渡邉 直斗

留学ビザを専門行政書士が徹底解説!

留学ビザは,日本にある教育機関で外国人が教育を受けるために設けられたビザです。
2008年に留学生30万人計画(2020年達成目標)が政府より発表され,以来留学生の数は増加の一途をたどっています。その結果,計画よりも3年早く,2017年に留学生の数は目標の30万人に達しました。2018年末時点において留学ビザで在留する外国人は約33万7000人,日本に在留する外国人全体の12.3%を占めます。

留学ビザは,入管法には「本邦の大学,高等専門学校,高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)もしくは特別支援学校の高等部,中学校(中等教育機関の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の中学部,小学校若しくは特別支援学校の小学部,専修学校若しくは各種学校又は設備及び編成に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動」と規定されています。

以下では,入管法に列記されている教育機関ごとに,留学ビザの対象範囲をご説明します。

1.留学ビザが認められる学校

(1)大学

ここにいう大学には,学部の他に,大学院,短期大学,大学の別科なども含まれます。いずれも通信制の課程は対象外とされています。また,大学院を除き,専ら夜間通学によるものは対象外とされています。
大学に準ずる機関として,水産大学校や防衛大学校などの省庁大学校の一部も対象になります。
海外大学の日本分校については,学校教育法上の認可を受けている場合は留学ビザの対象になりますが,認可を受けていない場合は文化活動ビザに該当することになります。

大学・大学院の研究生・聴講生も留学ビザを取得できますが,専ら聴講による教育を受ける場合には,1週間につき10時間以上の聴講をする必要があります。

(2)高等専門学校

全国に57校ある高等専門学校(いわゆる“高専”)も留学ビザの対象になります。そのほとんどが国公立ですが,私立の高等専門学校も対象です。

(3)専修学校

専門課程(専門学校),高等課程,一般課程の3つの課程がありますが,いずれの課程も留学ビザの対象になります。

専修学校において留学ビザを取得するには,日本語要件が定められており,(5)の日本語教育機関で6ヶ月以上の日本語教育を受けたことがあるか,日本語能力の試験による証明が必要になります。試験によって証明する場合は,以下のいずれかに該当しなければなりません。
・日本語能力試験N2以上
・日本留学試験200点以上
・BJTビジネス日本語能力テスト400点以上

(4)各種学校

学校教育に類する教育を行う機関として,学校教育法上の認可を受けた学校を言います。大学進学予備校やインターナショナルスクールなどが多く,当該機関が学校教育法上の認可を受けていれば留学ビザの対象になります。

インターナショナルスクールを除く各種学校において留学ビザを取得するためには,専修学校と同様に日本語要件が定められており,日本語教育機関での6ヶ月以上の学習,又は試験による日本語能力の証明が必要になります。

(5)日本語教育機関(いわゆる日本語学校)

専修学校,各種学校,または施設および編成に関して各種学校に準ずる教育機関において,専ら日本語の教育を行う場合,留学ビザを取得するには,当該教育機関が法務大臣の告示(留学告示)によって定められていなければなりません。留学告示に定められていない日本語学校では,留学ビザは取得できません。

(6)高等学校

国公立・私立を問わず留学ビザの対象になりますが,定時制や通信制の学校は対象外とされています。中等教育機関の後期課程(中高一貫校の高等部)や特別支援学校の高等部も留学ビザの対象に含まれます。

ただし,原則として,20歳以下であり,かつ,教育機関において1年以上の日本語教育を受けたことが求められます。

(7)中学校

国公立・私立を問わず留学ビザの対象になります。中等教育機関の前期課程(中高一貫校の中等部)や特別支援学校の中学部も対象になります。

原則として,17歳以下の方が対象になります。

なお,対象者が低年齢であることから,日本において監護する方がいること,生活指導を担当する常勤職員が置かれていること,日常生活を支障なく営むことができる宿泊施設が確保されていることが求められます。日本において監護する者には,本人の在日親族の他,寄宿舎の寮母さんや,ホームステイ先のホストファミリーがこれに該当します。

(8)小学校

国公立・私立を問わず留学ビザの対象になります。特別支援学校の小学部も対象になります。

原則として,14歳以下の者が対象になります。

中学校の場合と同じように,日本において監護する方がいること,生活指導を担当する常勤職員が置かれていること,日常生活を支障なく営むことができる宿泊施設が確保されていることが求められます。

2.留学ビザの審査ポイント

留学ビザの主な審査ポイントとして,活動実態と経費支弁能力の2点が挙げられます。

(1)活動実態

留学ビザに限らず,活動実態はどのビザについても審査ポイントに挙げられますが,特に留学ビザの場合は厳格に審査される傾向にあります。

留学ビザは就労資格ではありませんので,原則として就労活動ができませんが,留学中の生活費や学費を賄うために,資格外活動許可を取得すれば,週28時間以内のアルバイトが認められます。これを奇貨として,所得水準の高い日本で働くための便法として,留学ビザが悪用されている実態があります。留学ビザを取得して来日したものの,実際には授業には出席せず,アルバイトに専念し,国許の家族に給料を送金しているようなケースです。

このように当初から就労目的をもって留学ビザを取得するのは言語道断ですが,週28時間の制限をオーバーしているケースや,出席率が悪いケース,成績が悪い,特に留年しているケースでは,留学の活動実態がないと評価され,在留期間の更新許可が認められないことがあります。他のビザと比較して,留学ビザは在留期間の更新不許可件数が格段に多いのが特徴です。

(2)経費支弁能力

留学ビザの上陸基準省令に,留学中の生活に要する費用を支弁する十分な資産,奨学金その他の手段を有することが定められています。留学中の生活に要する費用には,学費,教材費,住居費,交通費,食費,その他一切の生活費が含まれます。

多くの留学生は,自身の貯蓄やアルバイト収入だけでは留学中の生活に要する費用を支弁することは困難です。そのため,親族の援助も経費支弁能力として評価されます。

留学中に親が失業して仕送りがストップしてしまったようなケースでは,経費支弁能力がないと評価され,在留期間の更新が認められないことがあります。そのような状況に陥った場合は,奨学金を借りるなどして,留学中の経費を賄えるようにしなければなりません。

3.留学ビザを申請する際の必要書類

留学ビザを申請する際の必要書類は,以下の法務省ホームページをご覧ください。

(在留資格認定証明書交付申請)
http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-1-1.html

(在留資格変更許可申請)
http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-2-1.html

(在留期間更新許可申請)
http://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-3-1.html

近時は留学ビザの審査が厳格化されている傾向にあり,在留期間更新許可申請の際に,アルバイトの給与明細や預金通帳のコピーの提出を求められることが多くあります。アルバイトのオーバーワークに対しては厳しい審査をされますので,十分に注意してください。

4.留学ビザQ&A

留学ビザについて,ご質問の多い事項を以下にまとめています。

Q 単位が取れず留年してしまいました。在留期間更新許可申請は必ず不許可になりますか?

A 留年したからといって必ずしも不許可になるわけではありませんが,大きなマイナス要因になります。留年してしまった原因と,それに対して今後どのように対策するのかを合理的に説明する必要があります。

Q 大学を休学して,母国に帰国しようと考えています。復学の際には,留学ビザを新しく取得し直す必要がありますか?

A 復学予定前に在留期間の満了日が到来する場合には,復学の際に新しく留学ビザを取得し直す必要があります。これに対して,休学が短期間であって,在留期間の満了日までに復学することが明確であれば,制度上は留学ビザを新しく取得し直す必要はありません。
もっとも,休学に関する留学ビザの取決めは,所属している大学によって異なります。休学前に所属大学に確認し,大学の取決めに従ってください。

Q 在学中に母国の交際相手と結婚しました。日本で一緒に暮らしたいのですが,どのようなビザが取得できますか?

A 家族滞在ビザを取得できる可能性があります。留学ビザも家族滞在で配偶者や子を日本に招聘することができます。ただし,日本語学校に在学中の方は,対象外とされています。

Q 学校を卒業した後は,すぐにオーバーステイになりますか?

A 定められた在留期間の満了日までは,学校を卒業した後も日本に滞在することが直ちに違法になるわけではありません。ただし,留学ビザのまま卒業後3ヶ月以上日本で滞在し続けた場合は,留学ビザを取り消される可能性があります。卒業後は早期に帰国するか,他のビザに変更するようにしてください。

Q 卒業までに就職先が決まりませんでした。卒業後も就職活動を続けることはできますか?

A 大学,大学院,短期大学,専修学校の専門課程(専門学校)を卒業された方は,就職活動のための特定活動に変更できる可能性があります。詳しくは 【解決事例】就職活動のための特定活動ビザ をご参照ください。

Q 留学ビザの在留期間を教えてください。

A この点,令和3年3月30日に入管法施行規則の一部が改正され,官報公告されました。これまで,留学ビザは,4年3月,4年,3年3月,3年,2年3月,2年,1年3月,1年,6月又は3月の在留期間が付与されていました。
今回の入管法施行規則の改正では,留学ビザの在留期間の最長は5年とし,法務大臣が個々の外国人について指定する期間を在留期間とする旨が定められました。
この改正によって,今後の留学ビザは,これまで以上に卒業までの期間を考慮して,在留期間が決定されることが見込まれます。
実際,当社のお客様でもこれまでになかった5ヶ月や11ヶ月の在留期間が決定されています。
重要な改正点ですので,ご注意ください。

5.留学ビザの相談&解決事例

留学ビザに関する当社の相談&解決の事例をご紹介します。
以下ご紹介事例は,当社でお手伝いさせていただき,全て解決した事例です。

①交換留学生や新入生の在留資格認定証明書交付申請を一括でお願いしたい。
②成績不良で在留期間の更新申請が不許可になってしまったが,再申請したい。
③学費未納で退学になってしまい母国に帰国したが,学費の目途が立ったので復学したい。
④更新が不許可になり退学して母国に帰国したが,復学したい。
⑤入管から資料提出通知書が届いたので相談したい。

6.留学ビザのまとめ

留学ビザは在留外国人全体に占める割合が大きいビザの一つですが,取扱い経験のある行政書士事務所はそう多くありません。留学生の諸申請を教育機関独自で処理していることが多いためです。しかし,多くの教育機関はあやふやな知識でなんとなく書類を作っているのが実情で,いざ問題が起きた際には大きなリスクを伴います。そのリスクを最終的に背負うのは,帰国を余儀なくされる留学生です。

入管法全体の正確な知識がなければ,留学生の適正な管理は実現できません。行政書士法人第一綜合事務所は,大学や専門学校の顧問を務めており,顧問先を中心に多くの相談事例,年間数百件にのぼる留学ビザの申請実績があります。その膨大なノウハウを留学生の個別事例に還元しております。

留学生ご自身のみならず,留学生の管理でお困りの教育機関の関係者の皆様からのお問い合わせをお待ちしております。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 渡邉 直斗

・日本行政書士会連合会(登録番号第19260365号)
・大阪府行政書士会(会員番号第7712号)
兵庫県出身。大阪オフィス長として,大学や自治体,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請などの国際業務を専門としている。

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