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【解決事例】同性婚の在留資格との関係について

日本で永住ビザをもって在留している英国人女性Aさんは,英国に住む女性Bさんとパートナーの関係にあります。AさんとBさんは,英国の同性婚合法化を機に婚姻し,英国法上は夫婦関係にあります。AさんはBさんと一緒に日本で暮らしたいと考えていますが,Bさんはどのような在留資格に該当するでしょうか。

近年では,いわゆる性的マイノリティの人権擁護が世界的に認知され始め,LGBTという言葉も浸透しだしてきています。欧米を中心に,同性婚を法律上認める国もあります。しかし,同性婚の是非は宗教や国民性との関係が深く,日本ではまだ同性婚は合法化されていません。

本ページでは,同性婚と在留資格との関係を取り上げてご紹介します。

1.入管法上の配偶者の意義

日本民法は,男性と女性との共同体形成を法律上の婚姻と定義づけており,同性同士の関係を婚姻とは認めていません。したがって,同性婚は日本では法的に有効な婚姻とはされません。

この点,入管法には婚姻関係を基にした在留資格が規定されており,「日本人の配偶者等」,「永住者の配偶者等」,「家族滞在」,「定住者」が外国人配偶者の在留資格として存在します。平成25年10月18日管在5357号によると,入管法にいう配偶者の意義は日本民法を準拠法として解釈されており,同性婚のパートナーは「配偶者」としてこれらの在留資格を取得することはできないとされています。

2.同性配偶者の在留資格

もっとも,上記の通達は,人道的観点から,外国人同士の同性婚については,当該外国人当事者の各本国において有効に成立している場合は,本体者に在留資格があれば,その同性配偶者に告示外の「特定活動」への在留資格変更を許可するとしています。

日本の入管制度は,あらかじめ法律で定めた類型(在留資格)に該当する外国人だけを,日本での在留を認めるという制度(在留資格制度)を採用しています。しかし,日本での在留を認めるべき外国人のすべてを,あらかじめ類型化するのは現実的には不可能です。

そこで,入管法は,個々の外国人の事情に鑑みて個別救済を図るために,「特定活動」という在留資格を設けています。「特定活動」の在留資格は,法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動と規定されており,あらかじめ告示で定められている告示特定活動と,告示では定められていない告示外特定活動に分かれます。

上記の通達は,同性配偶者に告示外特定活動の在留資格を認めるという画期的な判断と言えるものでした。

3.同性配偶者の特定活動ビザの要件

告示外特定活動の在留資格は,法律上も告示でも規定されていないため,その許可要件は明確ではありません。もっとも,在留資格一般に言える要件として,①在留の必要性と②在留の許容性が求められます。

これを踏まえて上記の通達を紐解くと,以下の要件が求められていると解釈できます。

①外国人同士の婚姻が各本国法上,有効な婚姻として認められていること(在留の必要性)
②本邦で婚姻生活を送るに足る生計基盤を有すること(在留の許容性)

①は,婚姻当事者の各本国法で有効に同性婚が成立していることが求められます。同棲しているものの婚姻はしていないという内縁関係は事実上の関係に過ぎませんので,特定活動の在留資格との関係では保護されていません。
また,本邦で共同生活を送ることをその活動内容としていますので,単に同性婚として法律上認められているだけでは足りず,実体のある関係性であることが求められます。二人の交際に至る経緯や,親族との交流状況,婚姻に至るまでの経緯等の具体的な証明が求められる点は,「日本人の配偶者等」などの在留資格と異なるところではありません。

②も,「日本人の配偶者等」などの在留資格と同様に,日本で婚姻生活を送るに足りる収入や資産があることが求められます。基本的には日本で居住するパートナーの年収を示すことで足りますが,同棲生活を維持できないほどに収入が低い場合には,申請人の海外資産等で証明するケースもあります。

4.まとめ

平成25年10月18日管在5357号は,同性婚パートナーに在留資格を認めた点で性的マイノリティの方にとっては大きな一歩といえる通達でした。しかし,上記通達は外国人同士の同性婚パートナーの在留資格を認めたにとどまり,日本人と外国人との同性婚は射程外です。日本人と外国人の同性婚については,日本民法が異性間の法律婚のみを認めている関係から,解釈が分かれるところでしょう。

もっとも,従来から判例法理によって内縁関係は保護されており,そこに同性・異性の区別はありません。同居という事実関係の形成という点では,異性間の法律婚の尊重という日本民法の建前と反するものではなく,日本人と外国人の同性婚についても在留資格制度上も保護に値すべきものです。
基本的人権の尊重は,入管法も目的として規定しているところであり,マイノリティの人権擁護に関する問題は早急に検討すべきでしょう。日本ではまだまだ同性婚の議論が欧米ほど進展していませんが,近い将来,国民的に議論すべきものと考えます。