永住権の不許可事例と再申請の方法を行政書士が解説

永住権(永住ビザ)を自分で申請したものの、残念ながら不許可になってしまったというご相談が当社に多数寄せられます。
不許可の理由は様々ですが、永住権の審査が厳しくなっていることが最も大きな要因です。
しかし、万が一永住権申請が不許可となってしまった場合でも、簡単に諦めてしまうのはもったいないです。
なぜなら、永住権の不許可理由がきちんとケアーできれば、逆転許可の可能性もあるからです。
本コラムでは、永住権の不許可事例とをはじめ、不許可になってしまった場合の具体的な対処法や再申請のポイント、行政書士に依頼するメリットについてご説明いたします。
Index
1.永住権の取得条件
まずは、永住権を取得するための条件をご紹介します。永住権を取得するための審査基準は、入管法第22条に定められているほか、入管が公表している「永住許可に関するガイドライン」によって具体的に定められています。
同ガイドラインによると、永住権を取得するためには、大きく以下の3つの条件を満たす必要があります。最新のガイドラインについては令和8年2月24日に改訂の「永住許可に関するガイドライン」を行政書士が解説!審査厳格化への具体的な対策もご参照ください。
- 法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること(素行善良要件)
- 日常生活において公共の負担にならず、その有する資産または技能から見て将来において安定した生活が見込まれること(独立生計要件)
- その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益適合要件)
ア.原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
イ.罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに入管法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
※公的義務の履行について、申請時点において納税納付済みであったとしても、当初の納付期間内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価されます。
ウ.現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること。
※2027年3月31日までは「3年」も最長として扱われます。
エ.現に有している在留資格について、法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること。
オ.公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
これらの条件を満たさないことが、そのまま永住権が不許可となる原因となります。
以下では、永住権の不許可事例について、より具体的にご説明いたします。
2.永住権が不許可となる場合
(1)永住権の不許可率
不許可事例を検討する前に、永住権の不許可率はどのくらいなのでしょうか。
【2026年最新データ】永住申請の許可率は約50%?半分近くが不許可になる理由と一発許可のための対策を専門家が解説のコラムに詳細がありますのでご覧ください。
上記コラム記載のデータによると、実に2人に1人は永住権申請が不許可となっている計算となります。
これを見て永住権申請は厳しいものという印象を持たれた方もいるかもしれません。
もっとも、不許可と言ってもその理由は様々です。
不許可の事例を知ることで、ご自身の永住権申請や不許可の場合の再申請に役立てることができるはずです。
そこで、以下では実際に永住権が不許可になりやすい代表的な例をご紹介します。
(2)永住権の不許可の類型
①年収が不足している
永住権申請においては、年収が許可・不許可を分ける大きな要因と言っても過言ではありません。
具体的な年収は入管側が明らかにしているわけではありませんが、実務上永住権を取得するために必要な年収の目安はおよそ300万円と言われています。
それでは、入管へ申請する際に、年収の資料は何年分を提出すればよいのでしょうか。
就労ビザや定住者ビザをお持ちの方が永住権の申請をする際には、直近5年分の課税証明書の提出が求められています。
また、配偶者ビザをお持ちの方が永住権の申請をするにあたっては、直近3年分の課税証明書を提出することが求められています。
仮に、提出すべき課税証明書の前年度において年収が300万円に達していなくても、徐々に年収が上がっていることや勤続年数によって、今後も安定的な生計を維持することが立証できれば、永住許可が得られるケースもあります。
また、申請するご本人の年収が300万円に満たなかったとしても、世帯の年収次第では十分に永住権の許可が得られるケースもあります。
②年収に対して扶養家族が多い
年収に対して扶養家族が多い場合には、永住権の不許可要因となります。
その理由は、扶養家族が多い場合には、安定した生計を今後も維持できるのかという点で入管が懸念するためです。
そのため、扶養家族の人数を判断にあっては、扶養の実態、年収から見た扶養家族数の検討が重要です。
③海外への出国日数が多い
海外への出国日数が多い、あるいは出国が頻繁にある場合も不許可となるケースがあります。
1年のうち半分以上を海外で過ごされている方、日本に生活の拠点がないと判断される可能性が高く、不許可となるリスクが高くなります。
もっとも、仕事の都合で、頻繁にあるいは長期出国せざるを得ないケースもあります。
このように本人の意思によらずにやむを得ず出国するようなケースでは、出国の理由を明らかにし、出国理由が合理的なものであることを説明することで永住権の許可への道が開けるケースもあります。
実際に弊社の案件でも、勤務先から出張記録を証明する資料を作成してもらい、永住権の許可を取得した事例もあります。
上記の他、出産・育児のために長期間出国するケースも考えられますが、この点は入管からどのように評価されるでしょうか。
この場合、出産・育児のための長期出国は「本人の意思によらず」とは言えないため、出国が長期間に及ぶ場合には、永住権の審査において入管からマイナスに評価されることになるため注意が必要です。
④年金の未納・滞納
年金については、日本に住所がある20歳以上の方は、日本人と同様に公的年金に加入しなければなりません。
これは外国人の方であっても同様です。
就労ビザをお持ちの方で、厚生年金に加入している方であれば問題となることは少ないのですが、国民年金の場合は注意が必要です。
未納・滞納がある国民年金保険料は、2年間遡って納付することができます。
したがって、永住権申請をする前に、まずは未納・滞納がある年金を支払う必要があります。
ただ、未納・滞納となっている年金保険料を全て支払ったからといって、永住権申請をして許可が得られるかというとそうではありません。「永住許可に関するガイドライン」上でも「当初の納税(納付)期間内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価されます」とあります。
未納・滞納がある年金保険料を支払った後も定期的に滞納することなく年金を支払っていることを証明するため、一定期間は納期通りに納付した実績を作ってから永住権を申請することをお勧めします。
また、配偶者ビザをお持ちの外国人の方の場合は、配偶者の年金保険料の納付状況も審査対象となります。
そのため、ご自身の年金保険料の支払状況に問題がなくても、配偶者の納付状況にも注意を向けておく必要があります。
⑤住民税・税金の未納・滞納・納期限遅れ
年金と同様に、住民税(市区町村民税・都道府県民税)などの税金についても、期日通りに納められているかが厳しく審査されます。
「未納がなければ大丈夫」「後からまとめて支払って完納したから問題ない」と考えられている方も多いですが、年金について前述したように、税金も「単に支払っているか(完納)」だけでなく「支払期日を守って支払っているか」が重要視されます。
特に注意が必要なのが、会社での天引き(特別徴収)ではなく、自分で納付書を使って支払っている方(普通徴収)です。
- 納期限(支払期日)の遅れ・納付遅延
納期限を1日でも過ぎて支払った履歴があると、入管からは「公的義務を適正に履行していない」と評価され、不許可の原因となります。 - 「納期限を守って支払ったこと」が証明できない
市役所で発行される「納税証明書」の記載フォーマットによっては、納めた日付(納付年月日)まで記載されない場合があります。その結果、「期日通りに納めたこと」を立証できず、公的証明書としての効力が認められない(=期限内納付の証明にならない)と判断されて不許可になる事例もあります。 - 過去の転居による証明書の提出漏れ
直近数年間に引っ越しをした場合、現在の住所地だけでなく、過去に住んでいた自治体発行の納税証明書も揃える必要があります。期間が不足していると納税実績を証明できません。
その他永住申請の必要書類については【2026年最新】永住権の条件と必要書類・申請の流れを完全解説!もご参照ください。
3.永住権の再申請
(1)永住権の不許可理由を把握
永住権申請が不許可になった場合でも、再申請することは可能です。
一度不許可になったからといって諦める必要はありません。
永住権の再申請をするにあたって最も重要なことは、不許可の理由を知ることです。
永住権申請の不許可の理由は、以下の2つの方法で知ることができます。
- 不許可の場合に入管から送られてくる不許可通知書
- 永住権申請をした入管へ不許可理由を確認
(2)永住権の再申請における行政書士の役割
上記のとおり、永住権が不許可になった場合、最も重要なことは不許可の理由を知ることです。
なぜなら、不許可の理由が把握できなければ、再申請のための戦略を立てることもできないからです。
永住権の不許可理由を知る方法は前述の通りですが、実際に申請したご本人が不許可理由を正確に理解することはとても難しいものです。
というのも、不許可通知書には「出入国管理及び難民認定法第22条第2項第2号に適合するとは認められません。」などと記載されているため、一般の方には何のことを言っているのかさっぱりわからないからです。
不許可理由を入管に直接聞きに行くことも可能ですが、不許可理由は基本的に1回しか聞きに行くことができません。
そして、入管担当者が必ずしも詳しく不許可理由を教えてくれるとは限りません。
そのため、入管担当者から不許可理由を説明されたとしても、再申請に向けて何をどのように準備したらよいかは判断がつきにくいのです。
この点、永住権を申請したご本人に行政書士が同行し、直接入管担当者から不許可理由を聞くことが認められています。
審査の要点や実務基準を熟知した行政書士が入管担当者とやり取りをすることで、多くの情報を引き出すだけでなく、再申請に向けてのポイントを正確に掴むことが可能になります。
行政書士と一緒に不許可の理由を把握することは、再申請に向けて大きな一歩と言えます。
永住権申請の不許可理由を確認した後は、永住権の再申請に向けて準備を進めていきます。
永住権申請は、不許可から再申請まで一定期間を空けなければならないというルールはありません。
また、再申請そのものが入管から不利益に扱われるということもありません。
しかし、不許可理由となった原因が改善しない状態では、何度再申請しても結果は変わりません。
また、不許可となった事実が改善している場合でも、そのことを入管側に立証できなければ、やはり同じ結果となってしまいます。
では、どのようにして永住権の再申請をするのが良いのでしょうか。
(3)永住権の再申請の方法
まず、不許可理由を把握したうえで、不許可理由をすぐに改善できない状況であれば、改善できるまで待ってから再申請に臨むことになります。
なぜなら、闇雲に申請しても、不許可理由が改善しない限り永住権の許可を得ることはできないからです。
次に、不許可理由が改善できたのであれば、理由書と立証資料を準備して、永住権の再申請を行います。
もっとも、一度不許可とされた事実について、その改善を入管に正確に伝えることは簡単なことではありませんが、不許可理由が改善していることを積極的、かつ的確にアピールすることが重要です。
永住権の再申請にあたっては、不許可理由の改善とその立証の2点がカギになります。再申請までの流れを改めて確認しておきましょう。
入管へ行き、審査官から直接理由を聞き取る
・ヒアリングは原則1回のみ
・行政書士の同行を活用して正確に把握する
STEP 2:問題点の改善・実績作り
原因に応じた改善(未納の完納、期限内納付実績作りなど)を行う
・改善しないまま同じ内容で出しても再び不許可になる
・内容によっては1〜3年の期間が必要
STEP 3:立証資料と理由書の作成
改善されたことを客観的に証明する書類・理由書を準備する
・「なぜ改善されたといえるのか」を説得力を持ってアピールする
STEP 4:永住権の再申請
入管へ再申請書類一式を提出する
・不利益扱いはないため、準備が整えばいつでも申請可能
4.このコラムに関するQ&A
永住権の不許可やその後の再申請に関するご質問にお答えします。永住権に関する50個の質問にお答えした永住ビザ申請の盲点とは?最新ガイドラインに基づく50問50答!もぜひご参照ください。
Q1.永住申請が不許可になってしまった場合、申請のために入管へ提出した原本(結婚証明書や公的証明書など)は返却してもらえますか?
A1.原則として、一度提出した申請書類や証明書は返却されません。
日本で発行された納税証明書や住民票はもちろん、外国の公的機関が発行した結婚証明書や出生証明書なども原則返還されないため注意が必要です。ただし、外国の原本で二度と再発行ができない貴重な書類(原本)に限り、申請時に「原本還付手続き」をあらかじめ行っていた場合は返却を受けられる可能性があります。再申請の際には、改めて最新の証明書や資料を揃え直す必要がある点にご注意ください。
Q2. 永住申請が不許可になったら、現在持っている就労ビザや配偶者ビザの更新にも影響しますか?
A2. 永住が不許可になったからといって、直ちに現在のビザが取消されたり、次の更新が必ず不許可になったりするわけではありません。
ただし、不許可理由が「重大な納税遅延」「年金の未納」「自己都合による長期出国」などである場合、現在のビザの更新審査(在留期間更新許可申請)の際にもマイナス評価となり、在留期間が短縮されたり、最悪の場合は更新が認められなかったりするリスクはあります。そのため、永住権の再申請だけでなく、次回更新に向けても早期に不許可理由を解消しておくことが極めて重要です。
Q3. 不許可の理由を入管へ聞きに行く際、入管の審査官に反論や再弁明をしても審査結果が変わることはありますか?
A3. ヒアリングの場で審査官に反論や弁明をしても、その場で不許可の決定が覆る(逆転許可になる)ことはありません。
入管での不許可理由の聞き取りは、決定した処分内容の理由を把握するための場であり、再審査の場ではないためです。場で感情的に反論することは避け、審査官の説明や指摘事項を静かに記録・メモすることに専念しましょう。提示された問題点を正確に持ち帰り、十分な対策と証明資料を準備した上で「再申請」として提出することで初めて審査のやり直しが行われます。
Q4. 家族全員(夫婦や親子)でまとめて永住権を申請して不許可になった場合、全員が不許可になりますか?それとも一部だけ許可されることはありますか?
A4. 審査は一人ひとり個別に行われるため、「夫だけ許可されて妻と子供は不許可」「全員不許可」など結果が分かれることがあります。
例えば、主たる生計維持者がすべての条件を満たしていても、その配偶者の年金・保険料に未納や期限遅れがあった場合、配偶者だけが不許可になるケースがあります。また、主たる生計維持者が要件を満たしていない(年収不足や年金未納など)場合は、連動して家族全員が不許可となるのが一般的です。家族で申請する場合は、全員の納付状況や在留状況に問題がないかを事前にチェックしておく必要があります。
Q5.永住権が不許可になった後、結果を覆すことはできますか?
A5. 法的には裁判所へ「処分の取り消し訴訟」を起こすという手段自体は存在しますが、実務上は入管で不許可の理由を確認したうえで「再申請」を行うのが一般的かつ確実です。
なお、入管の処分に対しては「行政不服審査法に基づく不服申し立て(審査請求)」を行うことは法律上認められていません。また、裁判で争う(取消訴訟を起こす)場合、判決が出るまでに長い時間と費用がかかるうえ、不許可の原因(年金の納付遅れや年収不足など)が事実である場合、裁判で結果が翻る可能性は極めて低いです。
不許可の理由を受け止めた上で、原因を改善して「再申請」を行う方が、はるかにスピーディーかつ確実に永住権の取得を目指すことができます。
5.永住権の不許可事例と再申請の方法のまとめ
これまで記載してきたように、永住権が不許可になってしまった場合でも、簡単に諦める必要はありません。
不許可の理由を知り、不許可理由を改善することで永住許可の再申請が可能になります。
永住権申請が不許可となり、どのように対応したらよいか、永住権の再申請の方法でお困りの方は、行政書士法人第一綜合事務所までお気軽にお問い合わせください!入管への不許可理由ヒアリングへの同行、再申請に向けた個別の理由書・立証資料の作成までサポートさせていただきます。
永住権の再申請への可能性を一緒に探っていきましょう。




