渡邉 直斗

資格外活動許可を徹底解説【留学生担当者様向けコラム】

“留学生がアルバイトをするためには,資格外活動許可が必要”
留学生の生活支援・相談業務等をご担当されている皆様であれば,ご認識されていることかと思います。
しかし近年,飲食物の配達請負や動画配信など,これまでには想定されていなかった新しい就労形態が次々と出現している実情があります。
「資格外活動許可」は思いのほか奥が深く,誤った認識のもとで資格外活動に従事した場合,将来のビザ更新や変更の際に取り返しのつかない不利益を被る恐れがあるのです。
ただ,こういった現状について,入管庁が関与者の十分な理解が得られるほどに周知徹底しているとは言い難く,この落とし穴を認識していない学校様も数多くお見受けします。
そこで本コラムでは,留学生のご担当者様へ向け,資格外活動許可の基本から最新の情報まで,留学生特化の情報を展開していきます。

1.「資格外活動許可」とは?

そもそも,「資格外活動許可」とは何でしょうか?
多くの方が,「今持っている在留資格の範囲外の活動をする場合に必要な許可」といった趣旨の回答をされるのではないでしょうか。

しかし,これは「半分」正解,「半分」誤りです。

資格外活動許可とは,上記の理解に加えて,その行おうとする活動が「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」である場合にのみ必要な許可です。

つまり,平たく言うと資格外活動許可は,現在の在留資格外の活動をする場合で,かつ,お金を稼ぐ場合にのみ必要,ということになります。

(臨時の報酬等)
第十九条の三 法第十九条第一項第一号に規定する業として行うものではない講演に対する謝金,日常生活に伴う臨時の報酬その他の報酬は,次の各号に定めるとおりとする。
一 業として行うものではない次に掲げる活動に対する謝金,賞金その他の報酬
 イ 講演,講義,討論その他これらに類似する活動
 ロ 助言,鑑定その他これらに類似する活動
 ハ 小説,論文,絵画,写真,プログラムその他の著作物の制作
 ニ 催物への参加,映画又は放送番組への出演その他これらに類似する活動
二 親族,友人又は知人の依頼を受けてその者の日常の家事に従事すること(業として従事するものを除く。)に対する謝金その他の報酬
三 留学の在留資格をもつて在留する者で大学又は高等専門学校(第四学年,第五学年及び専攻科に限る。)において教育を受けるものが当該大学又は高等専門学校との契約に基づいて行う教育又は研究を補助する活動に対する報酬

ここまでのポイントを整理すると,「資格外活動許可」は,

①現に有する在留資格の範囲外の活動で,
②収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動に従事しようとする場合に必要となる。
③他方,報酬が発生しない場合には,資格外活動許可は不要

とまとめることが出来ます。

2.「資格外活動許可」の一般的な要件

2−1.「包括許可」と「個別許可」

資格外活動許可の一般的な要件に話を進める前に,先に抑えておくべきキーワードがありますので,まずはそちらを確認しましょう。

そのキーワードは,“包括許可”と“個別許可”です。

資格外活動許可は「包括許可」と「個別許可」の2つに区分されます。

通常,留学生がアルバイトのために取得している資格外活動許可は「包括許可」です。これは,「1週間のうち28時間以内(※)」という条件付きで,逐一勤務先等の指定がされない,包括的な資格外活動が許容される許可の種類です。
(※)教育機関の長期休業期間にあっては,1日につき8時間以内に延長されます。

他方「個別許可」とは,予定する資格外活動が,上記の包括許可の時間制限を超える場合や,客観的に稼働時間の管理が困難な場合等に取得するものです。
こちらは包括許可と違い,活動先の機関名や活動期間等が個別に指定され,指定された範囲内のみでの資格外活動が許容されます。

留学生が個別許可を取得する場面としては,有償型インターンシップへの参加が代表的な例です。

2−2.「資格外活動許可」の要件(一般原則)

資格外活動許可の要件は以下のとおりです。

要件は概ね「包括許可」と「個別許可」の両方に共通していますが,重要な点として,包括許可では下記(3)の要件適合が免除されています。

(原則要件)
(1) 申請人が申請に係る活動に従事することにより現に有する在留資格に係る活動の遂行が妨げられるものでないこと。
(2) 現に有する在留資格に係る活動を行っていること。
(3) 申請に係る活動が法別表第一の一の表又は二の表の在留資格の下欄に掲げる活動(「特定技能」及び「技能実習」を除く。)に該当すること。
(4) 申請に係る活動が次のいずれの活動にも当たらないこと。
ア 法令(刑事・民事を問わない)に違反すると認められる活動
イ 風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行う活動又は無店舗型性風俗特殊営業,映像送信型性風俗特殊営業,店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介事業に従事して行う活動
(5) 収容令書の発付又は意見聴取通知書の送達若しくは通知を受けていないこと。
(6) 素行が不良ではないこと。
(7) 本邦の公私の機関との契約に基づく在留資格に該当する活動を行っている者については,当該機関が資格外活動を行うことについて同意していること。

一見すると多くの要件があり,ハードルが高いように感じるかもしれません。
しかし,留学生の場合,学生としての活動を行い,品行方正に生活を送っていれば,一般的なアルバイトを行うための「包括許可」を取得する上で問題になるような要件はほとんどありません。

しかし,個別許可においては,(3)の要件を満たす必要があり,注意が必要です。
(3)の要件は,「予定する活動が,入管法に定められた就労可能な在留資格(一部除く)に該当する活動でなければならない」とするもので,具体的には,予定する活動が以下のいずれかに当てはまらなければなりません。

(3)の要件で該当性が求められる活動

在留資格 本邦において行うことができる活動
外交 日本国政府が接受する外国政府の外交使節団若しくは領事機関の構成員,条約若しくは国際慣行により外交使節と同様の特権及び免除を受ける者又はこれらの者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動
公用 日本国政府の承認した外国政府若しくは国際機関の公務に従事する者又はその者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動(この表の外交の項の下欄に掲げる活動を除く。)
教授 本邦の大学若しくはこれに準ずる機関又は高等専門学校において研究,研究の指導又は教育をする活動
芸術 収入を伴う音楽,美術,文学その他の芸術上の活動(二の表の興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
宗教 外国の宗教団体により本邦に派遣された宗教家の行う布教その他の宗教上の活動
報道 外国の報道機関との契約に基づいて行う取材その他の報道上の活動
高度専門職 一 高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う次のイからハまでのいずれかに該当する活動であつて,我が国の学術研究又は経済の発展に寄与することが見込まれるもの
イ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて研究,研究の指導若しくは教育をする活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営し若しくは当該機関以外の本邦の公私の機関との契約に基づいて研究,研究の指導若しくは教育をする活動
ロ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動
ハ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い若しくは当該事業の管理に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動
二 前号に掲げる活動を行つた者であつて,その在留が我が国の利益に資するものとして法務省令で定める基準に適合するものが行う次に掲げる活動
イ 本邦の公私の機関との契約に基づいて研究,研究の指導又は教育をする活動
ロ 本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動
ハ 本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動
ニ イからハまでのいずれかの活動と併せて行う一の表の教授の項から報道の項までの下欄に掲げる活動又はこの表の法律・会計業務の項,医療の項,教育の項,技術・人文知識・国際業務の項,介護の項,興行の項若しくは技能の項の下欄若しくは特定技能の項の下欄第二号に掲げる活動(イからハまでのいずれかに該当する活動を除く。)
経営・管理 本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く。)
法律・会計業務 外国法事務弁護士,外国公認会計士その他法律上資格を有する者が行うこととされている法律又は会計に係る業務に従事する活動
医療 医師,歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動
研究 本邦の公私の機関との契約に基づいて研究を行う業務に従事する活動(一の表の教授の項の下欄に掲げる活動を除く。)
教育 本邦の小学校,中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校,専修学校又は各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動
技術・人文知識・国際業務 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項,芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで及び企業内転勤の項から興行の項までの下欄に掲げる活動を除く。)
企業内転勤 本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動
介護 本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動
興行 演劇,演芸,演奏,スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動(この表の経営・管理の項の下欄に掲げる活動を除く。)
技能 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動

3.「資格外活動許可」の「留学」上乗せルール

留学生が資格外活動許可を取得する場合には,「包括許可」の取得を希望していることがほとんどであり,その場合は2章で紹介をした(3)以外の原則要件を満たせば資格外活動許可が付与されます。
しかし,留学生が資格外活動許可の「個別許可」を希望する場合には上乗せ要件が用意されています。

すなわち,2章で紹介した原則要件を満たしていることに加え,次のいずれかに該当している必要があります。

(上乗せ要件)

(1)就職活動の一環として職業体験を目的とするインターンシップに従事する場合
(2)申請に係る活動が,語学教師,通訳,家庭教師その他留学生と密接な関係にある職種であること。
(3)申請に係る活動が,社会通念上学生が通常行っているアルバイトの範囲内にある職種であること。
(4)本邦での起業を目的とした準備活動であること。

さて,ここまで留学生の資格外活動許可について,担当者が抑えておくべき知識を一気におさらいしました。

次は,これらの情報をもとに,次章のQ&Aを読み進めてみて下さい。
中にはかなり高度な質問もあります。結論だけでなく,結論に至るまでの経緯を体系的に理解できれば,今後留学生からのイレギュラー質問にも応用が効くことでしょう。

4.「資格外活動許可」よくあるご質問

Q1.ある月の第一週に行ったアルバイトの時間が28時間を超えてしまいましたが,第二週以降は28時間を下回っており,月の合計稼働日数を均すと,週(7日間)の平均稼働時間は28時間以内に収まりました。
この場合であれば「1週について28時間以内」のルールを守ったことになるのでしょうか?

A1.いいえ。「1週について28時間以内」とは,「1週毎に28時間以内」という意味であり,平均で週28時間以内という意味ではありません。
なお,1週の起算点としては,どの曜日からカウントしても28時間以内に収まっている必要があり,以下に記した例は,間違いが多い不適切なシフトの例です。

某月 (第一週)
1日(月)
2日(火)  稼働時間5時間
3日(水)
4日(木)  稼働時間5時間
5日(金)
6日(土)  稼働時間8時間
7日(日)  稼働時間8時間
(第二週)
8日(月)
9日(火)  稼働時間5時間
10日(水) 稼働時間5時間
11日(木)
12日(金)
13日(土) 稼働時間8時間
14日(日) 稼働時間8時間

※第一週,第二週共に合計稼働時間は26時間であり,一見28時間の制限が守られているように見えます。
しかし,4日(木)〜10日(水)までの1週間を切り取って見ると,合計稼働時間が31時間となり,28時間の時間制限を超過している状態(オーバーワーク)になります。


Q2.資格外活動許可(包括)で従事できないアルバイトはありますか?

A2.はい。法令に違反する活動はもちろん,風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行う活動又は無店舗型性風俗特殊営業,映像送信型性風俗特殊営業,店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介事業に従事して行う活動も資格外活動として認められません。
なお,風俗営業を行う事業者であっても,店舗とは別の事務所でデスクワークを行うような場合は,アルバイトの従事は可能です。


Q3.入管庁HPには「個人事業主等として活動する場合等,客観的に稼働時間を確認することが困難である活動に従事する場合は資格外活動の個別許可が必要となります。」とありますが,学生がUber Eats配達員や,Youtuberとして収入を得る活動を行う場合も個別許可が必要ですか?

A3.いいえ。Uber Eats配達員や,Youtuberといった職種では資格外活動の個別許可は取得できません(※)。
近年出現してきた新しい働き方については,入管行政が追いついていない部分があり,現状,これらの職種については包括許可の範囲内での稼働を認め,稼働時間については外国人自身で管理を行わせる,という運用がされています。

(※)Uber Eats配達員やYoutuber等の活動は,留学生の資格外活動許可上乗せ要件である「申請に係る活動が,社会通念上学生が通常行っているアルバイトの範囲内にある職種であること。」に該当しているように見えます。
しかし,そもそも,これらの職種は資格外活動一般原則の(3)「申請に係る活動が法別表第一の一の表又は二の表の在留資格の下欄に掲げる活動」に当てはまりません。
即ち,Uber Eats配達員やYoutuberの活動は,いわゆる「就労ビザ」で従事可能な職務内容ではないため,一般原則の(3)を満たすことが出来ず,個別許可がなされません。
ただし,例えばYoutubeにアップロードをした動画がたまたま有名になり,その結果収益を得た,という場合には,継続性・反復性が認められない(業として行うものではない)活動とみなされ資格外活動とはなりません。


Q4.履修した科目の期末テストが終わり次第,当該学生のアルバイト可能時間は「1日について8時間以内」に切り替わるのでしょうか?

A4.いいえ。1日について8時間以内の稼働が認められるのは,あくまで「教育機関の長期休業期間」のみであり,学則等によって定められた期間に限られます。
つまり,ある学生が期末試験実施期間の1週目で履修科目の試験が終了したとしても,学則等で定められた学校の長期休業期間に入るまでは,当該学生のアルバイト可能時間が1日8時間に変わることはありません。


Q5.学校を休学,退学,若しくは卒業した場合でも,資格外活動許可の有効期限が残っていれば,アルバイトを続けさせても良いですか?

A5.いいえ。たとえ留学の在留期限と資格外活動許可の有効期限が残っていたとしても,既に学業から離れていれば,引き続きアルバイトに従事することは出来ません。これは,資格外活動許可の一般原則に「現に有する在留資格に係る活動を行っていること」という要件があり,「留学」の在留資格を有しているのであれば,資格外活動許可を受けるためには留学生としての活動を行っている必要があるからです。
更に言うと,休学等をしておらず記録上在籍状態にあっても,実態として授業に参加していない等の場合には適法な資格外活動は認められません。
そのような状態でアルバイト稼働を続けていると,最悪の場合,専従資格外活動罪に問われ退去強制の対象になることもあります。


Q6.学校卒業後,就職活動のための「特定活動」に在留資格を変更した場合も,資格外活動許可は取得できますか?

A6.はい。就職活動や,内定待機を目的とした「特定活動」を持っている外国人も,資格外活動許可を取得することが出来ます。
ただし,当該卒業生が就職活動のための特定活動で日本に在留している期間,当該卒業生の管理責任は引き続き学校側に残ることから,学校側は資格外活動を認めないことも可能です。
その場合,学生は資格外活動の包括許可を受けることは出来ず,個別許可での申請を試みることになります。

5.資格外活動許可を徹底解説【留学生担当者様向けコラム】のまとめ

ここまで本コラムを読み進めて頂きありがとうございました。

資格外活動許可について,断片的にではなく,体系的に理解することはとても重要です。

① そもそも,その活動は資格外活動許可が必要な活動なのか
② そうであれば,包括許可で対応可能なのか,個別許可が必要なのか
③ 個別許可が妥当であると考えられる場合には,その許可要件は満たしているのか

といった具合に,学生から資格外活動許可について質問をされた際に,適切な思考プロセスで最適な回答を導くことが可能になります。

中には,情報を整理するのに時間が掛かる部分があったかもしれませんが,本コラムが,皆様の日々の学生支援業務においてお役に立てれば幸いです。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 渡邉 直斗

・日本行政書士会連合会(登録番号第19260365号)
・大阪府行政書士会(会員番号第7712号)
兵庫県出身。大阪オフィス長として,大学や自治体,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請などの国際業務を専門としている。

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