冨田 祐貴

経営管理ビザで飲食店経営する場合の注意点

経営管理ビザで行う事業は,日本で適法に行うことができる事業であれば,どのような事業でも行うことが可能です。飲食店を経営することももちろん可能ですが,経営管理ビザを取得して飲食店経営する場合には,いくつか注意点があります。
本ページでは,経営管理ビザを取得して飲食店経営する場合の注意点をご紹介します。

1.経営管理ビザと飲食店営業許可の関係

経営管理ビザでは,日本で適法に行うことができる事業であれば,その業種は問われません。入管法には「本邦において貿易その他の事業の経営を行い」と規定されていますが(入管法別表1の2の表「経営・管理」の項の下欄),貿易は例示にすぎませんので,貿易に限られるわけではありません。

適法に行われる事業であれば,どのような事業でも行うことができますが,許認可が必要な事業は申請時に許認可を取得していなければなりません(少なくとも許認可の申請を行っていることが必要です)。飲食店を営業する場合は,食品衛生法に基づき,必ず事前に店舗所在地を管轄する保健所で飲食店営業許可を取得しなければなりません。

飲食店営業許可の許可要件はここでは詳細を記載しませんが,食品衛生責任者を選任する他,営業設備が基準を満たしていなければなりません。店舗物件を選ぶ際には,飲食店営業許可を取得できるような設備が揃っているか,設備が揃っていない場合は内装工事で設置が可能かどうかを確認しておきましょう。

なお,移動店舗(キッチンカー)や露店でも飲食店営業許可を取得することは可能ですが,移動可能な店舗や露店などの簡易に解体可能な設備では,経営管理ビザで求められる「事業所」には該当しません。そのため,経営管理ビザを取得して飲食店を経営する場合は,固定店舗で営業する形態に限られます。

2.飲食店経営で経営管理ビザを取得するためには従業員の雇用が必要になる!?

料理が得意なので,小さなお店でもいいので自分で料理を作ってお客さんに提供したい,そんな夢を思い描いておられる方もおられるでしょう。しかし,残念ながら,この形態では経営管理ビザは取得できません。小料理屋のおかみさんでは,経営管理ビザは取得できないのです。

経営管理ビザを含む活動類型の在留資格では,日本でどのような活動を行うかが審査において重要な視点となります。経営管理ビザは,外国人が日本で経営管理活動を行うために与えられるものですので,主たる活動内容が経営管理の活動でなければなりません。
この点,飲食店を経営する場合,日常的に調理・接客業務が発生します。店舗での調理・接客・販売等は現業活動と言われ,経営管理ビザの活動ではありません。そのため,経営管理ビザでは,オーナー自らが店舗に立って調理・接客・販売活動を行う現業活動は原則禁止されています。これらの現業活動は従業員に任せ,オーナーはその従業員を雇用管理する,これこそが経営管理ビザの活動になります。

従業員を雇用する際には,営業時間や営業日,客席数,従業員の稼働可能な時間帯等を考慮して,何人の雇用が必要かを検討しなければなりません。どうシフトを組んだとしてもオーナーが自ら店に立たざるを得ないようなシフトしか組めないのであれば,更に従業員を雇用しなければなりません。
また,外国人留学生などの就労時間の制限(週28時間以内)がある方を雇用する場合は,制限内に収まるようなシフトを組める人員体制にしておくことにも注意が必要です。

このように,飲食店を経営する場合は,従業員の雇用が必須になります。もっとも,現業が原則禁止されていると言っても,経営管理ビザの活動の一環として付随的に現業に従事することは差し支えありません。たとえば,従業員の勤怠管理のために短時間だけ現場の手伝いをする,急なシフト変更や欠員のためにやむなく一時的に現場の手伝いをするといったレベルであれば,経営管理ビザの活動の一環であると認められます。

3.飲食店経営で経営管理ビザを取得するための事業計画の立て方

経営管理ビザを申請する際には,事業計画書を提出しなければなりません。飲食店経営を事業とする場合,他の事業とは異なる観点から事業計画を立案する必要があります。

まず,売上計画を立てるには,客単価(顧客一人当たりの平均単価)と一日何人の来客が見込めるかを想定しなければなりません。客単価と来客数との積算が一日の売上見込みになります。どこまで詳細なものを計画するかによりますが,更に曜日ごとの売上見込み,時間帯ごとの売上見込みを計算していけば,より詳細な売上見込みになっていきます。

次に,事業計画に欠かせない観点が経費です。
料理を提供するには食材が必要になります。食材を調理するには,電気やガスで火をおこし,食器を洗うには水も必要でしょう。売上に占める食材費,水道光熱費を計算し,原価を割り出します。原価を基に,商品単価(メニューの値段)を決めるのが一般的です。

その他に,人件費や店舗の賃料,広告料も経費としてかかります。
特に飲食店経営には人件費がかさみます。上記でご説明したように,営業時間や営業日,客席数,従業員の労働可能な時間帯等を考慮した上で,人件費がいくら必要になるのかを計算してください。正社員を雇用する場合には,社会保険料なども考慮しておいた方が良いでしょう。

売上から経費を差し引いた金額が営業利益になります。無理のない現実的な事業計画を立てることが,経営管理ビザを取得する上でも,日本でのビジネスを成功させる上でも重要になります。

4.経営管理ビザで飲食店経営する場合の注意点のまとめ

飲食店経営を事業とする場合には,店舗の賃貸,内装,飲食店営業許可の取得,従業員の雇用,事業計画の立案等,他の事業と比べると開業準備に資金と時間がかかります。

一方で,飲食店経営は,店舗が実在し,許認可も取得しているため,経営実態を証明しやすいのが特徴です。そのため,しっかり準備をすれば,経営管理ビザを取得しやすい事業内容と言えるでしょう。

準備は大変ですが,本気で飲食店ビジネスを成功させたいと考えられているのであれば,是非チャレンジしてみてください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 冨田 祐貴

・日本行政書士会連合会(登録番号第19261319号)
・東京都行政書士会(会員番号第14030号)
兵庫県出身。東京オフィス長として,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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