渡邉 直斗

【行政書士法改正】「報酬」規定を徹底解説!無資格業者が陥る「3つの違法類型」や「グレーゾーン」と対策

【行政書士法改正】「報酬」規定を徹底解説!無資格業者が陥る「3つの違法類型」や「グレーゾーン」と対策

自社サービスの一環として、顧客の代わりに行政機関への提出書類を作成・サポートしている経営者様や担当者様にとって影響のある行政書士法の改正がありました。
「うちの書類作成は無料のサービスだから、行政書士法違反(無資格営業)には当たらない」
そう安心していませんか?実はその解釈は、危険なリスクをはらんでいます。
というのも、令和7年通常国会において「行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)」(以下、「改正法」)が成立し、令和8年1月1日に施行されたためです。この法改正では、従来グレーゾーンとされてきた無資格者への制限規定が、より一層厳格に明文化されました。
本コラムでは、この改正法第19条第1項で追加された「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という部分 について、日本行政書士会連合会の見解を参考に解説します。無資格事業者が陥りやすい「報酬」に該当する3つの典型類型や、意外なグレーゾーン、そして解決策を紹介します。刑事罰の適用や社会的信用の失墜といった事業継続を揺るがす致命的なリスクを防ぐため、ぜひ貴社の事業モデルと照らし合わせてご確認ください。

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1.「報酬」規定の厳格化と理由

(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。

改正行政書士法第19条第1項において、資格を持たない者が他人の依頼を受けて「官公署に提出する書類」を作成すること(第一条の三で規定)は原則として禁止されています。この規制が適用されるには、「業として」かつ「報酬を得て」という2つの要件を満たす必要があります。

今回の法改正の背景と、それぞれの要件が実務上どう解釈されるのかを整理しておきましょう。「報酬を得て」の部分に関しては第2章以降で詳述します。

(1) ビジネスに組み込んだ時点で該当する「業として」とは

法的な解釈における「業として」とは、「反復継続して、または反復継続する意思を持って行為を行うこと」を指します。 「1回しかやっていないから業ではない」という論理は通用しません。自社のサービスメニューや規約に「書類作成をサポートします」と組み込んでいる時点で、それは「反復継続する意思がある」とみなされ、自動的に「業として」の要件を満たすことになります。

(2) 改正の背景:横行する「申請代行コンサル」への規制強化

近年の深刻な社会問題として、民間コンサルティング会社やITベンダーなどが「補助金申請代行」や「各種許認可の取得サポート」を謳い、実質的な書類作成を無資格で行うケースが多発していました。これに伴い、不適切な申請や高額な手数料トラブルが相次いだことが、今回の法改正の直接的な契機となっています。

こうした「抜け穴」を利用した違法ビジネスを根絶するため、今回の改正では条文内に「いかなる名目によるかを問わず」という文言が明記されるに至りました。これにより、行政や警察側は「名目(建前)ではなく、実態としてお金が動いているか」だけで違法性を判断できるようになりました。

2.「報酬」に該当する3つの典型類型

前提として、行政書士の独占業務は「建設業許可」「宅建業免許」「飲食店営業許可」などの許認可申請や、「補助金申請」に伴う事業計画書等の官公署提出書類が該当します。以下に改正法において違反とみなされる主な3つのパターンを解説します。

(1)手数料型

手数料型」は、事業者が顧客に代わって書類作成を行い、その対価として「書類作成料」とは明示せずに、「事務手数料」や「代行料」といった名目で費用を徴収するケースです。

(例)

  • 「申請書作成は無料ですが、事務手数料として1万円いただきます」
  • 「システム利用料(または代行料)として費用を頂戴します」

名目が何であれ、実質的に書類作成の対価として金銭を徴収していると判断されるため、明確な違法行為となります。

(2)本来業務対価一体型

本来業務対価一体型」に該当するのは、コンサルティング会社、不動産業者、設備機器業者などが、自社のメインサービスの一環として書類作成を行うケースです。
書類作成自体を「無償」と謳っていても、以下のような名目で金銭を受け取っていれば、業務全体の対価として「報酬を得て」いるとみなされます。

業種 受け取っている名目例 なぜ違法とみなされるか
コンサルティング会社 コンサルタント料、顧問料 顧問契約の中に書類作成業務が実質的に含まれているため
不動産業者 仲介手数料、業務委託費 仲介という本来業務と書類作成が一体化し、利益を得ているため
設備機器・工事業者 設置工事費、システム導入費 工事や導入の対価として実質的に書類作成費用が内包されているため

以上のような該当事業者は、顧客に対し、「官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成は、行政書士の法定独占業務なので所要の官公署提出書類その他権利義務・事実証明書類作成業務については、顧客自らが行政書士に依頼しなければならない」ということを説明する必要があります。

(3) 会費(サブスクリプション)型

会費(サブスクリプション)型」は、企業や事業者団体(商工会、協同組合など)が会員から依頼を受け、「会費」「組合費」「顧問料」などの名目で継続的に金銭を収受し、書類作成を行うケースです。

(例)
商工会などが毎月「会費」を徴収し、その会員に対するサービスとして建設業許可の更新申請書などを「無報酬」で反復継続して作成している場合

個別の書類作成費用を取っていなくても、会費がその対価(原資)となっているとみなされ、報酬を得ていると判断されます。

「(2)本来業務対価一体型」同様に、会員に対して「行政書士の法定独占業務なので会員自らが行政書士に依頼すべき」であることを説明しましょう。

3.見落としがち!実質的対価性が認められうる「グレーゾーン」

直接的なお金のやり取りがなく、一見すると「完全無報酬」に見えても、実質的な対価関係が認められる以下のような場合も該当し得ます。

(1)他サービスへの誘導・キックバック

無資格者が提供する「他の有償サービス」へ誘導する手段として無料の書類作成を行ったり、第三者の有償サービスへ顧客を誘導し、その見返りとして無資格者にキックバック(紹介料・マージンなど)が支払われたりする場合も、「報酬を得て」いると解釈される可能性が極めて高いです。

(2)金銭以外の「報酬」(物品や供応)

「報酬」は現金や振込に限定されません。書類作成の見返りとして、物品(高価な贈答品など)を受け取ったり、供応(飲食の接待など)を受けたりすることも、実質的な報酬に含むと考えられます。

(3)会員限定など資格要件を設けた無償対応

「顧問料や会費を支払って利用資格を得た者」にのみ、限定的に無償で書類作成を行う場合も要注意です。また、依頼者本人からではなく、第三者から何らかの形で得た金品が業務全体の対価とみなされる場合も該当すると考えられます。

4.非行政書士の第三者への丸投げは違法

ここまで「どのような名目で対価が発生すると違法になるか」を解説してきました。では、そもそも「書類作成としての対価は発生していない(完全無料のサービス)」という体裁にして、裏で無資格の事業者(民間コンサルタントや人材紹介会社など)が書類をすべて作成し、顧客にサインだけさせて提出する形はセーフなのでしょうか?

実はこれこそが、改正行政書士法の網にダイレクトに引っかかる違法行為です。
各種の許認可申請書や外国人の入管書類には、必ず「申請者本人」や「受入れ企業の代表者」が署名する欄があります。
ここで無資格の事業者がよく使う手口が、「書類の作成は全て代行するので、完成した書類にサインだけして提出してください。書類作成料は(個別には)もらいません。」というスキームです。

しかし、これは明確な行政書士法違反です。
原則として、申請書類は「サインする当事者(申請人本人や会社の担当従業員など)が自ら作成する」か「行政書士など国家資格を持つ者が適法に作成する」かの二択しかありません。行政書士ではない第三者に書類作成を丸投げし、さも「自社で作った」かのように偽ってサインして提出する行為は、実質的な非行政書士行為(無資格営業)にあたります。

ここで注意しなければならないのは、行政書士法違反(次章で解説する刑事罰)に問われるのは丸投げを「引き受けた」無資格業者だという点です。しかし、だからといって丸投げ「した」側の企業が無傷で済むわけではありません。
提出後に役所や入管の担当者から「この事業計画の根拠はどこか」などと突っ込んだ追及を受ければ、自社で作成していないことは一発で露呈します。

結果として、入管法や各種許認可の規定違反となり、「申請が不許可・取り消しになる」「コンプライアンス違反として会社の社会的信用を失う」といった、自社の事業継続を揺るがす致命的なペナルティを背負うのは、他ならぬ丸投げをした企業です。

5.行政書士法違反(無資格営業)となった場合のリスク

「バレなければ大丈夫」という認識で違法なスキームを続けていると、企業にとって取り返しのつかないダメージに繋がります。

リスクの種類 具体的な内容と影響
刑事罰 行為者と行為者を使用している法人両方に1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科される可能性があります(両罰規定)
信用失墜 摘発・報道されることにより、社会的信用が失墜します。取引先からの契約解除や、銀行等からの融資停止に直結します
損害賠償 作成した書類に不備があり、顧客が許認可を得られなかったり補助金を受け取れなかったりした場合など、損害賠償請求等のトラブルに発展する可能性があります

6.無資格事業者が適法にビジネスを展開するための解決策

令和7年に成立し、令和8年1月1日に施行された改正行政書士法により、「報酬を得て」の解釈はより厳格化されました。「手数料名目」「他サービスと一体化」「会費制」など、実質的な対価性があるビジネスモデルは、すべて厳しい違法リスク(刑事罰や両罰規定)を抱えています。では、コンサルタントや設備業者、会員制ビジネスを行う事業者が、顧客満足度を下げずに適法なサービスを提供するにはどうすればよいのでしょうか。以下の2つの方法が考えられるでしょう。

  1. 業務を明確に切り離し、顧客自身にすべて作成してもらう
  2. 行政書士との業務提携・法務顧問契約を結ぶ

顧客への付加価値を維持しつつ、コンプライアンスを100%遵守するためには、もちろん後者の「行政書士事務所へのアウトソーシング(業務提携)」が最も確実で安全な解決策です。速やかに対応可能な行政書士を探し、ビジネスモデルの適法化に着手しましょう。
早めのコンプライアンス対策が、貴社の信頼と大切な顧客を守ることにつながります。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 渡邉 直斗

・日本行政書士会連合会(登録番号第19260365号)
・大阪府行政書士会(会員番号第7712号)
兵庫県出身。大阪オフィス長として,大学や自治体,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請などの国際業務を専門としている。

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