渡邉 直斗

就職活動のための特定活動ビザ(留学生向け)

就職活動のための特定活動ビザ(留学生向け)

日本での就職を夢見る留学生の多くは,卒業前に内定を得て,技術・人文知識・国際業務ビザを代表とする就労ビザへの変更手続きを進めることを想定されていると思います。
もっとも,たとえ精一杯努力をしても,昨今の新型コロナウイルスの蔓延などのように,思いもしなかった事情により自身の想定していた道から外れてしまうことは起こってしまうものです。
では,いざ卒業までに内定先が決まらなかった場合において,留学生はどのように考え,どのように行動すべきでしょうか。
本ページでは,このような状況に置かれた留学生のために,就職活動のための特定活動ビザについて,解説します。

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1.卒業しているのに「留学」ビザのままって大丈夫?

「留学生が学校を卒業した後,留学ビザのまま在留し続けることはできますか」というご質問をよく受けます。
まず,外国人は在留期間の満了日まで適法に日本に在留することができるというのが,理解の前提です。
これは,在籍していた学校を卒業した後も同じです。

しかし,外国人は,永住者と定住者を除き,在留資格に対応する活動をしていなければ在留資格を取り消される可能性があるのです。
この点には,特に注意が必要です。

留学生についていえば,正当な理由がある場合を除き,学校を卒業後,大学等で教育を受ける活動を行うことなく3ヶ月を経過すれば,在留資格を取り消される可能性があります。

また,在留資格は取り消されないまでも,在留資格の取消事由があることは,他の在留資格(例えば,技術・人文知識・国際業務)に変更する際のネガティブな事情となります。

2.就職活動のための特定活動ビザとは?

卒業後に留学ビザのままでいれば上記のようなリスクがあるため,卒業前から続けていた就職活動を卒業後も継続する場合には,留学ビザから就職活動のための特定活動ビザに変更する必要があります。

留学ビザと同様に,就職活動のための特定活動ビザにも許可を受けるための要件があります。
このチャプチャーでは,就職活動のための特定活動ビザの対象と要件を簡単に整理します。

① 就職活動のための特定活動ビザの対象

まず,就職活動のための特定活動ビザの対象は,卒業前から引き続き行っている就職活動を行うことを目的とする以下の留学生です。

a.継続就職活動大学生
日本の大学(短期大学及び大学院を含みます。)を卒業した外国人であれば,これに当たります。

b.継続就職活動専門学校生
専修学校専門課程(いわゆる専門学校)において専門士の称号を取得し,同課程を卒業した外国人が,これに当たります。
ただし,当該専門学校における専門課程の修得内容が,「技術・人文知識・国際業務」を代表とする就労ビザの在留活動と関連している必要があるので,その点には注意が必要です。

c.継続就職活動日本語教育機関留学生(海外大卒者のみ)
海外の大学又は大学院を卒業又は修了した後に(学士以上の学位の取得が必要です。),日本の日本語教育機関を卒業した外国人が,これに当たります。
なお,日本語教育機関側についても,いくつか要件が定められています。
詳細については,下記のページからご確認ください。
※出入国在留管理庁サイトより https://www.moj.go.jp/isa/content/930004793.pdf

② 就職活動のための特定活動ビザの要件

次に,就職活動のための特定活動ビザの要件は,以下の通りとなります。

① 留学ビザをもって在留していること
② 卒業後1年未満であること
③ 卒業前から引き続き行っている就職活動を継続することを希望する者
④ 在留中の一切の経費を支弁する能力を有すること
⑤ 卒業した学校から推薦を受けていること
⑥ 継続就職活動日本語教育機関留学生の場合 = 在籍していた日本語教育機関と卒業等後も定期的に面談を行い,就職活動の進捗状況を報告するとともに,就職活動に関する情報提供を受けること。

3.就職活動のための特定活動ビザはアルバイトできる?

就職活動のための特定活動ビザで在留している間は,原則としてアルバイトは禁止されます。
しかし,卒業した学校からの推薦状に資格外活動許可を受けて問題がない旨の記載があれば,在学中と同じように週28時間以内という制限付きで資格外活動許可を受けることが出来ます。

卒業後にアルバイトを続ける場合は,事前に資格外活動許可を得る必要があるので注意してください。

また,学校によっては就職活動のための特定活動ビザへの在留資格変更は認めるものの,就職活動に集中させるために,その間のアルバイトは一切認めない方針を採っている学校もあります。
就職活動のための特定活動ビザへの在留資格変更後のアルバイトが認められるのかどうかは,事前に学校に確認しておいてください。

4.コロナ禍での就職活動のための特定活動ビザの特例

新型コロナウイルス感染症の蔓延状況は,以前より落ち着いているものの,留学生の就職活動に少なからず影響はあるでしょう。
そのため,出入国在留管理庁は新型コロナウイルス感染症のための特例措置を公表しています。

① 就職活動のための特定活動ビザでの在留可能期間について

就職活動のための特定活動ビザでの在留可能期間について,通常の運用では卒業後1年を超えない範囲内に限られています。
しかし,特例措置により在留可能期間の上限が無くなり,卒業後1年を超えている場合でも更新できることとされています。

② アルバイトについて(資格外活動許可について)

通常の運用では在籍していた学校からの推薦がなければ,資格外活動許可を受けることができません。
しかし,卒業後1年を経過している場合には,特例措置により推薦状を提出しなくとも,(就職活動のための特定活動ビザの更新のみならず,)資格外活動許可を受けることができるようになっています。
本チャプターで記載している内容は,あくまでもコロナ禍での特例になります。
この特例がいつまで認められるかは定かではありませんので,ご自身で出入国在留管理庁のホームページを定期的に確認するようにしてください。

5.就職活動のための特定活動ビザのよくあるご質問

本チャプターでは,就職活動のための特定活動ビザについて,よくあるご質問をまとめています。

Q1.就職活動のための特定活動ビザ申請の必要書類は?


ご自身でビザ申請を行う際には,出入国在留管理庁が公表しているページを参考にしてください。
下記に出入国在留管理庁ホームページや申請書のリンクを記載していますので,ご参照ください。

出入国在留管理庁のホームページ(就職活動のための特定活動ビザ)
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities14.html
在留資格変更許可申請の申請書
https://www.moj.go.jp/isa/content/930004088.pdf
在留期間更新許可申請の申請書
https://www.moj.go.jp/isa/content/930004118.pdf
※なお,所属機関等作成用は作成不要です。

Q2.就職活動のための特定活動ビザ申請の注意点は?


就職活動のための特定活動ビザの変更又は更新申請の際には,直前まで在籍していた大学・専門学校・日本語教育機関による継続就職活動についての推薦状が必要となります。

また,上述した継続就職活動日本語教育機関留学生の場合には,他の留学生と異なり,
①日本語教育機関が発行する出席状況の証明書
②日本語教育機関と定期的に面談を行うとともに就職活動に関する情報提供を受ける旨の確認書(出入国在留管理庁のホームページで既定の様式をダウンロードできます。)
③日本語教育機関が一定の要件を満たしていることが確認できる資料(出入国在留管理庁のホームページで既定の様式をダウンロードできます。)
の上記3点が必要となります。

Q3.卒業した学校の推薦状の発行基準は?


推薦状の発行基準は,各教育機関によって異なります。
例えば,在学中の成績が悪い場合,出席率が低い場合,アルバイトの遵守時間を超過している場合には,学校から推薦状をもらえない可能性があります。

勉強を疎かにせず,しっかりルールを守っていれば問題はありませんが,ご心配であれば,所属する学校のキャリアセンターや就職支援を担当する部署に尋ねてみてください。

Q4.在留中の経費を支弁する能力とは?


就職活動中の生活費をどのようにして賄うかという点については,資格外活動許可を受けて自ら得る収入,自分の預金,親族からの仕送りなどを示す必要があります。

また,本人以外が生活費を支弁する場合には,その方の支弁能力を示す文書やその方が生活費を支弁するに至った経緯を示す文書の提出が必要となります。

Q5.就職活動のための特定活動ビザの更新は何回できる?


就職活動のための特定活動ビザへの変更が認められた際には,通常6ヶ月の在留期間が付与されます。
また,卒業から1年内であれば,1度だけ在留期間の更新が認められます。
ただし,現在は上記に記載したとおり,新型コロナウイルスの蔓延の影響により,引き続き日本で就職活動を行う場合に限り,1年を超えて在留期間の更新が認められています。

Q6.就職活動中に一時的に本国に帰国できる?


就職活動に影響のない程度の短期間の出国の場合,再入国許可又はみなし再入国許可の手続きをすれば,出国して,再度日本に入国することができます。

Q7.無事に内定を取得した場合には何をすべき?


就職活動のための特定活動ビザで在留中に無事内定を取得した場合には,以下のようにお考え下さい。

<就職活動のための特定活動ビザの在留期間の満了日までに勤務開始が予定されている場合>
就職活動のための特定活動ビザから,技術・人文知識・国際業務ビザを代表とする就労ビザへ変更してください。
ただし,内定を取得し就職活動をしていない状態で3ヶ月を経過する場合には,在留資格の取消事由に該当します。
そのため,就職活動をしていない期間が3ヶ月を超えないように,余裕をもって就労ビザへ申請することを心がけてください。

<就職活動のための特定活動ビザの在留期間の満了日以降に勤務開始が予定されている場合>
内定待機のため特定活動ビザへの変更を経て,就労ビザへ変更してください。
内定待機のための特定活動ビザについては,【解決事例】内定待機のための特定活動ビザ をご覧ください。

6.就職活動のための特定活動ビザのまとめ

留学生にとって,日本の就職活動は複雑難解な部分があると耳にします。
その一方で,日本での就職を希望する場合には,留学ビザには時間的な制約があるため,希望していない職種,企業であっても,妥協して就職先を選んでしまう留学生も少なくありません。
その結果,早期の離職や,スキル向上意識の欠如などといった問題に繋がっていると考えられます。

今回取り上げた就職活動のための特定活動ビザは,本気で就職を考える留学生にはぜひ知っていただきたい内容です。

就職活動がうまくいかず,困っている留学生がおられましたら,ぜひ本記事をご紹介いただければ幸いです。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 渡邉 直斗

・日本行政書士会連合会(登録番号第19260365号)
・大阪府行政書士会(会員番号第7712号)
兵庫県出身。大阪オフィス長として,大学や自治体,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請などの国際業務を専門としている。

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