藤澤 勇來

”日本人の配偶者”の帰化申請について徹底解説

将来にわたって日本で暮らしていきたいと願う外国人の中には,帰化申請を考える方が多くいらっしゃいます。
そして,その中には,日本人と結婚して日本で家庭を築いている外国人も大勢いらっしゃいます。
そこで,本コラムでは“日本人の配偶者”に焦点を当てて,その帰化申請について詳しく解説していきます。
日本人の配偶者でなくても,夫婦で帰化申請をお考えの外国人カップルにとっても有益な情報も含まれています。
小難しい内容も一部ありますが,ぜひ,最後まで読み進めて下さい。

1.帰化の要件(原則)

日本人の配偶者は帰化許可の要件が緩和されています。
まずは,その解説をする前に,比較対象として,帰化の原則要件を説明しておきます。
以下は,帰化許可の要件が規定された「国籍法」の条文です。

第五条 法務大臣は,次の条件を備える外国人でなければ,その帰化を許可することができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生
計を営むことができること。
五 国籍を有せず,又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において,日本国憲法又はその下に成立した政
府を暴力で破壊することを企て,若しくは主張し,又はこれを企て,若
しくは主張する政党その他の団体を結成し,若しくはこれに加入したこ
とがないこと。

このように,帰化申請には大きく6つの要件が規定されています。
そして,この中で配偶者に要件の緩和があるものが,次の2つです。

一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。

ここで規定されている要件とは,
外国人が帰化申請をするためには,原則5年間日本に在留しなければならず,20歳以上でないといけないという内容です。

これが“日本人の配偶者”であることで,どのように緩和されるのでしょうか?
早速,次チャプターで答えを見てみましょう。

2.帰化の要件(配偶者特例)

2-1 要件の緩和

“日本人の配偶者”の帰化の要件緩和は,国籍法第7条に規定されています。

第七条 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し,かつ,現に日本に住所を有するものについては,法務大臣は,その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも,帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し,かつ,引き続き一年以上日本に住所を有するものについても,同様とする。

これは,次のいずれかのパターンに当てはまる場合は,前チャプターで説明した2つの要件に該当しないでも良い,ということを意味しています。

日本に3年以上在留している+日本人と結婚している
日本人と結婚して3年+日本に1年以上在留している

まず①は,第七条前段の「日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し,かつ,現に日本に住所を有するもの」を噛み砕いて表したものです。
この条文を分解すると,

A 日本国民の配偶者たる外国人
B 引き続き三年以上日本に住所又は居所を有する
C 現に日本に住所を有する

となります。イメージしやすいように具体例を挙げると,以下の人がパターン①に該当します。

(具体例1)
日本に就労ビザで3年在留した後に日本人と結婚,引き続き日本で生活している外国人

次に②は,第七条後段「日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し,かつ,引き続き一年以上日本に住所を有するもの」を簡単に表現したものです。

こちらも細かく分解すると,

A 日本国民の配偶者たる外国人
B 婚姻の日から三年を経過
C 引き続き一年以上日本に住所を有する

となります。
具体的には以下のようなケースが該当します。

(具体例2)
日本人と結婚し,2年間海外で結婚生活を送った後に来日,来日から引き続き1年以上日本で生活している外国人

2-2 永住申請の特例との違い

帰化の配偶者特例がわかったところで,次は,帰化とよく比較される永住の要件との違いを見ていきましょう。
もしかすると,永住の要件は満たしていなくても,帰化の要件は満たしているかもしれません。

帰化申請と同様,永住申請にも日本人の配偶者に対する優遇措置がありますが,永住と帰化の配偶者特例は,その対象範囲が少し異なります。
以下は,永住許可申請での配偶者特例が記された,「永住許可に関するガイドライン」からの抜粋です。

原則10年在留に関する特例
(1) 日本人,永住者及び特別永住者の配偶者の場合,実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し,かつ,引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること

このうち,日本人の配偶者に該当する部分のみを抜き出して分解すると,

A 日本国民の配偶者
B 実体を伴った婚姻生活が3年以上継続
C 引き続き1年以上本邦に在留している

となり,内容的には帰化申請の特例要件②と同じであることが分かります。
しかし,永住の配偶者特例は帰化の特例要件①を含んでおらず,帰化の配偶者特例の適用範囲は,永住の特例要件よりも広いと言えます。

皆様の中にも,「永住の要件は満たしていないけれど,帰化なら要件を満たしている!」という人がいらっしゃるのではないでしょうか?

2-3 外国人カップルへの適用

では次に,“日本人の配偶者”の特例要件は,日本人の配偶者以外にも及ぶことはあるのでしょうか?
例えば,就労ビザを持っている一方の配偶者(“本体者”)が帰化申請をする際に,もう片方の配偶者(“配偶者”)も一緒に帰化申請をしたい場合,ここで言う“配偶者”には上記配偶者要件の適用があるでしょうか?

答えは「適用がある」です。

国籍法上そのような文言はありませんが,実務上は,本体者が帰化許可になれば配偶者もその時点で日本人の配偶者の身分を有することになるので,「みなし」で日本人の配偶者の要件が適用されることになります。

ただし,とても重要な注意点として,国籍法7条後段(特例要件②)は,みなしでは適用がありません。
つまり,外国人カップルの場合は,特例要件①を満たすために,最低でも3年以上の日本在留が必要になります。

(具体例3)
3年以上日本で在留した後に,帰化許可の要件を満たす外国人(本体者)と結婚,その後も引き続き日本で生活している外国人

(具体例4)
帰化許可の要件を満たす外国人(本体者)と結婚後来日,その後3年以上,引き続き日本で生活している外国人
※結婚時点で本体者が帰化許可の要件を満たしている必要はありません。

3.配偶者の帰化の必要書類

さて,ここまで主に,国籍法の読み解きと要件の解説をしてきましたが,ここからは,実際に日本人の配偶者が帰化申請をする際の書類について解説していきます。
結論から申し上げますと,配偶者だからといって書類が省略される訳ではなく,むしろ特定の書類が追加で必要になります。

3-1 戸籍謄本

日本人の配偶者の帰化申請では,日本人配偶者の「戸籍謄本」が必要になります。
戸籍謄本とは、戸籍に記載されている人の身分事項を証明する書類です。
戸籍謄本は住民票とは異なり,日本人特有の証明書ですので,日本人の配偶者の帰化申請ならではの書類と言えます。

※ご家族に帰化をした方がいらっしゃる場合は,日本人の配偶者でなくても戸籍謄本の提出が必要です。

3-2 戸籍の附票/住民票の除票

次に,特別永住者など一部の場合では免除されますが,日本人との婚姻期間がある外国人は,基本的に「戸籍の附票」もしくは「住民票の除票」の取得が必要になります。
「戸籍の附票」とは,本籍地に紐づいた過去の住居地の記録で,婚姻期間中の同居歴の確認のために用いられます。
「住民票の除票」も,同様に過去の住所を表す証明書で,戸籍の附票と同じ目的のために使用されます。

これらは過去の婚姻についても提出を求められるため,離婚した前配偶者の本籍地の特定などでハードルが高い,と感じる方が多くいらっしゃいます。

4 .”日本人の配偶者”の帰化申請のまとめ

今回は,“日本人の配偶者”の帰化申請について,その要件と必要書類を解説しました。
日本人の配偶者は,日本への結びつきが強い外国人であるとして,永住においても帰化においても優遇がなされています。

しかし,それぞれの要件は異なることから,当事務所にご相談いただくお客様の中にも,勘違いをされている方が少なからずいらっしゃいます。

行政書士法人第一綜合事務所では,豊富な知識と経験から,最短ルートでお客様の帰化をご案内可能です。
面倒な書類の収集から作成,法務局との折衝まで,全面的にお手伝い可能ですので,ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

藤澤 勇來

・令和3年度行政書士試験合格
兵庫県出身。大阪オフィスに所属し,日本国籍を取得するための帰化許可申請業務を専門としている。

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