仲野 翔悟

特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)の内容と変更点

特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)の内容と変更点

2022年5月31日に,新型コロナウイルスの影響で帰国困難となっていた外国人などを対象に発給されている特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)の内容について,大きなルール変更が発表されました。
本記事では,特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)を取得するための内容や,発表された変更点などを分かりやすく解説しておりますので,ぜひ最後までご一読下さい。

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1. 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)とは

特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)とは,新型コロナウイルスの影響で,元々保持していたビザの期限内に帰国困難な外国人や,受入れ機関が倒産したなどの理由で解雇された外国人を対象に発給されているビザです。

なお,「特定活動ビザ」とは新型コロナウイルスの影響を受けた外国人を救済するためだけのビザではなく,現行あるビザでは対応できない活動に対して,法務大臣の権限で発給することができるビザです。

そのため,今回は新型コロナウイルスの影響を受けて帰国困難などに直面している外国人を救済する目的で特定活動ビザが使われていますが,実際には本記事で紹介する事例以外でも,さまざまな用途で特定活動ビザが使われています。

2. 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)の変更点

特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)は,外国人の往来が実質的に再開されている現在においても,帰国困難な合理的な理由が説明できれば,入管での審査を経てビザを取得することができます。

これまでは,ビザ申請の際に提出された帰国が困難である理由書などの資料から,各入管にてビザ発給の可否が判断されていました。
そのため,同じ条件下の外国人でも,管轄の入管や審査を担当する審査官によって,ビザ申請の審査結果が異なるような事例も散見されました。

一方で,今回の発表により,今後の特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)の発給に関わるルールが明確にされました。

まずは,今回発表された変更点について解説して行きます。

なお,本記事では特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)と併せて,多くの帰国困難な外国人が取得をしている「短期滞在ビザ」についてもご紹介します。

2-1.対象者

新たな発表では,現在,特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援),短期滞在ビザで在留している外国人または2022年11月1日までに現在保持しているビザの期限が満了する外国人に限り,今後の特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援),短期滞在ビザへの変更や更新が認められることになりました。

2-2.許可される在留期間と変更・更新の可否

今後,許可される在留期間や変更・更新の可否は,ビザ申請する外国人のビザの状況によって,次の➀~➂の何れかのルールに則り決定されます。

➀現在保持している特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザの在留期限が6月29日までの外国人

特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザで在留している外国人で,在留期限が6月29日までの外国人は,下記のルールでビザの更新が認められます。

現在のビザ 更新で取得できる在留期間
特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援) 4ヶ月
短期滞在ビザ 90日

なお,ビザ更新をした後も,引き続き帰国困難な状況が認められることで,再度のビザ更新が認められる可能性がありますが,その際には6月30日以降の更新として②の取扱いになりますので、再度のビザ更新は「今回限り」のものになり、それ以降の更新は認められません。

②現在保持している特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザの在留期限が6月30日以降の外国人

特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザで在留している外国人で,在留期限が6月30日以降の外国人は,下記のルールでビザ更新が認められます。

現在のビザ 更新で取得できる在留期間
特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援) 4ヶ月
短期滞在ビザ 90日

なお,ビザ更新が認められるのは「今回限り」とされているため,ビザ更新をした後は在留期限が満了する前に,母国へ帰国する必要があります。

➂新たに特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザの取得を希望する外国人
特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)または短期滞在ビザ以外のビザで在留する外国人で,11月1日までに在留期限を迎える外国人については,下記のルールでビザの取得が認められます。

希望するビザ 取得できる在留期間
特定活動ビザ(帰国困難) 4ヶ月
特定活動ビザ(雇用維持支援) 最大1年
短期滞在ビザ 90日

なお,いずれのビザを取得した場合も,ビザ更新をすることは認められません。

3. 特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)の内容と必要書類

特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)と短期滞在ビザの内容や,申請時の必要書類について紹介します。

3-1.特定活動ビザ(帰国困難)

〇内容

母国への帰国困難な外国人や技能検定の受験ができない技能実習生などを対象に,特定活動ビザ(帰国困難)が発給されています。

許可される在留期間は最大で4ヶ月ですが,外国人の状況によって「就労可」と「就労不可」のビザを申請することができます。

「特定活動ビザ(帰国困難)就労可」のビザを取得した場合は,フルタイムでの就労が認められますが,就労場所は特定活動ビザ(帰国困難)の許可を取得した受入れ機関のみに限られます。
ただし、元留学生については,風俗業での従事を除き就労場所の限定はありませんが,週28時間以内のアルバイトのみが認められます。

「特定活動ビザ(帰国困難)就労不可」の取得をした場合は,資格外活動許可を取得することで,週28時間以内の風俗業以外でのアルバイトが認められます。

〇必要書類

ビザ申請時の必要書類は,申請する外国人の状況により次の通り異なります。

技能実習と同じ業務に従事する場合

受入れ機関の変更なし

  • 在留資格変更許可申請書(ビザ変更の場合)
  • 在留期間更新許可申請書(ビザ更新の場合)
  • 帰国困難な理由がわかる資料
  • 監理団体が作成した理由書(企業単独型の場合は受入れ機関が作成)
  • 確認書(上記②または③に該当する場合)

参照:出入国在留管理庁(各申請手続の必要書類)

受入れ機関変更

  • 在留資格変更許可申請書(ビザ変更の場合)
  • 在留期間更新許可申請書(ビザ更新の場合)
  • 帰国困難な理由がわかる資料
  • 雇用契約書の写し
  • 雇用条件書の写し
  • 監理団体が作成した理由書(企業単独型の場合は受入れ機関が作成)
  • 確認書(上記②または③に該当する場合)

参照:出入国在留管理庁(各申請手続の必要書類)

技能実習の関連業務に従事する場合

受入れ機関の変更なし

  • 在留資格変更許可申請書(ビザ変更の場合)
  • 在留期間更新許可申請書(ビザ更新の場合)
  • 帰国困難な理由がわかる資料
  • 監理団体が作成した理由書(企業単独型の場合は受入れ機関が作成)
  • 確認書(上記②または③に該当する場合)

参照:出入国在留管理庁(各申請手続の必要書類)

受入れ機関変更

  • 在留資格変更許可申請書(ビザ変更の場合)
  • 在留期間更新許可申請書(ビザ更新の場合)
  • 帰国困難な理由がわかる資料
  • 雇用契約書の写し
  • 雇用条件書の写し
  • 監理団体が作成した理由書(企業単独型の場合は受入れ機関が作成)
  • 確認書(上記②または③に該当する場合)

参照:出入国在留管理庁(各申請手続の必要書類)

〇注意点

監理団体または受入れ機関が作成する理由書については,入管のホームページにて,雇用される外国人の状況に応じた理由書の記載例が公開されているため,理由書を作成する前に必ず確認することをお勧めします。

また,受入れ機関が変更となる場合には,新たな受入れ機関と締結した「雇用契約書と雇用条件書の写し」もビザ申請時に必要になる点について注意して下さい。

3-2.特定活動ビザ(雇用維持支援)

〇内容

新型コロナウイルスの影響による解雇などにより,技能実習継続が困難となった外国人や特定技能外国人を救済するため,特定技能12分野で一定の要件の下,就労を認めるビザです。

特定活動ビザ(雇用維持支援)を初めて取得する外国人には,最大で1年間の在留期間が付与され,更新時には4ヶ月の在留期間が認められます。

また,特定技能12分野の中の「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」にて就職するためにビザ申請をする外国人は,この分野にて技能実習2号を良好に修了している外国人に限られます。

〇必要書類

  • 在留資格変更許可申請書(ビザ変更の場合)
  • 在留期間更新許可申請書(ビザ更新の場合)
  • 受入れ機関が作成した説明書
  • 雇用契約書の写し
  • 雇用条件書の写し
  • 受入れ機関が説明した賃金の支払いに関する書面
  • 従前の監理団体等が作成した技能実習生の現況に関する説明書(元技能実習生のみ提出)
  • 確認書(上記②または③に該当する場合)

参照:出入国在留管理庁(雇用維持支援)

〇注意点

元技能実習生が特定活動ビザ(雇用維持支援)を申請する場合,「従前の監理団体等が作成した技能実習生の現況に関する説明書」の提出が必須となります。

この書類は技能実習中の監理団体が作成する書類であるため,転職前に前監理団体へ必ず作成依頼をする必要があります。

入管は提出された書類の内容などについて,前監理団体へ確認をするため,特定活動ビザ(雇用維持支援)を使っての同意なしの引き抜き行為などは認められません。

なお,会社都合での解雇を受けた外国人や帰国困難の外国人が対象のビザであるため,自己都合で退職した外国人は,特定活動ビザ(雇用維持支援)を取得するこができない点には注意が必要です。

3-3.短期滞在ビザ

〇内容

新型コロナウイルスの影響で帰国困難な外国人は,短期滞在ビザへの変更・更新も認められます。

また,「資格外活動許可」を取得することで,風俗業以外での週28時間以内の就労も認められます。

〇必要書類

  • 在留資格変更許可申請書(ビザ変更の場合)
  • 在留期間更新許可申請書(ビザ更新の場合)
  • 「短期滞在ビザ」への変更・更新を必要とする理由書
  • 確認書(上記②または③に該当する場合)

資格外活動許可

  • 資格外活動許可申請書
  • 帰国困難な理由がわかる資料
  • 理由書

参照:出入国在留管理庁(資格外活動)

〇注意点

短期滞在ビザは最大でも90日間の在留許可であるため,特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)の取得要件を満たす外国人があえて短期滞在ビザを取得する必要はありません。

4.まとめ:特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)の内容と変更点

本記事では,特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)や短期滞在ビザの内容,手続きの際の必要書類や変更点についてご紹介しました。

終了時期などが不明確であった特定活動ビザ(帰国困難・雇用維持支援)も今回の発表により,今後の運用についての具体的なルールが明確となりました。

今後の申請を予定している方は,本記事の内容を参考にしてビザ申請の予定を組むことをお勧めします。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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