渡邉 直斗

【入管法改正】企業内転勤2号ビザとは?新設されるビザを行政書士がレポート

2024年6月,出入国管理及び難民認定法(=入管法)の改正案が参議院で可決され成立しました。
今回の改正で,企業内転勤ビザに「2号」が新設されることになりました。この「企業内転勤2号ビザ」は,現状ではぴったりフィットするビザがなく,使いにくくなってしまっている部分を補ってくれる,まさに『痒いところに手が届く』ビザになりそうです。
行政書士法人第一綜合事務所が,密かに注目している「企業内転勤2号」ビザについていち早くレポートします!

そもそも「企業内転勤」ビザとは?

「企業内転勤」ビザは就労ビザのひとつで,海外にある会社から日本国内にある会社へ,期間を定めて転勤や出向する外国人向けに用意されているものです。
「企業内」とありますが,同一企業に限定されているわけではなく,議決権20%を保有する「関連会社」への出向でも,この企業内転勤ビザの対象となります。
転勤して行う業務は,「技術・人文知識・国際業務」ビザと同様の業務を行うこととされており,ホワイトカラーの業務内容に限定されます。

詳しくは,企業内転勤ビザとは? をご覧ください。

修行のための転勤は対象外

企業内転勤ビザは,たとえ100%子会社であっても,技術や知識を習得するための,いわゆる「修行」を目的とした転勤は対象外となっています。
例えば,地方の生産拠点で勤務している従業員を本社の別部門に異動させて,研修やOJTを通して技能を習得してもらい,一定期間後に元の生産拠点に帰任するということは,ある程度規模が大きい企業であれば珍しくありません。
海外に生産拠点を置く日本企業でも,従業員教育の一環としてこのような転勤をさせたいニーズは多くあります。
しかし,これまでの企業内転勤ビザでは,想定されていませんでした。

研修ビザはあるけれど…

外国人を日本へ呼び寄せて研修を受けてもらうためのビザとして「研修」ビザがありますが,この研修ビザで想定している研修は,従業員ではなく部外者を一定期間招き入れて,あれこれ教えてあげます!というものです。
開発途上国などの人たちが,日本の先端技術を学びに来るためのビザをイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。
技能を学んで本国に持ち帰ることが目的なので,研修に参加しても報酬(給与)は発生しませんし,プログラムの一環として実際に業務に携わることもできません。転勤して一定期間修行する目的では使いにくい(使えない)のです。

待望の「企業内転勤2号」ビザとは?

改正によって新たに追加された「2号」ビザでは,技能などを習得することを目的に,講習を受けて実際にその技能を使った業務を行うとことが可能になりました。

【入管法別表第一の二】

改正前 改正後
本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動 一 本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動
  二 本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関(当該機関の事業の規模,本邦の事業所における受入れ体制等が技能,技術又は知識(以下この号及び四の表の研修の項の下欄において「技能等」という。)を適正に修得させることができるものとして法務省令で定める基準に適合するものに限る。)の外国にある事業所の職員が,技能等を修得するため,本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において講習を受け,及び技能等に係る業務に従事する活動(前号に掲げる活動及びこの表の育成就労の項の下欄に掲げる活動を除く。)

改正入管法で新たに規定された活動内容を見る限り,修行目的での転勤に使えそうです!
詳しく見てみましょう。

◆誰が?◆

本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員

⇒「本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関」は,「法務省令で定める基準に適合するものに限る」とされており,事業規模や受け入れ体制について基準が設定されるようです。研修を担当する従業員の名簿,組織図,研修場所の写真など,受け入れ体制に関する資料の提出を求められることが予想されます。

◆何のために?◆

技能,技術又は知識を修得するため

⇒修行目的にできる部分です。どのような技能,技術または知識を修得するのか,どうやって修得するのか,研修カリキュラムや計画表などが重要な指標になるでしょう。

◆どんな活動ができる?◆

本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において講習を受け,及び技能等に係る業務に従事する活動

(前号に掲げる活動及びこの表の育成就労の項の下欄に掲げる活動を除く)
⇒業務しながら技能等を修得できるようになるので,これもまた修行目的にできる部分です。業務に従事することができない「研修」ビザと大きく異なる点はここです。
なお,技能等の修得を目指しながら業務に従事する活動は「育成就労」ビザと似ていますが,育成就労ビザの活動内容と重複する部分は,企業内転勤2号ビザの対象外となります。

具体的な基準はこれから

気になる「企業内転勤2号」ビザの取得要件ですが,具体的な基準はまだ公開されていません。
国会で可決された改正入管法では,日本国内で行える活動内容について規定されていますが,このほかに,どういうケースなら入国できるのか?を規定する上陸基準省令というものがあります。この上陸基準省令は,法務省で改正内容が制定されるのですが,2024年7月4日時点で,まだ公開されていません。公開され次第,本コラムを更新いたします。

「企業内転勤2号ビザ」まとめ

本コラムでは,入管法の改正で新設される「企業内転勤2号」ビザについて解説してきました。
施行前ということもあり,まだ情報も少ない状況ですが,行政書士法人第一綜合事務所では常にアンテナを張って最新情報をキャッチしていきます。今後の更新にご期待ください!
また,海外から日本への転勤でビザに関するお悩みなどがございましたら,お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 渡邉 直斗

・日本行政書士会連合会(登録番号第19260365号)
・大阪府行政書士会(会員番号第7712号)
兵庫県出身。大阪オフィス長として,大学や自治体,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請などの国際業務を専門としている。

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