德永 武道

【解決事例】永住ビザと転職との関係について

中国人のAさんは,来日後,日本語学校と大学を卒業して就職をしました。来日から10年が経ち,あと半年ほどで就労ビザを取得して5年になります。そろそろ永住ビザが欲しいと考えておりましたが,Aさんは何度か転職をしており,転職が永住ビザの審査に影響しないか心配になっています。そこで,国際業務専門の行政書士に相談することにしました。

1.はじめに

永住ビザのお問い合わせをいただく中で,転職歴がある場合には永住ビザの審査上で不利になりますか?というご質問をいただくことがあります。

転職歴のある方(あるいは転職が多い方)が永住ビザの申請を行う場合には,
①転職の時期や回数
②転職に伴う手続きの履行状況
③転職後の業務内容と就労ビザとの関係
④離職期間の長さ
⑤転職による年収の状況等, 様々な内容を検討する必要があります。

そこで,本ページでは転職が永住ビザの審査に与える影響を見ていきたいと思います。

2.転職が多いと永住ビザは取得できない!?

結論から申し上げると,転職をしても永住ビザを取得されている方はたくさんいます。
そのため,転職すると永住ビザが取得できないという訳ではありません。
では,なぜ転職が永住ビザの審査で不利になると思っている方が多いのでしょうか。

その理由として,転職経験がない方に比べて,転職経験がある方の場合,手続きや検討事項が増えることが要因と考えられます。

例えば,上記②転職に伴って行うべき手続きを履行しているかという点について,所属機関等に関する届出(入管法第19条の16)を適正に行っているかを検討する必要があります。
また,社会保険料の納付状況についても,離職をされると,それまで厚生年金に加入されていた方は国民年金に,健康保険は国民健康保険への切り替えが必要になります。そして,再就職した場合には,新しいお勤め先で年金と健康保険の切り替え手続きをすることになります。仮に,これらの手続きに漏れがあると,永住ビザの審査で大きな減点となってしまいます。

このように,転職に伴う手続きでエラーしないように細心の注意を払う必要がありますが,逆を言えば,これらの手続きにエラーがないのであれば,転職をしても永住ビザの審査で不利になることはありません。

そのため,「転職=永住ビザ×」 となるのではなく,「転職手続きエラー=永住ビザ×」とご理解ください。

3.永住ビザを取得するために転職で特に注意すること

以下に記載する内容は,永住ビザの取得を目指す皆さんが,転職時に特にご注意いただきたい事項です。

・転職の際の手続き忘れには注意!

転職をすると入管への手続き,社会保険の手続き等を履行する必要があります。この点については,離職する会社,転職する会社の顧問行政書士や顧問社労士に確認を取り,手続漏れが無いようにしてください。手続漏れは永住ビザの審査でネガティブに判断されます。

・転職してからすぐに永住ビザ申請しない!

入管の永住ビザの審査においては,皆さんの就労状況の安定性を確認します。どういう事かというと,永住ビザの審査では永住ビザを取得した後も日本で安定的に生活ができるか否かという点を審査しています。つまり,転職してすぐに永住ビザを申請した場合には,就労状況の安定性を欠いていると判断されてしまう可能性があります。そのため,転職してすぐに永住ビザ申請をするのではなく,就労状況の安定性が確認できる期間を待って永住ビザの申請をすることをお勧めします。

・離職期間が長い場合には注意!

転職活動を行うため,離職期間がある方はご自身の履歴書を確認してみて下さい。離職期間があまりに長い場合,就労ビザを持っているにも関わらず,入管法で定める活動をしていなかったという事で,永住ビザの審査上,大きな減点になる可能性があります。特に,入管法第22条の4(在留資格の取消し)で定める期間を超過している場合には,注意を要します。

・転職後の業務内容には注意!

転職の業務内容が前職と異なる場合で,就労資格証明書交付申請を行っていない場合には,注意が必要です。入管法に照らして明らかに業務内容が問題ない場合は良いのですが,就労ビザ活動内容が入管法上,微妙なケースでは注意が必要です。転職後の業務内容に心配がある場合には,専門家に相談するようにしましょう。

・転職による年収の低下には注意!

転職活動によって働いてない期間があり年収が減少している場合,あるいは転職によって年収が減少してしまった場合には,永住ビザの審査で消極的に判断されてしまう可能性があります。通常,転職はキャリアアップと考えられているところ,年収が減少するのは永住ビザの審査上よくありません。そのため,年収の減少幅が大きい場合には,別途説明を加え,ご自身のキャリアデザイン等を示すことをお勧めします。

4.事例の検討

それでは,ここからは今回の事例の検討をしていきましょう。

Aさんの場合には,就労ビザへ変更してから間もなく5年が経過しますが,その間に何度か転職をしています。

そこで,当社において永住ビザの許可の可能性を検証していきました。
その結果,離職期間が相当期間あり,現職に転職してから3ヶ月ほどしか経っていなかったため,就労状況の安定性に問題がありました。そのため,永住ビザの申請時期を就労状況の安定性が確認できる時期に変更するよう,当社行政書士から提案しました。

また,ある年の所得について,再就職先の会社の手続きの漏れがあったため,修正申告を行い,国税・地方税等の納付を行いました。
その他,転職に伴い発生する契約機関に関する届出,社会保険料については,自身で適切な手続をとっていたため,その他の要件については,特段問題を生じることはありませんでした。

Aさんは永住ビザの申請時期が明確になり,とても安心された様子でした。
その後,スケジュールした時期に,永住ビザを申請し,無事許可を取得することができました。

5.まとめ

今回は,永住ビザと転職との関係について記載してきました。

転職すること自体が,永住ビザの審査で消極的な事情となっているわけではなく,注意事項の見落としが永住ビザの審査で影響を与えることをご理解いただけましたでしょうか。
永住ビザをご検討中の方で,転職経験がある方は,本ページにて各要件を確認してみてください。

具体的な内容をお尋ねになりたい場合には,当社の永住ビザ無料診断がお勧めです。
お気軽に当社までお問い合わせ下さい。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 德永 武道

・日本行政書士会連合会(登録番号第23082840号)
・東京都行政書士会(会員番号第14958号)
千葉県出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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