就労資格証明書とは?メリットやデメリット,注意点などを解説
就労資格証明書交付申請という言葉を耳にされたことはありますか?
就労資格証明書は必ず必要なものではありませんが,取得することで不意打ちのビザ申請不許可を回避できるなどのメリットが多々あります。
また,就労資格証明書を取得するメリットは,外国人側だけではなく不意打ちの欠員防止にも寄与するため,雇用主である企業側にもあります。
この記事では,就労資格証明書を取得するメリットやデメリット,就労資格証明書申請の注意点や申請ポイントについて解説します。
最後まで読んでいただくことで,就労資格証明書に関する疑問は一通り解決できるかと思いますので,是非ご一読してみてください。
Index
1. 就労資格証明書とは
就労資格証明書は,入管法第19条の2により,以下のように定められています。
就労資格証明書とは,現に保有する在留資格で定められた活動内容と,実際に行っている(もしくは行う予定である)活動内容を比較し,法律の範囲内かどうかを証明するためのものです。
そのため,働く外国人にとっては,入管法で定められた活動内容に合致していることを確認することができます。
他方で,外国人材を雇用する企業にとっても,入管法の範囲内の活動内容であると入管が認めてくれたことになりますので,安心して外国人材を雇用することができます。
2. 就労資格証明書を取得するメリット
就労資格証明書交付申請は,必ず申請しなければならないわけではありません。
つまり,申請義務があるわけではないのです。
しかし,就労資格証明書を取得することで,さまざまなメリットを享受することができます。
本チャプターでは,就労資格証明書を取得するメリットについて解説していきます。
①在留期間更新時の不許可を防げる
就労資格証明書を取得することで,ビザ更新がしやすくなります。
なぜなら,就労資格証明書を取得することによって,新たな勤務先での業務内容は入管法に合致すると入管がお墨付きを与えてくれたことになるからです。
ただし,新たな勤務先での業務内容に問題はなくても,他に法律違反があったり,税金等の滞納があればビザ更新が認められないこともあり得ます。
そのため,就労資格証明書の取得は,あくまで事前に就労資格があることを入管に確認し,証明するものとご理解ください。
②安心して転職ができる
就労資格証明書を取得することで,安心して転職ができます。
なぜなら,就労資格証明書を取得することよって,転職先での業務が問題ないと証明されるためです。
そのため,外国人側の転職だけではなく,雇用主側も安心して転職する外国人材を受け入れることができます。
③不法就労者の雇用を防止できる
就労資格証明書を取得することは,外国人側だけでなく,雇用主である会社側にもメリットをもたらします。
それが,不法就労者の雇用の防止です。
たとえ故意ではなかったとしても,不法就労者の雇用をしてしまうと「不法就労助長罪」に該当し,「3年以下の懲役,300万円以下の罰金,またはその併科」という重大な罰則が科せられる可能性があります。
不法就労助長罪については,知らなかったでは通用しない不法就労助長罪とは? で詳細を記載していますのでご覧ください。
就労資格証明書を取得することで,全ての不法就労を未然に防げるわけではありませんが,有効な手段の一つであることに変わりはありません。
外国人材を雇用する企業には,就労資格証明書の取得を奨励したいところです。
3. 就労資格証明書を取得するデメリット
上記では就労資格証明書の取得についてのメリットを解説してきました。
本チャプターでは,就労資格証明書の取得に対するデメリットについて解説します。
①申請が難しく,かつ手間がかかる
就労資格証明書は,申請の準備をしっかり行う必要があり、また申請難易度は比較的高い申請の一つです。
場合によっては、転職前と転職先の企業から書類を集める場合もあるため、手間がかかるケースもあります。
また,就労資格証明書交付申請は,業務内容が入管法上問題ないか明らかにする申請であるため,入管法の正確な知識が求められる申請です。
②就労資格証明書の交付までに時間が掛かる
就労資格証明書は,申請から交付までに時間がかかります。
実務上では、申請から約1ヶ月程度の時間を要することがほとんどです。
そのため,勤務先での業務内容について入管からお墨付きをもらうまでは,少し時間が掛かってしまいます。
4. 就労資格証明書に関する注意点
就労資格証明書に関しては,以下の2点について注意してください。
①在留期限が迫っている場合には就労資格証明書交付申請ができない
先述のとおり,就労資格証明書の取得には時間がかかります。
そのため,在留期限が迫っている場合,就労資格証明書を申請しても,先に在留期間の更新許可が出てしまうことがあります。
こうなると,「事前に」業務内容を確認するという就労資格証明書の意味はなくなります。
このような事態を避けるためには,業務内容が変更することがわかった段階で,早めに就労資格証明書の申請をすることが肝要です。
②就労資格証明書を外国人側が提出しないことを理由に不当な扱いをしてはいけない
就労資格証明書は,確かに提出してもらうことで外国人材を雇用する企業としては安心できます。
しかし,上記で記載したとおり就労資格証明書の取得は必須ではありません。
そのため,外国人側が就労資格証明書を提出しないことを理由に不当な扱いをしてはいけません。
このことは,入管法19条の2第2項にて以下のように定められています。
5. 就労資格証明書の交付申請について
就労資格証明書交付申請にあたっては,審査基準や必要書類等を押さえておく必要があります。
では,それぞれについて見ていきましょう。
①就労資格証明書交付申請の審査ポイント
就労資格証明書の審査基準は,以下のように定められています。
要するに,新たな勤務先での業務が問題ないことが要求されています。
②申請者としての資格がある人
就労資格証明書の申請者としての資格がある人は,以下のとおりです。
- 本人
- 申請の取次の承認を受けている次の者で,申請人から依頼を受けたもの
- 地方入国管理局長に届け出た弁護士又は行政書士で,申請人から依頼を受けたもの
- 申請人本人の法定代理人
1.申請人が経営している機関又は雇用されている機関の職員
2.申請人が研修又は教育を受けている機関の職員
3.外国人が行う技能,技術又は知識を習得する活動の監理を行う団体の職員
4.外国人の円滑な受け入れを図ることを目的とする公益法人の職員
③就労資格証明書交付申請の必要書類
就労資格証明書交付申請の必要書類は,以下のとおりです。
なお,必要書類はあくまで一例ですので,状況によって他の書類が必要となるケースがあります。
- 在留カード
- 旅券
- 履歴書
- 源泉徴収票
- 転職先の会社謄本
- 直近の決算報告書
- 外国人社員リスト
- 雇用契約書
- 雇用理由書
④就労資格証明書の申請先
就労資格証明書申請書類の申請先は,居住地域を管轄している地方出入国在留管理局です。
ちなみに,就労資格証明書の申請はオンラインによる電子申請も可能です。
⑤申請手数料
就労資格証明書の申請手数料は,1200円です。
なお,納付方法は手数料納付書に収入印紙を貼付する方法で行います。
⑥交付時期
就労資格証明書の交付は,申請からおよそ1~3ヶ月程度かかります。
そのため,在留期限が迫ってきている人は、審査期間を考慮して申請する必要があります。
⑦就労資格証明書の現物
実際の就労資格証明書をご覧ください。
6. まとめ:就労資格証明書とは?メリットやデメリット,注意点などを解説
就労資格証明書を取得することで,様々なメリットがあることはご理解いただけたでしょうか。
就労資格証明書は,転職した際に業務内容が変わる場合にはとても有益です。
就労資格証明書の申請をおこなうためには,入管法の正確な知識が必要になるというハードルはありますが,それよりも取得するメリットの方が大きいです。
また,就労資格証明書を取得しないことによるリスクもあるため,在留期間に余裕がある場合には取得することをお勧めします。
この記事を簡単にまとめると,
- 就労資格証明書を取得するメリットは大きい
- 就労資格証明書交付申請の難易度は高い
- 就労資格証明書を取得するまでにはある程度時間がかかる
- 就労資格証明書交付申請はオンラインでも可能
- 就労資格証明書は必ず取得しなければならないわけではない
- 転職して業務内容が変わる場合には就労資格証明書の取得がお勧め
就労資格証明書の取得にご不安がある場合は,行政書士法人第一綜合事務所までお気軽にお問い合わせください。
就労資格証明書を取得すべきかどうかという点を含め,ご相談いただくことが可能です。