行政書士法人第一綜合事務所

「短期滞在ビザ」の基礎知識と「日単位指定」法改正を行政書士が解説

「短期滞在ビザ」の基礎知識と「日単位指定」法改正を行政書士が解説

日本のグローバル化や観光立国への推進、さらには国際結婚の手続きや親族訪問など、さまざまな場面で利用されるのが「短期滞在ビザ」です。一般的には「観光ビザ」と呼ばれることも多いですが、実務上、このビザの仕組みや滞在期間のルールを正確に把握しておくことは非常に重要です。

さらに、2026年9月上旬には、短期滞在ビザの在留期間に関する重要な法改正(出入国管理及び難民認定法施行規則の一部改正)が施行されます。

本コラムでは、短期滞在ビザの基本的な仕組みをおさらいした上で、今回の法改正が今後の入国手続きや実務にどのような影響を与えるのか、国際業務専門の行政書士が分かりやすく解説します。

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1.そもそも「短期滞在ビザ」とは?

一般的に「観光ビザ」や「親族訪問ビザ」「ビジネス出張ビザ」などと呼ばれているものは、すべて法律上の正式名称である「短期滞在」という一つの在留資格に含まれています 。日本の入管法において「観光ビザ」という独立した資格は存在しません 。

短期滞在ビザの対象となる主な来日目的は以下の通りです。

  • 観光・保養・スポーツ: いわゆる一般的な観光旅行など
  • 親族訪問・知人訪問: 海外の家族や婚約者に会いに来る、冠婚葬祭への出席など
  • 短期の商用(ビジネス): 出張、商談、市場調査、アフターサービスなど

パスポートに「Temporary Visitor」とスタンプが押されている場合や、オンラインで申請する電子ビザシステム「JAPAN eVISA」を利用して入国した場合も、すべて法律上は一括して「短期滞在ビザ」として扱われます 。また、短期滞在ビザの対象者は「中長期在留者」から除外されるため、空港等で在留カードが交付されません
在留カードが交付されないことに伴い、短期滞在ビザの外国人は日本滞在中に「常にパスポートを携帯する義務」が課せられます。これを怠ると処罰の対象となるため、注意が必要です。

2.2026年9月施行:短期滞在ビザ「在留期間」の法改正内容

改正の概要
規則別表第2を改正し、短期滞在の在留資格に伴う在留期間を「90日、30日 又は15日(法務大臣が個々の外国人について90日を超えない範囲内で日を単位 とする期間を指定する場合にあつては、当該指定する期間)」に改める。

今回、e-Govで公開されたこちらのパブリックコメント(出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令案)により、2026年9月上旬に短期滞在ビザの在留期間の決定方法が大きく変わります。

これまでのルールと、法改正によって導入される新しいルールを比較してみてみましょう。

項目 改正前(従来の運用) 改正後(2026年9月上旬施行)
在留期間のパターン 原則として「15日」「30日」「90日」の3種類のみ 従来の期間に加え、「法務大臣が個々の外国人について90日を超えない範囲内で、日を単位とする期間を指定する」ことが可能に
期間の決まり方 画一的に「15日」「30日」「90日」のいずれかが付与される 来日目的や個別の事情に合わせて、「45日」「60日」など柔軟な日数が指定される

今回の規則改正(規則別表第2「短期滞在」の項の改正)により、一律の期間設定だけでなく「個々の外国人ごとに日単位で期間を指定できる仕組み」へと移行します。これは、より柔軟な出入国管理を行うための審査適正化の一環と言えます。

3.法改正がもたらす盲点と実務上の注意点

今回の「日単位での期間指定」が可能になる改正は、一見すると柔軟で便利に思えますが、実務においては非常にシビアなタイムリミット管理を迫られる盲点となります。

これまでのように「とりあえず一番長い90日をもらえるだろう」という安易な予測が通用しなくなるため、以下の2点に強く留意する必要があります。

注意点①:「特例期間」が適用されないリスクが高まる

日本に短期滞在ビザで入国した後に、別の在留資格(配偶者ビザや就労ビザなど)へ国内で変更申請を行う場合、審査中に在留期限が到来しても最長2ヶ月間は日本に滞在できる「特例期間」という救済制度があります 。

しかし、この特例期間は「短期滞在ビザの在留期間が30日以下」の場合には法律上、適用されません 。 もし今回の法改正により、個別の事情判断で「30日」や「25日」といった短い日数をピンポイントで指定されてしまった場合、国内での他ビザへの変更手続きは実質的に不可能となります 。

注意点②:管轄による運用の違い

今回の改正規則において「『法務大臣が』個々の外国人について~日を単位とする期間を指定する」と明記されている点は、実務上重要です。

海外の日本大使館や領事館(外務省の管轄)で事前に査証(ビザ)を申請・取得する段階においては、恐らく今後も従来通り「15日」「30日」「90日」という一律の枠組み(査証の種類)で発給される可能性が高いと推測されます。

本当に注意すべきなのは、日本の空港や港に到着した際の上陸審査(法務省・出入国在留管理庁の管轄)の段階です。査証免除国(ノービザ)での来日者はもちろん、事前に在外公館で「90日有効な査証」を取得して来日した外国人であっても、入国審査官(法務大臣の権限委任者)の判断によって、上陸許可時に「45日」や「60日」といった日単位の在留期間へと個別に絞り込まれて指定されるリスクが生じる点にあります。

注意点③:スケジュールが「中途半端な日数」になりやすい

入国時に「45日間」や「60日間」といった期間が指定された場合、入国後の活動(観光、商談、親族訪問等)や、その後の法的手続きをスケジュールする際、従来の30日・90日区切りよりもスケジュール設計が複雑になります。

入国した時点から1日単位での厳密なカウントダウンが始まるため、「書類が足りなくて再発行を待っていたら、あっという間に出国期限が来てしまった」というトラブルが多発することが懸念されます。

4.短期滞在ビザの取得ルートと来日後のビザ変更制限

短期滞在ビザは、中長期のビザ(就労ビザなど)とは異なり、「短期間での出国」を前提としているため、審査が比較的簡略化されています 。査証免除国(ノービザ対象国)の外国人であれば、事前に大使館へ行かなくてもパスポートだけで来日することができます 。

(1)ルート①:査証免除国(ノービザ対象国)の場合

アメリカ、イギリス、韓国、台湾、多くのヨーロッパ諸国など、日本政府が「査証免除」を行っている国・地域(2026年現在、約70カ国以上)のパートナーであれば、事前のビザ申請は不要です。

【ルート①の申請・入国フロー】

  1. 特別な手続きはせず、航空券の手配だけでそのまま日本へ出発する
  2. 日本の空港に到着後、パスポートを提示して入国審査(上陸審査)を受ける
    ※指紋と顔写真の提供(個人識別情報の提供)も必要です
  3. 審査をクリアすると、その場で「短期滞在」の在留資格(上陸許可)が付与される
    ※2026年9月以降は、この入国審査の場で入国審査官により「45日」や「12日」といった滞在予定に合わせた具体的な在留期間(日数)が個別に指定されます。

(2)ルート②:査証(ビザ)が必要な国の場合

中国、フィリピン、ベトナム、インドネシア、ロシアなど、査証免除国に該当しない国籍のパートナーを呼ぶ場合は、来日前に必ず海外現地にある「日本の大使館・領事館(在外公館)」でビザを申請し、取得しておく必要があります。

このルートでは、日本にいる関係者が「身元保証人」や「招聘人」となり、書類を準備して現地へ送る手続きが一般的です。

【ルート②の申請・入国フロー】

  1. 日本側での書類準備: 日本にいる関係者が、招へい理由書、身元保証書、滞在予定表、住民票、課税証明書などの必要書類を揃える
  2. 海外の申請人へ郵送: 揃えた書類を、海外の申請人本人へ国際郵便等で送る
  3. 現地の在外公館(または代理申請機関)へ申請: 申請人本人が現地で自分の書類(パスポートや写真)と、日本から届いた書類を合わせて、日本大使館等へ申請する
  4. ビザ(査証)の発給・来日: 審査(通常数日から数週間)に問題がなければ、パスポートにビザが発給され、日本へ渡航が可能になる
  5. 日本の空港に到着後、パスポート(事前に取得したビザがシール等で貼付・印字されたもの)を提示して入国審査(上陸審査)を受ける
    ※指紋と顔写真の提供(個人識別情報の提供)も必要です
  6. 審査をクリアすると、その場で「短期滞在」の在留資格(上陸許可)が付与される
    ※前述の通り、在外公館で「90日有効」などのビザを取得して来日した場合であっても、2026年9月以降は、この日本の空港での審査の場で、入国審査官の判断により「45日」や「60日」といった滞在日数が個別に絞り込まれて指定されるリスクがあります

なお、観光目的の短期滞在であれば、現在はスマートフォンの画面で電子ビザを提示して入国できる「JAPAN eVISA」の対象国も増えており、一部の国ではオンライン申請による手続きのデジタル化が進んでいます。

(3)来日後のビザ変更について

短期滞在ビザは手軽に取得できる反面、日本に入国した後に「やっぱり他のビザに切り替えてこのまま日本に残りたい」と思っても、入管法第20条第3項但書により「やむを得ない特別の事情」がない限り、他の在留資格への変更申請は許可されません 。

例えば短期滞在ビザから「配偶者ビザ」に変更したい場合の「やむを得ない特別の事情」の立証に関しては、短期滞在(観光)ビザから配偶者ビザへの変更はできる?「やむを得ない特別な事情」の立証を行政書士が解説をご参照ください。

安易に「まずは短期滞在(観光)で呼んで、入国してからゆっくり次のことを考えよう」と手続きを進めてしまうと、法律の壁(原則変更不可)と、2026年9月改正による壁(日数の個別指定)の二つのハードルが生じかねません。

短期滞在ビザの手続きを始める前、つまり来日前の段階から、その次に繋がるビザの計画を練っておくことが重要です。

5.まとめ:これからの短期滞在ビザは「入国前の計画」が重要です

2026年9月に施行される法改正により、短期滞在ビザは「個人の状況に合わせた日単位の指定」という新しい仕組みになります。

画一的な期間付与ではなくなるからこそ、「なぜその期間が必要なのか」を入国・申請の段階から論理的に説明できるようにしておく必要性がこれまで以上に高まる可能性があります。また、入国後に予期せぬ日数を指定された場合、すぐ次の手を打たなければすぐにオーバーステイのリスクに直面します。

行政書士法人第一綜合事務所では、日々変化する入管行政の最新動向や今回のようなパブリックコメントの内容をウォッチし、実務へと迅速に反映させています。

「今回の法改正で自分たちのケースはどう変わる?」
「短期滞在ビザでの滞在を確実に成功させたい」

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