德永 武道

定住者ビザからの永住ビザ申請のポイント

定住者ビザは,特別な理由を考慮して日本での居住を認めるのが相当な外国人を受け入れるために設けられたものです。日系3世・4世の方や,日本人と結婚した方の連れ子,永住者の実子,日本人と離婚・死別された配偶者などが,定住者ビザで在留しています。
定住者ビザをお持ちの方は,その由来から日本に長くお住まいの方が多い傾向にあり,更なる安定的な居住を目指して永住を希望される方も多くいらっしゃいます。
そこで,本ページでは,定住者ビザから永住ビザ申請を行う際に気を付けるべきチェックポイントをご紹介します。

1.在留年数について

永住許可を受けるには,原則として10年以上日本に在留していることが求められます(本邦在留要件)。この本邦在留要件には例外があり,日本社会と相当強い関係性が認められる類型に該当する場合には,期間が短縮されています。

定住者ビザをお持ちの外国人は,定住者ビザを付与された後,引き続き5年以上日本に在留している場合には,本邦在留要件を満たすとされています。「定住者ビザを付与された後」,引き続き5年以上ですから,他のビザから変更した場合は,変更許可を受けた日から5年をカウントすることになります。

もっとも,例えば日本人と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格で在留していた方が,日本人と離婚して定住者ビザに変更した場合には,「日本人の配偶者等」の在留資格で在留していた年数と定住者ビザで在留している年数を合わせて5年以上であれば,期間短縮の特例に適合します。

2.年収について

永住許可を受けるためには,「独立した生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」が求められます(入管法22条2項2号,独立生計要件)。申請人世帯の構成人数と世帯全体の収入,居住地域,世帯構成員の年齢等を総合考慮して,今後安定した生活を継続できると認められるかどうかが審査されます。

明確な基準はありませんが,就労系の在留資格からの永住ビザ申請の場合は,最低でも年収300万円は必要と言われています。一方で,定住者ビザを含む身分系の在留資格の場合は,就労系の在留資格からの永住申請と比較すると,独立生計要件の基準は低いと言われています。

ただし,生活保護を受給している場合は,独立生計要件を満たさないと判断される可能性が非常に高くなります。年収の基準が低くなると言っても,概ね250万円程度の年収がなければ永住許可は厳しい傾向にあります(生活保護を受給しているという事実,年収が250万円未満という事実,それのみをもって永住ビザが不許可とされるわけではありません)。

3.親族の扶養義務について

次に,見落としがちなポイントとして,親族の扶養義務が挙げられます。

定住者ビザで在留されている外国人は,親族も日本に住んでいるケースが多い傾向にあります。特に,日系外国人の方は,親族も日本に住んでいるという方がほとんどです。

親族が日本に住んでおり,親族が生活保護を受給している場合には,申請人の扶養義務が問題になります。

日本の民法では,直系血族(祖父母,父母,子,孫など血の繋がった家族のこと)及び兄弟姉妹に扶養義務があります(民法877条1項)。つまり,血の繋がった親兄弟が生活に困っている場合には扶け合わなければなければなりません。直系血族及び兄弟姉妹が生活保護を受給している場合には,申請人本人が生活保護を受給していなくても,扶養義務を果たしていないと評価されて永住ビザ申請に影響を与える場合があります。

もっとも,直系血族及び兄弟姉妹が生活保護を受給しているという一事をもって永住ビザ申請が不許可となるわけではありません。申請人本人の収入の他,親族に毎月いくら支弁しているのか,その他の親族の支弁状況等から判断して,申請人が扶養義務を果たしていると評価できる場合には,親族が生活保護を受給していても永住ビザが許可されています。

4.素行について

定住者ビザで在留している方は,幼少の頃から日本に住んでいる,あるいは日本で生まれたという方が多い傾向にあります。そういった方は,同じ国の出身者で形成されたコミュニティー内で生活していることが多く,薬物事犯や強暴事犯などの犯罪に巻き込まれやすい環境にあります。

もしも刑罰法規に触れる行為を行った場合,刑罰を受けてから5年(執行猶予付判決を受けた場合は,執行猶予期間を満了してから5年)は永住が許可されないことになっています。
犯罪歴がある場合にはその時期や刑罰内容にも注意して,永住ビザの申請時期を検討する必要があります。

5.定住者ビザからの永住ビザ申請のポイントのまとめ

冒頭に述べたように,定住者ビザは特別な理由を考慮して日本での居住を認めるのが相当な外国人を受け入れるために設けられたもので,日本と所縁の深い方に与えられています。そのため,日本に長く住みたいと考えておられる方がほとんどではないでしょうか。

本ページでは,定住者ビザからの永住ビザ申請のポイントを中心に見てまいりました。
いかがでしたでしょうか。

行政書士法人第一綜合事務所では,定住者ビザの方が安心して日本で暮らすことができるように永住ビザ申請をサポートしております。
永住ビザ取得をご検討の際には,ご遠慮なくご相談ください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 德永 武道

・日本行政書士会連合会(登録番号第23082840号)
・東京都行政書士会(会員番号第14958号)
千葉県出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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