渡邉 直斗

コロナ禍の影響を受けている留学生必見!~新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた留学生への対応について~

2019年12月に発生した新型コロナウイルスは,瞬く間に世界に広がってしまいました。
このような状況を受け,留学生の就職活動は昨年と様変わりしています。
私共のもとにも,窮状を訴える留学生からの相談が相次いでいます。
そんな中,2020年10月19日,出入国在留管理庁より「新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた留学生への対応について」というお知らせがございました。
一人でも多くの留学生にお届けできればとの思いから,今回は出入国在留管理庁が発表した留学生に対する支援策をみていきます。

1.コロナ禍の留学生支援策①(教育機関において引き続き教育を受ける場合)

在留資格「留学」に係る在留期間更新許可を受け,引き続き教育を受ける活動を行うことが可能。
⇒現在在籍している教育機関から転籍等して教育を受ける場合やこれまでの在籍していた教育機関でない教育機関で教育を受ける場合も更新可能。
⇒専ら日本語教育を受ける場合は通常2年間の在留が認められるが,これを超えて更新可能。
⇒資格外活動許可を受けた場合は,原則として1週につき28時間以内のアルバイトが認められる。
(出入国在留管理庁2020年10月19日公表「新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた留学生への対応について」から引用)

従来の内容から大きく変わった点は,以下の内容です。

・専ら日本語教育を受ける場合は通常2年間の在留が認められるが,これを超えて更新可能

これまで日本語学校での学習期間は,2年間の在留が認められていました。
今回のコロナ禍の影響を受け,学習が遅れてしまった留学生や将来の予定変更を余儀なくされた留学生を救済するため,2年を超えて日本語学校に在籍し,学習を継続できるようになりました。

2.コロナ禍の留学生支援策②(教育を受ける活動を行わない場合)

(1)「留学」の在留資格を有していた方が,帰国便の確保や本国国内の住居地への帰宅が困難であると認められる場合は,在留資格「特定活動(6か月)」への在留資格変更許可が可能。
⇒就労を希望する場合は,資格外活動許可を受けなくとも,1週につき28時間以内のアルバイトが認められる。
※10月19日より,卒業の時期や有無を問わない取扱いに変わりました。
(2)2020年に教育機関を卒業した留学生で「留学」の在留資格を有し,資格外活動の許可を受けている方が,帰国便の確保や本国国内の住居地への帰宅が困難であると認められる場合
⇒卒業後であっても1週につき28時間以内のアルバイトが認められる。
(出入国在留管理庁2020年10月19日公表「新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた留学生への対応について」から引用)

上記同様,変更点を中心に解説していきます。

・(1)就労を希望する場合は,資格外活動許可を受けなくとも,1週につき28時間以内のアルバイトが認められる。

これまでは卒業時期によって,取扱いに違いを設けていましたが,2020年10月19日の変更で,卒業時期を問わずに,帰国便の確保や本国国内の住居地への帰宅が困難であると認められる場合には,6ヶ月の特定活動ビザが付与されることになりました。
留学生にとって,非常に大きい変更点です。

付け加えて説明をすると,(1)の帰国便の確保が困難であるというのは,航空券の高騰なども考慮してもらうことができます。
そのため,現在は運航している場合であっても,航空券が高騰しているという事情を説明できれば,帰国便の確保が困難と評価してもらえる可能性があります。

次に,(1)の注意点です。
留学ビザとは異なり,ここで付与される特定活動ビザは,アルバイトの許可は不要です。

特定活動ビザは,法務大臣が個々の外国人に対して指定している特定の活動を意味します。
つまり,今回の帰国便の確保や本国国内の住居地への帰宅が困難であると認められた場合に付与される特定活動ビザは,別途アルバイトの許可を取得しなくとも,法務大臣からアルバイトをしても良いと指定を受けているとご認識ください。

関連して注意が必要なのは,上記の特定活動ビザをお持ちの場合です。
留学ビザの場合には,アルバイトの許可が必要となります。
その旨,誤解のないようにご認識ください。

3.コロナ禍の留学生支援策③(卒業後の就職が決定している場合)

要件を満たせば,在留資格「技術・人文知識・国際業務」等への在留資格変更が可能。
(出入国在留管理庁2020年10月19日公表「新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた留学生への対応について」から引用)

3の内容は,これまでと変更ありません。
また,コロナ禍の影響を受け,留学生からの就労ビザの要件が緩和された等の措置はありませんのでご注意ください。

留学ビザから就労ビザへの変更の要件は,留学ビザから就労ビザへの変更手続き で詳しく記載していますのでご参照ください。

4.コロナ禍の留学生支援策④(卒業後も引き続き本邦内において就職活動を行うことを希望する場合)

在留資格「特定活動」に係る在留資格変更許可を受け,卒業から1年間就職活動を行うことが可能。
⇒通常,就職活動を行う場合は卒業から1年間の在留が認められるが,これを超えて更新可能。
⇒資格外活動許可を受けた場合は,原則として1週につき28時間以内のアルバイトが認められる。
(出入国在留管理庁2020年10月19日公表「新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた留学生への対応について」から引用)

ここでの変更点は,以下のとおりです。

・通常,就職活動を行う場合は卒業から1年間の在留が認められるが,これを超えて更新可能。

これまで留学生が卒業後におこなっていた就職活動は,教育機関を卒業後,1年間に限って許容されていました。
しかし,今回の新型コロナウイルス感染症の留学生への影響を鑑み,8月18日に出入国在留管理庁から下記の内容が公表されました。

それは,これまで教育機関を卒業後1年間に限定していた継続就職活動について,1年間という期限を設けずに許容するというものです。
また,継続就職活動(特定活動ビザ)への変更,または更新の際に提出していた教育機関の推薦状について,1年を超えて継続就職活動(特定活動ビザ)を更新する場合には,不要とする旨を発表しました。

いずれも留学生にとっては大きな運用変更ですので,新型コロナウイルス感染症の影響を受け,就職活動がうまくいっていない留学生の方は,ぜひ参考にしてください。

5.コロナ禍で留学生が取れる手段

本チャプターでは,コロナ禍の影響を受け就職ができなかった場合,留学生はどのような手段をとることができるのか見ていきましょう。

①留学ビザから就職活動のための特定活動ビザに変更する

上記4でもご紹介したとおり,専門学校,大学,大学院を卒業,修了した方であれば,就職活動のための特定活動ビザに変更できる可能性があります。
詳しい変更要件は,【解決事例】就職活動のための特定活動ビザ をご覧ください。

また,海外の大学を卒業し,日本にある日本語学校を卒業された場合,国家戦略特別区域で,かつ要件に該当するのであれば,海外大学卒業外国人留学生の就職活動の特例措置を受けられる可能性があります。

詳細は,下記の内容をご参照ください。
内閣府国家戦略特区・地方創生推進事務局:
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/pdf/r020214.pdf

②留学ビザから特定技能ビザへ変更する

特定技能ビザは,深刻な人手不足の状況に対応するために,2019年4月に創設されたビザです。
特定技能ビザは,14の産業分野からなり,原則として技能試験,日本語試験に合格する必要があります。

留学生の就職が決まらない場合には,留学ビザから特定技能ビザに変更し,コロナの影響がなくなった頃に,特定技能ビザから就労ビザに変更することも一つの手段です。

留学生の中で間違った認識があるのは,特定技能ビザは在留5年を上限とするため,5年後には必ず帰国をしなければならないと考えている方が多いですが,特定技能ビザから就労ビザへの変更は禁止されていません。

そのため,繰り返しになりますが,留学ビザ→特定技能ビザ→就労ビザというビザの変更方法も可能なのです。

③大学や大学院に進学する

日本語学校や専門学校,大学の留学生の就職が決まらない場合には,大学や大学院に進学するのも一つの方法です。

コロナの影響がどのくらい長引くかはわかりませんが,大学や大学院に進学することで専門的な学問を修めることもできます。
学習意欲が高い留学生の方は,大学や大学院への進学を検討するのも一つの方法でしょう。

なお,留学ビザの要件については,留学ビザを専門行政書士が徹底解説! に記載していますのでご覧ください。

④留学ビザから経営管理ビザへ変更する

経営管理ビザは,会社経営者のためのビザです。
会社経営に興味のある留学生は,経営管理ビザへ変更するのも一つの手段です。

もっとも,経営管理ビザの要件は複雑で,また経営管理ビザを取得した後も,経営状況等をビザ更新の度に,入管から厳しくチェックされます。
そのため,きちんとした計画に基づいて経営管理ビザを取得する必要があります。

留学ビザから経営管理ビザの変更方法については,留学ビザから経営管理ビザへの変更方法を行政書士が解説! に詳しく記載していますのでご覧ください。

⑤留学ビザから配偶者ビザや家族滞在ビザに変更する

留学生に結婚を考えているお相手がいる,または留学生の間に結婚をされたような場合には,留学ビザからビザ変更できる可能性があります。

もちろん,ビザ取得を目的とするものは認められません。
真実の結婚である必要があります。
入管はこの点について,非常に厳しく審査していますので,結婚さえすればビザを取得できるわけではありませんので,くれぐれも誤解の無いようにしてください。

なお,結婚したことによって変更するビザの種類については,結婚ビザと配偶者ビザの違いとは? に記載していますのでご参照ください。

6.コロナ禍の影響を受けている留学生コラムのまとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は,2020年10月19日に出入国在留管理庁から公表された「新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた留学生への対応について」を解説してきました。
また,上記5では,コロナ禍で留学生が取れる手段として,具体的な方法を見てまいりました。

2021年卒業の留学生,2022年卒業の留学生にとっては,コロナ禍の中での就職活動となり,非常に厳しい状況であると耳にします。
しかし,このような状況下においても,今回,出入国在留管理庁から公表された内容のように,留学生の救済に繋がる情報も少しずつですが明らかになってきています。

厳しいコロナ禍の状況ではありますが,留学生の皆さんが諦めない限り,私たちも諦めることなくご支援させていただきます。

ご相談は無料で承っております。
英語,中国語,ベトナム語,韓国語にも対応していますのでご安心ください。

就職活動がうまくいかず,また帰国することができずお困りの留学生は,お気軽に行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 渡邉 直斗

・日本行政書士会連合会(登録番号第19260365号)
・大阪府行政書士会(会員番号第7712号)
兵庫県出身。大阪オフィス長として,大学や自治体,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請などの国際業務を専門としている。

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