【2026年4月13日】特定技能の外食業分野受入停止と、これからの人材確保で大切にしたいこと

日々の店舗運営やサービス向上に尽力されている外食業界の皆様にとって、外国人材は欠かせないパートナーとなっているのではないでしょうか。そんな中、特定技能「外食業分野」において、受入枠の上限に達したため、新規の受入が一時停止されることとなりました。
「これから新しい方を迎える予定だったのに」「うちはどうなってしまうのか」と、不安を感じていらっしゃる経営者・採用担当の方も多いかと思います。このコラムでは、この状況を冷静に捉え、今私たちができる次の一手を一緒に考えていきたいと思います。
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特定技能とは
「特定技能」は、人材を確保することが困難な状況にあり、外国人によって不足する人材の確保を図るべき産業上の分野(特定産業分野)において、一定の技能を要する業務に従事するために設けられた在留資格です。政府が分野ごとに基本方針や分野別運用方針を定め、受入れ見込数を設定して運用されています。
特定技能には、1号と2号があります。
特定技能1号
「特定技能1号」は、特定産業分野に属する「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を要する業務に従事する外国人の方が対象です。外食業分野や介護分野、建設分野など16分野があります。在留期間についてですが、通算で原則5年(妊娠、出産、育児その他のやむを得ない事情がある場合は特例で6年)と定められているため、1号の資格のまま5年を超えて日本に在留することはできません。このコラムで解説する「受け入れ停止」は、原則としてこの特定技能1号が対象となります。(厳密に言えば、後述する特定技能2号も分野ごとの「受入れ見込数」の中に含まれています。しかし、実務上は2号には上限はないと考えて差し支えありません。)
特定技能2号
「特定技能2号」は、「熟練した技能」を要する業務に従事する外国人が対象で、11分野があります。1号の滞在期間5年の間に必要な技能を身につけ、「特定技能2号」へのステップアップ(在留資格の変更)ができれば、5年経過後も引き続き日本で働き続けることが可能となります。
なぜ「外食分野」だけが、いち早く上限に達したのでしょうか?
特定技能制度の歩みと制度全体の上限数の変化
特定技能制度は、2019年度から開始され、制度開始時の全体の受入れ見込数は34万5、150人と設定されていました。その後、コロナ禍の影響による大きな経済情勢の変化を踏まえ、2022年8月に各分野の受入れ見込数の見直しが行われましたが、全体の総数(34万5、150人)は維持されたまま運用されてきました。
制度開始時に設定した5年間の期限が2023年度末に到来したことに伴い、2024年3月29日に閣議決定が行われ、2024年4月からの5年間の新たな受入れ見込数が再設定されました。5年後の産業需要や人手不足数(生産性向上や国内人材確保の取組を差し引いた数)を踏まえ、新たな受入れ見込数は82万人へと大幅に拡大されました。
| 期間 | 全体の上限 (見込み数) |
状況 |
| 第1期 (2019年4月から5年間) |
345、150人 | 制度の認知が広がり、徐々に活用が進んだ時期。 |
| 第2期 (2024年4月から5年間) |
820、000人 | 人手不足の深刻化により枠が大幅拡大。 |
外食分野の上限
特定技能制度の開始当初、外食業分野の5年間の受入れ見込数は53、000人に設定されていました。しかし、コロナ禍の影響など大きな経済情勢の変化を踏まえて2022年8月に見直しが行われ、令和5年度末までの受入れ見込数は30、500人へと下方修正されて運用されました。年度が変わり令和6年4月には、5年間における新たな受入れ見込数が設定され、再び当初と同じ53、000人の受入れ枠が設けられました。
| 期間 | 全体の上限 (見込み数) |
状況 |
| 第1期 (2019年4月から5年間) |
30、500人 | 制度開始の翌年からコロナ禍となり、外食産業は休業や時短営業を余儀なくされました。人手不足が一時的に和らいだうえ、入国制限で海外からの新規入国がストップしたため、枠が埋まるペースは非常に緩やかでした。 |
| 第2期 (2024年4月から5年間) |
53、000人 | コロナ明けで客足が戻り、外食産業の人手不足がかつてないほど深刻化しました。国内で人を採用できない企業が、一斉に「特定技能」の活用に踏み切ったため、第1期とは比較にならないスピードで人数が増えています。 |
「外食業の受入れ見込数は閣議決定で53、000人とされていますが、実際には在留者が5万人に迫った段階で停止措置が取られました。
これは、現在進行中の審査分や発表後の駆け込み申請を含めると、実質的に枠が埋まってしまうためです。
出入国在留管理庁は、2026年4月13日以降の受け入れを停止し、それ以降の新たな申請に対しては、ビザの取得に必要な証明書を原則として交付しない措置をとると明らかにしました。これより前に申請されたものは順番に審査するとしていますが、上限を超えた場合は証明書が交付されないということです。
入管庁は、受け入れ数が減った場合には、証明書の交付を再開するとしています。
受入停止によって、具体的に何が変わるのか?
「停止」と言っても、すべての活動が止まるわけではありません。まずは落ち着いて、以下の現状を確認しましょう。
- 新しく呼ぶ: 海外からの呼び寄せ(在留資格認定証明書交付)が原則停止となります。
- 国内で切り替える: 他の資格(技能実習など)から外食の特定技能への変更が原則停止となります。
- 今いる従業員: すでに特定技能として働いている方の「在留資格の更新」は可能ですので、ご安心ください。
実務上の注意点は、内定を出して書類を準備している最中に停止になるリスクです。
入管の受理ベースで判断されるため、早め早めの準備がどの分野でも大事です。また、技能実習生からの「移行」も止まります。「うちは技能実習生を3年雇っているから、そのまま特定技能に切り替えればいい」と考えている企業様は特に注意が必要です。分野全体が停止してしまえば、自社で育てた慣れ親しんだスタッフであっても、特定技能への変更ができなくなるのです。この場合、スタッフは帰国せざるを得なくなります。
これから外食企業様が「今できること」と「備えるべきこと」
募集が止まってしまった今、焦って無理な採用に走るのではなく、まずは足元を固める時期だと捉えてみてはいかがでしょうか。
今いるスタッフの「定着」を最優先に
新しい方の採用が難しくなるからこそ、今働いてくれている外国人スタッフが「ここで長く働きたい」と思える環境づくりが重要です。特定技能2号への在留資格の変更支援など、長期的なキャリアパスを示すことも有効な対策です。
他の分野も「他人事」ではないと知る〜迫りくる「充足率」の壁〜
今回の外食分野の停止は、決して特殊な事例ではありません。特定技能制度には「国内人材確保の状況を見て、必要以上の外国人は受け入れない」という大原則があるため、すべての分野にブレーキ(上限)が備わっているからです。
では、なぜ今、他の分野の皆様も警戒を強める必要があるのでしょうか。その理由は大きく分けて3つあります。
外食分野と非常に親和性が高いのが「飲食料品製造業」です。外食での就労を希望していた外国人材が、受入停止を受けて「それならお弁当工場や加工食品工場で働こう」と、隣接する分野へ流れてくることが予想されます。
これにより、他分野の充足スピードが加速し、連鎖的に停止が起こる「ドミノ倒し」のリスクが生じています。
海外からの新規呼び寄せが止まると、企業に残された道は「すでに日本国内にいる特定技能外国人」の採用、いわゆる「引き抜き・転職」のみとなります。
- 枠があるうち:海外から新しい人を呼んで純増させられる
- 枠が埋まった後:国内にいる限られた人数の「取り合い」になる
枠が埋まってから動こうとしても、採用コスト(紹介料や賃金条件)が高騰し、体力のある大手企業に人材が集中してしまうという、非常に厳しい戦いが待っています。
現在、特に以下の分野では「いつ停止してもおかしくない」状況を想定しておくべきです。
充足率70パーセント以上:飲⾷料品製造業
充足率60パーセント以上:建設
充足率50パーセント以上:介護、農業
※2025年12月末の在留者数(現在入管庁から公表されている最新データ)より算出
戦略的な人材確保のために、行政書士法人第一綜合事務所ができるお手伝い
特定技能制度は、社会情勢や充足率の影響を受け、その運用が刻一刻と変化しています。
昨日まで通用していた方法が、明日には通用しなくなるということも珍しくありません。
私たち行政書士法人第一綜合事務所は、単なる手続きの代行にとどまらず、貴社の「パートナー」として、外国人雇用のポートフォリオ設計からご支援しております。
具体的には、在留資格の組み合わせ、採用ルートの分散、定着支援の仕組み構築などを含め、中長期的な視点での人材戦略をご提案いたします。
貴社の事業戦略を見据えた人事ポートフォリオを構築することで、人材不足の解消はもとより、将来の制度変更にも耐えうる安定した採用体制と、強固な法令遵守体制の構築が可能となります。
外国人雇用は、もはや「補充」ではなく「戦略」として取り組む時代です。
知っているか、知らないかで、その結果には大きな差が生まれます。
当グループには社労士法人もございますので、採用から労務管理まで一貫したご支援が可能です。
外国人雇用を積極的にお考えの企業様は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
まとめ:手遅れになる前に、一歩先を見据えたご相談を
外食業分野に携わる方々、今は大変な時期かもしれませんが、適切な対策を打つことで、この局面を乗り越えることは十分に可能です。「うちは今後どう動けばいい?」「他の分野での確保は間に合う?」といった些細な疑問でも構いません。
貴社の大切な事業と、そこで働くスタッフの皆様の未来を守るために。ぜひ一度、行政書士法人第一綜合事務所へお話を聞かせていただけませんか。共に最善の道を探していきましょう。




