製造業で外国人を雇用する際の就労ビザとは?在留資格のプロが解説
製造業で外国人を雇用する場合,その外国人が担当する仕事の内容によって,取得すべき就労ビザの種類が変わります。製造業で主に利用される就労ビザは4種類ありますが,取得した就労ビザが予定していない業務を行うと,外国人本人だけでなく企業側も罰せられる場合があるため注意が必要です。
本コラムでは,外国人が製造業で働く場合の就労ビザ4種類について解説していきます。うっかり不法就労とならないよう,製造業の採用ご担当者様もぜひご覧ください。
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製造業で働くことができる就労ビザは4種類
製造業で働くことができる就労ビザは,以下の通り4種類あります。
就労ビザの種類 | 単純作業の可否 | 就労できる年数 |
技術・人文知識・国際業務 | できない | 制限なし |
特定活動46号(通称:N1特活) | 一部できる | 制限なし |
特定技能 | 一部できる | 最長5年※1 |
技能実習※2 | 一部できる | 3~5年 |
【制度変更が閣議決定されています】
※1:特定技能ビザは,1号から2号へ変更することで,年数の制限なく就労できるようになります。
※2:技能実習制度は廃止され,新たに「育成就労」制度が導入されます。
4種類それぞれの就労ビザについて,見ていきましょう。
(1)技術・人文知識・国際業務ビザ
「技術・人文知識・国際業務」ビザは,大学や専門学校などで学んだ高度な専門的知識と技術を活かした仕事を行うための就労ビザです。
以下の,①又は②の要件を満たす必要があります。
①日本または海外の大学または大学院を卒業・修了して学位を取得している
②日本の専門学校を卒業して「専門士」または「高度専門士」の学位を取得している
技術・人文知識・国際業務ビザは就労ビザの代表格とも言えるビザですが,製造業の場合は職種が限定されるので注意が必要です。
たとえば工場で勤務する場合,生産管理や設計,研究開発などいわゆる「ホワイトカラー」と言われる業務内容であれば,技術・人文知識・国際業務ビザを取得することができるでしょう。一方で,組み立てや溶接作業,流れ作業が業務の大半である場合は技術・人文知識・国際業務ビザの取得はかなり難しくなります。
なお,これまで専門学校卒業生は,在学中の専攻分野と業務内容との関連性が厳格に判断されてきましたが,2024年以降は大卒者と同様に柔軟に判断されるようになるため,就労しやすくなります。
(2)特定活動46号(N1特活)ビザ
特定活動告示46号ビザは,大学で修得した幅広い知識と,高いレベルの日本語能力を活用した仕事をするために用意された就労ビザです。このビザでは,いわゆる単純作業を行うこともできますが,一定レベル以上の知識や日本語力を必要とする業務であることが必要です。日本語でのコミュニケーションが不要で黙々と一人で作業を行うような業務内容では,ビザの取得は難しいでしょう。
【OK例】レストランで外国人客へ通訳しながらフロア接客
【NG例】工場で会話などコミュニケーションを必要としないライン作業
以下の,①及び②の要件を満たす必要があります。
①学歴として,以下A,B,Cいずれかに該当する場合
A:日本の4年制大学または大学院を卒業・修了して,学位を取得
B:認定専修学校専門課程を修了して「高度専門士」の学位を取得
C:短大または高等専門学校を卒業後,大学の単位をとって「学士」の学位を取得
②日本語能力として,以下D,E,Fいずれかに該当する場合
E:日本語能力試験「N1」(同等レベルも含む)に合格
F:BJTビジネス日本語能力テストのスコアが480点以上
G:上記①Aで,「日本語」を専攻
このビザは,当初は「日本の4年制大学の卒業または大学院の修了」が要件となっていましたが,法改正があり,これまで対象外だった専門学校卒や短大卒の外国人でも,対象となる範囲が拡大されました。
専門学校卒の場合は「高度専門士の学位を授与されたか」,短大卒の場合は「大学の単位を取って学士の学位を授与されたか」を確認するようにしてください。
(3)特定技能ビザ
特定技能ビザは,日本国内で人材を十分に確保できない特定の業種で,一定レベル以上の専門知識や技術を持っている外国人を労働力として受け入れるために用意されたビザです。2024年以降,対象の業種を拡大していくことが検討されています。
外国人は①又は②,受け入れ企業は③の要件を満たす必要があります。
①3年間の技能実習を修了している
②分野別の特定技能試験と,日本語能力試験「N4」(同等レベルも含む)に合格している
③社会保険を完備している,2期連続で赤字になっていない,外国人に対して生活支援を行う等
(4)技能実習ビザ
技能実習ビザは,日本の技術や知識を習得して,本国の発展に活かしてもらうために用意されたビザです。就労活動が目的ではないのですが,実態としては企業の労働力を担っているためここで紹介しました。
日本の技術や知識を習得してもらうことが目的なので,同じ作業を反復すれば習得できるような単純作業を業務とすることはできません。
3年間,技能実習生として業務に従事したあと,「特定技能」ビザに変更してそのまま継続して勤務するケースが多いです。
技能実習は制度上,転職することができません。このため,劣悪な環境で外国人実習生を囲い込み,それに耐えきれず行方不明になってしまう実習生が多発しました。これらの状況から国際的にも批判が強まり,日本政府としては技能実習制度を廃止し,新たに「育成就労制度」を導入することを決め,運用の検討が進められています。
製造業でできる技術・人文知識・国際業務ビザの仕事内容
技術・人文知識・国際業務ビザで働くことができる製造業の仕事内容は,「技術」「人文知識」「国際業務」の3つの分野に分かれます。いずれの分野も,大学などで学んだスキルが,仕事の分野と関連している必要があります。
3つの分野について,それぞれ具体的な仕事の例を紹介します。
(1)技術分野
「技術」分野の仕事内容は,以下のようなものです。
- 製品の品質検査や検証を行って管理する業務
- 製造の工程や生産を管理する業務
- 新しい素材や技術を研究する業務
- 製品化に向けて工場で行う開発や設計する業務
(2)人文知識分野
人文知識分野は,製造業以外の業種でも一般的に見られる仕事内容です。
- 商品の販売先を開拓する業務(営業)
- 製造した製品をPRする業務(広報,宣伝)
- 会社のお金を管理する業務(経理)
- 組織が円滑に動くよう仕組みの整備や管理をする業務(総務,人事)
(3)国際業務分野
通訳・翻訳など外国人ならではの仕事内容です。
・海外の取引先と日本人従業員との通訳業務
・工場内での外国人従業員と日本人従業員との通訳業務
・見積書,契約書,仕様書,マニュアルなど重要な書類の翻訳業務
就労ビザ以外では働くことができない?
就労ビザ以外でも,製造業で働くことができる場合があります。
具体的には,以下のビザを持って日本に在留している外国人は,就労ビザを取得せずに製造業で単純作業も可能です。
持っているビザ | 就労制限 |
日本人の配偶者等 | なし |
定住者 | なし |
永住者 | なし |
特定活動(ワーキングホリデー) | なし |
家族滞在 | 週28時間以内までOK※1 |
留学 | 週28時間以内までOK※1※2 |
特定活動(就職活動) | 週28時間以内までOK※1 |
※1:別途「資格外活動許可」を取得している必要があります。
※2:夏休みなどの長期休暇中は上限の時間が拡大され,1日8時間以内の就労ができます。
【参考】研修で来日させる場合も就労ビザが必要?
製造業では,海外に工場など拠点を作って,現地で採用した外国人従業員に業務内容を教育するために日本の工場へ呼び寄せて研修する場合もあります。この場合,報酬が発生するかしないかによって,取得するビザが変わります。
上記で紹介した就労ビザ4種類のうち,いずれか適切なビザを取得する必要があります。
【報酬が発生しない場合】
就労ビザではなく「研修」ビザまたは「短期滞在」ビザで来日することになります。
なお,研修ビザでは実務を伴う作業ができない点にも注意が必要です。
研修ビザについて詳しくは,別コラム「研修ビザとは?」でも解説していますので,ぜひお読みください。
製造業で外国人を雇用する際の就労ビザまとめ
本コラムでは製造業で外国人を雇用する際の就労ビザについて解説してきましたが,いかがでしたか?
日本人を雇用する場合と違って,従事する業務内容によって,雇用できる外国人が限定されることがお分かりいただけたかと思います。外国人を雇用する際は,事前に応募書類などで以下の点を確認できるようにしておくことをおすすめします。
①在留カードで現在持っているビザの種類を確認
⇒「特定活動」は複数種類があります。どの種類かはパスポートに貼られた「指定書」で確認できます。
②本人の学歴,職務経験,日本語能力などの経歴を確認
⇒その就労ビザであれば取得できそうか,検討しやすくなります。
③本人の家族構成を確認
⇒日本人と結婚している場合,ビザを変更することで就労制限がなくなります。
就労ビザは,従事できる業務の範囲が限定されています。範囲外の業務に従事した場合,外国人本人だけでなく,従事させた企業側も「不法就労助長」として摘発されます。外国人労働者に単純作業をさせていた会社の代表者が,警察に逮捕されたというニュースを一度は見たことがあるのではないでしょうか。
意図的に不法就労させるケースは論外として,『外国人は日本人と同じように働くことができない』ということを知らずに,不法就労させてしまうケースも少なくありません。
はじめて外国人を雇用する際は,就労ビザに詳しい行政書士など専門家へご相談いただくこともおすすめです。
行政書士法人第一綜合事務所は,ビザ申請を専門に扱う行政書士事務所で,特に就労ビザに関しては業界トップクラスの実績がございます。初回のご相談は無料ですので,お気軽にご利用ください。