冨田 祐貴

経営管理ビザが不許可になる理由とは?更新や再申請のポイントも解説!

外国人が日本でビジネスをするための就労ビザ「経営・管理」には,許可を取るために重要となるポイントがたくさんあります。ビジネスを始めたい!と思って準備を進めても,ビザの許可が取れないとビジネスを始めることができません。また,許可が取れてビジネスを始めても,事業の状況によってはビザの更新が許可されないケースもあります。本コラムでは,経営管理ビザが不許可になってしまう理由について,ビザ専門の行政書士がわかりやすく解説します。継続して日本でビジネスが行えるよう,ぜひ参考にしてください。

経営管理ビザとは?基本的な要件をチェック

まずは「経営管理ビザ」がどのようなビザなのか,基本的な要件を確認しておきましょう。
経営管理ビザは,就労ビザのひとつで,日本でビジネスを行う外国人向けに設定されているビザです。
入管法では以下のように規定されています。

【入管法で定められている活動の内容】
本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動
※外国法事務弁護士、外国公認会計士その他法律上資格を有する者が行うこととされている法律又は会計に係る事業の経営又は管理に従事する活動を除く。

技術・人文知識・国際業務ビザで会社員として働いている方が退職してフリーランスになる場合や,留学生が卒業後に会社を立ち上げて起業する場合は,経営管理ビザに変更する必要があります。

経営管理ビザを取得するには,大きく4つの要件があります。

【経営管理ビザの取得要件】

  • 事業所が日本国内にあること
  • 資本金500万円以上(または従業員が2名以上)であること
  • 必要な各種届出を済ませていること
  • 事業の安定性と継続性があること

これらの要件を全てクリアしているだけでなく,クリアしていることを立証する必要があります。ここが,ほかのビザと比べて経営管理ビザが難しいとされているところです。

経営管理ビザが不許可になる理由5つ

ここからは,本題である「経営管理ビザが不許可になってしまう理由」について解説していきます。主な理由を解説していきます。

【理由1】立証が十分にできていない

経営管理ビザの申請では,要件をクリアしていることを自身で立証していく必要があります。

【立証の例】

  • 資本金500万円をどのように集めたのかを,資料とともに説明。
  • 事務所が実際に存在することを,賃貸借契約書や図面,写真とともに説明。
  • 事業を安定して継続できる見通しを,事業計画書とともに説明。

これらの立証がしっかりできないと,許可を取ることはできません。

【理由2】ビザの要件を満たしていない

前述のとおり,経営管理ビザには大きく4つの要件があります。このうちひとつでも満たしていない場合は,許可を取ることはできません。
人材紹介業など許認可が必要な業種であれば,ビザ申請前に許認可を取っておかないといけません。

【理由3】事業の安定性・継続性が認められない

経営管理ビザで最も重要になるのがこの「安定性」と「継続性」です。事業が継続しなければ,事業の経営・管理を行う活動も継続することができないからです。
新規に経営管理ビザを取得する場合,「事業計画書」で安定性と継続性を立証していきます。この事業計画書には,ビジネスモデルの説明だけでなく,市場調査のレポート,売上の予測,原価や人件費など経費の予測,利益率の予測など細かく策定する必要があります。

【理由4】事業所の確保が認められない

経営管理ビザでは,事業所として認められる要件があり,それ以外では不許可になってしまいます。

【事業所として認められないもの】

  • 賃貸の場合は「事業所用」自宅をそのまま事業所としている
  • 事業所として借りた物件が契約書上で「居宅用」になっている
  • シェアオフィスやバーチャルオフィスで区画が明確に分かれていない

どのような事務所であればいいのか?については,別コラム「経営管理ビザが認められる事務所の条件とは?」もぜひお読みください。

【理由5】事業内容が認められない

これは,事業内容がそもそも違法である場合です。完全に違法でなくても,審査部門で違法の疑いがあると判断されてしまえば,許可は取れません。

更新では「事業の継続性」が重視される

更新の場合は,事業そのものが今後も確実に継続する見込みがあるかどうかが審査されます。なぜなら,事業が継続しなければ,事業の経営・管理を行う活動も継続しないからです。
事業の継続性は,決算状況を中心に判断されます。もっとも,事業活動においては様々な要因で赤字決算となり得るので,経営管理ビザの更新申請の審査においては単年度の決算状況(フロー)だけではなく,貸借状況(ストック)等も含めて総合的に判断されます。
具体的には,直近二期の決算状況に応じて以下のように取り扱われます。

(1)直近期末に剰余金がある場合

剰余金とは,資産から負債を引いた額が,資本金を上回っている金額をいいます。資本金は事業を行うために会社に出資された金額ですから,剰余金があるという事は,儲けが出ていることを指します。
直近期末において貸借対照表で剰余金がある場合には,原則として,事業の継続性に問題がないと判断され,原則として経営管理ビザの更新が認められます。
もっとも,剰余金があったとしても,直近期の売上が極端に低い場合は,当該外国人の経営活動が実際に行われていたのか疑義を抱かれてしまいますので,売上が低くなってしまった経緯を説明した説明書を提出すべきでしょう。

(2)直近期末に欠損金がある場合

直近期末に欠損金がある場合は,債務超過の状況によって変わります。以下3つに分けて解説します。

①直近期末において債務超過となっていない場合
欠損とは,資産から負債を引いた額が,資本金を下回っている状態を指します。事業を行うために会社に出資された資本を下回ってしまっているということは,事業によって損をしている状況です。
債務超過とは,負債が資産を上回っている状態を指します。会社に出資された資本を食いつぶし,さらに借金をしている状況ですから,一般的には事業存続が危機的な状況と言えます。

直近期末において欠損金を計上したものの,債務超過とはなっていない場合は,欠損を計上した経緯とその改善見込み,また今後の事業計画を提出し,今後の事業の継続性があることを立証しなければなりません。

②直近期末において債務超過となってしまったが,直近期前期末では債務超過となっていなかった場合
債務超過となった場合,事業の存続が危ぶまれる状況ですから,事業の継続性は認めがたいといえます。ただ,直近期前期末では債務超過になっていなかった場合,すなわち,債務超過が1年以上継続していない場合であれば,債務超過となってしまった経緯,1年以内に債務超過状況を改善するための事業計画を提出し,事業の継続性があることを合理的に説明することができれば,経営管理ビザの更新が認められる可能性があります。ただし,この場合には,中小企業診断士や公認会計士等の公的資格を有する第三者が債務超過の状況改善の見通しについて評価を行った書面の提出が求められることになります。

③2期連続債務超過である場合
債務超過となって1年以上経過しても債務超過の状態から抜け出すことができなかった,すなわち2期連続で債務超過となってしまった場合は,事業を存続させるにあたり非常に厳しい財務状況にあること,また今後の改善が見込まれないと判断され,事業の継続性が原則として否定されます。
2期連続債務超過に陥ってしまった場合には,増資や他の企業による救済の道を探るべきでしょう。

不許可になってしまったらどうすればいい?

経営管理ビザの申請が不許可となってしまった場合は,
①不許可の理由を確認する
②改めて書類を整えて再申請する

という流れになります。それぞれ解説します。

(1)許可の理由を確認する

申請した出入国在留管理局で,審査官から不許可の理由を聞きましょう。電話やメール,文書などでは確認できず,必ず入管窓口へ行って話を聞くことになります。審査官の都合もあるので,急に行かずに事前に電話で予約をしてから行くようにしましょう。

審査官は細かく説明してくれない
不許可理由を聞きに行くことはできますが,審査官には理由を細かく説明する義務はありません。こちらから確認したい内容を的確に質問しないと,せっかく聞きに行っても結局よくわからないという結果になってしまいます。
理由を聞きに行く目的は,どこをどうすれば次回許可になる可能性が上がるのか?を,できるだけハッキリさせることです。その場で審査結果が変わることは絶対にないので,不許可になったことへの不満や意見などは言わないようにしましょう。
再申請で許可を取りたい方は,経営管理ビザに詳しい行政書士などの専門家に依頼して,一緒に理由を聞きに行くこともおすすめです。

(2)改めて書類を整えて再申請する

不許可になった理由がハッキリしたら,そこをしっかりクリアにしたうえで,再申請します。
なお,不許可になった前回の申請内容と再申請で提出した内容に矛盾点があると,それに対する説明が必要になるだけでなく,「虚偽の申請ではないか?」と審査官の心証も悪くしてしまいます。
不許可からの再申請は,より慎重に進める必要がありますので,専門家の力を借りることをおすすめします。

経営管理ビザが不許可になる理由まとめ

経営管理ビザが不許可になってしまう要因について解説してきましたが,いかがでしたか?
経営管理ビザを取得するには,他のビザに比べて費用も時間もかかります。少しでも不安要素があれば,経営管理ビザの更新の不許可を防ぐためにも,経営管理ビザの申請に精通している行政書士に相談してください。
行政書士法人第一綜合事務所は,日本でビジネスに取り組む外国人を全面的にサポートしております。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 冨田 祐貴

・日本行政書士会連合会(登録番号第19261319号)
・東京都行政書士会(会員番号第14030号)
兵庫県出身。東京オフィス長として,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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