【令和8年10月1日改定】新・永住ガイドライン公表!年収・厚生年金30年水準・遡及適用への対策を行政書士が解説

令和8年(2026年)10月1日、入管より改定された「永住許可に関するガイドライン(以降は「新ガイドライン」と表記します)が公表されました。「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」といった緩やかな審査基準(実務上年収300万以上とされています)から一転し、年収水準の大幅な見直し、将来の年金受給見込額、一定水準以上の日本語能力、地域社会への適応や制度・ルールの理解度に至るまで、多角的な観点から永住許可のハードルが高められています。
さらに、2026年4月以降にすでに提出された申請に対しても、改定後の新基準の一部が適用(遡及適用)されます。
このコラムでは、入管業務を専門に扱う行政書士が、公表された新「永住ガイドライン」の全体像から実務上の影響、そして今後取るべき具体的な対策まで、詳細に解説します。
Index
1. 【速報】永住ガイドラインが公表:いつから?なぜ?
まずは、今回の永住ガイドライン改定がどのようなスケジュール感と背景で進められているのか、整理します。
(1)実施スケジュールの整理
新ガイドラインの適用スケジュールは以下の通り整理されています。
| 申請時期 | 適用されるガイドライン | 適用内容・特記事項 |
| ① 令和8年3月31日までに申請した方 | 旧ガイドライン(令和8年2月24日改訂版) | 全面適用 |
| ② 令和8年4月1日~令和9年3月31日に申請した方/予定の方 | 原則:旧ガイドライン 一部先行適用:新ガイドライン(令和8年10月1日改定版) |
原則として令和8年2月24日改訂版を適用。ただし、収入に関する部分のみ新ガイドラインを先行適用(「収入」「公共の負担とならないこと」の部分) |
| ③ 令和9年4月1日以降に申請を予定している方 | 新ガイドライン | 全面適用 |
既存ガイドラインの廃止:新ガイドラインへの一本化により、従来の「我が国への貢献に関するガイドライン」は廃止されます。
(2)なぜ今、永住要件が厳格化されるのか?
近年、公的義務の履行(税金・年金の納期遵守)などで永住審査はただでさえ厳しく、直近の許可率も5割に落ち込んでいます(詳しくは【2026年最新データ】永住申請の許可率は約50%?半分近くが不許可になる理由と一発許可のための対策を専門家が解説をご参照ください。
「なぜさらに厳しくするのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。その背景には、日本の在留外国人数の増加と、永住者を巡る社会問題が存在します。
入管が発表した統計によると、2025年末時点で、在留外国人総数は4,125,395人(約412.5万人)に達し、過去最多を更新し続けています。
このうち、中長期在留者の構成比を見ると、以下のような実態が浮き彫りになります。
在留外国人数の内訳データ(入管【令和7年末公表資料】より)
| 在留資格 | 在留外国人数(人) | 構成比(%) |
| 永住者 | 947,125 | 23.00% |
| 技術・人文知識・国際業務 | 475,790 | 11.50% |
| 留学 | 464,784 | 11.30% |
| 技能実習 | 456,618 | 11.10% |
| 特定技能 | 390,296 | 9.50% |
| 家族滞在 | 352,875 | 8.60% |
| 定住者 | 226,438 | 5.50% |
| 日本人の配偶者等 | 152,898 | 3.70% |
全在留外国人のうち、実に4人に1人近く(23.0%)にあたる約95万人が「永住者」です。国籍・地域別で見ても、中国(約35.7万人)、フィリピン(約14.3万人)、ブラジル(約11.7万人)、韓国(約7.7万人)等、多岐にわたる国々の出身者が日本に永住の基盤を築いています。
(3)厳格化へと舵を切った背景
永住者が95万人に迫る一方で、入管は以下の点が社会問題化しているとしていました。
- 税金・社会保険料の未納・滞納問題: 永住許可を得た後に、住民税や健康保険料、公的年金の支払いを怠るケースが散見されること。
- 高齢化と社会保障負担: 将来的に十分な年金を受け取れず、無年金・低年金状態となって生活保護受給に至るリスク。
このような問題に対して、2027年4月に施行される改正入管法では、故意に税金や社保を納付しない悪質なケースに対して「永住資格を取り消すことができる」新基準が既に盛り込まれています(詳しくは【2027年4月法改正】永住権取り消しの新基準とは?対処法を行政書士が解説をご参照ください)。今回の永住ガイドライン改定は、「永住許可後だけでなく、許可を出す前の段階で厳しくスクリーニングする」という入管行政の方針を表したものといえます。
2. 新ガイドラインにおける主要変更点
今回の永住ガイドライン改定において、具体的にどのような要件が引き上げられたのか、解説します。
①【年収要件】「日本人世帯平均」以上の継続収入が必須に
従来の永住審査の実務では、単身者の場合「直近5年間の年収が各年300万円程度以上」が一つの目安とされていました。しかし、新ガイドラインでは、「将来において公共の負担となるおそれがなく、自活して安定した生活を営むことができる(日本人と同等水準以上の経済条件)と見込まれること」を要します。また、原則として同一生計世帯単位で審査を行います。
- 日本人世帯平均基準:申請時点で、世帯年収の額が世帯人数に応じた「日本人世帯の平均収入を上回る水準(年収水準)」に継続して達しているかを考慮します。
- 世帯年収の合算範囲:同一生計世帯全員の年収を合算しますが、成人している者等、父母の扶養から外れている者の収入は合算できません(独自で判定)。
- 資格外活動(アルバイト)収入の除外:申請者を扶養者とする「家族滞在」など、就労を目的とした在留資格(就労資格※注)以外の者が資格外活動許可を得て得る収入は、例外的・限定的なものに過ぎないため世帯年収に合算できません。
- 注:本ガイドラインにおける「就労資格」からは、制限のある「技能実習」「育成就労」「特定技能1号」「企業内転勤」および一部の「特定活動」が除外されます。
- 扶養親族・多人数扶養の加算ルール:海外在住を含め同居していない扶養親族も世帯人数に加算します。扶養親族が5人以上に及ぶ場合は、基準額に「生活費等の増加額分」が加算されます。
これまでと大きく異なり、単に「本人単体の年収」だけでなく「世帯人数(扶養人数)」に応じた厳格な年収査定が行われる点に注意が必要です。
また、海外に住む親族を多く扶養に入れている場合(特に5人以上)、人数に応じて必要な年収基準額が増額(上乗せ)されるため、課税証明書上の扶養人数の精査や事前対策が不可欠となります。
②【年金要件】「厚生年金30年加入相当」の受給見込額とは?
- 受給年金水準:年齢・加入期間・平均年収等から推計される将来の「受給見込額」が、日本人世帯平均年収で厚生年金に30年間加入した場合と同等以上の受給年金水準に達しているかを考慮します。
- 補填資産(金融資産)による評価:受給見込額が達しない場合でも、受給開始年齢からの不足分を補填可能な金融資産(預貯金・株式等)を有すると認められるときは、達しているものと評価されます。若年層ほど基準額は低く設定されます。
- 配偶者との合算:原則同一生計世帯単位で判断し、配偶者の受給見込額や被扶養者(第3号被保険者)期間分の見込額を合算して判定します。
例えば、30代後半や40代で来日した外国人や、これまで自営業・フリーランス(国民年金加入期間が長い)として活動してきた方にとっては、日本での厚生年金加入期間が短くなるため、非常に厳しい条件となります。
これらをカバーするためには、「ねんきん定期便」や「公的年金シミュレーター」による試算結果に加え、預貯金・株式・不動産・NISA・iDeCoといった金融資産の立証を体系的に盛り込んだ理由書を作成することが必要になります。
③【配偶者特例】婚姻期間・在留期間のハードル引き上げ
これまで「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格を持つ方は、居住要件の特例として「実体のある婚姻生活が3年以上継続し、かつ日本に1年以上継続して在留していること」で永住申請が可能でした。
しかし、この特例要件が「実体ある婚姻生活が5年以上続き、かつ、引き続き3年以上在留していること」へと引き上げられました。
また、実子等は3年以上の継続した在留が求められます。国際結婚を経て早期に永住権を取得しようと考えていたご夫婦にとっては、計画の大幅な修正が必要となるでしょう。
④【国益・素行要件】日本語能力・生活ルール・子どもの就学状況
永住許可の「国益適合要件」、これまでにない具体的指標が明記されました。
- 法規定義務の遵守:住居地届出、在留カード常時携帯・提示・再交付等の取扱いに関する義務、資格外活動の禁止などの遵守。過去の違反が判明した場合も原則として消極評価されます。
- 公租公課の支払:租税(所得税・住民税等)および公課(医療保険・公的年金等)の適正納付。未納がない場合でも、過去に滞納処分や納期遅れがある場合は原則として消極評価されます。
- 刑罰法令違反:拘禁刑、罰金刑、少年法による保護処分を受けた者は原則として消極評価されます。
- 上陸拒否事由・基準適合:上陸拒否事由に該当していないこと、現在持っている在留資格の上陸許可基準等(告示等)へ適合していることが求められます。
- 長期間の居住:
- 原則引き続き10年以上本邦に在留し、うち就労資格または居住資格で引き続き5年以上在留していること。
- 現に有する在留資格について最長在留期間をもって在留していること。
- ※令和9年3月31日までの申請、および令和9年4月1日以降の初回申請(令和9年3月31日時点で「3年」を有し期限内に処分を受ける場合)は、在留期間「3年」であっても最長期間として取り扱います。
- 長期出国の消極評価:過去10年以内に合理的理由なく「1回の出国で半年以上」または「通算で2年6か月以上」不在にした期間がある場合は原則として消極評価されます。
- 公共の負担とならないこと:
- 独立生計要件の適用を受ける者は同要件を満たせば積極評価されます。
- 適用を受けない者(配偶者・子・難民等)であっても、現に公共の負担(生活保護等)となっている場合やそのおそれが現実的である場合は、特段の事情がない限り消極評価となることがあります(家族の安定や人道的配慮が重視されます)。
- 日本語能力:原則として「日本語教育の参照枠」におけるB1相当レベル以上の日本語能力を有することが考慮されます。
- 我が国の制度・ルール等への理解:出入国在留管理庁長官が指定する方法により、「生活・就労ガイドブック」記載事項を中心に制度・ルールの理解度を確認し、一定水準以上かを評価。
- 学齢期の子の就学:養育する学齢期(義務教育期)の子が小学校または中学校に通学していること(申請者自身が学齢期の場合は自身が通学していること)。
- その他の事情:「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」に基づく各種施策(特定在留カード普及促進、日本語・ルール学習環境整備等)への貢献・寄与も評価対象となります。
3. 「2026年4月以降の申請分」にも遡及適用される収入要件
現在すでに永住審査の結果を待っている方、あるいは年内の申請に向けて準備を進めている方にとって、重要なのが収入要件の適用ルールです。
(1)審査期間の長期化と「遡及適用」のリスク
令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に申請した(または申請する)方であっても、収入に関する規定(世帯年収基準・家族滞在バイト収入除外・多人数扶養の加算など)については、改定後の新ガイドラインの基準が先行して適用されます。
ここで重要となるのが、実際の永住審査にかかる「処理期間」の実態です。
入管が公表した2026年7月の在留審査処理期間データを参照すると、入管業務における処理日数の現実が見えてきます。
主な在留審査の処理期間(処分告知までの日数・抜粋)
| 在留資格(手続き) | 平均処理日数 |
| 技術・人文知識・国際業務(変更) | 72.9日(約2.4ヶ月) |
| 日本人の配偶者等(変更) | 57.4日(約1.9ヶ月) |
| 永住者 | 310.2日(約10ヶ月) |
データが示す通り、永住許可審査には標準的に「10ヶ月以上」かかっています。
つまり、2026年4月に提出した申請は、審査が終了して結果が出るのが「2027年2月頃」になります。審査処理の途中で「新しい永住ガイドライン運用開始時期」を跨ぐことになり、申請時点では旧基準を満たしていても、審査完了時には新基準(世帯年収水準)で判定されてしまうのです。
(2)現在審査中・これから申請する方が取るべき対策
審査の途中で新基準が適用された場合、入管から「資料提出通知書」が届き、追加の収入証明や将来の年金資産に関する立証資料を短期間(通常2週間〜1ヶ月以内)で提出するよう求められる可能性があります。
通知が届いてから対応するのではなく、審査中の段階で自主的に追加理由書や資産証明を提出する準備を行うことが、不許可リスクを回避するための有効な手法となるでしょう。
4. 要件厳格化でも「永住許可」を諦めないための3つの事前対策
永住の審査基準が厳格化されるからといって、永住権の取得が完全に不可能になるわけではありません。専門家の知見を活用し、事前に万全の準備を整えることで、許可率を大幅に高めることが可能です。
【対策1】世帯年収・資産の「立体的な証明」と理由書の作成
単身者での年収が新基準(日本人世帯平均年収)に届かない場合でも、諦める必要はありません。
- 世帯収入の合算: 共働きである場合、配偶者の収入を合算した「世帯総所得」として立証します。
- 金融資産による補強: 預貯金口座の残高証明、株式・投資信託(NISA含む)の資産評価額、保有不動産の登記事項証明書等を添付し、「年収の不足分を十分補える資産基盤があること」を証明する理由書を作成します。
【対策2】社会保険・年金の「履歴の整備」
審査において最も厳しく見られるのが「公的義務の履行」です。
- 過去の納付履歴チェック: 直近5年間(配偶者等は3年または1年)において、健康保険料や年金を「支払期日通りに」納めているかを「ねんきんネット」等で確認します。
- 1日でも遅延がある場合のリカバリー: 万が一過去に納期限を過ぎて支払った履歴がある場合、そのまま申請すると高確率で不許可となります。一定期間(遅延のない状態を1〜3年積む)を置いてから申請するか、当時のやむを得ない事情と現在の完全履行状態を論理的に説明する陳述書を用意します。
【対策3】日本語能力・生活定着度の客観的立証
新要件で重視される「国益・素行」部分に対応するため、従来の申請書類に加えて定着性を裏付ける資料を先回りで提出します。
- 語学能力の証明: JLPT等の合格証書に加え、職場での日本語使用状況や公的・地域での活動実績を証明します。
- 子どもの就学証明: 義務教育対象の子どもがいる場合は、在学証明書や通学状況を明記し、家族全体で日本の地域社会に適合して生活している実態を主張します。
5. まとめ:永住許可の新基準を見据えた対策を取りましょう
新「永住ガイドライン」は、令和9年4月1日以降の申請に全面適用されますが、収入要件については令和8年4月1日以降の申請分から既に新基準が先行適用されています。
また、従来の「我が国への貢献に関するガイドライン」が廃止されたことで、永住におけるすべての審査基準が一本のガイドラインに集約されました。
一度不許可の記録が入管に残ってしまうと、その後の再申請における審査はさらに厳しくなることが予想されます。だからこそ、新要件を見据えた事前の書類精査、世帯資産の立体的な証明、過去の公的義務履行のリカバリー等、万全な準備のもとで申請に臨むことが重要です。
行政書士法人第一綜合事務所では、改定された最新の永住ガイドラインに準拠し、ご相談者様一人ひとりのキャリアや資産状況に合わせた永住許可対策をサポートします。ご自身の状況で新基準をクリアできるか不安な方は、ご相談ください。




