特定技能ビザへの切り替え方法と注意点
新型コロナウイルス感染症の影響により,国外にいる特定技能ビザを取得した外国人が日本へ渡航することが困難な状況が続いています。
そんな状況下,日本国内にいる外国人が,特定技能ビザへの切り替え申請をするケースが増えています。
本記事では,特定技能ビザへの切り替え方法について,ビザごとの要件や注意点を中心に紹介します。
特定技能ビザを目指す外国人に限らず,既に特定技能ビザを取得している方のお役にも立てる内容ですので,最後までお付き合いください。
Index
1. 留学ビザから特定技能(1号)ビザへの切り替え
本チャプターでは,留学ビザから特定技能(1号)ビザへの切り替えを見ていきましょう。
1-1 外国人の要件
〇技能試験と日本語試験に合格
特定技能ビザへ切り替えをするためには,技能試験と日本語試験の合格が必要です。
技能試験については,それぞれの分野で区分ごとに設定された試験に,合格する必要があります。
日本語試験については,全分野共通で,日本語能力検定N4以上に合格または国際交流基金日本語基礎テストA2レベル程度の結果を取得することで,要件を満たすことができます。
詳しい内容は,【特定技能ビザ】全14分野の試験内容をご確認ください。
〇納税・納付義務の履行
特定技能ビザへの切り替え申請をする時点で,納期が到来している税金については,全て完納している必要があります。
留学生については,次の4つの税金について、納付状況の確認できる資料の提出が必要な点について留意してください。
なお,租税条約等により免税を受けていた場合には,その旨示す必要があります。
- 所得税
- 住民税
- 国民健康保険(税)
- 国民年金の保険料
1-2 注意点
〇引き続き家族帯同が可能
留学ビザを保持する外国人には,一定の要件の下で,家族滞在ビザが認められています。
他方で,特定技能(1号)ビザの外国人は,家族の帯同が認められていません。
では,留学ビザから特定技能(1号)ビザに切り替えた場合には,家族滞在ビザは失効してしまうのでしょうか。
留学ビザから特定技能(1号)ビザに切り替えた場合には,実は家族も「家族滞在ビザ」から「特定活動ビザ」に切り替えて,引き続き日本に在留することが認められています。
〇確定申告が必要な場合
外国人留学生は,日本での学費や生活費を稼ぐために,複数のアルバイトを掛け持ちしているケースも少なくありません。
そのような場合には,確定申告を済ませておく必要があります。
加えて,それぞれのアルバイト先から,源泉徴収票の取得をしておく必要もあるので,紛失してしまった場合などには,早めの再発行依頼をしておく必要があります。
〇留学中のアルバイト時間数
外国人留学生は,入管庁より,資格外活動許可を取得することで,原則,週28時間以内のアルバイトが認められています。
学則により定める長期休業期間中は,週40時間までのアルバイトが認められる場合もありますが,いずれの場合でも,上限の時間数を厳守している必要があります。
特定技能ビザを申請する際に,上限を超えた時間数のアルバイトをしていたことが発覚した場合は,特定技能ビザの取得ができなくなる可能性がありますので注意してください。
2.技能実習ビザから特定技能(1号)ビザへの切り替え
技能実習生が特定技能(1号)ビザを取得するための要件は,留学生と同様に試験に合格する方法もありますが,「技能実習2号を良好に修了した」という実績でも要件を満たすことができます。
2-1 外国人の要件
〇技能試験と日本語試験に合格
留学生と同様に,試験区分ごとの技能試験と,2つある日本語試験のいずれかで,要件を満たすことが可能。
〇技能実習2号を良好に修了
特定技能ビザにて就労する分野と関連する職種・作業にて,技能実習2号を良好に修了した外国人については,技能試験と日本語試験が免除されます。
試験が免除される職種・作業については,ルール決めがなされているため,特定技能ビザ申請の前に,「技能実習2号を良好に修了」した職種・作業では,どの試験が免除の対象となるのか確認する必要があります。
〇納税・納付義務の履行
留学生と同様に,支払い義務のある税金については全て完納している必要があります。
技能実習生については,日本人の正社員と同様に,受入れ企業が税金の支払いをしている場合がほとんどであるため,特定技能ビザ申請の前に,納税・納付義務の履行状況について,確認をしておくと良いでしょう。
また,技能実習生が多いタイや中国などが出身の外国人については,租税条約を適応し,免税の措置を受けている場合もあるため,併せて確認することをお勧めします。
2-2 注意点
〇職歴の齟齬
特定技能ビザを申請する際には,職歴情報の提出も必要です。
技能実習生の際に入管庁へ提出している職歴情報と齟齬のないように,注意する必要があります。
技能実習の際に提出した職歴情報と特定技能ビザの申請をする際の職歴情報が異なる場合には,入管審査では消極的に判断されます。
仮に,齟齬が生じた場合には,その経緯,理由を詳細に説明する必要があります。
〇納税証明書類の取得年度
技能実習生は留学生と同様に,納税義務の履行状況確認のため,課税証明書と納税証明書を入管庁へ提出する必要があります。
取得するべき証明書の年度は,それぞれ,次のとおりです。
- 住民税の課税証明書
直近1年分度分 - 住民税の納税証明書
全ての納期が到来している直近1年度分
なお,住民税について,1月1日に居住していた住所を管轄する自治体が,前年度1年間の収入をもとに課税額を決定します。
そのため,技能実習中に,一時帰国などをしていた場合は,課税対象とはならない年度がある可能性についても注意が必要です。
加えて,提出義務のある給与所得の源泉徴収票については,取得した課税証明書に対応する年度のものを提出する必要がある点にも気を付けてください。
3.特定技能(1号)ビザへの切り替え可能な特定活動ビザ
現在法定されているビザでは,対応していない活動を許可するため「特定活動ビザ」が用いられることがあります。
特定活動ビザは「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と定義されている通り,法務大臣の権限でビザが許可されているものです。
3-1 特定活動ビザの種類
現在,特定技能(1号)ビザへ切り替えることを前提として取得できる特定活動ビザは,次の2つです。
〇特定活動ビザ(4ヶ月)
特定技能ビザの取得を希望する外国人が,切り替え前に保持しているビザの期限までに,申請に必要な書類を準備できない場合も想定されます。
そのようなケースに対応するため,特定技能1号で雇用される企業にて,就労しながら申請の準備を進めるためのビザです。
〇特定活動ビザ(12ヶ月)
新型コロナウイルス感染症の影響による解雇等をされ,且つ帰国便の確保が困難などの理由で,帰国困難な外国人の雇用を維持するためのビザです。
3-2 外国人の要件
特定活動ビザ(4ヶ月)
- 特定技能(1号)ビザの技能・日本語要件を満たしている
特定活動ビザ(4ヶ月)を申請する前に,既に特定技能外国人となる職種のビザ取得要件である技能・日本語要件を満たしている必要があります。 - 特定技能ビザで就労する場合と同じ職種で就労
あくまでも特定技能ビザ申請準備のためのビザであるため,特定技能外国人として就労するのと同じ職種での就労のみ認められます。
特定活動ビザ(12ヶ月)
- 帰国困難且つ就労もできず日本での生計維持が困難
新型コロナウイルス感染症の影響により,帰国困難となり,就労もできていない外国人が対象のビザです。そのため,自己都合の転職などの理由では取得できません。 - 特定技能の業務に必要な技能を身に付ける前提
特定技能ビザの業務に必要な技能を身に付けながらの就労継続が必要です。
そのため,特定技能で認められていない業種・職種での就労は認められません。
3-3 注意点
特定活動ビザ(4ヶ月)
- 特定技能(1号)ビザの通算在留期間に含まれる
特定技能(1号)ビザを使って,日本で就労することができる期間は最長5年間です。
特定活動ビザ(4ヶ月)での就労期間は,特定技能外国人と同じ条件での就労が求められており,特定技能(1号)ビザの5年間の期間内としてもカウントされます。
特定活動ビザ(12ヶ月)
- 新型コロナウイルス感染症の状況がビザ取得可否に影響
新型コロナウイルス感染症の影響を受けた外国人を救済するためのビザであるため,母国への帰国が容易に可能となるなど,状況の進展次第で,ビザの許可がされなくなる可能性があります。 - 製造業3分野でのビザ取得は製造業経験者に限定
特定技能の製造業3分野にて,特定活動ビザ(12ヶ月)の申請が可能な外国人は,製造業分野にて経験のある,技能実習生または特定技能外国人に限られます。 - 技能実習修了者は帰国費用が本人負担になる
通常,技能実習を修了した外国人の帰国費用は,監理団体または,実習実施者の全額負担が原則ですが,一旦,特定技能ビザ(12ヶ月)へ切り替えをした外国人については,原則,本人負担となります。
4.特定技能ビザから他のビザへの切り替え
〇特定技能(2号)ビザ
現在,特定技能ビザにて在留している外国人の全てが,特定技能(1号)ビザを取得していますが,今後は,実質無期限の就労や家族帯同も認められる,特定技能(2号)ビザの発給も開始される予定です。
建設と造船・舶用工業の分野では,要件を満たした外国人にビザ発給が開始されることが決定しており,特定技能の介護分野を除く全てを,特定技能(2号)ビザの対象とする動きもあります。
特定技能(2号)ビザについては,特定技能1号と2号の違いは?に詳しい内容の記載がありますので併せてご確認ください。
〇介護ビザ
介護の特定技能(1号)ビザを保持している外国人については,「介護職での3年間以上の就労実績」と「実務者研修を修了」の2つの要件を満たした上で,介護福祉士の国家試験に合格すれば,介護ビザ取得への道が開けます。
介護ビザを取得できれば,特定技能(2号)ビザと同様に,実質無期限の就労や家族帯同が可能となります。
〇日本人・永住者の配偶者等ビザ
特定技能ビザを保持している外国人が,日本人や永住者ビザを保持する外国人と結婚した場合には,その配偶者としてのビザ取得が認められています。
日本人または永住者の配偶者等ビザは,就労制限が無いため,特定技能ビザよりも,自由な就労活動が可能となります。
一方で,離婚などにより,配偶者等ビザを保持する資格を失った場合は,ビザの切り替えが必要になり,切り替え後のビザの種類によっては,就労制限がかかる点についても注意が必要です。
〇留学ビザ
日本への留学を希望する外国人の中には,金銭的な理由などで,留学を断念する場合や日本に来日後に,退学をする外国人も見られます。
そのような場合,特定技能ビザで就労し,貯蓄した上で,留学ビザへ切り替えをして,勉強をしながら,特定技能外国人として就労していた職場で,アルバイトをするというような外国人も出てくる可能性があります。
5.まとめ:【特定技能ビザ】切り替え可能なビザと注意点
本記事では,特定技能ビザへ切り替え可能なビザの情報や,特定技能ビザから,他のビザへの切り替えが想定できるビザについても紹介しました。
当初の政府想定よりも,大幅に受入れが遅れていることもあり,今後は,特定技能ビザの取得者が増えることが予想されます。
また,新型コロナウイルス感染症の影響により,本来は帰国予定であった外国人が,国内に留まり,特定技能外国人として就労を継続するケースも急増しています。
今後,特定技能ビザへの切り替えを検討している外国人には,本記事の注意点も踏まえ,早めに事前準備することをお勧めします。