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【解決事例】医療滞在のための特定活動ビザ

ベトナム人女性Aさんは,日本に住んで20年になり,すでに永住ビザを取得しています。Aさんにはベトナムに住む両親がいますが,数年前に父親が肺がんを患い,母親が付きっきりで看病してきました。しかし,ベトナムの医療機関での治療では限界があり,Aさんは父親に日本で最先端のがん治療を受けさせたいと考えています。できれば母親も一緒に日本に来てもらって,一緒に看病してもらいたいと考えています。Aさんの両親が日本に来るためにはどのような方法があるでしょうか。

Aさんのご両親のように,日本で医療を受けることを希望する外国人の方は少なくありません。本ページでは,医療滞在のための特定活動ビザについてご紹介します。

1.特定活動告示

日本の入管制度は,あらかじめ法律で定めた類型(在留資格)に該当する外国人だけを,日本での在留を認めるという制度を採用しています。しかし,日本での在留を認めるべき外国人のすべてを,あらかじめ類型化するのは現実的には不可能です。そこで入管法は,個々の外国人の事情に鑑みて個別救済を図るために,「特定活動」という在留資格を設けています。

特定活動の在留資格は,その活動内容が「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と規定されており,入管法は法務大臣の指定に委ねています。これを受けて,法務大臣は特定活動ビザで許される活動内容がいくつか告示という方式で指定しています(特定活動告示)。

医療滞在のための特定活動ビザも特定活動告示に挙げられており,以下のように規定されています。

(参考)特定活動告示25号
「本邦に相当期間滞在して,病院又は診療所に入院し疾病又は傷害について医療を受ける活動および当該入院の前後に当該疾病又は傷害について継続して医療を受ける活動」

では,次項で医療滞在のための特定活動ビザの要件を見ていきましょう。

2.医療滞在のための特定活動ビザの要件

医療滞在のための特定活動ビザの要件は,大きく分けると4つに分解できます。

①本邦での活動が「病院又は診療所に入院し疾病又は傷害について医療を受ける活動」および「当該入院の前後に当該疾病又は傷害について継続して医療を受ける活動」であること

対象になる活動は,病院又は診療所に入院して医療を受ける活動です。そのため,ホテルや知人宅に滞在して,病院に通院するだけでは,特定活動ビザは許可されません。
もっとも,相当期間入院した後に,継続治療のために退院後も通院を続ける場合には,この退院後の医療を受ける活動も含まれています。「継続して医療を受ける活動」とは,入院前・入院中・退院後の一連の医療が連続的・継続的に行われることを意味し,医療の連続性が要求されます。例えば,抗がん剤治療のために入院していたケースで,退院後も予後観察のために通院する場合には医療の連続性がありますが,全く関係のない事故で傷害を負って治療を受ける場合には医療の連続性は否定されるでしょう。

なお,「疾病又は傷害」には,出産も含まれます。そのため,外国人が日本で出産する場合にも,(他の在留資格に該当しない場合には)医療滞在のための特定活動ビザも検討対象になるでしょう。

②「本邦に相当期間滞在」すること

「相当期間」とは90日を超える期間を意味します。医師の診断書から,日本での治療に要する期間が判断されます。
90日以内に治療を終える場合には,「短期滞在」の在留資格が当てはまります。

③日本での滞在費用および治療費を支弁する能力を有すること

医療滞在の特定活動ビザで滞在する外国人は,国民健康保険に加入することができません。医療滞在の特定活動ビザは,あくまで医療のために一時的に日本に滞在することを目的とするものであって,日本に居住することを目的としていないためです。公的医療保険は居住国で賄うべきというのが,日本の医療保険制度の建前です。

国民健康保険に加入することができないため,医療費は自己負担になります。医療費の他に,退院後の滞在費を含め,日本に滞在する間に必要な一切の費用を支弁できる能力がなければなりません。この点,外国人本人に貯蓄等がない場合でも,親族が滞在費等を負担できるのであれば,それも滞在費の支弁能力に含まれます。一般的には民間医療保険に加入することが多いでしょう。

3.医療滞在同伴者のための特定活動ビザ

Aさんの母親のように,医療を受ける方の付き添いをする外国人も,特定活動告示に規定されています。

(参照)特定活動告示26条
「前号に掲げる活動を指定されて在留する者の日常生活上の世話をする活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く。)」

「日常生活上の世話をする活動」とは,入院中の身の回りの世話や,入院の前後における病院への送迎,付き添い等を意味します。対象となる方は,治療を受ける方の親族に限られませんが,親族以外の方が申請する場合には,活動内容との信憑性の観点から,治療を受ける方との関係性が慎重に審査されます。

なお,カッコ書きにあるように,報酬を受けて付添いをすることは資格外活動になりますので,家政婦さんは対象にはなりません。

4.医療滞在のための特定活動ビザの必要書類

医療滞在のための特定活動ビザを申請するには,以下の書類が必要になります。

①申請書(在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書)

②日本の病院等が発行した受入れ証明書

③在留中の活動予定を説明する資料

(1)入院先の病院等に関する資料(パンフレット,案内等)
(2)治療予定表
(3)入院前あるいは退院後の滞在先を明らかにする資料

④次のいずれかで,滞在に必要な一切の費用を支弁できることを証する資料

(1)病院等への前払金,預託金等の支払済み証明書
(2)民間医療保険の加入証書及び約款の写し(加入している医療保険等により,治療等に要する経費を支弁することが立証されるもの)
(3)預金残高証明書
(4)スポンサーや支援団体等による支払保証書
日本の病院等が発行した受入れ証明書が必要になりますので,海外で受診している医療機関が日本の医療機関との連携がない場合には,短期滞在ビザで来日して日本の病院で受診し,その後に在留資格変更許可申請を申請する方法が考えられます。

また,付添人の申請には,以下の書類が必要になります。

①申請書(在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書)
②在留中の活動予定を説明する資料(滞在日程,滞在場所,連絡先及び付添い対象となる患者の方との関係について記載)
③申請人の在留中の一切の経費の支弁能力を証する文書

5.まとめ

医療滞在のための特定活動ビザで認められる滞在期間は,日本で治療を受ける期間に限られます。治療が終わった後も日本に滞在する,もしくは治療に関係なく日本に滞在するには,【解決事例】外国人親の呼寄せ(老親扶養特定活動ビザ)が考えられますが,ハードルが高いビザと言われています。

Aさんのお父様は医療滞在のための特定活動ビザ,お母様は医療滞在同伴者のための特定活動ビザが許可されました。しかし,1年間の治療の甲斐なくお父様は日本で亡くなられ,その後,独り身になったお母様は老親扶養特定活動ビザに切り替えました。現在は,Aさんと二人で生活し,余生を日本で暮らされています。

日本は外国人労働者を積極的に受け入れる一方で,その家族に関する法整備はまだまだ遅れています。日本が外国人にとって魅力的な国であり続けるには,外国人家族のケアも欠かすことができないと考えます。