冨田 祐貴

木材産業分野における特定技能1号の受入れ要件・業務内容、試験概要、注意点を行政書士が解説

木材産業分野における特定技能1号の受入れ要件・業務内容、試験概要、注意点を行政書士が解説

木材産業分野における特定技能1号制度の活用は、深刻な人手不足に悩む製材・木製品製造企業にとって、即戦力となる外国人材を確保するための大きな選択肢です。
しかし、特定技能制度は全産業共通の基本ルールのほか、分野固有の受入れ要件や独自の手続きが厳格に定められています。制度の理解不足や手続きの遅延により、不法就労や在留資格不許可といったリスクを招くことも少なくありません。
 
本コラムでは、行政書士の視点から、企業の採用担当者が木材産業分野で特定技能外国人を受け入れる際に押さえておくべき要件(協議会への事前加入など)・ できる業務、 試験の概要、注意点を、入管業務専門の行政書士が解説します。

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1. 木材産業分野の受入れ要件

木材産業分野で特定技能外国人を受け入れるためには、企業(特定技能所属機関)および受け入れる事業所が、法令ならびに分野固有の上乗せ基準をすべて満たしている必要があります。

また、木材産業分野における特定技能1号の受入れ見込数は、令和10年度末までの5年間で最大4,500人と定められています。令和8年6月末時点の速報値で在留数はまだ74人ですが、受入れ枠に限りがある点も留意しておきましょう。

(1)受入れ機関が満たすべき要件

① 対象業種の該当性(日本標準産業分類)
受け入れを行う事業所(工場や作業所等)は、日本標準産業分類に基づく以下のいずれかの対象業種を行っていることが必須条件です。

  • 小分類121:製材業、木製品製造業(細分類1211 一般製材業、細分類1212 単板〈ベニヤ〉製造業、細分類1213 木材チップ製造業、細分類1219 その他の特殊製材業)
  • 細分類1222:合板製造業(単板積層材〈LVL〉製造業を含む)
  • 細分類1223:集成材製造業
  • 細分類1224:建築用木製組立材料製造業(プレカット製造業)
  • 細分類1227:銘木製造業
  • 細分類1228:床板製造業

造作材製造業・建具製造業(細分類1221)、パーティクルボード製造業(細分類1225)、繊維板製造業(細分類1226)、木製家具製造業(中分類13)などは特定技能の対象外です。
ただし、事業の一部で対象業種に該当する製品(プレカット材や合板など)を製造・加工している場合は、その製造工程に限り受入れが可能です。

② 雇用形態
特定技能外国人との契約は直接雇用に限られます。派遣雇用による受入れは一切認められていません。

③ 法令遵守
過去1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を会社都合で離職(非自発的離職・整理解雇など)させていないことや、雇用主側の理由で行方不明者を発生させていないこと、労働・社会保険・租税関係法令を遵守していることなどが求められます。

(2)木材産業特定技能協議会への事前加入

木材産業分野では、特定技能外国人を適正に受け入れ・保護するための枠組みとして、林野庁が事務局を務める「木材産業特定技能協議会」が設置されています。受入れ企業は、入管へ申請を行う前に、事業所ごとに協議会へ加入しなければなりません。

① 協議会加入の手順
協議会への入会申請を行うには、分野固有の追加要件である「労働安全対策(作業安全規範)の点検」をクリアする必要があります。
具体的には、手続きは以下のステップで進めます。

STEP 1:安全規範の取組状況確認申請(全木連への申請)
木材産業は製造業の中でも労働災害発生率が高い分野です。そのため、農林水産省が定めた「農林水産業・食品産業の作業安全のための規範(個別規範:木材産業)」のチェックシートに基づき、事業所ごとの安全対策状況を点検・記入します。これにエビデンス資料(写真や安全診断の実施証拠など)を添付し、一般社団法人全国木材組合連合会(全木連)に提出します。適切に取り組まれていると認められると、全木連から「確認証」が交付されます。
点検項目の例

チェック 点検項目 点検内容
☐ 安全衛生教育の実施 安全衛生教育を実施していますか。(雇入れ時又は作業内容を変更した時など)
☐ 作業手順の理解 母国語など外国人労働者にわかる言語で説明するなど、作業手順を理解させていますか。
☐ 指示・手順の理解 労働災害防止のための指示などを理解できるように、必要な日本語や基本的な合図を習得させていますか。
☐ 標識・掲示の理解 労働災害防止のための標識、掲示などについて、図解等の工夫でわかりやすくしていますか。
☐ 免許・資格の所持 免許を受けたり、技能講習を終了することが必要な業務に、無資格のままで従事させていませんか。

厚生労働省リーフレットより抜粋

STEP 2:協議会事務局(林野庁木材産業課)への入会申請
以下の書類を揃え、協議会事務局へ提出します。

  1. 入会申請書
  2. 定款の写し(又はこれに代わる確定申告時の法人事業概況説明書や木材業者登録証の写しなど)
  3. 入会申請を行う事業所の機械設備一覧表(製造加工の実態確認用)
  4. STEP 1で取得した全木連交付の「確認証」の写し

STEP 3:構成員資格証明書の交付
協議会事務局で内容が確認されると「構成員資格証明書」が発行されます。この証明書が入管での申請時に必須の添付書類となります。

② 協議会手続のスケジュール感と注意点

  • 所要期間:安全規範の確認から証明書交付まで1〜2ヶ月程度を要します。採用活動と並行し、時間にゆとりを持って申請を開始してください。
  • 事業所単位での入会:協議会は「事業所」単位での加入義務があります。同一法人で複数の工場で受け入れる場合は、事業所ごとに手続を行う必要があります。
  • 継続確認:協議会加入後も、2年ごとに全木連による作業安全規範の取組状況確認(更新)を受ける義務があります。

(3)外国人本人が満たすべき要件

特定技能1号として就労する外国人本人は、以下の基準をクリアしている必要があります。

1.年齢:満17歳以上(インドネシア国籍者は満18歳以上)。
2.技能水準及び日本語能力:

  • 「木材産業特定技能1号測定試験」に合格すること。
  • 「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」または「日本語能力試験(JLPT)N4以上」に合格すること。
  • 試験免除の特例:>「木材加工職種・機械製材作業」の技能実習2号を良好に修了した外国人については、技能試験・日本語試験の両方が免除され、スムーズに特定技能1号へ移行できます。なお、上記以外の職種の技能実習2号修了者の場合は、日本語試験のみが免除され、技能測定試験の合格が必要です。

2. 特定技能外国人が「できる業務」の範囲

採用担当者が最も注意すべき点の一つが、外国人に従事させることができる「業務の範囲」です。入管法上、許可された業務以外の作業に専念させると、資格外活動違反や不法就労助長罪に問われる可能性があります。

(1)主たる業務(必須で行う業務)

特定技能外国人が従事するメインの業務は、対象業種(製材業、合板製造業、集成材製造業、プレカット製造業、銘木製造業、床板製造業など)に係る「木材の加工等」の専門的な作業です。

(例)帯鋸盤や円鋸盤等を用いた原木・製材の製材作業、合板・LVL・集成材の単板切削・単板積層・接着作業、プレカットCAD/CAM機械による木材加工・造作用機械操作作業、製品の品質検査・仕上げ作業など。

(2)関連業務(付随的に従事可能な業務)

主たる業務に従事する日本人が通常行っている関連作業については、付随的に従事させることが認められています。

  • 原材料(原木、資材、接着剤等)の調達・受入れ・運搬作業
  • 仕上げ製品の検査工程・梱包・積み込み・出荷作業
  • 作業場所・工場内の整理整頓、清掃、機械の日常点検・清掃

「関連業務のみに専ら従事させること」は認められません。あくまで「主たる木材加工作業」の合間や一連のプロセスの中で付随的に行う形をとる必要があります。

3. 木材産業特定技能1号測定試験の概要

技能実習からの移行ではなく、海外からの新規招聘や他分野・他職種からの変更により採用する場合、対象者は「木材産業特定技能1号測定試験」に合格する必要があります。

試験の詳細は、試験実施主体である一般社団法人全国木材組合連合会(全木連)の公式サイト(外部リンク)にて公開されています。

(1)試験の実施方式

  • 実施方式:CBT(Computer Based Testing)方式(パソコン画面上で解答する形式)
  • 試験言語:日本語(すべての漢字にふりがなが付与されています)
  • 試験時間:60分
  • 出題数:全35問

(2)出題内容

試験は「学科試験」と「実技試験」により構成されています。

試験区分 配点割合 主な出題範囲
学科試験(一般) 配点:56点 森林・林業・木材産業の概要、木材の性質(樹種、含水率、年輪、木目等)、作業安全(労働災害防止、保護具、点検)
学科試験(専門) 配点:18点 各製品の製造作業(製材、合板、集成材、プレカット、チップ等)、使用機械・装置、製品の利用
実技試験(判断等試験) 配点:26点 図や写真を用いた状況設定における正誤判別・判断、作業手順、安全衛生、計算問題等

学科試験は○×式の32問、実技試験は図等を用いた状況設定において正しい判別、判断を行わせる「判断等試験」形式で3問出題されます。

(3)合格基準・合格証明書・受験料など

  • 合格基準:学科試験および実技試験の合計得点の65%以上。
  • 受験費用:国内試験 4,400円(税込) / 国外試験(インドネシア等) 350,000 IDR。
  • 合格証明書交付手数料:15,000円(税込)。
    合格証明書は、内定等により受入れ企業と外国人本人の間で特定技能雇用契約が締結された後、受入れ企業からの申請を通じて交付されます。また、交付手数料は制度上、受入れ企業側の負担となります。
  • 有効期間:合格証明書発行日から10年間有効です。

4. 採用担当者が押さえるべき「注意点」

実務上、採用手続きや雇用管理において企業が陥りがちな落とし穴や、注意すべき重要ポイントをまとめました。

(1)受入れ準備とスケジューリング

特定技能外国人として就労を開始するまでには、募集・内定から「安全規範の確認申請(1ヶ月)」「協議会入会(1ヶ月以上)」「入管への在留資格申請・審査(1〜3ヶ月)」と、数ヶ月単位の時間を要します。

特に技能実習生からの変更や、他社からの転職者の場合、在留期限の直前になって手続きを始めると在留期間切れ(オーバーステイリスク)になりかねません。余裕を持ったスケジューリングを行いましょう。

(2)同等報酬要件(賃金の設定)

特定技能外国人の給与(報酬額)は、「日本人が同等の業務に従事する場合の報酬額と同等以上」でなければなりません。 単に最低賃金や技能実習生時代の基本給をスライドさせるのではなく、経験年数や職務内容を考慮し、同等レベルの日本人社員の賃金テーブルに当てはめて設定する必要があります。また、技能実習2号を修了した外国人は即戦力としての評価となるため、技能実習2号時代の給料を上回る設定が原則求められます。

(3)支援の実施義務

受入れ企業(特定技能所属機関)には、特定技能1号外国人に対して「職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援」を実施する義務があります。

自社に十分な支援体制(外国語に対応できる社内担当者等)がない場合は、入管に登録された「登録支援機関」へ支援計画の全部または一部を委託することが一般的です。なお、支援委託を行う場合でも、委託先の登録支援機関が農林水産省や協議会への協力姿勢を満たしている機関である必要があります。

(4)入管・協議会への定期届出・随時届出

雇用後も、受入れ企業には行政機関への報告義務が継続します。

  • 入管への定期届出:四半期ごと(年4回)に、受入れ状況、活動日数、報酬支払状況、支援実施状況などを翌四半期の14日以内に提出。
  • 入管への随時届出:雇用契約の変更・終了、支援計画の変更、受入れ困難となる事由が発生した際、14日以内に提出。
  • 協議会への届出・報告:加入時の手続きに加え、2年ごとの「作業安全規範の取組状況確認(更新報告)」や、協議会・農林水産省から情報の提供、調査、意見の聴取等の協力依頼があった際の遅滞ない対応・情報提供。
  • ハローワーク:雇入れ時および離職時に「外国人雇用状況の届出」を提出。

届出を怠ったり虚偽の報告を行ったりした場合、将来的に特定技能外国人の受入れ停止(欠格事由該当)や協議会の構成員資格喪失となる厳罰が科されるため、社内管理体制の構築が必須です。

(5)地方公共団体への協力確認書の提出

入管への申請を行う前に、事業所の所在地および外国人の居住地となる市区町村に対して「協力確認書」を提出することが必要です。これは、自治体が実施する地域共生施策(ゴミ出しや交通ルール、防災訓練、日本語教室など)に受入れ企業として協力する旨を約する手続きです。

(6)安全対策の整備

前述したように、木材産業分野は回転刃物や大型木工機械を扱うため、労働災害リスクが高い傾向にあります。事故防止と人材の定着には、外国人目線に立った環境整備が重要です。

  • 工場内の危険標記(警告・ピクトグラム)の母国語併記
  • 動画教材や写真を用いた視覚的な安全衛生教育
  • ヒヤリ・ハット事例の収集と共有
  • コミュニケーションの活性化と定期的なメンタルケア面談

(7)木材産業分野は「特定技能2号」の対象外

木材産業分野には熟練技能者向けの在留資格「特定技能2号」は設定されておらず、「特定技能1号」のみが対象となっています。 そのため、1号として日本に在留できる期間は通算で最長5年までとなります。

将来的な幹部候補としての長期雇用を計画される際は、5年の期間上限があることや、技能実習(今後は育成就労)からの通算で最長8年程度の就労となることを前提に採用・人員計画を立てる必要があります。

5. 木材産業分野の特定技能ビザまとめ

木材産業分野における特定技能1号制度は、人手不足を解消し、製材・木製品製造の現場に高技能な即戦力をもたらす非常に有効な制度です。

しかし、その導入には以下のようなプロセスが必要です。

  1. 業種・業務の厳格な適合チェック(日本標準産業分類と作業内容の照合)
  2. 木材産業特定技能協議会への事前加入(全木連による作業安全規範の点検と証明書取得)
  3. 適切な技能・日本語能力の確認(試験合格または技能実習2号の良好修了)
  4. 日本人と同等以上の報酬と手厚い生活支援体制の構築

制度の運用要領や手続ルールは細かく規定されており、社内だけで全ての手続きを完璧に進めるには膨大な時間と労力がかかります。

私たち行政書士法人第一綜合事務所は、これまで特定技能ビザ申請を数多く行ってまいりました。
既に特定技能外国人を受け入れている場合のみならず、新たに受け入れる場合についても、お客様のご希望をお伺いしながら最善策をご提案しております。

ご相談は無料で承っておりますので、ご気軽にお問い合わせください。
適切な手続と受入れ環境を整え、特定技能外国人材とともに持続可能な事業成長を実現させていきましょう。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 冨田 祐貴

・日本行政書士会連合会(登録番号第19261319号)
・東京都行政書士会(会員番号第14030号)
兵庫県出身。東京オフィス長として,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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