永住権とは?日本での取得条件・メリット・デメリットを徹底解説
永住ビザは,在留期間や在留活動の制限なしに日本に在留し続けることができる在留資格です。
日本に在留する外国人の多くは,将来永住ビザを取得したいと考えているかと思います。
しかし,多くの方は,永住ビザを取得した場合のメリットを正しく理解できていないのではないでしょうか。
そこで,本ページでは,永住ビザのメリット,そしてデメリットについてもご説明いたします。
Index
1.永住ビザとは
永住ビザは,在留期間や在留活動の制限なしに日本に在留し続けることができる在留資格です。
永住ビザを取得するためには,入管で「永住許可申請」を行い,法務大臣の許可を得る必要があります。
日本で安定した生活を送りたい外国人のみなさんにとっては魅力的な制度ですが,誰でも簡単に取得できるわけではありません。出入国在留管理庁の統計データによると,2023年の永住ビザ許可率は66%で,申請しても3人に1人は不許可になっています。
日本での永住権を与えるかどうかを決める重要な手続きなので,通常のビザ申請とは違う様々な要件があり,審査も入念に行われます。永住ビザを取得したいと考えている方は,しっかりと準備をしたうえで申請に臨みましょう。
2.永住ビザを取得するメリット
永住ビザは,在留資格の中で最も取得するのが難しいビザです。
しかしながら,取得するメリットが数多くあります。
以下は,永住ビザを取得するメリットになります。
(1)ビザ更新からの解放
在留期間の更新申請から解放されることが,永住ビザの最大のメリットに挙げられます。
在留資格にはそれぞれに在留期間が定められており,最長で5年とされています。
ビザが満了した場合にはビザの更新が必要ですが,更新や変更しなかった場合には帰国を選ばなければなりません。
永住ビザ(正確には在留資格「永住者」)も在留資格の一種ですが,永住ビザの在留期間は無期限とされています。
そのため,永住ビザを取得すれば,在留期間の更新申請を今後行う必要はなくなり,在留期限を気にする必要もなくなります。
外国人にとって,ビザは命の次に大切なものと言われており,ビザ更新の度に不安に駆られるものです。永住ビザを取得して,ビザ更新の不安から解放されることは,最大のメリットと言えるのではないでしょうか。
(2)活動制限がなくなる
在留資格にはそれぞれに活動内容が定められており,その活動を継続していなければなりません。
定められた活動を一定期間行っていない場合は,在留資格を取り消される可能性があります。
この場合,他の在留資格に変更する必要があり,変更できない場合は帰国を余儀なくされます。
就労系の在留資格は,日本で就労活動をするためのものです。現在の会社を退職した場合,すぐに次の転職先を探す必要があります。一定期間以上,仕事をしていない期間があると,在留資格の取り消し対象となります。
配偶者と配偶者系の在留資格は,離婚又は死別などで配偶者ではなくなった場合,再婚して配偶者となるか,他の在留資格に変更する必要があります。どちらもできない場合は,帰国するしかありません。
永住ビザには,このような活動制限がありません。
つまり,永住ビザを取得すれば,状況の変化が起こっても在留資格を変更する必要がありません。仕事内容を気にせずに転職先を自由に選べますし,離婚しても永住ビザが取り消されることもありません。
日本での活動制限がなくなることで,これからの人生の選択肢が大きく広がることになります。
(3)永住ビザを持っていると在留特別許可が認められやすくなる
あまり知られていませんが,永住ビザをお持ちの方は,在留特別許可が認められやすくなります。
在留特別許可とは,犯罪等により退去強制事由に該当する場合,本来は日本を退去されるべきではあるものの,法務大臣の裁決により特別に在留を認めるものです。
永住ビザを取得している場合は,在留特別許可を下すべきかどうかの場面において有利な事情として斟酌されます。
(法務大臣の裁決の特例)法務大臣は、前条第三項の裁決に当たって、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該容疑者が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。
一 永住許可を受けているとき。
ニ かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
三 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
四 その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
2 前項の場合には、法務大臣は、法務省令で定めるところにより、在留期間その他必要と認める条件を附することができる。
3 第一項の許可は、前条第四項の適用については、異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす。
永住ビザを既に取得しているという事実自体が,日本に高い定着性があるということを意味し,引き続き在留を認める必要性があるという評価になるためです。
万が一,法に触れるような行為を行ってしまった場合にも,永住ビザを取得していれば,強制的に退去させられる可能性を下げることができると言えるでしょう。
(4)社会的な信用度が向上する
永住ビザを取得するためには,厳しい審査に通らなければなりません。
そのため,永住ビザを取得すれば,社会的な信用度も上がることになります。
社会的な信用度が増すことにより,就職や転職が有利になります。
また,不動産の賃貸も他の在留資格よりも容易に契約することができます。
さらに,外国人には難しい住宅ローンや銀行の融資なども日本人と同等の審査が受けられます。
3.永住ビザを取得するデメリット
永住ビザを取得することによるデメリットはほとんどありませんが,以下のようなデメリットが考えられます。
(1)高度専門職ビザの優遇措置がなくなる
高度専門職ビザには,条件を満たした場合に親の帯同や家事使用人の帯同が認められるなどの優遇措置があります。
高度専門職ビザ | 永住ビザ | |
親の帯同 | ○できる | ×できない |
家事使用人の帯同 | ○できる | ×できない |
永住ビザに変更した場合には,この高度専門職ビザの優遇措置が認められなくなります。
(2)外国籍であることは変わらない
永住ビザを取得すれば日本に永住することはできますが,国籍は外国のままで変わりません。
そのため,日本での参政権など日本国民以外には認められない権利があります。
日本人と同等の権利を保有するためには,帰化をして日本国籍を取得するしかありません。
4.永住ビザと帰化との比較
ご相談の中には,帰化と永住のどちらが良いか,という質問をよく受けます。
そこで,簡単に帰化と永住の違いを説明しましょう。
(1)帰化のメリット
帰化は日本国籍を取得することを意味します。
日本国籍を取得するという事は,日本人になることと同じですので,法律上も外国人とは扱われません。仕事は自由に選べますし,離婚しても帰国しなければならないなんてことは当然ありません。
刑罰法規に触れる罪を犯したとしても,国外追放なんてことは絶対にありえません。
また,日本人ですので,日本のパスポートを取得できます。
日本は69の国・地域とビザ免除協定を結んでおり,協定国に観光で旅行に行く際には,ビザを取得する必要がありません。
それに加えて,日本のパスポートは世界一信頼できる公文書と言われており,海外に行く際には大きな信用になります。海外によく行く方は,この点をメリットと感じていただけるかもしれませんね。
ここまでの話を聞くと,帰化の方が良いようにも思えます。
しかし,帰化にもデメリットとなる部分はあります。
(2)帰化のデメリット
日本は帰化による二重国籍を認めていませんので,帰化する際には出身国の国籍を放棄しなければなりません。
出身国からすれば外国人という扱いになりますので,日本と査証免除協定を結んでいる国でない限り,出身国に帰省するたびにビザを取得しなければならないこともあり得ます。
一方で永住ビザは,国籍を変えるわけではありませんので,日本法上はあくまで外国人として扱われます。
日本で外国人として扱われることによるデメリットはもちろんありますが,国籍は変わりませんので,出身国に帰省する際にビザを取得するようなことにはなりません。
帰化と永住ビザ,それぞれ異なる観点からメリットがあります。国籍を変えるかどうかという選択はアイデンティティに関わる重要なことですので,よく考えて選択してください。
>>帰化申請 条件 はコチラ
5.永住ビザの取得要件
永住ビザの取得要件は,大きく分けて3つあります。
【永住ビザの3つの要件】
①素行善良要件
②独立生計要件
③国益適合要件
それぞれ見ていきましょう。
(1)素行善良要件
「素行善良要件」とは,法律を守って人に迷惑をかけずに生活していることを指します。
- 日本の法律に違反して,刑事罰を受けていない。
- 日本で交通違反を繰り返していない。
- 留学ビザや家族滞在ビザの方がアルバイトする場合,オーバーワークしていないこと。
これ以外にも様々考えられますが,実務上はケースバイケースで判断されるため,明確な基準は存在しません。
素行善良要件については,日常生活で法律に違反するような行動をしていなければ,心配する必要はありません。
(2)独立生計要件
「独立生計要件」とは,自立して生活することができる能力があることを指します。
具体的には,どれぐらいの年収があるのか?ということです。原則的要件では,直近5年分の年収がチェックされます。
年収額について入管では明確な基準は公表していませんが,実務上ではボーダーラインがあります。
- 2人世帯:300万円以上
- 3人世帯:350万円以上
- 4人世帯:400万円以上
あくまで実務上のボーダーラインなので,この金額を1円でも下回ったら許可にならないというわけではありません。
他に大きなマイナス要素がなければ,近い金額でも許可が取れているケースもあります。
(3)国益適合要件
「国益適合要件」とは,永住を認めることが日本国にとってプラスになることを指します。
入管法では4つの基準が定められています。それぞれ見てみましょう。
①原則として引き続き10年以上本邦に在留していること
「引き続き」とは,途切れることなく継続して在留していることを意味します。また,10年のうち直近5年間は,就労資格(技術・人文知識・国際業務ビザなど)または居住資格(配偶者ビザなど)で在留している必要があります。
②罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務を適正に履行していること。
「公的義務」とは,税金や公的年金など保険料の納付だけでなく,入管法で規定されている届出なども含まれます。
③現に有している在留資格について,入管法に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
入管法上では「5年」のビザが最長になりますが,当面の間は「3年」のビザでも,「最長の在留期間」として扱うことになっています。
④公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
これは,感染症や薬物依存症でないことを意味します。
永住ビザの要件については,別コラムでも詳しく解説していますのでぜひお読みください。
>>永住ビザ 要件 はコチラ
6.永住ビザの申請手続き
ここからは,永住ビザの申請手続きについて解説します。
(1)必要書類
申請に必要な書類は,出入国在留管理庁のホームページでも公開されています。
ここでは,就労系ビザ「技術・人文知識・国際業務」から申請する場合ものを紹介します。
- 永住許可申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- 理由書
- 世帯全員分の住民票
- 在職証明書
- 住民税の課税証明書(直近5年分)
- 住民税の納税証明書(直近5年分)
- 国税の納税証明書「その3」
- 公的年金の保険料の納付状況を証明する資料(直近2年分)
- 健康保険証のコピー
- 保有資産を証明する資料(預貯金通帳のコピーなど)
- 身元保証書
- 身元保証人の本人確認書類(運転免許証など)のコピー
- 在留カードとパスポートの原本提示
申請する方の家族構成,仕事内容,これまでの経歴によっては,上記以外にも提出したほうがよい書類もあります。
確実に許可を狙いたい方は,永住許可申請に精通した専門家に依頼することをおすすめします。
(2)申請窓口
永住ビザの申請は,ほかのビザ申請と同様に住民票がある住所地を管轄する入管へ申請します。
空いている入管を選んで申請する,といったことはできません。
(3)審査期間
入管が公表している標準処理期間では「4か月」となっていますが,実際は入管局によって期間に大きな差があります。
東京や大阪では2023年頃から長期化する傾向にあり,結果が出るまで1年以上かかっています。
(4)注意点
①住所地は実際に住んでいるところ
住所地は住民票で確認されますが,住民票は実際に住んでいるところで届出する義務があります。
引っ越しをしたのに住民票を移していないなど,現在実際に住んでいない住所で申請した場合,「公的義務を履行していない」ことになるので,永住許可は難しいでしょう。
②入管への届出を忘れずに
技術・人文知識・国際業務ビザなどでは,在留期間中に転職した場合に入管への届出が必要です。
この届出を忘れたまま永住申請してしまうと,「公的義務を履行していない」として不許可になる可能性が高まります。
うっかり忘れてしまっていても,申請前に届出をしておくことで「公的義務を履行しようとした」と判断してもらえます。
7.永住ビザのよくある質問
【A】いいえ。永住が不許可になっても,いま持っているビザには影響しません。
【A】更新手続きが必要です。永住申請をしても,現在のビザの在留期間は自動的に延長されません。
【A】永住許可後の転職がおすすめです。転職してすぐの永住申請は,「安定していない」という評価を受けやすいため,不許可になるリスクが高まります。ただし,会社の規模や年収が大幅にアップするキャリアップ転職であれば,マイナス評価にならない場合もあります。永住と転職で迷っている方は,ぜひ専門家にご相談ください。最適な時期をアドバイスできます。
8.永住ビザのメリットのまとめ
ここまで説明してきたように,永住ビザを取得することにより,様々なメリットがあります。
他にも,就労制限がなくなることから,企業側も雇用の際に業務内容を気にせずに雇入れることができる結果,転職がしやすくなります。
このように,永住ビザを取得すれば,法的にも実生活上も多くのメリットを享受することができます。
これからも日本で暮らしたいと考えている場合は,いち早く永住ビザを取得されることをお勧めします。
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