能ビザでご質問,ご相談がございましたら,お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 尾島 諒

・日本行政書士会連合会(登録番号第24260162号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8842号)
愛知県出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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