【取消しガイドライン公表】永住権取り消しの新基準を行政書士が解説

「法改正によって永住資格が取り消されるようになるらしい」というニュースを耳にし、大きな不安を抱えている外国人の方やそのご家族は非常に多いのではないでしょうか。
「うっかり税金を払い忘れたらすぐに強制送還されるのか」
「交通違反をしただけで永住権を失うのか」
といったご相談が行政書士法人第一綜合事務所にも多数寄せられています。
結論から申し上げますと、ルールを守って日本で生活している大部分の永住者の方々にとって、過度に恐れる必要はありません。2026年10月1日に公表された「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン(以下「取消しガイドライン」と表記)」においても、善良な永住者を不当に害さないよう慎重かつ個別に判断する方針が示されました。しかし、どのように変わるのかを正しく理解しておくことは、ご自身とご家族の日本での安定した生活を守るために不可欠です。
本コラムでは、入管業務専門の行政書士が、2026年の現行制度のおさらいから、2027年4月施行の改正入管法で新たに追加される「永住資格の取り消し事由」、そして万が一トラブルに巻き込まれた際の救済措置までを解説いたします。
このコラムを最後までお読みいただければ、改正法の正しい知識が身につき、今後どのような対策をして日本での生活を続けていけばよいのかが明確になるはずです。
なお、歴史的経緯から認められている「特別永住者」の方については、今回の入管法改正による取消事由の追加対象には含まれませんのでご注意ください。
Index
1.【現行制度】2026年現在でも「永住資格」が取り消されるケースとは?
このコラムで取り扱う取り消し制度は、2024年(令和6年)6月14日に成立した改正入管法に基づき2027年(令和9年)4月1日から施行されます。これに先立ち、2026年10月1日、入管より運用指針となる「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」が正式に公表されました。
「これまでは永住資格は絶対に取り消されなかったのに、2027年4月の改正から初めて取り消されるようになる」と誤解されている方が少なくありませんが、それは事実ではありません。2026年現行の入管法においても、永住資格が取り消されるケース、あるいは「退去強制(強制送還)」となって日本から出国しなければならないケースは定められています。
まずは、2026年現在のルールを整理しておきましょう。現行法で在留資格(永住権を含む)が取り消される(または退去強制となる)代表的なケースは以下の通りです。
| 取り消し・退去強制の事由 | 具体的なケース |
| 不正な手段での許可取得 | 偽造書類の提出など、偽りその他不正の手段で永住許可を受けた場合 |
| 住居地届出の違反 | 引っ越しをした日から90日以内に新住居地の届出を怠った場合や、虚偽の住居地を届け出た場合(正当な理由がある場合を除く) |
| 重大な犯罪等(退去強制) | 1年を超える実刑(拘禁刑)に処せられた場合や、薬物犯罪で有罪判決を受けた場合など |
2026年現行法の在留資格取り消しについては、在留資格取消しが不安な方へ。日本で暮らし続けるための具体的な対策もご参照ください。
実務上、意外と多いのが「引っ越し後の住居地届出(市区町村の役所等での手続き)の遅れ」です。「仕事が忙しくてつい忘れていた」「手続きが必要だとは知らなかった」という理由で90日を過ぎてしまうケースがあります。しかし、入管法上、正当な理由なく90日以内に新住居地を届け出ないと、現行法であっても在留資格の取り消し対象となる可能性があります。引っ越しをした際は、必ず速やかに手続きを行う習慣をつけましょう。
2.【2027年4月施行】入管法改正で何が変わる?公表された取消しガイドラインに基づく新基準
それでは、2027年4月から施行される改正入管法において、具体的にどのような「取り消し事由」が追加されるのでしょうか。
まず背景として、永住者は在留期間の更新手続き(ビザの更新)がないため、一部の悪質なケースにおいて、「永住許可を申請する時だけ公租公課(税金、年金、健康保険などの公的負担金)をまとめて支払い、許可された後は支払わない」といった、制度の趣旨に反する事態が発生していました。そこで、入管は「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」を公表しました。追加された取消事由とガイドラインでの解釈は以下の通りです。
(1)故意による公租公課の未納・入管法上の義務の不履行
①故意による公租公課の未納
「公租」とは所得税・住民税・固定資産税などの租税全般、「公課」とは国民健康保険・健康保険・国民年金・厚生年金などの公的負担金を指します。永住者自身だけでなく、実質的に経営・管理する法人の公租公課をあえて支払わない場合や、無申告による未納も含まれます。
取消しガイドラインでは、「故意に」とは「支払義務があることを認識しているにもかかわらず、あえて支払をしない場合」と定義されています。収入・資産状況、滞納回数や期間、本人の言動等を総合考慮し、「支払意思がないことが明白と認められる悪質なケース」に限定して適用されます。
- 長期間の滞納があり、無届で転居して所在不明になっている場合
- 催告や滞納処分を受けてもなお、相談もせず支払う意思を示さない場合
- 分納や猶予の約束期限までに納付しないことを繰り返す場合
- 脱税等で有罪判決を受けた場合や、財産隠蔽などの不正行為を行った場合
該当しない(取り消しの対象外となる)事例:
- 病気、災害、失業、事業不振、感染症流行、DV被害、ハラスメントによる離職など、やむを得ない事情で支払ができない場合
- 催告等に応じて支払意思を示し、分納や猶予措置を受けている場合
- 生活保護に準じた措置を受けている場合
- 給与から控除されているにもかかわらず、所属企業が納付していなかった場合
また、法律が施行される2027年4月より前(永住許可後から改正法の施行前まで)に故意に公租公課を支払っていなかった事実が判明した場合も、新法の取消事由に該当し得るとされています。ただし、過去の一時点の事情のみで直ちに取り消されるわけではなく、その後の支払状況や現在の対応も含めて総合的に判断されます。過去に未納期間がある場合でも、放置せずに早めに納付や自治体窓口への相談を行うことが重要です。
②入管法上の義務の不履行
入管法に規定される義務を正当な理由なく遵守しなかった場合も、新たな取り消し事由となります。
- 在留カードの有効期間満了や紛失時に、正当な理由なく更新・再交付申請をしなかった場合(有効期間更新の失念や不注意による携帯忘れ等も違反自体には該当しますが、一度の不履行のみで取り消すことは想定されていません)
- 在留カードの偽変造・偽変造カードの行使・提供の未遂行為(実際に偽変造・行使等をした既遂の場合は、取消しではなく退去強制=強制送還の対象となります)
- 不法入国者等であることを知りながら、逃走を助けるためにアパート等にかくまうなどの蔵匿・逃走援助の未遂行為
(2)特定の刑罰法令違反による拘禁刑
改正法では、窃盗、詐欺、恐喝、傷害などの一定の刑罰法令違反によって「拘禁刑」に処せられた場合も、新たに取り消しの対象となります。
2026年現行法では主に「無期又は1年を超える拘禁刑(実刑)」などが退去強制の対象でしたが、改正法では、たとえ1年以下の拘禁刑であったとしても、特定の犯罪であれば「永住資格の取り消し」の対象となるようにルールが厳格化されます。
「交通違反をしただけで永住権がなくなるのでは?」と心配される方がいますが、今回追加されるのは故意に行う犯罪(窃盗、詐欺、恐喝、殺人、傷害、住居侵入、通貨・文書偽造、賭博、人身売買、盗品関与、危険運転致死傷など)が中心です。過失による交通事故を起こして処罰された場合や、道路交通法違反で「罰金刑」で済んだような場合は、この新しい取り消し事由の対象とはなりません。とはいえ、法令を遵守して生活することが大前提であることは言うまでもありません。
(3) 役所等からの通報制度の考え方
改正法により、国や地方公共団体の職員が職務上、取り消し事由に該当すると思われる外国人を知った際に入管へ通報できる規定が整備されました。
取消しガイドラインでは、この通報制度について以下の通り明確に規定されています。
- 通報は「義務」ではなく「任意」であり、国や地方公共団体の職員が任意に判断して行うものとされています。
- 通報があったことのみをもって、直ちに処分が決まるわけではありません。通報はあくまで調査の「きっかけ(端緒)」に過ぎず、入管が丁寧に事実調査や本人への意見聴取を行った上で総合的に判断されます。
3.万が一、取り消し事由に該当してしまったらどうなる?
「もし税金の滞納などで取り消し事由に該当してしまったら、すぐに母国へ強制送還されて、日本での生活がすべて終わってしまうのか?」とパニックになる方もいらっしゃるでしょう。しかし、万が一該当した場合でも、いくつかの救済措置や適正な手続きのステップが用意されています。
(1)適正な手続き(事実調査と意見聴取)の実施
いきなり取り消されることはありません。法務大臣(入国審査官等)により、違反事実の調査が行われ、対象となっている本人から意見や言い分を聞く機会(意見聴取)が必ず与えられます。この場で、代理人を通じて意見を述べたり、未納に至った事情の証拠を提出したりすることができます。
(2)日本への定着性の配慮
国会での議論を経て、改正法の附則第25条には「永住者の在留資格をもって在留する外国人の適正な在留を確保する観点から、これまでの公租公課の支払い状況や、現在の生活状況など、その外国人の置かれている状況に十分配慮する」という趣旨の規定が盛り込まれました。長く日本で生活しており本国に帰る場所がないといった事情も含め、取り消しの対象となるかどうかは慎重に判断されます。
(3)「定住者」等への変更と再申請の道
審査の結果、「永住者」としては不適当と判断された場合でも、ただちに強制送還されるとは限りません。引き続き日本に在留することが適当でないと認める場合(今後も支払う意思がないことが明らかな場合、犯罪傾向が進んでいる場合など)を除き、他の在留資格への変更が認められます(職権変更)。ほとんどの場合は、「定住者」の在留資格への変更を許可することが想定されています。そして、「定住者」等に変更された後であっても、その後公的義務が適正に履行されていることなどが確認できれば、再度、永住許可を受けることも可能です。
このように、最悪の事態を避けるための制度的配慮は存在しています。だからこそ、もしトラブルを抱えてしまった場合は、一人で抱え込んだり隠したりせず、すぐに専門家に相談して正しい対応をとることが重要です。
4.よくある質問を専門家が徹底解消!(Q&A)
法律が厳格化されるというニュースは独り歩きしやすく、誤解からくる不安を抱えている方も多いでしょう。ここでは、入管が公表している「永住許可制度の適正化Q&A(外部リンク)」資料等をもとに、永住権取り消しに関わる疑問にお答えします。
また、より多くの質問にお答えした、永住ビザ申請の盲点とは?最新ガイドライン(2026年10月1日改定)に基づく50問50答!もぜひご参照ください。
Q1. うっかり在留カードを持ち忘れたり、在留カードの有効期間の更新を忘れてしまった場合も、在留資格が取り消されるのですか?
A1. いいえ、一度のミスだけでの取り消しは想定されていません。
今回の法改正による適正化は、適正な出入国在留管理の観点から「要件を満たさなくなった一部の悪質な者」を対象とするものです。大多数の善良な永住者を対象としたものではないため、うっかりしたミス(在留カードの携帯忘れや、有効期間の更新忘れ)だけで直ちに在留資格を取り消すことは想定されていません。
Q2. 病気や失業で収入が減り、やむを得ず税金や年金が払えなくなった場合でも、取り消されるのでしょうか?
A2. いいえ、やむを得ない場合は対象外です。
病気、失業、事業不振、災害、DV被害、ハラスメントによる離職など、本人に帰責性があるとは認めがたく、「やむを得ない事情」がある場合については、在留資格を取り消すことは想定されていません。悪質な「故意の未納」と「やむを得ない未納」はしっかりと区別されます。
Q3. 役所に税金や健康保険の支払いの相談に行ったら、その場で入管に通報されてしまうのでしょうか?
A3. 単に相談に行っただけで通報されることは想定されていません。
法改正により、国や自治体の職員が職務遂行中に取り消し事由に該当する外国人を知った場合に、入管に通報できる制度が設けられますが、前述の通りこれは「義務」ではありません。適正に支払う意思を持って窓口へ相談に行ったような場合に通報されることは想定されていません。困ったときは放置して滞納するのではなく、早めに役所の窓口へ相談に行くことが重要です。
Q4. もし自分の永住資格が取り消されてしまったら、家族(配偶者や子ども)のビザも連帯して取り消されてしまうのでしょうか?
A4. 家族だからといって自動的に連帯して取り消されることはありません。
取り消し又は変更の対象となるのは、あくまで違反行為をした本人のみです。ただし、配偶者や子どもが「永住者の配偶者等」という在留資格を持っている場合、前提となる永住者がいなくなるため、そのままの在留資格ではいられなくなります。この場合は、「定住者」など、別の適切な在留資格へ変更することになります。
5.まとめ:不安な時は、まず行政書士法人第一綜合事務所にご相談ください
本コラムでは、公表された取消しガイドラインを踏まえ、2027年4月から施行される入管法に伴う「永住資格の取り消し」について、2026年現行の入管法との違いを交えながら詳しく解説いたしました。重要なポイントをもう一度整理します。
- 現行法でも、住居地届出の違反や不正取得などによる取り消しは存在する
- 2027年4月施行の改正法では、「故意による税金・年金の未納等の義務違反」や「特定の犯罪による拘禁刑」が新たな取り消し事由となる
- 病気や失業などの「やむを得ない未納」や、うっかりミスは取り消しの対象外
- 万が一該当しても、いきなり強制送還されるわけではなく、意見聴取の手続きや生活状況への十分な配慮があり、定住者等への変更や将来的な再申請の道が残されている
法律が厳しくなるというニュースは、真面目に暮らしている方にとってストレスになるでしょう。しかし、日頃から日本のルールを尊重し、公租公課の支払いや届出義務をしっかりと果たしていれば、ご自身の永住権が脅かされることはないとされています。
行政書士法人第一綜合事務所では、お客様が日本で安心して生活を送り続けられるよう、最新の法改正や入国管理行政の動向を日々確認し、最適な解決策をご提案しています。
「過去に少しだけ年金の未納期間があって不安だ」
「病気で税金が払えず、役所に相談に行きたいがどうすればいいか」
「家族のビザへの影響を詳しく診断してほしい」など、
どんな些細なお悩みでも構いません。
専門的な知識を持たないまま不確かな情報に振り回されると、誤った判断をして取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。
不安を感じたときは、決して一人で抱え込まず、まずはお気軽にお問い合わせください。




