冨田 祐貴

留学ビザから経営管理ビザへの変更方法を行政書士が解説!

本ページでは,留学ビザから経営管理ビザへ変更する際のよくあるご質問をはじめ,問題点など,これから起業を目指す留学生向けの情報を記載しています。
“経営管理ビザは難しい…”そのように考えていませんか?
しかし,求められている法律上の要件を一つずつクリアしていけば,経営管理ビザの取得は難しくありません。
下記の内容は少し専門的な部分もありますが,いずれも必要な内容ですので,ぜひご確認ください。
それでは,留学ビザから経営管理ビザへの変更方法を見ていきましょう。

1.留学ビザから経営管理ビザ ~よくあるご質問~

本チャプターでは,留学ビザから経営管理ビザへの変更を目指す留学生の方から,よくあるご質問をまとめています。

経営管理ビザの要件の詳細は,以下のコラムにまとめていますので,是非ご確認下さい。
>>経営管理ビザ 要件 はコチラ

① 経営管理ビザを取得するために事務所は必要?

経営管理ビザを取得するためには,事業所の確保が必要です。
事業所については,賃貸物件でも問題ないのですが,経営管理ビザの要件に適合した事業所を確保しなければ,経営管理ビザは取得できません。

では,経営管理ビザの事業所の要件とはどのような内容なのでしょうか。
以下の内容が,事業所に関する主な注意点となりますので,ご確認ください。

  • 月単位の短期間賃貸スペースは要件に適合しません。
  • 容易に処分可能な屋台等は要件に適合しません。
  • 使用目的は,事業用,店舗,事務所等の事業目的である必要があります。
  • 賃貸借契約の借主名義は,事業主名義(法人の場合は法人の名義)である必要があります。
  • 住居兼事務所の場合には,貸主の同意や事業目的専用の部屋が必要になります。

② 資本金500万円の要件は融資を受けて出資しても満たされる?

資本金の要件について,「経営管理ビザの取得のためには,必ず資本金として500万円の出資が必要」という誤った認識をなされている方が多いので,説明させていただきます。

経営管理ビザを取得するためには,下記の要件のいずれかが必要となります。

  • 日本に居住する2人以上の常勤従業員を確保していること
  • 資本金又は出資の総額が500万円以上であること
  • 上記に準ずる規模であると認められるものであること

上記のような誤解があるのは,経営管理ビザの取得のために,「資本金又は出資の総額が500万円以上であること」という要件のクリアを目指すのが一般的だからでしょう。

行う事業によりますが,会社経営をスタートした当初から常勤従業員を2人以上雇用することは大変なのです。

では,現金が500万円あれば問題ないかというと,実はそういうわけではありません。
マネーロンダリング防止の観点や,見せ金を排除する観点から,500万円の出どころについても,入管では審査されます。

例えば,アルバイトで違法なオーバーワークをして形成した500万円で経営管理ビザを取得することはできません。

最後に,質問に対する回答となりますが,借り受けた500万円を資本金として出資しても問題ありません。
もっとも,安定した生計基盤が維持できるかという観点から,返済計画についても審査されることになりますので,生計の収支が問題にならないような返済計画を策定することが重要です。

③ 許認可取得は経営管理ビザの取得前に必要?

原則として,経営管理ビザを申請するまでに,事業遂行に必要な許認可を取得しておく必要があります。
もっとも,留学ビザでは取得できない許認可もありますので,この場合には注意が必要です。

この場合には,経営管理ビザ取得後に,事業遂行に必要な許認可を取得する誓約をし,経営管理ビザの申請段階では,なぜ許認可が取得できないのかを根拠と共に入管に示す必要があります。

④ 個人事業主で経営管理ビザは取得できる?

経営管理ビザを取得するためには,会社設立が必要と考えられている方が多いと思いますが,実は個人事業主であったとしても,経営管理ビザを取得することは可能です。

もっとも,個人事業主については,資本金を観念できないため,経営管理ビザの要件に適合するためには,出資の総額が500万円以上であることを示す必要があります。

この出資金の立証の観点から,会社設立より個人事業主の方が,経営管理ビザ取得の難易度はあがります。

⑤ ベストな行政書士の選び方は?

留学ビザから経営管理ビザへの変更を希望し,インターネットで検索すると実に様々な行政書士事務所が出てきます。

悩ましいのは,どの行政書士事務所へ依頼するのが良いかということですが,以下の点に注目していただくことをお勧めします。

  • 経営管理ビザの実績が十分にある行政書士かどうか
  • 国際業務を専門にしている行政書士事務所かどうか
  • 経営管理ビザ取得までの役割分担(行政書士がするのか,自分でするのか)が明確か
  • 見積金額の範囲で,どこまでの業務が含まれているか

簡単に当社のご紹介をさせていただくと,下記のとおりになります。

  • 経営管理ビザを含め,年間5000件以上のご相談をお受けしている行政書士法人です
  • 当社は,ビザ申請や帰化申請などの国際業務に専門特化している行政書士法人です
  • 当社では開業準備に専念していただくため,お客様へのご負担を最小限にすることを大切にしており,案件をお受けする段階で全ての業務内容をご説明させていただきます
  • 当社ではお見積書にて,業務内容を全てお示ししております
  • 英語,中国語,ベトナム語に対応できるスタッフが在籍していますので,母語でのご相談が可能です

⑥ 顧問税理士は必要?

会社を設立し,経営管理ビザを取得した場合,年に1回決算報告をする義務が生じます。

法人税法74条
内国法人は,各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に,税務署長に対し,確定した決算に基づき一定の事項を記載した法人税の確定申告書を提出しなければならない。

法人の決算書は,ご自分で作成することも可能ですが,以下の観点から税理士さんにご依頼されることをお勧めいたします。

  • 法人税等を正確に計算することで余分な税金を支払う必要がない
  • 後の税務調査で問題を指摘された際に,対応によっては予定外の税金支払いが生じる可能性がある
  • 今後の資金調達を考慮し税理士さんと相談しながら決算を組む方が良い
  • 事業に関係のない申告書作成に時間を投じるのはもったいない

税理士さんとの相性もあると思いますので,経営管理ビザを取得された暁には,事業成功に向けて,色々な税理士さんとお会いになってみてはいかがでしょうか。
行政書士法人第一綜合事務所をご利用のお客様については,税理士さんのご紹介も無料で行っておりますので,ご希望の方は当社担当者までその旨お伝えください。

⑦ 社会保険には加入する必要がある?

原則として,下記の事業所については社会保険の加入義務があります。
これは“任意”ではなく,“義務”ですのでご注意ください。

  • 事業主を含む従業員1人以上の会社,国や地方公共団体などの法人
  • 常時使用の従業員が5人以上いる,一部の業種を除く個人事業所

法人の場合には,原則社会保険に加入,個人事業主の場合には,従業員5名以上で社会保険に加入する必要があります。

また,入管が公表した資料から,経営管理ビザの取得のみならず,更新の際にも社会保険に加入していることが重視されていることを見て取れます。

◇労働関係法令・社会保険関係法令を遵守していること
雇用する従業員(アルバイトを含む。以下同じ。)の労働条件が労働関係法令に適合していることが必要です。また,労働保険の適用事業所である場合は,当該保険の加入手続を適正に行い,保険料を適切に納付していることが求められます。
その他,健康保険及び厚生年金保険の適用事業所である場合には,当該保険の加入手続を行っていること,及び雇用する従業員の健康保険及び厚生年金保険の資格取得手続を行い,保険料を適切に納付していることが求められます。
これら労働関係法令・社会保険関係法令に適合していないと認められる場合には消極的な要素として評価されます。

(出所:「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」より一部抜粋)

社会保険料は,会社設立した当初はご負担に思われる方も多いと思います。
しかし,上記のとおり社会保険の加入は法的義務です。
また,経営管理ビザの審査でも消極的に判断されることから,これから経営管理ビザを取得される方で社会保険の加入義務がある方は,必ず加入手続きをとるようにしてください。

無料相談のお問い合わせ先

06-6226-8120
03-6275-6038

2.留学ビザから経営管理ビザ ~よくある問題点~

本チャプターでは,留学ビザから経営管理ビザに変更を希望される方を対象に,よくある問題点について記載しています。

その他の内容でご不安がある場合には,そのままにせず早めにご相談ください。

① オーバーワークがある

留学ビザは,原則週28時間のアルバイト時間の制限があります。
しかし,このルールを守らず,オーバーワークの状況に陥っている留学生が一部います。
このようなオーバーワークの過去がある留学生については,入管審査においては,留学ビザから経営管理ビザへの変更が難しくなってしまいます。

仮に,オーバーワークの状況に陥っている場合には,いったん帰国するか,そのまま経営管理ビザの変更を目指すかという選択肢になりますが,近年,入管審査におけるオーバーワークの取り締まりは厳格化しており,違反の程度によっては,ご本人様の希望に関わらず,リカバーが困難と判断せざるを得ないケースもございます。
場合によっては,留学時代の素行が悪いことを理由として,出国を促されることもありますので,日々のアルバイト時間の管理には,十分に注意をしてください。

なお,留学ビザから経営管理ビザへの変更を目指す場合についても,基本的な考え方は留学ビザから就労ビザへの変更手続きと同じですので,以下のページを参考にしてみてください。

>>留学ビザから就労ビザ はコチラ

② 学校を卒業できない

留学生が日本の教育機関を卒業できずに退学,除籍になっている場合には,留学ビザから経営管理ビザの難易度は格段に上がります。

入管審査においては,そもそもなぜ卒業できなかったのかという点が重視されます。
卒業できない理由が,上記のようにオーバーワークであったり,学校に行っていなかった場合については,入管法に違反していると認定され,出国を選択せざるを得なくなることも多いです。

留学ビザから経営管理ビザに変更する場合には,一般的には経営管理ビザの要件を整えることだけに意識が行きがちですが,実は入管審査においては,現在の活動状況,つまり留学ビザの活動状況についても重視されていることをご認識ください。

③ 卒業してから時間が経過している

留学生が日本で所属している教育機関を卒業し,相当期間を経過した後,留学ビザから経営管理ビザに変更する場合には,注意を要します。

入管法22条の4第1項第6号には,在留資格の取消しが定められています。
(参考条文 入管法22条の4第1項第6号)

入管法22条の4
法務大臣は,別表第一又は別表第二の上欄の在留資格をもつて本邦に在留する外国人(第六十一条の二第一項の難民の認定を受けている者を除く。)について,次の各号に掲げるいずれかの事実が判明したときは,法務省令で定める手続により,当該外国人が現に有する在留資格を取り消すことができる。
六 別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者が,当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を継続して三月(高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第二号に係るものに限る。)をもつて在留する者にあっては,六月)以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)。

上記の内容を要約すると,留学生が日本の教育機関を卒業してから3ヶ月以上経過してから経営管理ビザを申請する場合には,在留資格の取消事由がある申請という扱いを受けることになります。

このようなケースで,留学ビザが実際に取り消されることは実務上あまりないのですが,在留資格の取消事由が付いている申請ということには違いありません。
そのため,留学ビザから経営管理ビザへの変更を目指す場合には,日本の教育機関を卒業してから3ヶ月以内にビザ申請をすることを目安にしてください。

④ 事業が継続できるか疑問を抱かれる

経営管理ビザの入管審査においては,これから行う事業が安定して継続的におこなわれるかという点が重視されます。

留学生においては,これまで経営経験のない方が大半です。
仮に,事業が安定して継続するとは認め難いと判断されてしまうと,経営管理ビザは不許可になってしまいます。

そのような事態を回避するためには,どのように事業を行っていくのかという点について,疎明資料と共に,具体的に示すことが極めて重要です。

経営管理ビザの準備段階では,取引先との契約書や可能な限り具体的な事業計画を立案することが大切になってきます。

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3.留学生が在留期限までに経営管理ビザへの変更許可申請ができない場合

以上のように経営管理ビザの取得のためには,起業活動の準備期間が必要となります。

それでは,在学する学校の卒業直前で経営管理ビザを取得したいと考えるに至り,起業活動の準備期間が足りず,在留期限内に経営管理ビザへの変更許可申請ができない場合には,一度,日本を離れるほかないのでしょうか?

実は,このような場合において,起業活動を継続するために,以下の2つの特定活動ビザへの変更の可能性があります。

以下,簡単に要件を説明しますので,ご確認ください。
なお,双方とも学校の推薦が必要となりますので,ご検討される際には,事前に学校のご担当者の方に問い合わせていただくことをお勧めします。

① 通常の大学(短期大学を除く)の在籍者の場合

ⅰ 留学ビザで日本の大学(短期大学を除く)の学部又は大学院を卒業した者であること。
ⅱ 在学中の成績及び素行に問題がなく,在学中から起業活動を開始しており,大学が推薦する者であること。
ⅲ 事業計画書が作成されており,当該計画書などにより開始しようとする事業内容が明らかであり,卒業後6月以内に,経営管理ビザへの在留資格変更許可申請を行うこと及びその申請内容が経営管理ビザの要件にも適合することが見込まれること。

ⅳ 滞在中の一切の経費を支弁する能力を有していること。
ⅴ 以下のいずれかに該当すること
ア 500万円以上の資金を調達していること
イ 2人以上の常勤職員を雇用することが確実であること
ウ これらに準ずる規模であることが認められること
ⅵ 起業に必要な事業所用の施設が確保されることが確実であること

以上が主な要件であり,事業計画書の作成は必要となるものの,会社の設立や事業所の「確保」までは求められません。
そして,全ての要件を満たす場合には,特定活動ビザで卒業後に6ヶ月間,日本に滞在できます。

② 優秀な留学生の受入れに意欲的に取り組んでいるとされる大学等の在籍者の場合

ⅰ 申請人が「留学生就職促進プログラム」の採択校若しくは参画校又は「スーパーグローバル大学創成支援事業」の採択校を卒業又は修了していること。
※ 対象校は以下のリンクから確認できます
留学生就職促進プログラム
スーパーグローバル大学創成支援
ⅱ 申請人が上記ⅰの大学等に在学中から起業活動を行っていたこと。
ⅲ 上記ⅰの大学等が,申請人が起業活動を行うことについて推薦すること。

ⅳ 上記ⅰの大学等が,申請人の起業活動について支援をすること。
ⅴ 申請人が起業活動の状況を上記①の大学等に報告すること。
ⅵ 上記ⅰの大学等が申請人の起業活動の継続が困難になった場合等に帰国指導・支援を行うこと。

以上の要件を全て満たす場合には,特定活動ビザで最長2年間日本に滞在できます。
要件から明らかなように,こちらは事業計画書の作成を求められませんので,起業活動の準備期間を確保するという観点から,極めて有効な制度と言えるでしょう。

4.留学ビザから経営管理ビザへの変更方法のまとめ

一部難しい内容もあったかと思いますが,記載している内容はいずれも欠かすことのできない重要なものです。
そのため,しっかり理解をしてから,経営管理ビザの準備を開始するようにしてください。

日本へ留学に来られている方の中で,起業し成功を収めている先輩は多数いらっしゃいます。
次は皆さんの番です!

行政書士法人第一綜合事務所では,無料でご相談をお受けしておりますので,是非お問い合わせください。
英語,中国語,ベトナム語にも無料で対応しています。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 冨田 祐貴

・日本行政書士会連合会(登録番号第19261319号)
・東京都行政書士会(会員番号第14030号)
兵庫県出身。東京オフィス長として,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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