德永 武道

経営管理ビザから永住ビザへの申請で重要になるポイントを解説

経営管理ビザから永住ビザへの申請で重要になるポイントを解説

経営管理ビザは,外国人が日本で事業の経営・管理業務に従事するために設けられたものです。永住ビザを取得すれば,より安定的・継続的に事業活動を行うことが可能になりますので,永住ビザを取得するメリットは大きいといえるでしょう。
本コラムでは,経営管理ビザから永住ビザ申請を行う際のポイントを中心に解説していきます。現在経営管理ビザをお持ちで,永住ビザの取得を検討されている方はぜひ最後までお読みください。

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永住ビザを取得するための要件とは?

はじめに,永住ビザを取得するための原則的な要件を確認しておきましょう。

【要件1】素行が善良であること

1つ目の要件は「素行善良要件」と呼ばれ,日常生活において法律を守り,社会的に非難されることのない生活を営んでいることが必要です。身近なものでは「交通違反」がありますが,1~2回程度の軽微なものであれば影響しませんが,繰り返し違反を行っている場合は「素行不良」となってしまうので注意が必要です。

【要件2】独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

2つ目の要件は「独立生計要件」と呼ばれ,永住ビザの申請する方が自分で生計を立てるための収入源を持っていること,または,その方と同居している家族が世帯全体の生活を支えられるほどの収入源を持っていることが必要になります。

【要件3】その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

3つ目の要件は「国益適合要件」と呼ばれ,永住ビザを申請する方が日本に永住することで,日本にとってプラスになるかということです。

  • 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。
  • 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務を適正に履行していること。
  • 現に有している在留資格について,入管法に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
  • 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。

などがあります。

永住ビザについては,永住ビザ 要件 で詳しく解説しています。ぜひお読みください。

経営管理ビザから永住ビザを取得するための4つのポイント

続いて,経営管理ビザならではのポイントを4つに解説します。永住許可申請をする直前のタイミングでは準備できないものもありますので,今から準備するつもりでご確認ください。

(1)役員報酬が年間300万円以上あること

年収について明確な金額の基準はありませんが,就労系の在留資格からの永住申請の場合は,最低でも年収300万円は必要だと言われています。経営管理ビザで会社を経営している方の場合は,役員報酬が収入源となりますので,役員報酬を年間300万円以上(月間25万円以上)に設定しておくことが望ましいでしょう。

役員報酬はいつでも変更できるわけではありません。会社の決算状況にもよりますが,ゆくゆく永住ビザを希望されているのであれば,永住ビザ申請が可能な時期(原則,在留10年以上,かつ,就労資格または居住資格を取得した日から5年以上)の5年以上前から役員報酬を年間300万円以上に設定しておいたほうが良いでしょう。

(2)経常損益が黒字であること

会社には法人格があり,法律上は経営者=会社ではありません。そのため,経営者である申請人個人が永住ビザ申請を行う際に,会社の経営状況の良し悪しは本来関係がないはずです。しかし,経営者の役員報酬は,会社の財務状況によって大きく左右されるのが一般的です。財務状況が悪くなれば,役員報酬を引き下げて欠損を圧縮することがあり得ます。最悪の場合,役員を解任されることもあり得るわけです。
そこで,経営管理ビザからの永住ビザ申請の場合は,安定した収入を確保できているかどうかという観点から,申請人が経営する会社の安定性・継続性も審査対象とされています。

会社の財務状況が債務超過(負債が資産を超えていること)にある場合には,経営者である申請人個人が安定した収入を確保できているとは言えません。また,債務超過にはなくとも,欠損が連続している場合には,これも役員報酬を引き下げられる可能性が高いため,安定収入の確保の観点から問題視される傾向にあります。直近2事業年度は経常損益が黒字で回っていることが望ましいでしょう。

(3)会社として社会保険に正しく加入していること

申請人である経営者個人の納税状況は当然ですが,永住ビザの審査においては会社の納税状況も審査対象になります。特に近年は,社会保険の加入の有無,社会保険料の適正納付は厳格に審査されています。
会社は社会保険(厚生年金保険および健康保険)の強制適用事業所とされ,役員一人だけの従業員がいない会社でも社会保険に加入する義務があります。また,社会保険料は労使折半とされ,会社が保険料の半分を負担しなければなりません。

経営者が永住ビザ申請を行う際には,年金事務所が発行する社会保険料納入証明書を提出しなければなりません。社会保険に加入していない場合や,社会保険料を納付していない,あるいは納期遅滞がある場合には,永住ビザの審査において大きなマイナス要因になります。必ず社会保険に加入し,社会保険料を適正に納付するようにしてください。

(4)1年間のうち出国日数が半分を超えていないこと

日本で経営者として活動している外国人の方には,日本以外の海外でも事業を展開し,グローバルに活躍されている方が沢山います。そういった方は,必然的に出国日数が多くなる傾向にあります。

永住ビザ申請においては出国状況も審査対象になり,その頻度や日数からみて日本に活動の本拠がないと評価されるような場合には,永住許可はされません。概ね1年の半分以上(=183日以上)を出国している場合には,永住許可の可能性は大きく下がります。
ただし,出国理由が合理的なものであり,かつ,出国の頻度や期間が相当と言える場合には,出国日数が多くても活動の本拠が日本にあると評価されるケースもあります。海外出国が多い場合には,海外での事業活動や出国理由を示す他,たとえば本社機能を日本に集中させているなど事業活動の本拠が日本にあることを積極的にアピールするようにしましょう。

永住ビザ申請の必要書類

ここからは,永住ビザ申請で提出が必要になる書類についてご紹介します。
【共通の必要書類】と【在留資格別の必要書類】に分けてご紹介します。

【共通の必要書類】

  • 永住許可申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 在留カード,パスポートの原本
  • 理由書
  • 住民票(世帯全員分)
  • 申請人の経歴等がわかるもの(学歴,職歴,日本への在留歴。身分関係)
  • 直近5年分の住民税の課税証明書,納税証明書
  • ねんきん定期便のコピー
  • 健康保険証コピー
  • 了解書
  • 身元保証書
  • 身元保証人の運転免許証等のコピー

これに加えて,以下の書類も必要になります。

【在留資格別の必要書類】経営管理ビザで会社経営している方

  • 経営している会社の登記事項証明書
  • 会社の定款のコピー
  • 営業許可を取っている場合は許可証のコピー
  • 確定申告書控えのコピー
  • 決算書のコピー
  • 会社としての健康保険,厚生年金保険料領収書

上記はあくまで一般的なものです。
実際には申請人の方の経歴や在留状況によって提出する書類が変わります。

よくあるお問い合わせ

経営管理ビザから永住ビザへの申請で,よくあるお問い合わせをご紹介します。

(1)永住権の申請が不許可になったら経営管理ビザはどうなりますか?


経営管理ビザには影響しません。
永住申請が不許可となっても,現在の経営管理ビザが無効になったり,更新できなくなったり,何か不利益になることはありません。永住の不許可の理由にもよりますが,基本的には何回でも永住申請できます。

(2)現在の経営管理ビザが「3年」でも永住申請できますか?


現在は「3年」でも永住申請が可能です。
出入国在留管理庁が公開している「永住許可に関するガイドライン」では,要件のひとつとして「現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。」とされています。本来は最長=5年のビザですが,当面の間は3年のビザでも「最長の在留期間をもって在留していると扱う」こととしています。この運用は,今後変わる可能性がありますので,すでに3年のビザをお持ちの場合は,早めに永住申請を検討されることをおすすめします。

(3)経営管理ビザから永住ビザが取れるまで審査期間はどれぐらいですか?


提出する入管によりますが,1年以上かかる場合もあります。
来日する外国人の人数も急速に増え,すでにコロナ禍前の人数を上回っています。東京や大阪など大都市圏を管轄する入管は大変混雑しており,特に東京では永住申請から結果が出るまで1年以上かかっています。ここ数年で長期化する傾向が続いています。

(4)ほかの就労ビザと比較して,経営管理ビザだと不利になることはありますか?


経営管理ビザだから不利になるということはありません。
ただ,ご本人に関することだけでなく,事業に関することも審査されることになるので,審査対象が広くなります。この点で,会社員の方と比べると不許可のリスクが相対的に高まることにはなります。

経営管理ビザからの永住ビザ申請のポイントのまとめ

経営管理ビザからの永住ビザ申請の際には,他の在留資格とは異なった観点から審査対象となる項目が増えます。
しかし,適正に会社を運営し,利益を上げる体制を構築できていれば,何も恐れることはありません。
外国で事業活動を行うことはとても勇気がいることです。外国人経営者であれば,誰しも安心して事業を運営したいと思うのは当然のことです。

行政書士法人第一綜合事務所では,永住ビザ申請はもとより,外国人経営者が安心して経営活動に専念できるように,あらゆる方向から全力でサポートしています。
経営管理ビザをお持ちの方で永住ビザ申請をご検討中の方は,お気軽に行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 德永 武道

・日本行政書士会連合会(登録番号第23082840号)
・東京都行政書士会(会員番号第14958号)
千葉県出身。東京オフィスに所属し,外国人ビザ申請,永住権取得,国際結婚手続き,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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