仲野 翔悟

スリランカの二国間協定の誓約事項と受入れフロー

本記事では,日本とスリランカとの間で締結された二国間協定の内容や受入れフローについて紹介しています。
今後,スリランカ人を特定技能ビザで受入れする可能性のある方は,ぜひ一度ご確認ください。

1.特定技能の二国間協定とは

日本とスリランカの間の二国間協定は,特定技能制度でのそれぞれの国の役割を明確にして,制度の適正な運用や特定技能外国人の保護を目的としています。

2.両国の連絡窓口

二国間協定では,次の機関がそれぞれの政府の連絡窓口として定められています。

  • 日本
    法務省出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課
  • スリランカ
    通信・海外雇用・スポーツ省スリランカ海外雇用局求人課

3.二国間で共有される主な情報内容

二国間協定では,次の内容について情報共有されることが誓約されています。

  • 特定技能外国人やその家族からの金銭や財産管理
  • 契約不履行時の違約金などに関する契約有無
  • 人権侵害に関する事項
  • 特定技能ビザ取得時の不正な手続き
  • 不当な手数料の徴収

二国間協定では,特定技能制度の適正な運用に必要または有益な情報を共有することが定められています。

共有される情報の内容からも分かるように,特に求人・求職に関わる仲介機関の不正を防止する内容の情報共有がなされます。

4.二国間で協議される主な内容

二国間協定で,定められている協議内容は次の通りです。

  • 二国間の政策実施・変更に関する事項
  • 仲介機関の適正に関する事項
  • 受入れ機関や送出し機関に関する事項
  • 技能・日本語試験に関する事項

二国間協定では,特定技能制度の適正な運用実現のために,上記の内容について定期または随時協議を行うことが誓約されています。

特定技能制度の運用にあたり,問題となる事象などがあれば,協定内容も随時更新される可能性があります。

5.二国間の特定技能試験に関する誓約

二国間協定では,特定技能試験に関する事項も次の通り誓約されています。

  • 日本政府からの要請に可能な限り対応
  • 技能・日本語試験の不正を防止・情報共有

〇日本政府からの要請に可能な限り対応
スリランカで実施される特定技能の技能試験や日本語試験の実施などに関して,協力を要請された場合はそれに応じることが誓約されています。

〇技能・日本語試験の不正を防止・情報共有
実施した試験に関して,替え玉受験や合格証の偽装などが発覚した場合は,両国間で迅速に情報共有することが誓約されています。

6.特定技能外国人の受入れフロー(呼び寄せ)

スリランカから特定技能外国人を呼び寄せする際の,受入れフローは次の通りです。

①採用する人材の選定
②雇用契約の締結
③特定技能ビザの取得
④在スリランカ日本大使館での手続き
⑤海外労働者登録
⑥出国前オリエンテーション受講
⑦日本へ入国・就労開始

①採用する人材の選定
特定技能の要件を満たし候補者の中から人材の選定を行います。
スリランカ政府の取り決めでは,送出し機関の仲介は必須とされていないため,受入れ機関が直接,スリランカにいる人材の採用を行うことも認められます。

②雇用契約の締結
採用する人材が決定した後に,雇用契約の締結を行います。
なお,この段階にて特定技能制度で実施義務のある事前ガイダンスも実施しますが,特定技能外国人が海外にいる場合は,ビデオ電話などを使っての実施も認められています。

③特定技能ビザの取得
事前ガイダンスや健康診断の実施などを終えて,特定技能ビザを申請する準備が整った段階で,入管へ特定技能ビザの申請を行います。

なお,特定技能ビザ申請の際に提出する健康診断結果の有効期限は,受診日より3ヶ月であるため,再受診とならないように,健康診断受診の段取りをする必要があります。

④在スリランカ日本大使館での手続き
日本で発行された特定技能ビザの原本を郵送で受け取りした後に,在スリランカ日本大使館にて,日本へ入国するための正式な特定技能ビザ発行の手続きをします。

⑤海外労働者登録
全ての必要手続きを終えた特定技能外国人は,出国前にスリランカ海外雇用促進·市場多様化担当国務省海外雇用局(SLBFE)に対して,海外労働者登録を行います。

なお,海外労働者登録については,オンラインで実施することができます。

⑥出国前オリエンテーション受講
特定技能外国人として日本へ渡航する全てのスリランカ人は,出国前オリエンテーションを受講する必要があります。

出国前オリエンテーションは,2日ほどで終えることができる内容となっています。

特定技能制度で実施義務のある生活オリエンテーションと混同される場合もありますが,出国前オリエンテーションはスリランカ政府が独自で実施する講習である点には注意して下さい。

⑦日本へ入国・就労開始
全ての必要手続きやオリエンテーションを終えたら,日本へ入国することができます。

入国の際に,空港にて特定技能ビザ(在留カード)が発行され次第,特定技能外国人としての就労を開始することが認められます。

7.特定技能外国人の受入れフロー(日本にいるスリランカ人)

既に日本にいるスリランカ人を受入れする際の,受入れフローは次の通りです。

①採用する人材の選定
②雇用契約の締結
③特定技能ビザの取得
④就労開始
⑤海外労働登録

①採用する人材の選定
日本国内にいるスリランカ人の中から,採用する人材の選定を行います。

現状,特定技能外国人の多くは「特定技能2号を良好に修了」の要件を満たして特定技能ビザの取得をする場合が多いです。

他方で,留学やその他のビザで日本に在留している外国人でも,特定技能外国人として就労する予定がある職種の特定技能の技能試験や,日本語試験に合格することで特定技能ビザの取得要件を満たすことができます。

②雇用契約の締結
採用が決定した人材と雇用条件などについて,母国語で確認をした上で雇用契約の締結をします。

③特定技能ビザの取得
特定技能ビザの申請に必要な書類が全て揃った段階で,入管へ特定技能ビザの申請を行います。

国内にいる外国人が特定技能ビザの申請を行う場合は,役所からの納税関係書類や前職の源泉徴収票に加えて,健康診断なども必要であるため早めの事前準備が肝要です。

④就労開始
無事に特定技能ビザの取得をした外国人は,特定技能ビザの取得日当日より特定技能外国人としての就労を開始することができます。

特定技能ビザの取得前に,就労を開始してしまうと不法就労となる点には,注意して下さい。

⑤海外労働登録
日本国内で特定技能ビザを取得したスリランカ人は,SLBFEのオンラインシステムを使って海外労働者登録を済ませる必要があります。

8.まとめ:スリランカの二国間協定の誓約事項と受入れフロー

本記事では,二国間協定の内容やスリランカ人を受入れする際の手続きフローを中心にご紹介しました。

特定技能外国人としては,現状はマイナーなスリランカ人ですが,スリランカ国内の経済状況の悪化などを背景として,今後は日本での就労希望者が増えていくと予想されます。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 仲野 翔悟

・日本行政書士会連合会(登録番号第23260654号)
・大阪府行政書士会(会員番号第8637号)
大阪府出身。大阪オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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