藤澤 勇來

帰化申請の必要書類は?

帰化申請は,在留資格の申請と比べて必要な書類が多く,審査の時間もかかります。
帰化申請の書類一覧表を見ると,各法務局によって違いはあるものの,作成・収集が必要な書類は約60種類にも及びます。
書類の書き間違いや収集漏れがあると,帰化申請が許可されるまで時間がかかったり,最悪の場合には不許可になってしまったりします。
帰化申請の手続きをスムーズに進めるためにも,しっかり必要書類について理解しておくことが必要です。

1.帰化申請の書類はなんのために必要?

なぜそんなに書類が多いのか?
それは,帰化申請が国籍を変更する(外国籍の方が「日本人」になる)という重大な手続きだからです。
なぜその書類が必要なのか,仕組みを知っておくと,書類の作成・収集をスムーズに行えます。

①帰化の条件(身分、生計、素行等)を満たすため
帰化は申請すれば誰でも許可されるわけではありません。
国籍法で定められた要件に当てはまるか,審査されます。
国籍法では,「引き続き」日本に住み続けているか(住所条件),日本の法律を守って真面目に生活できるか(素行条件),日本でお金に困らず安定した生活を送れるか(生計条件)など,帰化するための条件を6つ定めており,国籍法に既定の無い要件(日本語能力)も含めると合計7つの条件があります。
>>帰化申請 条件 はコチラ

帰化申請の条件を満たしているかどうかは,申請する側が書類を提出することで証明しなければなりません。

帰化申請の必要書類は確かに膨大で,「面倒だな」「なぜここまで大量の書類が必要なの?」とうんざりするかもしれません。
ですが,必要書類は申請者にとって,「私は日本人になるのにふさわしい」あるいは「日本人になるのにふさわしくない人物ではない」と証明するための頼もしい味方(武器)なのです。
帰化申請は孤独な旅です。
「旅の味方を増やす」と考えると,書類の作成・収集に前向きになれるかもしれません。

②書類は法務局の指示で作成・収集する
帰化申請を担当するのはビザで馴染みのある入管ではなく,申請者の住所地を管轄する各地の法務局です。
帰化申請は住所地を管轄する法務局で「事前相談」をすることから始まります。

事前相談では,法務局の担当官が申請者の個別の事情を詳しく聞き取ります。
この段階で「帰化の条件を満たしていない」と判断されると,帰化申請は険しい道のりになることが予想されます。
帰化の条件を満たしていると判断されたら,「このような書類を作成し,このような書類を集めて提出してください」と指示されます。
その指示をよく理解して「法務局が求める」書類を間違いなく提出することが重要です。

帰化申請の審査には面接もありますが,基本的には提出された書類を元に行われます。

ご自身が帰化申請を審査する法務局の担当官になったと想像してみてください。
窓口に来た外国人の方は,もちろんあなたの知り合いではありません。
例えば「私は○○国籍です」と言っているけど,ホントにそうなのか?
確かめるためには,その人の本国から身分関係の書類を取り寄せてもらって調べなければなりません。
日本には戸籍制度がありますので,日本人として戸籍を作るためには申請者本人以外にも配偶者や両親,兄弟等の身分関係の書類も必要になります。
「仕事があります。頑張ります」と言っているけど,「ホントに日本で生活して行けるの?」かを確かめるためには,給与明細や就労証明等を見なければなりません。

このように考えてみると,「なぜその書類が必要なのか」が理解しやすいかもしれません。
提出した書類に事前相談時に話したことと異なる記載があったり,指示された書類がそろっていなかったりすると,事前相談の段階や,申請が受理されてからも何度も再提出を求められ,時間と手間がかかりますのでご注意ください。

また,書類の作成・収集は必ず法務局の担当官や私達のような行政書士の説明を受けてから行ってください。
せっかく書類を取り寄せても不必要な場合は無駄足になりますし,書類の内容や国によっては,「書類を取り寄せる」ことそのものがその国での国籍離脱を意味することもあります。

③家族構成や職業、国籍によって異なる
国籍法では,必要書類は,「帰化に必要な条件を備えていることを証するに足りる書類」(国籍法施行規則第2条3項)とのみ定められています。
これは,申請者の家族構成や職業,国籍,その他個別の事情によって「日本人になるにふさわしい」と証明しなければならない事柄や必要書類が異なるからです。

極端な例ですが,独身で日本に「引き続き」10年以上在住しており,日本の大企業に就職して十分な収入がある。母国に居る家族を含めて身分関係の書類をスムーズに取り寄せられる。過去にオーバーステイや犯罪歴もない――という方と,
配偶者も子どももいる。世界中を転々としており,現在は求職中。母国での社会的身分が不安定で,身分関係の書類を思うように集められないかもしれない。さらには,心ならずも過去に日本でオーバーステイしてしまったことがある――という方では,
帰化申請の必要書類の量が異なります。

2.帰化申請の必要書類とは?

前述のように,帰化申請に必要な書類は個別の事情によって異なります。
しかし「なんでもあり」では帰化申請のハードルが上がるばかりですから,法務省では必要最低限の書類として以下を提示しています。

  • 帰化許可申請書(申請者の写真が必要)
  • 親族の概要を記載した書類
  • 帰化の動機書
  • 履歴書
  • 生計の概要を記載した書類
  • 事業の概要を記載した書類
  • 住民票の写し
  • 国籍を証明する書類
  • 親族関係を証明する書類
  • 納税を証明する書類
  • 収入を証明する書類

もちろん,上記の中でも申請者の個別の事情によって不要な書類はあります。
次項で詳しく解説しますが,特に自分で作成しなければならない書類は書式が細かく定められています。
しかし,心配しすぎないでください。
帰化申請書類一式や記入例は法務局から入手できますので,定められた書式に則って必要事項を記入すればよいことになります。

3.帰化申請で作成する必要書類

帰化申請の際,申請者が作成しなければならない書類があります。
代表的なのは「帰化許可申請書」です。

書式は以下のとおりです。
帰化許可申請書(法務省HPより)

申請者の国籍や出生地の住所,現住所のほか,父母の氏名や帰化後の本籍地,日本で名乗る氏名も必要です。
この書類の記入は自筆でもパソコン入力でもどちらでもよいです。
鉛筆ではなくペンで記入します。修正テープは使用できません。
また,使用できるのはひらがな,カタカナ,漢字,アラビア数字で,アルファベット表記はできません。

そして,「親族の概要」も作成して提出する必要があります。続柄,氏名,年齢,職業,現住所のほか,死亡しているならその事実を記載。現在交際しているか,親族に帰化の意思はあるか,申請者の帰化に対して賛成か反対か――等を記載する欄があります。

現在も親族と親しく交流しておられる場合は問題なく記入できると思いますが,次項で触れる「帰化申請で提出する書類」にも関連し,「現在はほとんど交流が無い」,「死別や離別を繰り返し,正確な親族の状況が分からない」といった場合は,作成に手間取るかもしれません。

他にも,申請者が生まれてから現在に至るまでの住所,学歴,職歴などを示した「履歴書」や,申請者の世帯がどうやって日本で生計を立てるのか,世帯における収入と支出,負債や資産状況を示した「生計の概要」も必要となります。申請者が会社経営をしていたり,個人事業主として確定申告をしていたりすれば,「事業の概要」も作成して提出しなければなりません。

さて,帰化申請の必要書類の中で,上記で示したものは行政書士などの代理人による作成が可能な書類です。
一方,必ず申請者本人が自筆で書かなければならない書類(パソコン,代筆は原則不可)があります。
それが帰化の動機書です。
※「特別永住者」の方は,提出が免除されます。

動機書とは,簡単に言うと「私はなぜ日本に帰化したいのか」を伝える書類です。

動機書では,来日するまでの経緯や来日の動機,日本に住んでみて感じた日本に対する想い,これから日本で暮らすにあたって,日本人として社会に貢献したいこと等を記載します。
最近では,ネット上で,「こう書けばいい」というひな形のようなものが得られます。
ただ,それはあくまで「例示」であって,申請者の個別の事情を反映しないものかもしれませんので,丸写しをすることはお勧めしません。

ご自分の素直な心情を伝えるのが結果としてはベストです。
それをきちんと言葉にするためにも,動機書の作成には,弊社のような行政書士に相談いただくことをお勧めします。

4.帰化申請で収集する必要書類

前項では,帰化申請で作成すべき書類を紹介しました。
次は,「収集して提出すべき書類」についてご紹介します。
収集する書類は,大きく分けて

  • 本国(母国)から取り寄せる身分関係の書類
  • 日本国内の役所で取得する書類
  • その他,個別の事情に応じて提出すべき書類

があります。
どんな書類を集めればよいのか? 見て行きましょう。

①本国(国籍国)で取得する書類
申請者の本国で取得する書類は,概ね以下の通りです。

  • 国籍証明書
  • 出生証明書
  • 婚姻証明書(婚姻している場合)
  • 親族関係証明書
  • 国籍離脱(放棄)宣誓書

個別の事情によって他にも必要書類はありますが,
基本的には「その人が誰と誰の子として生まれ」(出生証明書),
「ある国の国籍を持っている」(国籍証明書)
ことを証明する書類です。
ほかに,配偶者や両親・兄弟・子どもなど親族関係を証明する書類も必要となります。

必要書類の取得方法は,基本的にはご自分で本国に行かなければなりませんが,国によっては申請者本人でなくとも本国に居る親族が代わって取得することが可能です。
あるいは,国によっては在日の大使館や領事館で取得することもできます。

帰化申請手続きでは,最初に本国発行の各種証明書から集めることをお勧めします。

なぜなら,基本的に海外から必要書類を取り寄せるのには時間がかかります。
また,国によっては各種証明書を発行する手続きそのものに時間がかかることがあります。
さらに,申請者の中には個別に複雑な事情を抱えておられる方もおられます。
そうすると,国によっては該当する書類が保存されていない場合もあります。
この場合は,代わりとなる書類を特定し,再申請しなければならないので時間がかかります。

「本国書類は一番に取得した方がよい」と申し上げましたが,特に「国籍離脱証明書」取得のタイミングにはご注意ください。

理由は国ごとによって様々ですが,国籍証明書にだけ書類の有効期限があり,他の本国書類の有効期限が違ったり,国籍証明書を取得することにより,日本国籍取得前に自動的に本国国籍を失い,無国籍状態になる危険性があるからです。

そのため,国籍証明書の取得時期は法務局の担当者やご依頼頂いた行政書士の指示に従って取得すうようにしましょう。
日本では原則として二重国籍を許していません。

②日本で取得する書類の基本
帰化申請において,日本の役所等で集めるべき書類の基本は

  • 出生届書記載事項証明書
  • 婚姻届書記載事項証明書
  • 離婚届書記載事項証明書
  • 日本の戸(除)籍謄本(親や配偶者が日本人の場合)
  • 住民票(世帯全員)
  • 閉鎖外国人登録原票記載事項証明書
  • 出入国履歴
  • 在勤及び給与証明書
  • 源泉徴収票
  • 所得課税証明書
  • 住民税納税証明書
  • 預貯金残高証明書
  • 民間資格もしくは国家資格証明書
  • 在学証明書および成績証明書
  • 運転免許証および運転記録証明書
  • 在留カード及びパスポート
  • 証明写真(縦5cm×横5cm)

これらは,申請者の事情により変わってくるため,必ずしも全ての書類が必要となるわけではありません。逆に上記以外の書類が必要となる場合もあります。

取得先も,
日本の市区町村役場,税務署
日本の企業,学校
日本の法務局
などと,違っています。
繰り返しになりますが申請者の個別の事情によって異なります。

個別の事情とは,
例えば申請者が日本で出生している場合は日本の市区町村役場で「出生届書記載事項証明書」を取得しなければなりません。
日本の役所に婚姻や離婚の記録がある場合はその証明(婚姻届書記載事項証明書,離婚届書記載事項証明書)が必要です。
日本での居住地はどこで,一緒に暮らしている人は誰か(住民票)
日本で働いているか(在勤及び給与証明書),安定して生活できるだけの収入があるか(源泉徴収票など)
日本で学生として学んでいる場合は,その証明(在学証明書など)
などです。

ほかにも,申請人が土地や建物を所有している場合は,日本で保有する財産を証明する資料として,土地建物の登記事項証明書を提出しなければなりません。

上記1.で述べた「帰化申請の書類は何のために必要か?」を思い出してください。
「外国籍の方を『日本人』として迎え入れてよいかどうかを審査するため」でした。
帰化申請者はそのことを頭に入れ,「私は日本人になるにふさわしい」と証明するための書類を提出する必要があるのです。

③経営者が提出する書類
ご自分が日本で何らかの事業をしている経営者の立場である方は,下記の書類等も提出しなければなりません。

  • 営業許可証
  • 決算報告書
  • 確定申告書の写し
  • 法人税や法人市民税等の納税証明書
  • 法人登記簿謄本

これらの書類は,申請者が日本できちんと法律に則り許可を受けて事業を行っているか。
経営は一定程度安定しているか。日本の法律に則って納税をしているか――等を証明するための必要書類です。

④その他、日本で取得する書類
ここまで読んで来た方はすでにお分かりと思いますが,法務局から提出を求められる書類は本当にケースバイケースです。
いくつか例を挙げてみましょう。

日本で人身事故を起こしてしまった方
日本に滞在中,人身事故を起こしてしまったとします。
人身事故となると,事故の相手方に治療費を支払ったりなど一定の金銭的な賠償が発生します。
多くの方は自動車保険に加入し,保険会社を通して事故処理を行うと思いますが,保険会社が発行した「示談書」を提出することで,人身事故の処理が終わっていることを証明することが出来ます。

アルバイトで生計を立てている方
ご自分のアルバイト収入のみでは日本で安定して生活できないと見なされるかもしれません。
本国のご両親から仕送りを受けていれば,ご両親の収入を証明する本国書類や,仕送りの証明(通帳のコピー等)があれば,「生計条件」がクリアできるかもしれません。
あるいは,今はアルバイトだが日本企業に就職することが決まっている等の事情があれば,内定先の企業からそれを証明する書類を出してもらうことも必要でしょう。

シングルマザーとして日本に在留し,児童扶養手当を受けている方
児童扶養手当を受給しているのであれば,それも収入に含まれるものとして審査されますので,児童扶養手当受給証のコピーを提出できればよいでしょう。
ただ,児童扶養手当を受けている(全部支給の場合)ということは,日本の法律で定められた一定の金額以下の所得しかないということにもなります。
②で示した所得課税証明書で証明された収入(ご自分で働いて得たお金)等を総合的に判断し,審査が行われることになります。

5.帰化申請の必要書類のまとめ

上記のように,帰化申請は国籍を変更する重大な手続きなので,必要書類の種類が多岐にわたります。

帰化申請の必要書類の中には,誰でも提出が必須な書類もありますし,必須でなくてもある程度は必要書類が決まっています。
申請者の個別の事情や,管轄する法務局によっても異なります。

法務局に事前相談をする前に,申請者はご自身が「帰化の条件」に当てはまるかを把握する必要があります。
その上で,事前相談ではご自身の個別の事情を担当官にしっかり説明して,必要書類を把握しなければなりません。

本コラムでは必要書類を例示しましたが,これが全てではありません。
正直なところ,申請者の家族関係や職業の履歴,あるいは本国で過ごして来た過去のご事情などが複雑であればあるほど,法務局の求める必要書類を完璧にそろえることは難しくなります。

弊社はこれまで,帰化申請の業務を数多く扱って来ました。法務局への事前相談から帰化許可までを一貫してサポートしています。
もし,帰化申請にご不安がございましたら,ご遠慮なく行政書士法人第一綜合事務所までお問い合わせください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

藤澤 勇來

・令和3年度行政書士試験合格
兵庫県出身。大阪オフィスに所属し,日本国籍を取得するための帰化許可申請業務を専門としている。

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