高度人材ポイント制を利用した永住ビザの取得方法
永住ビザの申請をするには,原則として10年以上日本に在留し,そのうち就労資格または居住資格をもって5年以上在留していることが求められます。
しかし,例外がないわけではなく,一定条件を満たせば最短1年で永住ビザの申請ができる場合もあります。
本ページでは,在留年数が緩和されるケースの一つである高度人材からの永住ビザの申請についてご説明します。
Index
1. 高度人材とは?
はじめに,入管が定める高度人材の定義をご紹介します。
「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに,日本人との切磋琢磨を通じて
専門的・技術的な労働市場の発展を促し,我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」
平成21年5月29日高度人材受入推進会議報告書より
上記の定義を端的にまとめるとすると,『新しいアイデアやスキルによって,日本経済を発展させることのできる優秀な人材』と言い換えることができます。
高度人材には大きく3つのジャンルが用意されており,各ジャンルでの評価項目も異なるため,自分に合った活動を確認する必要があります。
①知識又は技術を要する業務に従事する活動又は教育をする活動する活動→(例)ITエンジニアなど
②研究,研究の指導又は教育をする活動する活動→(例)大学教授など
③事業の経営を行い又は管理に従事する活動→(例)会社経営者など
そして,高度人材として認定されるためには,入管が定めるポイント計算表で計算を行った結果,一定点数以上のポイントを有することが必要になります。
①高度人材ポイント制について
では,実際に高度人材として認定されるためにはどのようにすればいいのでしょうか。
それは,下記ポイント表において「70点」以上のポイントを達成することが一つの条件となります。
詳しくは,以下のページをご覧ください。
>>高度専門職 取得条件 はコチラ
上記のページを見て頂ければ分かる通り,「学歴」,「職歴」,「年収」,「日本語能力」など項目ごとにポイントが設定されており,各項目を満たすことでポイントが積み重なります。
そして,高度人材として認定されるためには,まず「70点」を目指していくことになります。
②高度人材の優遇措置について
高度人材として認定され,高度人材の在留資格を取得した際にはどんなメリットがあるのでしょうか。
高度人材の優遇措置として,入管は以下の7つを定めています。
② 配偶者の就労
③ 家事使用人の帯同の許容
④ 複合的な在留活動の許容
⑤ 現行の最長期間である在留期間「5年」の付与
⑥ 入国・在留手続の優先処理
⑦ 永住許可要件の緩和
当コラムでは上記⑦の永住許可要件の緩和について,具体的に紹介していきます。
その前に,永住ビザを取得するための要件についておさらいしておきましょう。
2. 原則的な永住ビザの要件
永住ビザを取得するためには,原則として以下の3つの要件を満たす必要があります。
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること
日常生活において公共の負担にならず,その有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること
ア.原則として引き続き10年以上本邦に在留していること
この期間のうち,就労資格(技術・人文知識・国際業務ビザなど)または居住資格(配偶者ビザなど)をもって引き続き5年以上在留していることが必要です。
イ.罰金刑や懲役刑などを受けていないこと
ウ.公的義務を履行していること
※納税,公的年金及び公的医療保険の納付に加え,入管法に定める届出等の義務を適正に履行していることが求められます。
エ.現に有している在留資格について,入管法に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
※当面の間は,在留期間「3年」を有する場合は,「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。
オ.公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
永住ビザの要件について,分かりやすく解説したページをご用意しておりますので,下記コラムをご参照ください。
>>永住ビザ 要件 はコチラ
①高度人材によって緩和される永住ビザの要件とは
上記で永住ビザの要件について紹介してきましたが,高度人材によって緩和される永住ビザの要件は下記となります。
永住ビザは,原則として10年以上の在留歴が必要とされるところ,高度人材に認定されることで,日本での在留年数が「3年」または「1年」に緩和されます。
そのため,高度人材ポイント計算で70点以上~80点未満の高度人材の方は,最短「3年」,80点以上の高度人材の方は,最短「1年」の在留歴で永住ビザの申請ができることになります。
3. 高度人材にならなくても永住ビザの申請は可能?
高度人材に認定されると,永住ビザの要件である在留歴が緩和されると紹介してきました。
それでは,永住ビザを出来るだけ早く取得したい場合,高度人材のビザに変更してから永住ビザの申請をする必要があるのでしょうか?
例えば,技術人文知識国際業務ビザをお持ちの方で,ポイントが70点以上あった場合,高度人材のビザを取得しないと,永住ビザの要件緩和が受けられないのでしょうか。
結論としては,高度人材のビザを持っていない方についても,高度人材ポイント計算により一定点数以上に達した場合,高度人材のビザ相当として永住ビザ申請する際の在留年数の緩和が認められています。
つまり,技術人文知識国際業務ビザの方でも,一定点数以上達していれば,高度人材のビザに切り替えることなく,高度人材の優遇措置である在留年数の緩和要件を利用して永住ビザの申請をすることができるのです。
4.高度人材のポイント計算表を解説
それでは,実際に高度人材として認定されるためのポイント計算方法について,加算されやすい項目に絞って,解説していきます。
取得している学位によって,加算されるポイントが異なります。
大学以上の教育を受けたことを条件にポイントが加算されます。
最も高いポイントは博士号の30点です。
学歴については,「日本の大学」,「法務大臣が告示で定める大学」を卒業している方については,上記に加えてポイントが加算される可能性があります。
現在,従事している業務の実務経験年数によって,加算されるポイントが異なります。
実務経験3年以上からポイントが加算されます。
最も高いポイントは実務経験10年以上の場合で,20点です。
1年前または3年前の年収と今後1年間の見込み収入の金額によって,ポイントが加算されます。
年収によるポイントは,年齢によって加算されるポイントが異なります。
29歳以下の方は400万円以上からポイントが加算され,34歳以下の方は500万円からポイント加算が始まるなど,年齢が高くなるにつれ条件が厳しくなります。
最も高いポイントは,年齢問わず年収が1,000万円以上の場合で,40点です。
年齢によって,加算されるポイントが異なります。
39歳までがポイントが加算の対象とされ,最も高いポイントは29歳以下の15点です。
日本語能力試験N1の認定を受けた場合,15点が加算されます。
また,上記と同等の日本語能力を証明するものとして,BJTビジネス日本語能力テストにおいて480点以上を取得した場合も,ポイントが加算されます。
日本語能力試験N2の認定を受けている場合でも,ポイント加算の可能性があります。
5.実際に高度人材ポイント制で永住ビザが申請できるケース
それでは,高度人材のポイント計算表で,高度人材として認定されるケースについて,いくつか紹介していきます。
ご自分に当てはまるケースがあるか,確認してみてください。
① 現時点で30歳未満+日本にある大学(加点対象大学)を卒業+日本語能力試験NI認定+現在と3年前が400万以上のケース
現時点で34歳未満+海外にある大学(加点対象大学)を卒業+日本語能力試験N1認定+実務経験が5年以上+現在と3年前の年収が500万以上のケース
現時点で39歳未満+修士課程を修了+実務経験が10年以上+現在と3年前の年収が700万以上のケース
高度人材のポイント計算についても,当社は初回無料相談で承っていますので下記よりお気軽にお問い合わせください。
無料相談のお問い合わせ先
6.高度人材ポイント制で引っ掛かりやすいケースとは
高度人材ポイント制を利用した永住ビザの申請は,申請時点である「現在」と申請時点から1年前または3年前の「過去」のポイントが大切になってきます。
時間が経過して,年収や職歴が変わり,ポイントが変化していることもよくあります。そこで,今回は4つのケースに分けて,永住ビザの申請ができる,できないケースについて紹介していきます。
①高度人材ポイント制で永住ビザが申請できるケース
ケース1
上記のケースでは,3年間の間に一時的に65点になってしまっていますが,申請時点と申請時点から3年前が「70点」のため,高度人材ポイント制で永住ビザの申請は可能です。
ケース2
上記のケースでは,申請時点の点数が1年前の点数より下がっていますが,申請時点と申請時点から1年前が「80点」のため,高度人材ポイント制で永住ビザの申請は可能です。
②高度人材ポイント制で永住ビザが申請できないケース
ケース1
上記のケースでは,申請時点から1年前が「80点」を超えていますが,申請時点が「80点」を超えていないため,高度人材ポイント制を利用した永住ビザの申請をすることができません。
また,申請時点は「70点」を超えていますが,申請時点から3年前が「70点」以下のため,高度人材ポイント制を利用した永住ビザの申請をすることができません。
ケース2
上記のケースでは,申請時点が「80点」ですが,申請時点から1年前が「80点」を超えていないため,高度人材ポイント制を利用した永住ビザの申請をすることができません
また,申請時点は「70点」を超えていますが,申請時点から3年前が「70点」以下のため,高度人材ポイント制での永住ビザの申請をすることができません。
7.高度人材の永住ビザ申請のQ&A
以下では,高度人材の方が永住ビザの申請する際によくある質問をまとめました。
A.永住ビザの申請の要件を満たしていないため,現時点では申請することができません。確かに,80点以上有していれば在留年数の要件が緩和され,日本に1年以上在留で永住ビザ申請することができます。しかし,永住ビザの申請の要件である「最長の在留期間をもって在留していること。」が満たされていません。そのため,「3年」または「5年」の在留期間が付与されるまでお待ち頂くことになります。
A.最短1年の在留期間で永住ビザの許可を認めることとしたのは,高度人材についてのみです。配偶者や子については,高度人材の在留年数の優遇措置の対象とはなっていません。そのため,家族については同時に永住ビザを許可されることはなく,まずは「永住者の配偶者等」などの在留資格が付与されます。その後,概ね3年の在留状況や日本への定着性を確認された後,永住ビザの許否の判断がされます。
A.あります。
高度人材のビザと永住ビザには共通点もありますが,大きな違いがあります。
それは,高度人材のビザの場合には「在留期限」と「就労活動に制限」があるという点です。高度人材のビザの場合,在留期限は一律5年の在留期限が付与されます。そのため,5年毎に,入管で在留期限の更新をする必要があります。また,高度人材のビザの場合,どのような仕事でもできるというわけではなく,入管法上,認められた範囲内の就労活動しかすることができません。
そして,高度人材のビザで在留している方については,勤務先を変更する場合には高度人材のビザの変更手続きも必要となります。また,高度人材のビザで在留している方が6ヶ月以上,高度人材の活動を行わない場合,取消事由に該当するため注意が必要です。
これに対し,永住ビザの場合には在留期限が無期限になり,就労活動の範囲に制限がありません。そのため,高度人材のビザでは,5年に一度在留期限の更新が必要であったのが必要となくなり,かつ高度人材では認められない職種で従事することも可能です。
また,自ら起業することも可能で,ビジネスを開始するにあたっての事業資金の調達も格段にしやすくなります。
なぜなら,永住ビザの場合には高度人材のビザと比較して,在留の安定性が増すため,住宅ローンを借りるなどの銀行取引の場面で信用力が向上するからです。
もっとも,高度人材のビザの場合は先述のとおり,複合的な在留活動が許容されるなどの優遇措置がありますので,永住ビザと比較してメリット・デメリットを正しく理解することが大切です。
A.永住ビザを取得しても原則として親を呼び寄せることはできません。
この点,高度人材のビザの場合には,一定の条件をクリアすると親や家事使用人を帯同させることができます。親を呼びたい場合には,高度人材のビザを検討する余地があります。
親の呼び寄せの実務要件については,以下のページをご覧ください。
>>老親扶養ビザ はコチラ
8.高度人材ポイント制を利用した永住ビザの取得方法のまとめ
高度人材のビザを有していない方でも,高度人材ポイント計算表で一定点数以上の方は,日本に10年以上在留していなくても,実は永住ビザ申請の要件を満たしているかもしれません。
今回の記事をきっかけに,高度人材ポイントの計算をしてみてはどうでしょうか。
特に,日本の大学・大学院を卒業し,日本語能力試験N1の認定を受けている方は,70点以上に達しているケースが多く見受けられます。
もっとも,高度人材ポイント計算表はいくつも項目があって,自身の点数を正確に計算するのは大変です。
また,点数を満たしていることも重要ですが,点数を満たしたうえで,いつがベストな永住ビザの申請時期かを判断することが大切です。
行政書士法人第一綜合事務所では,お客様の状況をヒアリングして,必要な時期に一定点数以上を有しているのかを専門家として正確なポイントを計算いたします。
同時に,お客様が永住ビザの要件を満たしているかについても判断させていただきます。
専門家に相談することで,ご自身で想定していたよりも早期に永住ビザを取得できることも十分考えられます。
高度人材ポイント制を利用した永住ビザについてのご質問,ご相談は無料で承っておりますので,お気軽にお問い合わせください。
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