冨田 祐貴

不動産投資による経営管理ビザ取得

日本で不動産を買えば,ビザを取得できますか?というお問い合わせを不動産会社の方からよくいただきます。買い手はほとんどが,中国・香港の方です。
本ページでは,そんなお問い合わせにお答えするために,不動産投資によって経営管理ビザを取得できるのか,という点に着目して解説いたします。

1.中国人富裕層が日本の不動産に投資する背景

中国では,近年の急激な経済成長によって,大都市圏や香港の不動産が高騰している一方で,利回りが低く,取得しても完全な所有権が認められていないため,富裕層は海外不動産に注目しています。
その中でも,日本の不動産市場は安定しており,利回りも良いため,中国人富裕層に人気があるのです。
日本は外国人の不動産取得に規制を設けていない点も,人気に拍車をかけている理由でしょう。
北海道や沖縄では,中国人富裕層が周辺の不動産を買い占めているという地域もあるようです。

日本の不動産会社も中国人富裕層をターゲットに,どんどん売り込んでいます。
中国人富裕層は投資目的で不動産を買い求めていますが,日本の住環境や教育,医療制度に魅力を感じ,日本に住みたいと考えて不動産を購入する方も多くいます。
また,中国人富裕層の方で日本に何度も旅行に来られる方は,毎回観光ビザを取得することが面倒なため,もっと簡単に行き来ができる方法を求めています。

そこで,目を向けられるのが,不動産を取得したことによって経営管理ビザを取得できないかという点です。

2.経営管理ビザで求められる「経営」とは?

では,外国人が日本の不動産を取得すれば,経営管理ビザを取得できるのかというと,不動産を取得しただけでは経営管理ビザを取得することはできません。
その理由を紐解いていきましょう。

日本は,外国人が日本で行う活動に対してビザ(在留資格)を与えており,それぞれの在留資格ごとに,どのような活動が該当するかを規定しています(在留資格該当性といいます。)。
経営管理ビザの場合,「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」と規定されています。
すなわち,日本で事業を経営する活動や事業の管理に従事する活動に対して,経営管理ビザが与えられるのです。

それでは,不動産を取得することは,事業の経営と言えるでしょうか。
この点が,不動産投資によって経営管理ビザ取得を目指す場合のポイントになりそうです。

事業とは,一定の目的をもって継続的に組織,会社,商店などを運営することを言います。
この点,不動産を取得することは一過性のものに過ぎませんので,それだけでは事業とは言えません。
例えば,購入した不動産を賃貸物件にする,民泊物件として利用するなどして,収益を上げない限り,事業とは言えないのです。

したがって,不動産を取得しただけでは,事業とは言えませんので,経営管理ビザを取得することはできないという結論になります。

3.不動産賃貸業で求められる規模

購入した不動産を賃貸物件として貸し出す場合,それは不動産賃貸業という事業になります。
ただし,経営管理ビザは,一定以上の規模がないとビザを取得することはできません。

事業である以上,事業運営にかかる経費を売上(=賃料)で賄えることが必要になります。
事業運営には役員報酬の他に,不動産物件の管理委託費,固定資産税,損害保険金,事務所の賃料,事務員を雇う場合には人件費もかかります。
また,会計上,建物の減価償却費が経費計上されます。これらの経費を不動産の賃貸収入で賄わなければなりません。

仮に想定される年間経費が500万円であるとすれば,年間500万円以上の賃料収入が見込まれなければ,事業として立ち行かなくなります。
利回り率を4%と仮定すると,1億2500万円以上の投資が必要になります。

また,融資を受けて事業を始める場合には,返済金も考慮しておく必要がありますので,賃料収入として確保しなければならない額はもっと増えることになります。

このように,不動産賃貸業を事業として運営しようとする場合には,相当規模の先行投資がまず必要になります。
5000万円前後の居住用マンションの一室を購入しただけでは,不動産賃貸業としては成立しません。

つまり,不動産投資による経営管理ビザ取得を目指す場合には,2つ,3つと複数の不動産を取得する必要があるのです。

4.当社がお勧めする不動産の事業形態

上記のように,不動産事業を行うには,多額の先行投資が必要になります。
しかし,現実的に考えても,誰もが1億円以上の先行投資をできるわけではありません。

そこで,当社がお勧めするのは,不動産賃貸業と並行して他の事業も行うことです。
事業を複数行うことによって,リスクヘッジにもなる利点もあります。

例えば,不動産賃貸業の傍ら,貿易事業を行う,旅行サービスの紹介事業を行うなどです。
また,日本で不動産を購入する中国人の方の多くは,中国で事業を営んでいます。
そういった方には,中国で行っている事業に関連する事業を日本で展開することなどをお勧めすることもあります。

これまで中国で行っている事業の海外進出という形になりますので,事業内容の信憑性が格段に高くなります。よって,経営管理ビザを取得する観点からも,有利になると言えるでしょう。

5.不動産投資による経営管理ビザ取得のまとめ

以上のように,不動産賃貸業を事業として経営管理ビザを取得することは不可能ではありません。
ただし,不動産賃貸業は事業リスクが大きいのが特徴です。

人気のない物件を購入してしまった場合には,不動産購入したものの借り手がつかず空室が続くことさえあります。
そうなってしまうと初期投資の回収は困難になりますし,会社のキャッシュフローは悪化します。
そのため,経営管理ビザの取得の前に,慎重な投資物件の選定が必要となります。

行政書士法人第一綜合事務所では,経営管理ビザの取得のみならず,提携企業にて不動産物件のご紹介も承っております。
中国語,英語,ベトナム語でのご対応も可能ですので,不動産投資で経営管理ビザ取得を目指す場合には,ご遠慮なく当社までお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 冨田 祐貴

・日本行政書士会連合会(登録番号第19261319号)
・東京都行政書士会(会員番号第14030号)
兵庫県出身。東京オフィス長として,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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