高度人材ポイント制を利用した永住申請とは?永住権取得までの流れを徹底解説!
永住許可申請をするためには,原則として10年以上日本に在留し,そのうち5年以上は就労資格または居住資格で在留していることが必要です。
しかし,これには例外があって,一定の条件を満たすことができれば最短1年の在留で永住許可申請ができる場合もあります。
この一定の条件こそ,本コラムのテーマである「高度人材として認められること」なのです。
本コラムでは,永住ビザの要件である「在留年数」が大幅に緩和される,高度人材からの永住ビザの申請について解説していきます。現在,就労ビザで日本に在留していて,将来的に永住ビザの取得を考えている方はぜひ最後までお読みください。
Index
1.高度人材とは?
はじめに,出入国在留管理庁が定める「高度人材」の定義をご紹介します。
「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに,日本人との切磋琢磨を通じて
専門的・技術的な労働市場の発展を促し,我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」
この定義を端的にまとめると,
『新しいアイデアやスキルによって,日本経済を発展させることのできる優秀な人材』 と,言い換えることができます。
高度人材には大きく3つのジャンルが用意されており,各ジャンルでの評価項目も異なるため,自分に合った活動を確認する必要があります。
①高度学術研究分野
研究,研究の指導又は教育をする活動する活動(例:大学教授など)
⇒「高度専門職1号イ」
②高度専門・技術分野
知識又は技術を要する業務に従事する活動又は教育をする活動する活動(例:ITエンジニアなど)
⇒「高度専門職1号ロ」
③高度経営・管理分野
事業の経営を行い又は管理に従事する活動(例:会社経営者など)
⇒「高度専門職1号ハ」
高度人材として認定されるためには,入管が定めるポイント計算表で計算を行った結果,一定以上のポイントを有することが必要になります。ポイントの加算方法は3つのジャンルで異なります。
(1)高度人材ポイント制について
では,実際に高度人材として認定されるためにはどのようにすればいいのでしょうか。
それは,下記ポイント表において「70点」以上のポイントを達成することが一つの条件となります。
詳しくは,以下のコラムで解説していますのでお読みください。
>>高度専門職 取得条件 はコチラ
上記のコラムで解説した通り,「学歴」,「職歴」,「年収」,「日本語能力」など項目ごとにポイントが設定されており,各項目を満たすことでポイントが積み重なります。
そして,高度人材として認定されるためには,まず「70点」を目指していくことになります。
(2)高度人材の優遇措置について
高度人材として認定され,「高度専門職」ビザを取得した際にはどんなメリットがあるのでしょうか。
高度人材の優遇措置として,入管庁では以下の7つを定めています。
①親の帯同の許容
②配偶者の就労
③家事使用人の帯同の許容
④複合的な在留活動の許容
⑤現行の最長期間である在留期間「5年」の付与
⑥入国・在留手続の優先処理
⑦永住許可要件の緩和
本コラムでは上記⑦の「永住許可要件の緩和」について,具体的に解説していきます。
その前に,永住ビザを取得するための要件についておさらいしておきましょう。
2.永住ビザの原則的な要件
永住ビザを取得するためには,原則として以下の3つの要件を満たす必要があります。
永住ビザの3大要件
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること
日常生活において公共の負担にならず,その有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること
ア.原則として引き続き10年以上本邦に在留していること
この期間のうち,就労資格(技術・人文知識・国際業務ビザなど)または居住資格(配偶者ビザなど)をもって引き続き5年以上在留していることが必要です。
イ.罰金刑や懲役刑などを受けていないこと
ウ.公的義務を履行していること
※納税,公的年金及び公的医療保険の納付に加え,入管法に定める届出等の義務を適正に履行していることが求められます。
エ.現に有している在留資格について,入管法に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
※当面の間は,在留期間「3年」を有する場合は,「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。
オ.公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
永住ビザの要件について,詳しく解説したコラムもございますので,こちらもぜひお読みください。
>>永住ビザ 要件 はコチラ
3.高度人材によって緩和される永住ビザの要件とは?
永住ビザ3大要件のうち,高度人材によって緩和される永住ビザの要件は「③ア」です。
永住ビザは,原則として10年以上の在留歴が必要とされるところ,高度人材に認定されることで,日本での在留年数が「3年」または「1年」に大幅に緩和されます。どちらになるかは,高度人材ポイントの点数で決まります。
- ポイント計算した点数が70点以上~80点未満 ⇒ 3年に短縮
- ポイント計算した点数が80点以上 ⇒ 1年に短縮
永住ビザ申請でのポイント計算は「申請時点」と「過去時点」の2つが必要
高度人材として永住申請をする場合は,申請時点だけでなく過去時点でのポイント計算も必要になります。
申請時点のポイントが合計80点以上の場合
⇒「1年前」の時点でポイント計算して,現在まで合計80点以上をキープしていることが必要です。
最短1年で永住申請できるパターンが,このパターンです。
申請時点のポイントが合計70点以上の場合
⇒「3年前」時点でポイント計算して,現在まで合計70点以上をキープしていることが必要です。
3年で永住申請できるパターンが,このパターンです。
合計ポイントのパターン別で,永住ビザ申請「できる」「できない」をまとめました。
①高度人材ポイント制で永住ビザ申請できるケース
このケースでは,申請時点から3年前が70点で,そこから申請時点まで70点以上をキープできているため,高度人材ポイント制で永住ビザの申請は可能です。
このケースでは,申請時点の点数が1年前の点数より下がっていますが,申請時点と申請時点から1年前が「80点」のため,高度人材ポイント制で永住ビザの申請は可能です。
②高度人材ポイント制で永住ビザ申請できないケース
このケースでは,申請時点から1年前が「80点」を超えていますが,申請時点が「80点」を超えていないため,高度人材ポイント制を利用した永住ビザの申請をすることができません。
また,申請時点は「70点」を超えていますが,申請時点から3年前が「70点」以下のため,高度人材ポイント制を利用した永住ビザの申請をすることができません。
このケースでは,申請時点が「80点」ですが,申請時点から1年前が「80点」を超えていないため,高度人材ポイント制を利用した永住ビザの申請をすることができません
また,申請時点は「70点」を超えていますが,申請時点から3年前が「70点」以下のため,高度人材ポイント制での永住ビザの申請をすることができません。
このケースでは,申請時点から3年前が「70点」で申請時点も「70点」ですが,1年前時点で一時的に65点になってしまい,70点以上を3年間キープできていないので永住ビザの申請をすることができません。
令和6年6月10日に改訂された「永住許可に関するガイドライン」によって,このケースは永住ビザ申請できないケースであることが明確化されました。
4.高度専門職ビザに変えないと永住申請できない?
高度専門職以外の就労ビザをもっている方であっても,高度人材ポイント計算をして70点以上あれば,高度専門職ビザ相当として扱われます。
例えば,会社員の方に多い「技術・人文知識・国際業務」ビザの方でも,70点以上あれば高度専門職ビザに切り替えることなく,高度人材の優遇措置である在留年数の緩和要件を利用して永住ビザの申請をすることができるのです。
5.高度人材のポイント計算について解説
ここからは,高度人材ポイントの「中身」について見ていきましょう。
高度人材の中でもボリュームゾーンである「①高度学術研究分野:高度専門職1号ロ」をベースに,加算されやすい項目に絞って解説します。
大学以上の教育を受けたことを条件に,取得している学位によってポイントが加算されます。
- 博士号 30点
- 修士号 20点
- 学士号 10点 …など。
「日本の大学」または「法務大臣が告示で定める大学」を卒業・終了している方や,博士号と修士号を両方持っている方など,学歴によって,特別加算される場合もあります。
現在従事している業務の実務経験年数によって,ポイントが加算されます。
実務経験3年以上からポイントが加算されます。
最も高いポイントは実務経験10年以上の場合で「20点」です。
現時点から未来1年間の見込み収入の金額によって,ポイントが加算されます。
年収の金額と年齢によって加算されるポイントが異なります。
- 29歳以下 :年収400万円以上から加算対象
- 30~34歳:年収500万円以上から加算対象
- 35~39歳:年収600万円から加算対象
- 40歳以上 :年収800万円以上から加算対象
…と,年齢が高くなるにつれて条件が厳しくなります。
最も高いポイントは,年齢問わず年収が1,000万円以上の場合で「40点」です。
年齢によって,加算されるポイントが異なります。
39歳までがポイントが加算の対象とされ,最も高いポイントは29歳以下「15」点です。
日本語能力試験「N1」の認定を受けている場合,15点が加算されます。
同等レベルである「BJTビジネス日本語能力テスト」480点以上でも,ポイント加算の対象です。
なお,「N1」の1つ下ランク「N2」の認定を受けている場合でも,学歴によってポイント加算の対象となる場合があります。
6.実際に高度人材ポイント制で永住ビザが申請できるケース
高度人材ポイント制の概要について解説してきましたが,イメージは掴めてきましたか?
ここでは,高度人材として認定されるケースについていくつか紹介していきます。
ご自身に当てはまるケースがあるか,確認してみてください。
①現時点で30歳未満+日本にある大学(加点対象大学)を卒業+日本語能力試験NI認定+現在と3年前が400万以上のケース
②現時点で34歳未満+海外にある大学(加点対象大学)を卒業+日本語能力試験N1認定+実務経験が5年以上+現在と3年前の年収が500万以上のケース
③現時点で39歳未満+修士課程を修了+実務経験が10年以上+現在と3年前の年収が700万以上のケース
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7.高度人材ポイントで永住申請する場合の必要書類と審査期間
高度人材ポイント制を利用して永住申請する場合は,ポイント計算の疎明資料を提出する必要があります。その分,通常の永住申請よりも提出書類が多くなる点にご注意ください。
現在,「技術・人文知識・国際業務」ビザをお持ちの場合を例に,解説します。
【A】 申請時点:80点以上,1年前時点:80点以上の方
(2)永住許可が必要な理由をまとめたもの
(3)住民票(世帯全員分で,個人番号以外は省略がないもの)
(4)住民税の納付状況を証明する資料
①直近1年分の住民税の課税(又は非課税)証明書(1年間の総所得が記載されたもの):1通
②直近1年分の納税証明書(1年間の納税状況が記載されたもの):1通
③直近1年間において住民税を適正な時期に納めていることを証明する資料(通帳の写し,領収証書等)
※住民税が給与から天引き(=特別徴収)されている方は,③は不要です。
(5)国税の納付状況を証明する資料
・源泉所得税及び復興特別所得税,申告所得税及び復興特別所得税,消費税及び地方消費税,
相続税,贈与税に係る納税証明書(その3)
(6)所得を証明するもの
・預貯金通帳のコピー(またはそれに準ずるもの)
(7)直近(過去1年間)の公的年金の保険料の納付状況を証明する資料
①「ねんきん定期便」(全期間の年金記録情報)または ねんきんネットの「各月の年金記録」を印刷したもの
②国民年金保険料領収証書のコピー
※直近1年間で「国民年金」に加入していた時期がない方は,②は不要です。
(8)直近(過去1年間)の公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料
①健康保険被保険者証のコピー
②国民健康保険料(税)納付証明書
③国民健康保険料(税)の領収証のコピー
※直近1年間で「国民健康保険」に加入していた期間がない方は,②③は不要です。
(9)高度専門職ポイント計算表
・「高度専門職1号ロ」の計算項目で,永住許可申請の時点で計算したもの:1通
・「高度専門職1号ロ」の計算項目で,永住許可申請の1年前の時点で計算したもの:1通
(10)ポイント計算の各項目に関する疎明資料
①卒業した大学,学位取得を示す資料(卒業証書,学位記のコピーなど)
②職務経歴を示す資料(退職証明書,在籍証明書など)
③過去1年間と,未来1年間の年収を示す資料(勤務先発行の年収見込証明書など)
④日本語能力を示す資料(日本語能力試験の合格証など)
※ポイント計算の疎明資料は,計算表エクセルシートにも詳細が掲載されています。
【B】 申請時点:70点以上,3年前時点:70点以上の方
(2)永住許可が必要な理由をまとめたもの
(3)住民票(世帯全員分で,個人番号以外は省略がないもの)
(4)住民税の納付状況を証明する資料
①直近3年分の住民税の課税(又は非課税)証明書(1年間の総所得が記載されたもの):各1通
②直近3年分の納税証明書(1年間の納税状況が記載されたもの):各1通
③直近3年間において住民税を適正な時期に納めていることを証明する資料(通帳の写し,領収証書等)
※住民税が給与から天引き(=特別徴収)されている方は,③は不要です。
(5)国税の納付状況を証明する資料
・源泉所得税及び復興特別所得税,申告所得税及び復興特別所得税,消費税及び地方消費税,
相続税,贈与税に係る納税証明書(その3)
(6)所得を証明するもの
・預貯金通帳のコピー(またはそれに準ずるもの)
(7)直近(過去2年間)の公的年金の保険料の納付状況を証明する資料
①「ねんきん定期便」(全期間の年金記録情報)または ねんきんネットの「各月の年金記録」を印刷したもの
②国民年金保険料領収証書のコピー
※直近2年間で「国民年金」に加入していた時期がない方は,②は不要です。
(8)直近(過去2年間)の公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料
①健康保険被保険者証のコピー
②国民健康保険料(税)納付証明書
③国民健康保険料(税)の領収証のコピー
※直近2年間で「国民健康保険」に加入していた期間がない方は,②③は不要です。
(9)高度専門職ポイント計算表
・「高度専門職1号ロ」の計算項目で,永住許可申請の時点で計算したもの:1通
・「高度専門職1号ロ」の計算項目で,永住許可申請の3年前の時点で計算したもの:1通
(10)ポイント計算の各項目に関する疎明資料
①卒業した大学,学位取得を示す資料(卒業証書,学位記のコピーなど)
②職務経歴を示す資料(退職証明書,在籍証明書など)
③未来1年間の年収を示す資料(勤務先発行の年収見込証明書など)
④日本語能力を示す資料(日本語能力試験の合格証など)
※ポイント計算の疎明資料は,計算表エクセルシートにも詳細が掲載されています。
以上が,「技術・人文知識・国際業務」ビザで高度人材ポイントを利用して永住申請する場合の必要書類の例です。
現在の在留状況によって,実際に用意する必要書類は多少変わりますが,永住申請できる期間が短縮されても,用意する書類は通常より多くなっていることがおわかりいただけたかと思います。
ご自身で準備することが難しい方は,永住ビザに詳しい行政書士などの専門家にサポートを依頼することもおすすめです。
8.高度人材ポイントでの永住許可申請Q&A
以下では,高度人材ポイントで永住ビザ申請する際によくある質問をまとめました。
A.永住ビザの申請の要件を満たしていないため,現時点では申請することができません。確かに,80点以上有していれば在留年数の要件が緩和され,日本に1年以上在留で永住ビザ申請することができます。しかし,永住ビザの申請の要件である「最長の在留期間をもって在留していること。」が満たされていません。そのため,「3年」または「5年」の在留期間が付与されるまでお待ち頂くことになります。
A.最短1年の在留期間で永住ビザの許可を認めることとしたのは,高度人材についてのみです。配偶者や子については,高度人材の在留年数の優遇措置の対象とはなっていません。そのため,家族については同時に永住ビザを許可されることはなく,まずは「永住者の配偶者等」などの在留資格が付与されます。その後,概ね3年の在留状況や日本への定着性を確認された後,永住ビザの許否の判断がされます。
A.永住ビザを取得しても原則として親を呼び寄せることはできません。
この点,高度専門職ビザの場合には,一定の条件をクリアすると親や家事使用人を帯同させることができます。親を呼びたい場合には,高度専門職ビザへの変更も検討する余地があります。
親の呼び寄せの実務要件については,以下のページをご覧ください。
>>老親扶養ビザ はコチラ
9.高度人材ポイント制を利用した永住ビザの取得方法のまとめ
本コラムでは高度人材ポイント制での永住申請について解説してきましたが,いかがでしたでしょうか?
高度専門職ビザをもっていない方でも,高度人材ポイント計算をして70点以上あれば,日本に10年以上在留していなくても永住ビザの申請が行えるかもしれません。永住ビザを考えている方は,ぜひ一度高度人材ポイントの計算をしてみてはいかがででしょうか。
特に,日本の大学・大学院を卒業し,日本語能力試験N1の認定を受けている方は,70点以上に達しているケースが多く見受けられます。
もっとも,高度人材ポイント計算表はいくつも項目があって,自身の点数を正確に計算するのは大変です。
さらに,令和6年6月のガイドライン改訂から,「点数のキープ」が必要になりました。一時的にポイントが70点以上あっても途中で70点を下回ってしまうと永住ビザの申請ができなくなっています。
また,点数を満たしていることも重要ですが,点数を満たしたうえで,いつがベストな永住ビザの申請時期かを判断することが大切です。
行政書士法人第一綜合事務所では,お客様の状況をヒアリングして,必要な時期に一定点数以上を有しているのかを専門家として正確なポイントを計算いたします。
同時に,お客様が永住ビザの要件を満たしているかについても判断させていただきます。
専門家に相談することで,ご自身で想定していたよりも早期に永住ビザを取得できることも十分考えられます。
高度人材ポイント制を利用した永住ビザについてのご質問,ご相談は無料で承っておりますので,お気軽にお問い合わせください。