外国人配偶者と日本へ再移住:永住権取得を見据えたビザ申請を行政書士が解説

海外でキャリアを重ね、国際結婚を経てご家族で暮らしている中で、「そろそろ日本へ再移住しようか」「将来的な拠点として日本へ戻る準備を始めたい」と考える日本人と外国籍配偶者のご夫婦が増えています。
しかし、長年海外に身を置いているご夫婦が日本への再移住を進める際、避けて通れないのが「外国籍配偶者のビザ(在留資格)」です。
近年の日本の入管行政は、法改正やガイドラインの改定に伴い、歴史的な転換期を迎えています。2026年(令和8年)以降、「在留許可手数料の大幅値上げ」や「新・永住ガイドラインによる審査基準の厳格化」、さらには「海外からの資金移動・資産に対する実態チェックの厳格化」など、手続きを巡る環境は厳しくなっています。
特に、以下のような状況に当てはまるご夫婦は、必要な書類や今後の在留計画を十分に整理しないまま申請すると、希望する在留期間が認められないことがあります。
- 「日本国内に現在所得や収入の基盤がない」
- 「日本国内に身元保証人・協力者(親族等)を立てづらい」
- 「海外から持込資金や資産を移管して日本で生活を立ち上げる予定である」
本コラムでは、海外から日本への再移住を検討されているご夫婦向けに、単に「配偶者ビザを取得する」だけでなく、「初回から3年・5年の長期ビザを獲得する戦略」や「将来的な永住権取得までを見据えた長期計画」について、最新の情報を踏まえて、入管業務専門の行政書士が解説します。
Index
1. 日本の入管行政の大きな変化:手数料値上げと審査厳格化
まず、入管行政における大きな2つの変化(法改正・ガイドライン改定)について押さえておく必要があります。
(1) 【2026年10月1日施行】在留許可手数料の大幅引き上げ
2026年(令和8年)10月1日より、改正入管法に伴い、入管へ支払う在留許可手数料の「法定上限額」が引き上げられ、実際の納付金額も改定されました。
改定前の手数料は、在留資格変更や期間更新が一律6,000円(オンライン5,500円)、永住許可が一律10,000円でした。しかし、改定後は「許可される在留期間が長くなるほど手数料が高くなる」構造へと変化しました。
- 在留期間「1年」: 33,000円(オンライン:27,000円)
- 在留期間「1年超3年未満」: 48,000円(オンライン:42,000円)
- 在留期間「3年以上5年未満」: 64,000円(オンライン:56,000円)
- 在留期間「5年以上」: 75,000円(オンライン:65,000円)
- 永住許可: 200,000円(窓口申請のみ)
これまで10,000円だった永住許可の手数料は「20万円」と20倍に引き上げられています。また、後述しますが、もし「1年ビザ」しか認められず、毎年更新を繰り返すことになった場合、毎回27,000円〜33,000円もの手数料を支払い続けなければなりません。
(2) なぜ厳格化されるのか? 在留外国人「413万人時代」の入管行政
政府がこれほどまでに手数料を引き上げ、審査や管理の姿勢を強めている背景には、日本における在留外国人数が過去最多の4,125,395人(約413万人・2025年末時点)に達したことがあります。
国は「不法滞在者ゼロプラン」を掲げてデジタル化や厳格な在留管理を推進する一方で、増収した手数料財源を日本語教育プログラムや多言語相談などの共生支援に投じる方針です。つまり、「ルールを守り、しっかりとした基盤を持って日本で生活する外国人には手厚い支援を行うが、審査においては適正な資産・公的義務履行の裏付けを厳しくチェックする」という時代に入っているのです。
2. 海外在留の日本人・外国籍配偶者が直面する「帰国・再移住」3つの壁
海外から日本へ拠点を戻す国際結婚のご夫婦(日本人+外国籍配偶者)が「日本人の配偶者等」のビザ(在留資格認定証明書交付申請・COE交付申請)を申請する際、現実的に直面する主なハードルが以下の3つです。
壁(1) :日本国内での収入・所得証明が得られない(海外収入・海外資産の証明)
日本国内で会社員として勤務し給与を得ている場合であれば、日本発行の「課税証明書」「納税証明書」「源泉徴収票」を提示すれば、継続的な生活能力(生計要件)を証明できます。
しかし、海外から日本へ帰国する場合、以下のようなケースが多いです。
- 海外で仕事を辞めて日本に帰国し、日本でこれから求職・起業する。
- 海外の企業に在籍したまま、フルリモートで海外収入を得つつ日本で暮らす。
- 配偶者や日本人が海外で蓄えた資産(預貯金・株式・不動産等)を取り崩しながら、当面の生活を送る。
入管の審査において「日本国内での前年所得(課税証明書)」が出ない状態は、原則として「生計の安定性に疑問あり」と判断されやすい状況にあります。そのため、海外での給与明細、雇用契約書、銀行口座の残高証明書などを単に提出するだけでなく、それらを「どのように日本国内の生活資金へ充てるのか」を「理由書」や「資金計画書」で説明する必要があります。
壁(2) :日本国内での協力者・身元保証人の不在
「日本人の配偶者等」のビザ申請では、日本人配偶者が配偶者を呼び寄せる「身元保証人」となります。
しかし、長年海外に滞在していた日本人自身が日本国内で職に就いておらず、住民票もまだ日本に戻していない場合、日本人配偶者単独では「十分な身元保証能力(経済的・社会的保証能力)がない」とみなされることがあります。
従来であれば、日本国内に住む日本人の親・兄弟・親族等に「身元保証人」や「受入協力者」として名前を出してもらい、課税証明書や住民票の提出を頼むことが定石でした。しかし、近年は以下のようなご相談も増えています。
- 高齢の親族しかおらず、書類の用意や負担を頼みづらい。
- すでに親族との関係性が薄くなっており、協力者をお願いできる親族が日本にいない。
このように「日本国内に頼れる協力者がいない」状態での申請は、提出する証明書類の選定と「生計・身元保証構造の設計」に高度な専門性が求められます。
壁(3) :「海外からの資産移動・自己資金の形成過程」に対するチェック
近年、当事務所が実感している、実務上の入管審査のポイントは、「海外からの資金移動(送金)や資産形成の透明性」が挙げられます。
「海外の銀行口座に十分な預貯金があるから大丈夫」と考えて資産証明を出しても、入管からは次のような点で厳しいチェックがなされます。
- その資金は本当に本人のものであり、合法的に形成された資産なのか(名義貸しや一時的な見せ金ではないか)。
- 海外の金融機関から日本の銀行口座へ、どのようなルートで送金・移転する計画なのか(マネーロンダリング防止や為替規制・送金規制の観点)。
- 外貨建て資産(不動産や株式等)の場合、日本での生活費として円滑に現金化・送金できる仕組みになっているか。
単に口座残高の数字だけでなく、「どのようにして築いた資産か(所得証明や過去の職歴)」「その資産をいつ、どのような方法で日本へ移動させ、月々の生活費に充当するのか」という資金繰りシミュレーション(収支計画)まで踏み込んで書面で立証する必要があります。
海外資産や海外からの送金については、入管手続上の説明だけでなく、資産の種類や所得の内容、日本での居住状況などに応じて、税務上の申告義務や課税関係の確認が必要となる場合があります。行政書士法人第一綜合事務所は外部税理士事務所と連携しておりますので、税務関係のご不安や疑問点も含め、再移住のライフプランを総合的にサポートさせていただきます。ぜひご相談ください。
3. 永住権獲得へのファーストステップ:初回申請から長期ビザ取得を目指すべき理由
海外からの帰国に際して、「まずは配偶者ビザが取れれば期間は1年でも構わない」と考えがちです。しかし、専門家の立場からは、「(永住権獲得を見据えて)最初から、または早期に『3年』または『5年』の最長在留期間を獲得する戦略を立てるべき」とご提案します。以下でその理由を解説していきます。
(1) 1年ビザの繰り返しは大きなコストに
前述の通り、2026年10月1日以降の手数料改定により、在留期間更新の法定手数料は以下のようになっています。
- 1年更新: 33,000円(オンライン:27,000円)
- 3年更新: 48,000円(オンライン:42,000円)
- 5年更新: 75,000円(オンライン:65,000円)
もし入管への書類説明が不十分で、長期の許可が下りず1年ごとの更新が続くことになった場合、その都度約3万円の手数料が発生します。さらに、毎年公的な証明書類(住民税の課税・納税証明書、戸籍謄本等)を取得し、申請書を作成して入管へ足を運ぶ(またはオンライン申請を行う)労力は膨大なものです。
これがもし「3年」または「5年」の許可であれば、手続きの回数は3年に1回、あるいは5年に1回となり、トータルの手数料コストも時間的負担が低減されます。
(2) 将来的に永住申請には「5年ビザ(最長期間)」が必要になる(経過措置のタイムリミット)
なぜ「当面1年でいい」と妥協せず、最初から「長期ビザ」を狙うべきなのか。その理由は、将来の永住申請の要件にもあります。
令和8年10月1日改定の「新・永住ガイドライン」では、永住許可の原則として「現に有する在留資格について、最長の在留期間(5年)をもって在留していること」が明記されました。ただ、これには以下の通り経過措置が定められています。
- 令和9年(2027年)3月31日までに申請する場合:在留期間「3年」であっても「最長の在留期間」として取り扱い、永住申請を受け付けます。
- 令和9年(2027年)4月1日以降に申請する場合:原則「5年」のビザが必要です。(令和9年3月31日時点で「3年」を保有しており、かつ同年4月1日以降に行う最初の永住申請である場合に限り、例外的に「3年」でも受け付けます。)
「当面は3年ビザでも永住申請できる」ように見えますが、この経過措置にはタイムリミットが存在するということです。
また、審査基準が厳格化する中で、入管から最高期間である「5年ビザ」が付与されていること自体が、「すでに入管から高い信用を得ている」というアピールになります。帰国時のビザ取得の段階から、この「5年ビザ獲得」を見据えて準備を進めることが、将来の永住許可への王道となります。
(3) 初回申請で長期ビザを取得するための具体的な立証ポイント
配偶者ビザにおいて、入管が「1年」ではなく「3年」や「5年」の長期ビザを与える判断基準は、主に以下の点にあります。
- 婚姻関係の「真正性」・「継続性」:
すでに海外で数年以上の同居・婚姻実績がある場合、婚姻の真正性・継続性は高く評価されます。婚姻期間の長さ、同居期間の証明(海外での住民登録、共同名義の賃貸契約、家族写真等)を提出します。 - 日本での生計基盤の「安定性」:
「日本に所得がない」状態であっても、海外資産の規模、日本での居住先(持ち家、あるいは長期賃貸の確保)、帰国後の就職決定通知(内定通知書や提示年収)や事業計画書などを提示し、「将来にわたって日本社会の公共の負担にならず、安定して生活できる」ことを証明します。 - 過去の公租公課遵守:
日本滞在歴がある場合は、過去の税金や社会保険料の未納・遅延がないことが必須条件となります。
海外からの帰国という「最も書類を精査されるタイミング」だからこそ、単なる事実の記載にとどまらず、「最初から最長期間(5年)の付与が相当である」ことを納得させる理由書・証明資料をパッケージとして構築することが不可欠です。
4. 配偶者ビザの「先」にある「永住権」を見据えたライフプラン
帰国・日本移住を考えるご夫婦にとって、配偶者ビザの取得はあくまで「スタートライン」に過ぎません。最終的に日本で安心して生涯を過ごし、生活基盤を強固にするためには、「永住権」の取得を見据えた中長期的な計画が重要となります。
しかし、2026年(令和8年)10月1日、入管庁より公表された「新・永住許可に関するガイドライン」によって、永住権のハードルは引き上げられました。
(1) 【令和8年10月1日改定】新ガイドラインによる永住審査の主な変更点
新ガイドラインの適用スケジュールは以下の通りです。
| 申請時期 | 適用されるガイドライン | 適用範囲 |
| ① 令和8年3月31日までに申請した方 | 旧ガイドライン | 全面適用 |
| ② 令和8年4月1日〜令和9年3月31日に申請した方 | 原則:旧ガイドライン
一部先行適用:新ガイドライン |
原則は旧基準だが、収入・経済要件(世帯年収基準など)のみ新ガイドラインが先行適用される |
| ③ 令和9年4月1日以降に申請する方 | 新ガイドライン | 全面適用 |
審査期間が標準的に約10ヶ月以上かかっている実態を考えると、今後申請する方は基本的に新ガイドラインの基準(特に先行適用される収入要件)を前提に対策を講じる必要があります。詳しくは【令和8年10月1日改定】新・永住ガイドライン公表!年収・厚生年金30年水準・遡及適用への対策を行政書士が解説をご参照ください。
(2) 「日本人の配偶者」の永住特例の引き上げ
国際結婚のご夫婦にとって大きな変更点が、「配偶者特例の要件引き上げ」です。
- 旧ガイドラインの要件: 実体のある婚姻生活が「3年以上」継続し、かつ日本に「1年以上」継続して在留していること。
- 新ガイドラインの要件: 実体のある婚姻生活が「5年以上」継続し、かつ日本に「引き続き3年以上」在留していること。
海外で長く婚姻関係にあったご夫婦であっても、「日本に帰国してから最低3年間は日本に引き続き在留すること」が永住申請の必須条件となります。早期の永住権取得を考えていたご夫婦は、帰国後最低3年間の日本在留ライフプランを前提に再設計する必要があります。
(3) 世帯年収(日本人世帯平均以上)・厚生年金30年相当・日本語能力(B1相当)の壁
新ガイドラインでは、生計要件や素行・国益適合要件においても明確な数値基準や厳格な条件が導入されました。
1.【年収要件】「日本人世帯平均」以上の継続収入
かつての「実務上単身年収300万円程度」という目安から、「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を継続して上回っていること」が求められます。
- 世帯合算の原則:夫婦の収入を合算可能ですが、家族滞在ビザなどの資格外活動(アルバイト)収入は合算対象外です。
- 多人数扶養・海外扶養の厳格化:海外在住の親族を扶養に入れている場合(特に5人以上)、人数に応じて必要な基準年収額が上乗せされます。
2.【年金要件】「厚生年金30年加入相当」の受給見込額
将来の公的年金の受給見込額が、「日本人世帯平均年収で厚生年金に30年間加入した場合と同等以上の水準」に達しているかが評価されます。海外から途中で帰国した方や自営業やフリーランスの方は、単体ではこの基準に届かない可能性があるため、NISA・iDeCo・預貯金・株式・不動産などの「補填資産(金融資産)」の立体的な証明によってカバーする戦略が求められます。
3.【日本語能力・社会適応】B1レベル以上の日本語能力と制度理解
2027年4月以降の永住申請では、外国籍配偶者に対して、原則として「日本語教育の参照枠」におけるB1相当(日常生活や業務で自立したコミュニケーションができるレベル)以上の日本語能力や、日本の社会ルール・制度の理解度が評価対象となります。学齢期のお子様がいる場合は、小中学校へ適正に通学しているか(就学状況)もチェックされます。
(4) 「遡及適用」リスクを踏まえた帰国直後からの公的義務履行と履歴整備
「税金・社会保険料(健康保険・年金)の納期限遅れ(滞納・未納)」は永住審査において大きなマイナス評価となります。
新ガイドラインおよび2027年4月施行予定の「永住許可取消制度」(詳しくは【取消しガイドライン公表】永住権取り消しの新基準を行政書士が解説をご参照ください)と連動し、過去の日本在住時に「1日でも支払期日を過ぎた履歴」があると、それだけで不許可となる可能性が高くなります。
帰国直後は、市役所・区役所での住民登録、国民健康保険・国民年金への加入、あるいは会社の社会保険手続きなど、手続きが錯綜します。「口座振替の設定が遅れて納付書での支払いが1日遅れた」というわずかなミスが、将来の永住申請において大きなマイナス評価となります。帰国初日から「公的義務の完全履行・自動引き落としの徹底」を行うことが、永住権獲得への第一歩となります。
5. 海外からの日本再移住・永住権獲得までのロードマップ
海外に在住している状態から、日本へ再移住し、最終的に永住権を獲得するまでのロードマップは以下のようになります。
● 居住計画・資金計画の策定
・日本での居住地(自宅・賃貸)の決定
・海外資産の把握と、日本への送金・資産移転ルートのシミュレーション
● 「日本人の配偶者等」COE(在留資格認定証明書)の申請
・海外収入・資産をベースとした生計理由書の作成
・日本国内での協力者がいない場合の保証構造の設計
・婚姻の真正性、同居実績の立証資料の準備
★ 目標:初回から「3年」または「5年」の在留期間を獲得
● 日本での生活基盤の確立と完全なコンプライアンス遵守
・住民票設定、税金・社会保険料(健康保険・年金)の期日内納付
・日本での就職環境の安定化
・外国籍配偶者の日本語学習(B1相当目標)と地域社会への適応
● ビザの更新(必要な場合)
・1年目の実績(納税・所得・公的義務)を整理し、最長期間(5年)へステップアップ
● 新・永住ガイドラインに準拠した永住許可申請の実施
・婚姻期間5年+日本在留3年のクリア確認
・世帯年収基準(日本人世帯平均以上)の精査
・厚生年金・金融資産(NISA・預貯金・不動産等)の立体的な証明書の作成
・日本語能力証明(JLPT合格証等)や就学・適応証明の添削
★ 目標:永住許可の獲得(20万円の手数料納付)による定着基盤の完成
6. まとめ:日本への再移住は行政書士法人第一綜合事務所へご相談ください
海外に住む国際結婚のご夫婦が日本へ再移住を果たすためには、単に必要書類を提出するだけの「点」の手続きではなく、「将来の更新費用削減」「5年ビザの獲得」「新・永住ガイドライン基準のクリア・永住権獲得」までを見据えた「線」の戦略が必要です。
特に、
- 「日本に前年所得や課税証明書がない」
- 「日本国内に頼れる協力者がいない」
- 「海外からの資産移動や送金の裏付けが必要である」
といったケースでは、このコラムで述べたような入管の審査ポイントを網羅した立証資料を揃える必要があります。
行政書士法人第一綜合事務所では、最新の改正入管法(2026年10月施行の手数料改定)や新・永住ガイドライン基準での審査動向を常に分析し、海外在留のご夫婦が日本で安心して生活できるよう、総合的なサポートを提供しております。
これからの日本での未来を確かなものにするために、ぜひ一度専門家である当事務所までご相談ください。ご家族に最適な再移住計画をご提案させていただきます。




