帰化申請の相談事例集
帰化申請には,次のような特徴があります。
・提出書類の量が膨大で許可までの手続きが複雑
・国籍や家族構成,生活状況によって書類の種類が異なる
実際に手続きを進めると,分からない事,判断に迷う事が次々と出て来るでしょう。
私たちはこれまで,数多くの相談を受け,申請人に伴走しながら許可を取得して来ました。本コラムでは,実際に弊社に寄せられたご相談をもとに,よくある質問と行政書士の回答をご紹介します。
Index
1.帰化申請とは
日本への帰化申請とは,「日本人」としての身分・国籍を得るための手続きのことです。「外国人として」日本に住み続ける永住許可申請や在留資格申請等とは違い,帰化するためには母国の国籍を喪失しなければなりません。
帰化申請の申請先は各地の法務局で,ビザ申請で馴染みのある入管(出入国在留管理局)ではありません。
2.帰化申請手続きの実務・流れについてのご相談
帰化申請は,予約制です。
申請を希望される方が住んでいる住所地を管轄する法務局に事前相談の予約を取り,相談員と面談を行います。
面談では,詳細に申請人の身分関係や生活状況,日本に来てからの経歴を聴取されます。その上で,「あなたの場合はこんな書類が必要です」「この書類を書いてください」と指示を受け,資料の収集及び作成を開始します。
一度書類が全部揃えば書類の点検を受け,修正指示と再確認を繰り返します。最終的に書類が全て整えば,初めて申請が受け付けられ,審査が始まります。
その後,申請が受け付けられてから約3ヶ月後に法務局での面接と自宅訪問があります。
面接後6~8ヶ月後に審査の結果が出て,許可であれば官報への掲載,不許可であればその旨の通知があります。
以下は,帰化申請の手続きについて多いご質問です。
回答1.はい。必ず本人が法務局に出頭し,書面を提出しなければなりません。入管への在留資格申請などのように,手続きのすべてを取次者(弁護士や行政書士等)や申請代理人に任せることは原則的に認められていません。
ただし,本人出頭が必須なのはあくまで申請受付時です。そこに至るまでの初回相談,書類点検,書類作成・収集は,私達行政書士が代理で可能です。また,申請受付時の際にも,申請人の不安を解消すべく,法務局まで同行いたします(※)。
※同行対応エリアに限ります。
回答2.帰化申請の受付けまで何回法務局へ行かないといけないという規定はありません。
ただ,実際には法務局から指示された書類を準備し,法務局が点検する時に,不備や抜けがあると再提出を求められます。多い方ですと10回以上法務局へ行くことになってしまったというケースも耳にします。
弊社にご依頼いただいた場合,必要書類等の事前確認は全て弊社で行いますので,申請受付までに法務局に出向いていただくことは1度もありません。
申請受付後は,①受付日当日を含め,②審査官との面接,③許可後の説明会参加の3回,法務局に出頭して頂く必要があります。
回答3.定型の質問事項があるわけではありません。審査で重要視されるのは主に次の三項目です。
ア・あなたが申請した(書面の)内容と,面接での回答内容に相違ないか。
イ・帰化を志望する理由。なぜ日本に帰化したいのか。
ウ・日本語能力。
このことを頭に入れて面接に臨みましょう。
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回答4.帰化申請の受付けから早い方で6ヶ月,通常は1年程度かかります。外国籍から日本国籍に変わるための重要な手続きなので,審査・確認する書類の量が多く,多岐にわたるためです。
注意していただきたいのは,審査期間中の生活状況も審査対象になるということです。住所変更や結婚など,申請内容に変更がある場合は,法務局に報告しなければなりません。
回答5.その通りです。詳細についての説明は割愛しますが,特別永住者は特に日本との結びつきが強いことから,書類が簡素化されています。管轄の法務局によって多少扱いが異なるものの,帰化動機書,在勤・給与証明書および最終学歴の卒業証明書などが省略可能です。
回答6.できますが,未成年者は原則としてご自分だけで帰化申請することはできません。申請人が15歳未満なら親権者などの法定代理人が代理で申請を行います。15歳以上18歳未満の時は書類の作成や面接などは自分で行いますが,両親のどちらかと一緒に申請する必要があります。
回答7.はい。自由に決められますし,帰化後の本籍地の変更も自由です。戸籍謄本など本籍地を管轄する市区町村役場でしか取得できない書類もあるため,最初は住所地の近くに本籍地を置く方が多いです。ただし,日本人の配偶者がいる場合は配偶者と同一戸籍に入る必要があることに留意してください。
回答8.はい。日本で通称名を名乗っている方はそのまま使用できますし,新しくご自分が呼ばれたい氏名を名乗ることも可能です。
ただ,氏名の表記には注意が必要です。日本人の氏名は漢字(人名用漢字・常用漢字),平仮名,カタカナで表記する必要があります。そのため,アルファベット表記や本国の文字,人名用漢字・常用漢字以外の漢字は,帰化後の氏名として使用することはできません。
また,日本では現在,夫婦同姓です。日本人の方と結婚されている場合は,夫婦で同じ姓を名乗る必要があります。
過去に台湾や香港の方で,氏名を複数回変えている方をお見かけしたことがありますが,日本では氏名の変更には合理的な理由が必要とされ,裁判手続きが必要です。熟考した上で,日本人として名乗る氏名を決めておきましょう。
回答9.その挫折感は,自分で帰化申請をされる多くの方が感じていらっしゃることです。決してあなたの努力・能力不足ではありません。帰化申請はそれだけ労力・精神力が削られる大変な手続きです。その負担を軽減するために我々のような専門家がおりますので,ぜひ一度,弊社の無料相談をご利用下さい。
3.帰化の条件についてのご相談
帰化とは「外国人」であった方が「日本人」としての身分を取得することなので,誰でも無条件に許可するわけにいきません。「
日本で長く暮らしているか」(住所条件)「日本の法律を守る気があるか」(素行条件)「日本人として働き,生計を維持できるか」(生計条件)といった,いくつかの条件があります。
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その中でも特に質問の多い「素行要件」について以下に記載します。
回答1.この後のご相談への回答にも関連します。法務局が確認したいのは,「日本国民として日本の法律を守る気があるか?」という点です。
日本人でも「うっかり」法律に違反してしまうことはありますよね。道交法に限らず,軽微な法律違反であれば帰化許可の可能性は十分にあります。
道交法に関していうと,過去5年分の運転記録証明書を法務局に提出しなければなりません。過去5年間で減点1~3点レベルの軽微な道交法違反が1~3回程度であれば,帰化申請手続きを進めてよいでしょう。
ただ,軽微であっても同様の交通違反を繰り返したり,重篤な交通違反(無免許運転,重大な速度超過の結果免許取消など)を犯した場合は,数年間は帰化許可申請を控えた方が良いです。心当たりがある方は弊社にご相談下さい。
回答2.オーバーステイをしてしまったことでご心配ですね。
帰化申請では,永住許可申請より「素行条件」を厳しく判断します。判断基準になるのは,オーバーステイそのものよりも「在留特別許可を取得した時期」です。
在留特別許可を申請した時期が帰化申請を行う日から10年未満であれば,帰化申請は難しい傾向にあります。でも,あきらめないでください。弊社ではお客様のご要望を尊重しながら,永住権の取得も考慮に入れ,お客様にとって納得のいくご提案をさせて頂きます。
回答3.申請はできます。帰化申請は,過去に不許可だったからと言って申請を受理しないということはありません。また,再申請を制限する規定もないので何度でも申請することができます。ただし,前回の不許可理由を払しょくしていなければ最新をしても徒労に終わります。
弊社では,過去に不許可歴のある方の場合は,「なぜ不許可になったのか?」理由を推測し,その他の要件も考慮しながら,お客様に合わせた申請スケジュールを提案しています。
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4.家族・仕事・生活(社会保障)についてのご相談
本チャプターでは,家族のこと,仕事・収入のこと,生活・社会保障について,それぞれご質問を記載しています。
①家族のことについてのご相談
回答1.まずはお客様が18歳未満であれば,単独での申請はできないので,ご家族と一緒に申請することをお勧めします。
18歳以上であったとしても,お客様が日本に一人で来た留学生である場合は,生活の本拠は海外で家族が住んでいる場所とみなされるでしょう。日本での住所条件(原則5年以上)を満たしませんので,単身では帰化申請できないことになります。
もし家族ぐるみで日本に住んでいて,進学先が遠方だから一人暮らしという場合は,生活の本拠は日本にあると判断されるため,単身でも帰化許可の可能はあります。
また,生計面についても,ご自分のアルバイト収入の他に,ご両親から仕送りを受けているといった事情があれば,ご両親の収入や仕送りの証明(通帳のコピー等)を提出することで生計条件もクリアできるでしょう。
回答2.帰化の生計条件は,「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること」です。つまり,「世帯ごと」に審査されるのです。あなたが無職でも,旦那様の協力を得ることができるのなら,帰化許可の可能性があります。
回答3.連れ子の方が18歳未満だと,お客様と一緒に申請しない限りは単独で帰化申請することはできません。18歳以上で,他の帰化の条件を満たしているなら,連れ子の方だけで帰化許可申請を行うことは可能です。
回答4.日本語能力は帰化の条件の一つです。日常レベルの読み書き会話で,一般的には小学校3年生レベルの日本語能力があれば足りると言われています。
先に書いた通り,本人の面接で日本語能力が審査されます。会話だけでなく,簡単なペーパー試験が実施されることもありますので,自信のない方は事前に勉強しておきましょう。
②仕事・収入についてのご相談
回答1.帰化の生活条件には,明確な金額の設定はありません。「個々の事情によって異なる」という回答になります。
ただ,日本で「安定した」収入があるかがポイントであることは間違いないです。
「安定した収入」とは,日本人として暮らす将来に向けてのものです。「3年前まで日本で働いていた。預貯金は1000万円。でも今は無収入」という方と,「預貯金は50万円しかないけど,今日本で働いていて毎月給料が20万円ある」という方であれば,後者の方が帰化申請はスムーズに進みます。
また,帰化の審査は申請者単独ではなく「世帯収入」で行います。あなたの配偶者が日本で稼いでいるとか,親族が仕送りをしてくれる等の事情も考慮されるでしょう。
あとは,「収入と支出のバランス」も大切です。いくら稼ぎがあっても,あなたの「世帯」の家賃・生活費・教育費等の支出がかさみ,毎月赤字続き。預貯金を切り崩さないと生活できないといった場合は,帰化許可が難しいでしょう。
回答2.無職のままでは帰化は出来ません。少し帰化の話からは逸れますが,就労ビザを持っている方が,正当な理由なく3か月以上就労活動を行っていない場合,入管法上の在留資格取消事由にも該当し,不安定な在留状態となります。お客様が帰化申請前であれば,転職活動を優先し,半年ほど稼働実績を作った上で申請をすることとお勧めします。
回答3.転職することは問題ではありません。しかし,転職をすることによって,勤務実績と収入の増減という点から審査において不利益に働く可能性があります。勤務実績という点から述べると,転職歴の多い人は,法務局の担当官から「現在の職場は長続きするのか?「長続きしないのであれば,将来的に自ら生計を立てることが出来ないのではないか?」という心証を抱かれる可能性があります。そのため,転職された方は,帰化申請する時期を慎重に検討すべきでしょう。
回答4.世界を飛び回ってご活躍なのですね。日本からの出国日数は「日本に引き続き5年以上の住所を有する」とする「住所要件」の判断に影響します。
「引き続き日本に住む」とは,「日本から出国している期間が3ヶ月以内」とされます。3ヶ月以上の長期出張をした場合,「日本に『引き続き』住所を有する期間(=5年)」,のカウントがリセットされ,一から積み上げなくてはならない可能性があります。
1度の出国日数が3ヶ月未満だったとしても,1年間のトータル出国日数が100日を超えると,同様に期間がリセットされる可能性が出てきます。
もっとも,出国日数の基準を満たしていないから,必ず帰化申請が不許可になるわけではありません。出国理由を明らかにし,理由が合理的で,その頻度・期間が相当であることを「理由書」などで説明すれば,帰化申請が許可されるケースもありますので,諦めずにご相談ください。
回答5.お客様が就労ビザをお持ちとのことであれば,それは難しいでしょう。帰化申請では,「在勤及び給与証明書」という書類を,勤務先の会社に作成してもらわなければなりません。通常は「なぜ,どこに提出するの?」というやり取りがあるでしょう。また,審査中に法務局から会社に対して内容確認の電話調査が行われることもあります。このため,一般的には会社に内緒で帰化申請することは困難です。
(※)「特別永住者」の方については,職場に外国人であると言わずに働いている方も多いという事情に配慮し,「在勤及び給与証明書」の提出は代替書類でよしとされています。会社への調査もありません。そのため,特別永住者の方は,会社に知られることなく帰化申請を行うことが可能です。
回答6. 年収が一時的に低下した場合はその理由が重要です。お客様の場合は「産休・育休を取ったから」という合理的な理由があると言えますので,それを説明することになります。
復帰後の状況や配偶者の稼働状況などから,安定した生計状況にあることが証明できれば,帰化許可の可能性は十分にあります。
③生活・社会保障についてのご相談
回答1.生活保護を受けている「から」帰化申請できないという規定はありませんが,働く能力があるにも関わらず生活保護を受給している場合は,生活条件に適合せず,帰化許可の取得は極めて難しいです。
帰化申請をする前に,生活保護に至った経緯,あなたの個別の事情,将来の見通しなどを慎重に総合的に検討する必要があります。
なお,帰化申請者本人が生活保護を受給していなくても,日本に住んでいる親族が生活保護を受給している場合は,帰化申請の審査に影響することがあります。あなたと親族の関係,生活状況などをきちんと整理して慎重に判断しましょう。
回答2.児童扶養手当を受給していること自体はマイナス評価されないでしょう。しかし,児童扶養手当を受給しているとのことであれば,一定金額以下の所得であると推測します。ですので,実際の収入と支出と照らし合わせ,問題なく生活を営めているとのことであれば十分に帰化申請は許可になり得ます。
回答3.国民年金の未納期間がある「から」,必ず帰化申請が不許可になるわけではありません。ですが,許可の可能性は下がります。
帰化申請のためには「日本国民として日本の法律・制度に則って生活する」ことが求められるからです。実務上,過去の未納分のうち,支払可能期間分は納付し,領収書を提出する等して,現に保険料を支払っていること,将来も支払う意思と能力があることを証明する必要があります。
なお,年金の免除・減免を受けている方については,「年金の免除・減免を受けるほど収入が低くて大丈夫か?」という観点から,生計条件に問題ありと判断される恐れもあります。
回答4.配偶者の方が日本で社会保険に加入していて,申請者がきちんと国民年金「3号被保険者」として年金加入の手続きを行っていれば,帰化許可は可能です。
もちろん,あなたが年金加入の手続きをしていなければ帰化申請が不許可になる可能性があります。帰化申請をする前に,ご自分が年金加入の手続きを行っているか調べておきましょう。
回答5.ご自分が社会保険に加入していない場合は,国民健康保険と国民年金に加入しているはずです。そのため,国民健康保険料,国民年金保険料の双方をしっかり支払っていれば,帰化許可の可能性は十分にあります。
回答6.ご自分が経営する会社が法人で,社会保険の強制適用事業所であれば,やはり社会保険に未加入のままでは帰化許可は得られないでしょう。帰化申請をするのであれば,法令順守の観点から,社会保険への加入手続きを行わなければなりません。
最低でも1年程度の実績を作ってからの申請をお勧めします。
5.帰化申請の相談事例集のまとめ
本ページでは,弊社に寄せられたご相談をもとに帰化申請の相談事例を記載しました。
「疑問や不安が解決した!」と思う方がいらっしゃったら嬉しく思います。
また一方で,「帰化申請って,こんなにいろんな条件があるの?」「こんなに時間がかかるの?」と気付きが合った方もいらっしゃるかもしれません。
帰化許可というゴールを目指すために大切なのは,「帰化の条件を満たしていること」「それを証明すること」「そのための提出書類に間違いや漏れがないこと」の三点が挙げられるでしょう。
ご自分だけでストレス無く帰化申請ができればそれに越したことはありません。
しかし,私達のような専門家にお手続きを任せて頂くことで,スムーズに準備・審査が進み,結果として帰化許可が出るまでの期間を短縮できます。
先に書いた通り,私達は帰化申請の無料相談も行っています。
帰化申請は孤独な旅になることもありますので,不安になったときの聞き役,あなたの共感者・伴走者として,一度弊社のご利用を検討してみてください。