帰化と永住の違いとは?外国人の日本国籍取得(帰化申請)を徹底解説

「日本に長く住み続けたい」そう願う外国人の方々にとって,日本国籍を取得する「帰化」と,外国籍を維持したまま日本に無期限で住むことができる「永住」は,どちらも魅力的な選択肢です。しかし,これらの制度は似て非なるものであり,許可の要件や申請手続き,さらには取得後の生活に与える影響も大きく異なります。
本コラムでは,帰化と永住の基本的な違いから,申請条件,それぞれのメリット・デメリットまで,専門行政書士が徹底的に比較解説いたします。ご自身のライフプランや将来の目標に照らし合わせながら,どちらの選択があなたにとって最適なのかをじっくり検討するための情報が満載です。
日本での生活をより豊かに,より安心して送るための第一歩として,ぜひ最後までお読みください。
Index
1.帰化と永住の基本をチェック
まずは,帰化と永住について基本的な内容を整理しておきましょう。
(1)帰化とは
「帰化」とは,外国人の方が日本国籍を取得し,法的に日本人となる手続きを指します。この手続きが完了すると,日本国民としての様々な権利を行使できるようになり,例えば,日本のパスポートを取得できます。これにより,日本政府が多数の国と結んでいるビザ免除協定の恩恵を受け,多くの国へビザなしで渡航が可能となります。また,外国人ではなくなるため,それまで所持していた在留カードは返納が必要です。国籍法の規定により,原則として二重国籍は認められていないため,帰化が許可された際には,元の国籍を放棄することが求められます。この点は,母国への帰省や海外渡航の際に,ビザ取得が必要になるなど,生活に影響を与える可能性があります。
(2)永住とは
「永住」とは,外国籍のままで,期間の制限なく日本に居住できる在留資格です。この資格を取得すると,日本での活動内容に制限がなくなり,働く場所や職種を自由に選べるようになります。しかし,日本国籍ではないため,日本国民のみに与えられている参政権(選挙権や被選挙権)といった権利を行使することはできません。永住者になっても,引き続き在留カードが交付され,日本に在留する外国人として扱われます。日本に長く住めるという点では帰化と同じですが,日本国民になるか,外国籍のままかを区別する点が大きな違いです。例えば,海外渡航の際には,再入国許可を得る必要があります。永住許可は,日本での安定した生活基盤を持つ外国人にとって,非常にメリットの大きい制度と言えるでしょう。
2.帰化と永住の違い
ここからは,帰化と永住の違いについて,以下の表で詳しく見ていきましょう。
| 帰化 | 永住 | |
| 国籍 | 日本 | 外国のまま変わらない |
| 戸籍 | 作られる | 作られない |
| 参政権(選挙権・被選挙権) | ある | ない |
| 退去強制処分(強制的に国外へ退去させられる処分) | 適用なし | 適用あり |
| 住所要件の原則 | 5年(うち就労3年) | 10年(うち就労5年) |
| 申請手続きをする役所 | 法務局 | 出入国在留管理局(入管) |
| 日本のパスポート | 取得できる | 取得できない(母国のパスポートを使用) |
| 在留カード | 不要(返納) | 必要(更新が必要) |
| 再入国許可手続き | 不要 | 必要 |
| 公務員への就職 | 制限なし | 一部制限あり |
帰化は日本国籍を取得し日本人になることで,戸籍が作られ,参政権が付与されます。また,日本人になるので退去強制処分が適用されることはありません。日本のパスポートを取得できるので,日本を出国する際に再入国許可も不要です。帰化申請は法務局で行い,住所要件の原則は5年(うち就労3年)です。
一方,永住は外国籍のまま日本に無期限で住むことができる在留資格であり,戸籍は作られず,参政権もありません。外国人であるため退去強制処分の対象となり,母国のパスポートを使用するため海外渡航時には再入国許可が必要です。永住許可申請は入管で行い,住所要件の原則は10年(うち就労5年)と帰化よりも長く設定されています。
※日本人の配偶者など10年未満で申請できる方もいます。
このように,国籍の変更を伴うか否かが,帰化と永住の最も大きな違いであり,それに伴い様々な法的地位や権利,義務に差が生じます。
3.帰化と永住の要件
帰化許可申請と永住許可申請では,根拠となる法律や審査する機関が異なるため,求められる要件もそれぞれ異なります。
帰化は「国籍法」に基づいて法務局が管轄し,より長期的で深い日本との結びつきを立証する必要があります。
一方,永住は「出入国管理及び難民認定法(入管法)」に基づいて出入国在留管理局(入管)が管轄し,日本社会の安定した一員として問題なく生活できるかが重視されます。
(1)帰化の要件
帰化の許可を得るためには,国籍法で定められた複数の要件を満たす必要があります。
まず「住所要件」として,原則として継続して5年以上日本に住んでいることが求められます。
次に「能力要件」として18歳以上であり,本国の法律でも成人とされていることが必要です。
また,善良な市民であることを示す「素行要件」があり,納税状況や犯罪歴,交通違反歴などが厳しく審査されます。
経済的に安定した生活を送れることを証明する「生計要件」も重要で,本人または家族の収入で生活できることが求められます。
さらに,元の国籍を失うこと(重国籍防止),日本国憲法を守ること(憲法遵守)も求められます。
そして,永住許可申請との大きな違いは「日本語能力」も審査の対象となる点です。一般的に小学校3年生レベル以上の日本語能力が求められます。
これらの要件を総合的に満たしているかが判断されます。
(2)永住の条件
永住許可を得るためには,主に3つの大きな要件を満たす必要があります。
第一に「素行が善良であること」が求められ,法律を遵守し,社会的に非難されない生活を送っていることが必要です。
具体的には,犯罪歴や交通違反歴,納税や年金,健康保険料などの公的義務の履行状況が審査されます。永住申請では納税について特に厳しく審査され,未納がないことはもちろん,過去2年間のうちに滞納がないことも求められます。
第二に「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」が求められ,将来にわたって安定した生活が見込まれることが重要です。公共の負担にならず,世帯単位での収入状況が審査対象となります。具体的な年収額の基準は公開されていませんが,実務上は「年収300万円」がボーダーラインになっています。
第三に「その者の永住が日本国の利益に合すること」という要件があり,原則として10年以上継続して日本に在留していること,現在持っている在留資格の最長の在留期間を有していることなどが含まれます。
これらの条件をすべて満たしていることが必要です。
4.帰化と永住のメリット・デメリット
「帰化と永住,どちらがいいですか?」というご質問をよくいただきます。
どちらも日本に長く住むことができる点は同じですが,国籍の変更に伴うパスポートの利便性,国の政治に参加する権利である参政権の有無,そして海外渡航時の手続きに関わる再入国許可など,生活の様々な場面で違いが生じます。
これらの違いは,個人の国際的な移動の頻度や,母国との関係,日本社会への関与の度合いによって,メリットにもデメリットにもなり得ます。
(1)パスポート
帰化すると日本のパスポートが取得可能となり,これにより日本政府が多数の国と結んでいるビザ免除協定の恩恵を受け,多くの国へビザなしで渡航できます。海外旅行を頻繁にする方にとっては,これは大きなメリットと言えるでしょう。しかし,日本は二重国籍を認めていないため,帰化が許可された場合は元の国籍を放棄し,それまで持っていたパスポートは失効します。このため,元の国籍の国と日本がビザ免除協定を結んでいない場合,親族に会うために母国へ帰省するたびにビザの取得が必要になることもあります。例えば,中国やブラジルなど,日本とのビザ免除協定がない国の出身者は,帰化することで一時帰国の際にビザ申請の手間が生じる可能性があります。したがって,帰化を検討する際には,日本のパスポートの利便性と,元の国籍を放棄することによる影響を総合的に考慮する必要があります。
(2)参政権
日本に永住許可を得た外国人の方々は,日本の法律上は外国籍のままであるため,国政選挙における選挙権も被選挙権も認められていません。つまり,日本の政治に参加する権利,具体的には選挙で投票したり,国会議員として立候補したりすることはできません。これは,日本国憲法が,国政選挙への参加を日本国民の権利として定めているためです。
しかし,帰化を選択し,日本国籍を取得すれば,法的に日本人となります。これにより,日本国民に認められるすべての権利が平等に付与されます。例えば,選挙で投票する権利はもちろん,帰化した元外国人が国会議員になることも可能です。実際に,過去には帰化された方が国会議員として活躍した事例も存在します。これは,日本社会への完全な統合を意味し,政治参加を通じて社会貢献をしたいと考える方にとっては大きなメリットとなります。
(3)再入国許可
永住権を持っている方は,法的には外国人であるため,海外から日本へ再入国する際には「再入国許可」を取得することが義務付けられています。この「再入国許可」には,空港で一時的に許可される「みなし再入国許可」も含まれます。例えば,海外旅行や出張で日本を一時的に離れる場合でも,この許可がなければ日本へ戻ることができません。特に注意が必要なのは,再入国許可で定められた期限内に日本へ戻らなかった場合です。期限を過ぎてしまうと,永住資格を自動的に失ってしまい,再度永住権を取得するためには,ゼロから申請手続きをやり直す必要が出てきます。これは,日本での生活基盤を築いてきた方にとって,非常に大きな影響を及ぼす可能性があります。
一方,日本に帰化して日本国籍を取得した場合は,日本人となります。このため,海外にどれだけ長く滞在しても,期間の制限なくいつでも自由に日本へ帰国することができます。日本国籍を持つことで,再入国許可のような手続きは一切不要となり,海外渡航の自由度が格段に向上します。例えば,長期の海外赴任や留学など,海外での生活が不定期または長期にわたる予定がある方にとっては,帰化を選択することで,日本への帰国に関する不安や手続きの手間を解消できるという大きなメリットがあります。このように,海外渡航の頻度や期間,そして国籍に対する考え方によって,永住と帰化のどちらがご自身のライフスタイルに適しているかを慎重に検討することが重要です。
5.帰化と永住どちらがいい?
最終的に帰化と永住のどちらを選ぶべきか?
それは,個人の価値観,ライフプラン,そして母国との関係性によって決まります。例えば,完全に日本人として生活し,日本のパスポートや参政権を得て社会に深く根差したいと考えるのであれば,帰化が適しています。帰化によって,日本での選挙権や被選挙権の行使が可能となり,政治参加を通じて日本社会に貢献することもできます。
一方,母国の国籍や文化的なアイデンティティを維持しつつ,日本での安定した生活基盤を確保したい場合は,永住が向いている選択肢です。永住権を取得すれば,在留期間の更新手続きが不要となり,仕事も原則自由に選べるようになります。最終的に母国へ戻って生活することも容易です。ただし,外国籍であるため参政権はありません。
それぞれのメリット・デメリットを十分に比較検討し,自身の将来にとって何が最も重要かを見極めることが肝要です。例えば,頻繁に海外渡航をする方であれば,日本のパスポートの利便性や再入国許可の手間などを考慮する必要があるでしょう。家族構成や将来設計,キャリアプランなど,多角的な視点から検討することが重要です。
6.申請手続きの流れ
帰化申請と永住許可申請は,申請先や手続きの流れ,必要となる書類が大きく異なります。
帰化は法務局,永住は出入国在留管理局が申請窓口となり,それぞれ審査の観点も異なります。
どちらの申請も準備に多くの時間と労力を要するため,事前に正確な手順を把握し,計画的に進めることが不可欠です。
ここでは,それぞれの申請がどのようなステップで進んでいくのか,その大まかな流れを解説します。
(1)帰化申請の手順
日本国籍の取得(帰化)手続きについて解説します。
帰化申請は,出入国在留管理局ではなく「法務局」に対して行います。申請先は,現在お住まいの住所地を管轄する法務局の国籍課または戸籍課です。
STEP1:管轄の法務局で事前相談を行います。この相談は予約制です。
STEP2:事前相談で提供される資料に基づき,申請に必要な書類を収集します。
STEP3:書類収集と並行して,帰化申請書類を作成します。
STEP4:集めた書類と作成した書類を法務局で確認してもらいます。これも事前に予約が必要です。
STEP5:全ての書類が揃った後,法務局に申請し受理されます。申請も予約制です。
STEP6:法務局から指定された日時に面接が行われます。
STEP7:帰化が許可されると官報に氏名等が掲載され,法務局から連絡があります。
STEP8:帰化後の諸手続きを行います。
※法務局での相談,書類点検,申請には事前の予約が必須です。法務局によっては,書類点検が完了した後でなければ申請の予約ができない場合もあります。
帰化後の手続きには,現在の国籍を離脱する手続き(該当する場合)や,市区町村役場への帰化届の提出などがあります。 国によっては,帰化許可前に国籍離脱が必要となる場合があります。
帰化申請中であっても,現在の在留資格(ビザ)が自動的に延長されることはありません。
帰化の審査期間中に在留期間の期限が到来する場合は,その前に更新手続きを行う必要があります。
(2)永住ビザ申請の手順
続いて,永住ビザ申請の手順について解説します。
永住ビザは入管へ申請します。帰化申請と違って,事前の書類チェックや申請は予約をせずに行うことができます。そこは,これまでのビザ更新手続きと同じですね。
STEP1:管轄の入管で永住申請できるか相談する
STEP2:申請に必要な書類を集める。
STEP3:書類収集と並行して,永住の申請書類を作成する。
STEP4:管轄の入管へ申請して受理してもらう。
STEP5:審査が完了すると通知書が郵便で届く。
STEP6:入管窓口で新しい在留カードを受け取る。
ちなみに,永住ビザ申請をしても,現在のビザの期限は自動延長されません。永住審査中にビザの期限が到来する場合は,事前に更新の手続きが必要です。
7.帰化申請や永住ビザ申請にかかる費用について
帰化申請や永住許可申請を検討する際には,手続きにかかる費用も事前に把握しておくことが重要です。
申請そのものに手数料がかかるかどうかだけでなく,必要書類の取得費用や,書類の翻訳費用,さらに手続きを専門家に依頼する場合の報酬など,様々なコストが発生する可能性があります。
ここでは,それぞれの申請において,どのような費用がどれくらいかかるのかを具体的に見ていきます。
(1)帰化申請にかかる費用
帰化申請において,法務局や日本国に直接支払う手数料はありません。しかし,実際には様々な付随費用がかかることを理解しておく必要があります。例えば,住民票や戸籍謄本,課税証明書など,申請に必要な公的書類のほとんどは役所で取得する際に手数料が発生します。これらの費用は,取得する書類の種類や枚数によって異なり,数百円から数千円程度になるのが一般的です。
また,本国から書類を取り寄せる必要がある場合,国際郵便料金や翻訳費用が発生することもあります。特に,外国語の書類を提出する際には,日本語への翻訳が必要となり,その費用は専門業者に依頼すると数千円から数万円かかることもあります。これらの実費は,申請者の状況や準備する書類によって大きく変動するため,事前に確認しておくことが大切です。
さらに,帰化申請は手続きが複雑で,準備する書類も多岐にわたるため,専門家である行政書士に依頼するケースが多く見られます。その場合,行政書士への報酬も費用として発生します。報酬額は依頼する事務所やサービス内容によって異なりますが,一般的には10万円から30万円程度が相場とされています。 したがって,帰化申請にかかる費用は,申請そのものの費用は無料であるものの,書類取得費,翻訳費,交通費,そして専門家への依頼費用を含めると,トータルで数万円から数十万円程度が必要となることを認識しておくべきでしょう。
(2)永住申請にかかる費用
永住許可申請では,申請が許可された際に手数料として10,000円を収入印紙で入管窓口へ納付します。(2025年3月31日までに申請が受け付けられた方は改定前の8,000円が適用されます)。2025年に手数料が改定されましたが,日本政府では外国人受け入れ政策の見直しや,行政サービスの効率化を目指して,再度改定を検討しているようです。
永住申請の場合も,付随費用がかかります。まず,申請に必要となる住民票や戸籍謄本,課税証明書などの公文書を役所で取得する際には,数百円から数千円程度の手数料がかかります。これは,発行する書類の種類や枚数によって変動します。また,申請書類の中には,日本語以外の言語で作成された書類を提出する必要がある場合もあり,その際には日本語への翻訳費用が発生します。翻訳費用は,専門の翻訳業者に依頼すると数千円から数万円程度かかることが一般的です。
さらに,永住申請は複雑な手続きを伴うため,行政書士などの専門家にサポートを依頼するケースが多く見られます。その場合,専門家への報酬も費用として考慮する必要があります。行政書士の報酬額は,依頼する事務所やサービス内容によって異なりますが,一般的には10万円から20万円程度が相場とされています。これは,書類作成のサポートから申請代行,入管とのやり取りなど,広範なサービスが含まれるためです。
これらの費用を総合すると,永住申請にかかる総費用は,手数料の10,000円に加え,書類取得費用,翻訳費用,専門家への報酬を含め,数万円から数十万円程度となることが多いです。
8.帰化申請や永住ビザ申請にかかる期間について
帰化申請の手続きでは,法務局での事前相談,書類の確認,そして実際の申請において,それぞれ予約が必要となる場合があります。特に,近年は帰化申請を希望される方が増加しており,法務局によっては事前相談の予約が数ヶ月先まで埋まっている状況も見受けられます。これにより,申請準備を開始するまでの期間が長引く可能性があります。また,帰化申請には多くの種類の書類を収集し,作成する必要があり,法務局での書類点検も複数回にわたって実施されることが一般的です。そのため,実際に申請に至るまでに時間を要するケースも少なくありません。
申請後も,法務局による書類審査や面接,そして法務省での最終審査が行われます。これらのプロセスを経て,最終的な許可・不許可が決定されます。一般的に,帰化申請にかかる期間は,事前相談の予約から許可が下りるまで,合計で7ヶ月から1年半程度とされています。内訳としては,事前相談の予約待ち期間が2週間から3ヶ月,必要書類の準備期間が1ヶ月から2ヶ月,書類提出から面接・調査までが1ヶ月から3ヶ月,そして面接から結果通知(審査期間)までが4ヶ月から8ヶ月かかることがあります。したがって,帰化申請を検討される際は,申請までの準備期間を含め,全体としてある程度の期間を要すると見込んで,余裕を持った計画を立てることが望ましいでしょう。
(1)帰化申請にかかる期間
帰化申請の手続きでは,事前相談,書類の確認,申請のそれぞれで予約が原則必要です。申請希望者の増加に伴い,法務局によっては事前相談の予約が数ヶ月先まで埋まっていることもあり,申請開始までの期間が長くなる可能性があります。
また,帰化申請には多くの書類の収集・作成が必要となるため,法務局での書類点検を複数回行うことになり,申請に至るまでに時間を要するケースも少なくありません。
申請後も,法務局と法務省による審査が行われます。帰化申請にかかる期間は,事前相談の予約から許可まで,合計で7ヶ月〜1年半程度とされています。これは,事前相談の予約待ち期間が2週間〜3ヶ月,必要書類の準備期間が1〜2ヶ月,書類提出から面接・調査までが1〜3ヶ月,そして面接から結果通知(審査期間)までが4〜8ヶ月かかる場合があるためです。したがって,申請までの準備期間を含め,全体としてある程度の期間を要すると見込んでおくことが望ましいでしょう。
(2)永住ビザ申請にかかる期間
永住許可申請は,帰化申請とは異なり,事前の相談や書類の事前確認,申請予約は不要です。そのため,準備が早く整えば,早期に申請手続きを進めることが可能です。一般的に,準備から申請までの期間は,永住許可申請の方が短くなる傾向が見られます。
ただし,申請から許可が下りるまでの審査には時間を要します。特に東京や大阪においては,2023年以降,平均して1年以上の期間がかかるケースが多く見られます。一方で,半年以内に結果が出る地域も存在します。永住許可申請は,提出先の出入国在留管理局によって審査期間に大きな違いが生じる可能性があります。
永住許可申請は,申請者が現在居住している住所地を管轄する出入国在留管理局に行う必要があります。これは,在留資格の更新申請と同様の原則です。「大阪の混雑を避けて,比較的空いていると思われる四国の出入国在留管理局で申請する」といった選択はできません。
9.帰化・永住申請における注意点
帰化や永住の申請は,誰でも許可されるわけではなく,厳格な審査が行われます。
申請の準備を万全に行ったつもりでも,思わぬ理由で不許可となるケースも少なくありません。
特に,法律で定められた要件を満たしていることはもちろん,日本社会の一員としてふさわしいかどうかが総合的に判断されます。
ここでは,申請が不許可になりやすい典型的なケースを挙げ,申請前に自身の状況を再確認するための注意点を解説します。
(1)申請が不許可になる主なケース
帰化申請と永住申請の両方で不許可の理由となりやすいのが,公的義務の不履行です。
具体的には,住民税や国民健康保険料,年金などの未納や滞納がある場合,素行条件や生計要件を満たさないと判断されます。特に永住申請では過去に滞納歴があると不許可になるリスクがかなり高くなります。
過去の交通違反も審査に影響を与え,軽微な違反であっても回数が多かったり,悪質な違反があったりすると,素行不良と見なされる可能性があります。
また,申請書類の内容に虚偽があったり,提出した書類と実態が異なっていたりした場合は,許可されることはありません。
これらの点に問題がないか,申請前に厳しく自己チェックすることが不可欠です。
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10.帰化と永住の「違い」まとめ
日本で安定した生活を送るための選択肢として,帰化と永住はそれぞれ異なる法的意味合いと生活への影響を持ちます。帰化とは,外国籍の方が日本国籍を取得し,日本人となる手続きを指します。これにより,日本のパスポートを取得し,日本国民としての参政権(選挙権や被選挙権)を得るなど,日本人と同等の権利を行使できるようになります。原則として二重国籍は認められていないため,帰化の際には元の国籍を放棄する必要があります。
一方,永住は外国籍を維持したまま,在留期間や活動内容の制限なく日本に居住できる在留資格です。永住許可を得ても国籍は変わらないため,引き続き在留カードが交付され,参政権は行使できません。しかし,就労制限がなくなり,日本での安定した生活を送れる点は帰化と同様です。
申請条件においても,帰化は日本への同化度合いが重視される傾向にあります。具体的には,継続して5年以上日本に住んでいることや,日本語能力などが審査されます。対して永住は,安定した生活基盤と素行の良さがより重視され,原則として10年以上継続して日本に在留していること,税金や年金などの公的義務を履行していることが求められます。
最終的にどちらを選択するかは,個人のライフプランや価値観,母国との関係性を考慮して慎重に判断することが重要です。例えば,完全に日本人として日本社会に深く関わりたい場合は帰化が,母国の国籍を維持しつつ日本で安定した生活を送りたい場合は永住が適していると言えるでしょう。
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