冨田 祐貴

経営管理ビザが認められる事務所とは?

経営管理ビザの取得を目指す方からのご相談で,どのような事務所を準備すれば良いのかというご相談を多くいただきます。
そこで本コラムでは,経営管理ビザ取得のための事務所の要件について,事例を交えながら国際行政書士が解説していきます。
本コラムをご覧いただくことで,
・自宅兼事務所で経営管理ビザは取得できる?
・経営管理ビザで求めている事務所とは?
・レンタルオフィスでも大丈夫?
・経営管理ビザ更新の際も事務所は必要?
など,様々な疑問を解決いただけるかと思います。いずれも重要な論点ですので,ぜひご覧の上ご活用ください。

1.経営管理ビザを取得するために事務所は必要?

この疑問を解消するためには,法務省令(いわゆる基準省令)を確認するのが理解の近道です。
それでは,さっそく法務省令を見てみましょう。

(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令)
「法別表第一の二の表の経営・管理の項の下欄に掲げる活動」
一 申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし,当該事業が開始されていない場合にあっては,当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。

まず前段を見ると,申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在することとなっており,経営管理ビザを取得するためには,事務所が必要という事がわかります。
次に後段を見ると,当該事業が開始されていない場合にあっては,当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていることとなっています。
これらをまとめると,

  • 事業が開始されていない場合であっても,事務所の「確保」は必要
  • 既に事業を開始している場合については,事務所の「存在」が必要

ということになります。
いずれにしても,経営管理ビザを取得するためには,事務所を準備する必要がありそうです。

2.経営管理ビザ申請において事務所として認められたケース

それでは,ここからは法務省が公表している「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」より,経営管理ビザ申請において事務所として認められたケースを具体的にみていきましょう。

(事例1)
Aは,本邦において個人経営の飲食店を営むとして在留資格変更許可申請を行ったが,事務所とされる物件に係る賃貸借契約における使用目的が「住居」とされていたものの,貸主との間で「会社の事務所」として使用することを認めるとする特約を交わしており,事業所が確保されていると認められたもの。

経営管理ビザを取得するための事務所は,賃貸物件の場合,使用目的が住居では要件を充足せず,事業に使用することを明確にする必要があるとされています。
仮に,本事例のように使用目的が住居になっているような場合には,事業に利用することを貸主が承諾していることを明示する必要があります。
本事例では,貸主から「会社の事務所」として使用することを認める特約を交わしていたことから,貸主から事業に利用することの承諾があったものとして扱われた事例です。

(事例2)
Bは,本邦において水産物の輸出入及び加工販売業を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったところ,本店が役員自宅である一方,支社として商工会所有の物件を賃借していたことから,事業所が確保されていると認められたもの。

本事例は,登記上の本店所在場所のみが事務所として認定されるわけではないとするケースです。
今回の事例では,登記上の本店は役員の自宅にしています。
これとは別に,支社として事務所の物件を賃貸していました。
このように,本店のみが事務所として認定されるわけではなく,たとえ本店は役員の自宅であったとしても,経営管理ビザの要件に該当する事務所が別に確保されているのであれば問題ありません。

(事例3)
Cは,本邦において株式会社を設立し,販売事業を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが,会社事務所と住居部分の入り口は別となっており,事務所入り口には,会社名を表す標識が設置されていた。また,事務所にはパソコン,電話,事務机,コピー機等の事務機器が設置されるなど事業が営まれていることが確認され,事業所が確保されていると認められたもの。

本事例は,自宅兼事務所が問題となった事例です。
ポイントは,居住スペースと事業のために使用するスペースが明確に区分されているかという点です。
本事例は,会社事務所と住居部分の入り口は別になっていますので,明確に区分されていると見ることができます。
また,事務所入り口には,会社名を表す標識が設置されており,社会的標識を掲げていることから,外形上も事業のために使用するスペースであると認識できます。
さらに,事務所にはパソコン,電話,事務机,コピー機等の事務機器が設置されるなど事業が営まれていることが確認されていることから,実態として事務所があると評価された事例です。

上記に関連して,自宅兼事務所の場合には,上記以外に2つの注意事項があります。

1つ目は,公共料金等の共用費用の支払いに関する取決めです。
事業で使用したものか日常生活で使用したものか明確にしておく必要があります。
このように,自宅兼事務所の場合には,形式的にも居住と事業の区分を求めているのです。

2つ目は,物理的に区分された部屋を,事業用のみに使用する部屋として確保していなければなりません。
たとえば,1階は事務所,2階は住居といったように明確に区分することができるのであれば,事務所として使用できるでしょう。
反対に,リビングの一画を事務所として使用する場合は専有部分が不明確ですので,事務所を確保しているとは認められません。
持ち家がマンションの方から「空いている一室を事務所にしたい」というご相談をいただくことがありますが,この場合には検討すべき事項が多岐に亘ります。
自宅兼事務所で経営管理の取得を目指す場合には,論点は多いのですが,漏れなく要件に適合しているか確認することが肝要です。

3.経営管理ビザ申請において事務所として認められなかったケース

本チャプターでは,上記同様,法務省が公表している「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」より,経営管理ビザ申請において事務所として認められなかったケースを具体的にみていきます。

(事例4)
Dは,本邦において有限会社を設立し,当該法人の事業経営に従事するとして在留期間更新許可申請を行ったが,事業所がDの居宅と思われたことから調査したところ,郵便受け,玄関には事業所の所在を明らかにする標識等はなく,室内においても,事業運営に必要な設備・備品等は設置されておらず,従業員の給与簿・出勤簿も存在せず,室内には日常生活品が有るのみで事業所が確保されているとは認められなかったもの。

本事例は,経営管理ビザで必要とされる事務所がないと判断された事例です。
外形上,また実態としても,事務所がないというのは,記載内容からも明らかです。
本事例に関連する注意事項を記載すると,経営管理ビザの事務所は,ビザを取得するタイミングだけで必要となるわけではなく,経営管理ビザをもって経営活動している間は常に必要です。
たまに誤った認識をお持ちの方がいて,経営管理ビザを取得した後,すぐに事務所を解約している方がおられますが,それは間違いです。
経営管理ビザの更新の際も,入管から事務所の存在についてはチェックされているとご認識ください。

(事例5)
Eは,本邦において有限会社を設立し,総販売代理店を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが,提出された資料から事業所が住居であると思われ,調査したところ,2階建てアパートで郵便受け,玄関には社名を表す標識等はなかったもの。

また,居宅内も事務機器等は設置されておらず,家具等の一般日常生活を営む備品のみであったことから,事業所が確保されているとは認められなかったもの。
事例4と同趣旨の内容ですが,ここでも経営管理ビザの入管審査においては,社会的な標識の有無が重視されていることをご理解いただけるかと思います。

  • 会社名が記載されている看板や会社名が記載されたプレートを入口に設置する
  • 郵便受けに会社名が記載されたプレートを設置する

形式的な内容にはなりますが,これから経営管理ビザの取得を目指す方は,上記の準備をするようにしてください。

(事例6)
Fは,本邦において有限会社を設立し,設計会社を営むとして在留資格変更許可申請を行ったが,提出された資料から事業所が法人名義でも経営者の名義でもなく従業員名義であり同従業員の住居として使用されていたこと,当該施設の光熱費の支払いも同従業員名義であったこと及び当該物件を住居目的以外での使用することの貸主の同意が確認できなかったことから,事業所が確保されているとは認められなかったもの。

事例1,事例3の複合的な内容です。
本事例から見るポイントは,

  • 事務所の賃貸借契約が事業主名義(法人の場合は法人名義)でなされていること
  • 賃貸借契約の名義が事業主と異なる場合には,転貸借契約の締結と貸主の転貸承諾を受けて,事業主の使用権原を明らかにする必要がある
  • 公共料金等の共用費用の支払いは,事業用か否か明確に区分する必要がある

ぜひ,上記のポイントを参考にしてみてください。

4.バーチャルオフィスやレンタルオフィスはどうなる?

比較的安価に事務所を借りることができる「バーチャルオフィス」や「レンタルオフィス」を検討している方もいらっしゃると思います。どちらも,経営管理ビザで認められるのでしょうか?

【バーチャルオフィス:×】
事業を始める際に必要な住所,電話番号などの基本的な情報だけを借りることができます。ただ,業務スペースはありません。これまで見てきた事例でもおわかりのとおり,物理的に業務スペースが確保されていないと,たとえ法人名義でバーチャルオフィスの契約を交わしたとしても,経営管理ビザでは事務所として認められません。

【レンタルオフィス:△】
一方のレンタルオフィスは,業務スペースが確保されていることが一般的です。ただし,スペースには様々なタイプがあり,タイプによって経営管理ビザで認められる場合と,認められない場合に分かれます。

レンタルオフィスが事務所として認められる条件

  • 業務が行える一定の面積があること
  • 業務に必要となる設備があること
  • 他のスペースと明確な仕切りがあること

好きなデスクを自由に使えるブースタイプや,天井までない壁で区切られている半個室タイプなどでは,事務所として認められないでしょう。レンタルオフィスを検討されている場合は,利用契約を交わす前に条件をクリアしているかよく確認しましょう。

5.経営管理ビザの事務所の条件のまとめ

経営管理ビザ取得のための事務所の要件について,かなり細かい論点もありましたがご理解いただけたでしょうか。
上記の説明に付け加えると,これから行う事業によって必要となる事務所は多少異なります。
例えば,貿易業で在庫を抱える事業を行う場合,在庫スペースも必要ですし,飲食店を経営する場合には,厨房設備はもちろん,客席の設置も求められることになります。
つまり,経営管理ビザにおいて事務所は,形式的に事務所が存在することだけでは足りず,これから事業を遂行するにあたって,当然に必要となる設備やスペースも求めているということです。
ですから,形式的に事務所が準備されていても,経営管理ビザにおける事務所要件に適合しないケースもありますので,この点ご注意ください。
経営管理ビザにおける事務所要件に適合せず,不許可になったというご相談は一定数ございます。
これからスタートという時に,出鼻をくじかれ,意気阻喪するのはあまりにもったいないです。
ぜひ,正しい情報を仕入れ,憂いなく経営者としての手腕を発揮していただければと思います。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 冨田 祐貴

・日本行政書士会連合会(登録番号第19261319号)
・東京都行政書士会(会員番号第14030号)
兵庫県出身。東京オフィス長として,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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