日本人の配偶者・永住者の配偶者ビザから永住権を取得する方法
日本に住む多くの外国人の方が取得を目指すビザ,それが永住権です。
“国籍は変えたくないけれど,日本にはずっと住みたい”
そんな方には,永住権がぴったりです。
永住権を取得すると,ビザ更新は不要となります。
また,日本での活動内容も制限がなくなります。
そのため,配偶者ビザより,日本で安定して生活できるようになります。
本コラムでは,配偶者ビザから永住権を取得する方法を解説しています。
現在,配偶者ビザを保有し,これから永住権の取得を目指す方には必見のコラムとなっていますので,是非チェックしてください。
Index
1.配偶者ビザを保有している外国人は永住権を取得しやすい!?
配偶者ビザと一口に言っても,
①日本人の配偶者
②永住者の配偶者
③定住者の配偶者
④就労ビザを持つ外国人の配偶者
など,様々な種類があります。
結婚したことによって,取得できるビザは実はたくさんあるのです。
詳しくは,結婚ビザと配偶者ビザの違いとは? に記載していますのでご覧ください。
本ページでは,①日本人の配偶者,②永住者の配偶者 の方を対象に解説しています。
さて,皆さんは日本人や永住者の配偶者の方は,永住権を取得しやすいということを耳にされたことはありますか?
日本人や永住者の配偶者の方については,永住権の要件が緩和されているのです。
何だか不平等にも感じてしまうのですが,なぜ日本人や永住者の配偶者は特別扱いされているのでしょうか?
その理由は,主に2つです。
日本人や永住者の配偶者の方は,
- 生活の本拠が日本にあるから
- 家族単位で安定した生活ができるようにする必要があるから
というのが主な理由です。
このように,日本人や永住者の配偶者の方については,永住権への近道が準備されているのです。
では,次のチャプターでは,日本人や永住者の配偶者の方について,永住権の要件がどのように緩和されているのか,具体的な要件を見ていきましょう。
2.配偶者ビザから永住権を取得するための要件
永住権を取得するためには,
①素行の善良性
②独立生計の維持能力
③国益適合性
という3つの要件が必要とされています。
少し聞きなれない言葉なので,簡単に説明を加えると
①素行の善良性とは,「法律を守り,日常生活を日本の住民として,社会的に非難されることなく生活していること」
②独立生計の維持能力とは,「公共の負担になることなく,安定した日常生活を過ごせるだけの資産や技能を持っていること」
③国益適合性とは,「永住権を取得することが,日本にとって有益であること」
と説明されます。
他方で,日本人や永住者の配偶者の方が,
- 実体を伴った婚姻生活が3年以上継続している
- 日本に引き続き1年以上在留している
といういずれの要件にも該当すれば,①素行の善良性,②独立生計の維持能力は永住権の審査では不問とされます。
これを「簡易永住許可」と言います。
つまり簡易永住許可の要件に該当すれば,③国益適合性だけクリアすれば,永住権の取得ができるということです。
そのため,海外で実体のある婚姻生活を2年間継続しているケースでは,来日後,最短1年間で永住権を取得することも理論上は可能なのです。
では,日本人や永住者の配偶者の方は楽々永住権が取れるかと言えば,残念ながらそういうわけではありません。
3.配偶者ビザから永住ビザへの申請手続きについて
配偶者ビザから永住ビザへ,ご自身で変更の申請をする流れは以下の通りです。
STEP2:申請に必要な書類を集める
STEP3:申請書類を作成する
STEP4:管轄の入管窓口へ申請→受理
STEP5:入管で審査(数か月~1年超かかります)
STEP6:入管から審査結果の通知書が届く
申請に必要な書類は,現在のビザやお仕事の内容,これまでの在留状況によって変わります。ここでは一般的なものを紹介します。
- 永住許可申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm):1葉
- 配偶者の方の戸籍謄本(全部事項証明書):1通
- 家族全員の住民票:1通
- (会社員の場合)在職証明書:1通
- 直近3年分の住民税の課税証明書
- 直近3年分の住民税の納税証明書
- (住民税が普通徴収の場合)領収証など
- 国税の納税証明書「その3」
- 預貯金通帳の写し
- 直近2年間の年金保険料の納付状況を示すもの
- 健康保険証の写し
- パスポートと在留カードの提示
- 身元保証書
- 身元保証人の本人確認書類写し
- 了解書
4.日本の永住権申請が不許可になる理由
年収が300万円未満
永住申請では,年収が低いと許可が難しくなります。
独立生計要件は免除されることについては前述のとおりですが,実務上は提出する入管によってある程度年収がないと不許可になってしまうケースがあります。
このあたりは,その方の状況にもよりますので,気になる方は一度ビザに詳しい専門家にご相談いただくのもおすすめです。
日本を出国していた日数が多すぎる
頻繁に日本を出国している場合,永住申請に必要な在留年数の条件がクリアできず,許可取得が困難になります。
1回で90日を超える出国がある又は1年間の出国日数が合計で150日以上にある
このどちらかに当てはまる場合,それまで長期間日本に在留していたとしても,在留年数のカウントがリセットされてしまう可能性が高いです。永住申請を目指す方は,海外出国の日数には注意が必要です。
国民健康保険や年金の未納,納付遅れ
国民健康保険や年金に未納,納付遅れがあると永住が不許可になる可能性が高いです。ビザの更新や変更ではあまり重視されないケースもありますが,永住申請の審査においては,国民健康保険と年金の納付状況は重視されます。会社員の方で,給与から天引きになっている方は安心ですが,自分で納付している方は注意が必要です。特に年金は,納付期日までに正しく納付していることが必要です。期日を過ぎて納付した分があると,それだけで不許可になってしまいます。
税金の未納
住民税など税金に未納がある場合,永住申請が認められる可能性はほぼありません。これも,会社員の方で給与から天引きされている方は問題ありませんが,自分で納付する「普通徴収」の方は,納付期日までに正しく納付しないと不許可になってしまいます。
永住申請が不許可になってしまう理由は,ほかにもいくつかあります。
気になることがある場合は,ぜひ行政書士法人第一綜合事務所の無料相談をご利用ください。お客様ごとの不許可リスクについてお話しできます。
5.これから永住権を目指す方へのアドバイス
日本人や永住者の配偶者の方が簡易永住許可の要件に該当した際,“国益適合性のみ”が求められるのは先に記載したとおりです。
国益適合性は,「永住権を取得することが,日本にとって有益であること」を意味しますが,具体的に日本にとって有益であると言えるためには,どのような要件をクリアすれば良いのでしょうか。
実は,「日本の利益」の具体的な内容は明確にはなっていません…。
実務上の基準としては,
- 納税義務などの公的義務を履行していること
- 罰金刑や懲役刑を受けていないこと
- 3年又は5年の在留期間であること
- 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
などがあげられます。
そのため,簡易永住許可の要件に該当し,素行の善良性が問われない場合でも,国益適合性の1つとして「罰金刑や懲役刑を受けていないこと」は審査されます。
また,独立生計の維持能力が問われない場合であっても,「納税義務などの公的義務を履行していること」が国益適合性として審査されます。
また,そもそも簡易永住許可の要件に該当していると言えるためには,婚姻状態にあるだけでは足りず,“婚姻の実体”が重要です。
つまり,形式的に婚姻状態にあったとしても,同居していない場合などは簡易永住許可の要件に該当しないということです。
さらに,婚姻の実体があったとしても,頻繁に海外に出国しているようなケースでは,生活拠点が日本にないと判断され,簡易永住許可の要件に該当しない可能性が高くなります。
永住権は,活動内容,在留期間の制限はありません。
そのため永住権は,最も安定したビザと言える反面,とても慎重に審査されるビザとも言えるのです。
永住権の審査は,「配偶者ビザの更新」とは“レベルの違う厳しい審査”が行われるとご理解いただいて差支えありません。
6.永住権を取得したお客様からの口コミ
行政書士法人第一綜合事務所をご利用いただき,永住権を取得されたお客様からのGoogle口コミを一部ご紹介します。
JIAN
★★★★★
4年前、中国人の夫の配偶者ビザ取得。今年、永住権取得。
中国に住む夫と日本での生活をする為に配偶者ビザを取得したくネットで第一綜合事務所を知りました。
とても不安ではありましたが電話で相談をしました。
その時の対応がとても温かく即お願いし、書類の準備でわからない事、不安に思う事は電話やメールで相談したところ、丁寧に説明していただき即解消してくれました。
配偶者ビザから永住権取得まで安心して第一綜合事務所のスタッフの皆様に任せっきりでした。
第一綜合事務所のスタッフの皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
TY
★★★★★
知人の外国人家族4人が永住ビザ申請をしたいというのでネットで探して実績が多いので紹介、取得後、そのうちの長男の配偶者ビザ申請にもお世話になりました。地方在住で電話、メール、郵便でやり取り。親切で料金も妥当と感じました。
なかお
★★★★★
大事な永住権申請のため、慎重に選び比べて第一綜合事務所選択しました。詳しい説明していただき、凄く分かりやすいご対応でした。友人にもご紹介したいと思います。
7.永住ビザ申請についてよくある質問
ここでは,配偶者ビザから永住ビザ申請でのよくあるご質問を紹介します。
【A】できません。「実体のある婚姻生活」は,法律上夫婦になる前の同棲期間は含みません。
【A】できません。永住許可申請は,申請時の住所地を管轄する入管へ申請しなければいけません。
【A】このケースでは,配偶者の年金納付状況も審査対象となります。年金は直近2年間の納付状況を見られますので,今回申請してもまず許可はされないでしょう。正しく納付した状態を2年間キープし続ける必要があります。
8.配偶者ビザからの永住権を取得する方法のまとめ
永住権の審査は,厳格化の方向にあります。
日本政府が公開している「出入国管理統計」によると,2023年の永住ビザの許可率は66%でした。つまり,申請しても3人に1人は不許可になっているということです。
「入管のホームページに記載されている書類を揃えれば許可が取れる」ということではないことが,おわかりいただけると思います。許可率については,入管申請データを解析!永住ビザ申請の許可率・不許可率! にて解説していますのでご覧ください。
永住権の許可率が下がった要因として,これまで審査されていなかった事項が審査対象になったことがあげられます。
例えば,年金保険料の支払状況。
これまで一部の入管で指摘を受けることはありましたが,あくまで一部の入管に留まるものでした。
しかし,2019年7月には全国の入管で年金保険料の支払状況が審査されることになったのです。
また,国民健康保険料の支払状況も厳しく見られるようになりました。
未納のみならず,支払い遅れについても,合理的な理由がない場合には,永住権の申請は容赦なく不許可になります。
このような背景には,日本の年金や国民健康保険の財政難があります。
残念ながら永住権を取得したら,本来支払うべきはずの年金や国民健康保険を支払わないという方が一部います。
そのため,入管の審査では「永住権を取得した後も,納税義務などの公的義務を履行し続けるか」という点に注視していると言えるでしょう。
永住権の申請をするタイミングだけ公的義務を適正履行しても,時すでに遅しとなってしまいます。
配偶者ビザの更新時においても,これらのことを十分に意識しておく必要があるのです。
万が一,納税義務などの公的義務の未納や遅滞があれば,たとえ簡易永住許可の対象になる方であっても,2年間や3年間は永住権が許可されないケースもあります。
そのような事態を回避するためには,公的義務の種類をきちんと理解し,日頃から抜け漏れなく履行することが重要なのです。
本ページが,これから永住権を目指す方のご参考になれば幸いです。