【特定技能ビザ】「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」分野統合後の変更点と注意点
2022年5月25日より,従来は3分野に分かれていた製造業の特定技能外国人受入れ可能分野が,「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」として1つの分野へと統合されました。
本記事では,分野統合に至った背景や,統合後の変更点や注意点を紹介しております。
製造業にて,特定技能外国人の受入れをする予定の機関に限らず,既に受入れ中の機関にとっても重要な内容ですので,ぜひ最後までご一読下さい。
Index
1.「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」統合の背景
従来は,3分野に分かれていた素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野は,受入れ上限数に達した統合前分野での受入れ再実現や,手続きの簡素化を主な理由として統合されました。
特定技能外国人の受入れが認められている12分野では,それぞれ受入れ上限数が設定されており,統合前にあった「産業機械製造業分野」で設定されていた特定技能外国人の受入れ上限数(5,250人)が,2022年2月末時点で人数超過しました。
人数超過の結果として,産業機械製造業分野では,一時的に,国外にいる外国人に対しての特定技能ビザ交付が停止される措置がとられました。
加えて,統合前の製造業3分野では,同じ就業場所でも複数の分野で特定技能外国人の受入れをする場合には,分野ごとに協議会加入手続きが必要であった点や,協議会加入手続きが煩雑であるなどの意見もあり,分野統合の実現を後押しする要因となりました。
元々は,3つの分野に分かれていた「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」を統合することで,製造業3分野それぞれの受入れ上限数も合算され,現在では,統合前に産業機械製造業分野に該当していた受入れ機関でも,再度,特定技能外国人の受け入れが可能となりました。
2.「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」統合後の変更点
製造業3分野の分野統合後の主な変更点について紹介します。
2-1.受入れ分野と業務の対応関係
統合前には,製造業3分野のそれぞれで,受入れ可能な特定技能外国人の業務区分が設定されていました。
他方で,統合後の現在では業務区分についても統合されたため,結果として,統合前には受入れが認められなかった業務区分の技能をもつ,特定技能外国人の受入れが可能となった受入れ機関もあることになります。
統合後に,素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野で受入れ可能となった業務区分は次の表の通りです。
受入れ可能となった業務区分 | ||
鋳造 | 鍛造 | ダイカスト |
機械加工 | 金属プレス加工 | 鉄工 |
工場板金 | めっき | アルミニウム陽極酸化処理 |
仕上げ | 機械検査 | 機械保全 |
電子機器組立 | プリント配線板製造 | プラスチック成形 |
電気機器組立て | 溶接 | 工業包装 |
塗装 |
それぞれの業務区分の技能要件を満たす特定技能外国人であれば,受入れが可能です。
また,統合前には,特定技能外国人が就労する分野を変更する場合には,仮に就労先に変更が無かった場合でも,新たに特定技能ビザの切り替えをする必要があったため,複数の分野に該当していた製造業の受入れ機関は,手続き上の手間が大幅に削減されています。
2-2.特定技能外国人の受入れ上限数
統合前には,製造業3分野での特定技能外国人の受入れ上限数は,次の通りに設定されていました。
素形材産業分野 | 産業機械製造業分野 | 電気電子情報関連製造業分野 |
21,500人 | 5,250人 | 4,700人 |
他方で,統合後は分野だけでなく,受入れ上限数についても次のとおりに統合されています。
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野 |
31,450人 |
なお,特定技能の12分野それぞれで設定されている,受入れ上限数については,国内の情勢などを勘案して,不定期で人数の変更がなされることもある点には注意が必要です。
人数変更がなされる際には,より多くの人員確保が必要と判断された分野の受入れ上限が引き上げられ,逆に,人数が充足している判断された分野は,上限が引き下げられる可能性もあります。
2-3.協議会加入手続き
特定技能外国人を受入れするためには,受入れ機関が特定技能協議会へ加入する必要があります。
統合後の製造業特定技能協議会への加入手続きは,次のとおりに行います。
〇製造業特定技能協議会への加入手続き
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野での協議会加入手続きは,専用のポータルサイトのガイダンスに沿って行います。
ポータルサイトのガイダンスに従い,特定技能制度についての資料などを読み理解した上で,協議会加入に必須の「日本標準産業分類の該当分野」を確認する必要があります。
具体的には,下記表の16業種のいずれか,または複数の産業分類に該当している必要があります。
製造業特定技能協議会加入に必須の日本標準産業分類の該当分野 | |
鋳型製造業(中子を含む) | 鉄素形材製造業 |
非鉄金属素形材製造業 | 機械刃物製造業 |
作業工具製造業 | 配管工事用附属品製造業(バルブ,コックを除く) |
金属素形材製造業 | 金属熱処理業 |
ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業 | はん用機械器具製造業(ただし,消火器具・消火装置製造業を除く) |
生産用機械器具製造業 | 業務用機械器具製造業(ただし,医療用機械器具・医療用品製造業,及び武器製造業を除く) |
電子部品・デバイス・電子回路製造業 | 電気機械器具製造業(ただし,内燃機関電装品製造業を除く) |
情報通信機械器具製造業 | 工業用模型製造業 |
なお,製造業特定技能協議会へは,特定技能外国人を受入れする事業所ごとの加入が必須であるため,受入れ機関単位で協議会加入をすることで,受入れ機関の全ての事業所にて特定技能外国人の受入れが認められるわけではない点は,勘違いしやすい点ですので,注意が必要です。
次に,上記産業分類の該当性について,次の証明資料を提出して審査が行われます。
- 製造品の画像と説明文
- 製造品が最終的に組み込まれる完成品(最終製品)の画像と説明文
- 製造品を生産するために用いた設備(工作機械,鋳造機,鍛造機,プレス機など)の画像,及び説明文
- 事業実態を確認できる,直近1年以内の証跡画像(製造品の納品書,出荷指示書,仕入れ書など)
参照:経済産業省(受入れ機関向け入会手続き申込み前の準備)
協議会への加入手続きは全てオンライン上で行うことができますが,審査には2ヶ月以上の日数を要することも少ないため,余裕をもって加入手続きを進める必要があります。
特に,素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野にて,特定技能外国人の受入れをするためには,特定技能ビザ申請前の協議会加入が義務付けられています。
そのため,他分野にて特定技能外国人の受入れをする際よりも,余裕をもった受入れ計画を設定する必要があります。
協議会への申請手続きを終えた後は,登録したメールアドレスに手続き開始の連絡メールが届きます。
なお,審査の過程で,追加書類などが必要な場合はメールや電話で連絡が来る場合もあるので,加入手続きを短期間で終えるためにも,連絡があった場合は迅速に対応する必要があります。
無事に,協議会の加入が認められると,「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」のページにて公表されている会員名簿に,受入れ事業所の名称が掲載されます。
協議会加入について,加入証明書などの発行はされないため,特定技能ビザの申請をする際などには,公表されている名簿を加入証明資料として使用します。
3.「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」統合後の注意点
統合後に注意すべき点について紹介していきます。
3-1.3分野の統合前にビザを取得している場合
統合前の分野にて,既に特定技能ビザを取得している場合は,新たに特定技能ビザの申請し直しをする必要などはありません。
また,特定技能ビザと同時に発行される「指定書」には,統合前の分野名が記載されており,指定書の内容を変更する必要はありませんが,管轄の入管へ申し出ることで,統合後の分野名が記載された指定書を発行することも可能です。
3-2.3分野の統合前に協議会へ加入済の場合
特定技能ビザと同様に,統合前の製造業3分野にて,既に協議会へ加入している場合には,改めて協議会への加入をし直す必要はありません。
なお,以前は協議会の会員名簿に分野の情報も記載されていましたが,統合後は,分野情報については省略されています。
3-3.ビザ申請時の注意点
分野統合に伴い,統合後に行う特定技能ビザ申請では,申請書類の分野名の記入欄に「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」の記載する必要があります。
そのため,特定技能ビザ申請書類について,統合前の申請書類フォーマットなどを参考にして書類作成をする場合には,分野名の記入欄については,必ず統合後の分野名での申請書類作成をする必要があります。
また,特定技能ビザをオンラインで一括申請をする場合でも,統合前にダウンロードした一括申請用のエクセルファイルを使用して申請手続きをした場合は,申請エラーとなるため,統合後にダウンロードしたファイルを使用する必要がある点には,注意が必要です。
4.まとめ:【特定技能ビザ】「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」分野統合後の変更点と注意点
本記事では,製造業3分野が素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野に統合された後の,変更点や注意点を中心にご紹介しました。
今回の統合では,手続きの利便性向上や受入れ上限数の統合などが主な変更点であり,申請手続きについても以前より簡素化されています。
他方で,統合後の受入れ上限数などは,今後も変更がある可能性もあるので,特定技能ビザの申請に影響が無いように最新情報を継続して確認して行く必要があります。