【令和8年熊本地震】被災された外国人の方へ:2026年11月27日までの免責措置と在留手続きの特例措置を解説

被災された皆様への心よりのお見舞い
2026年(令和8年)7月28日午後4時27分ごろ、熊本県を震源とする最大震度7の大きな地震が発生いたしました。この度の地震により被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。余震や生活への不安が続く中、特に外国人の方々やその支援者・雇用主の皆様におかれましては、被災地での在留について多大なご不安を抱えていらっしゃることとお察しいたします。
本コラムでは、出入国在留管理庁から公式に発表された在留諸申請に関する特例措置や、特定非常災害の指定に伴う免責措置(2026年11月27日まで)について詳しく解説します。
Index
1. 【特定非常災害指定】法令上の届出・申請等に関する免責措置(令和8年11月27日まで)
令和8年8月7日に、今回の熊本地震が「特定非常災害」に指定されたことに伴い、「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置法(特措法第4条)」が適用されます。
(1)措置の概要
今回の地震の影響により、入管法や技能実習法等に規定されている各種届出や申請・監査等の義務を期限内に履行することが困難であったと認められる場合、令和8年11月27日までに当該義務を履行すれば、不履行についての不利益(ペナルティや罰則等)を受けないこととされました。
「地震の影響でカードの更新や住所の届出が期限内にできなかった」
「会社の被災で各種変更届や定期報告が遅れている」
といった場合でも、この期間までに順次手続を行えば問題ありませんので、焦らず対応を進めてください。
(2)措置の対象となる主な手続(全25項目)
特措法第4条に基づき免責対象となる主な手続は以下の通りです。
- 住居地の届出: 新規上陸、在留資格変更、引越しに伴う住所変更届出
- 在留カード・特別永住者証明書: 有効期間の更新、紛失・滅失・汚損等による再交付申請、返納
- 所属機関に関する届出: 勤務先や通学先の変更・離脱等の届出
- 在留資格の取得申請: 出生等に伴う在留資格取得の申請
- 特定技能所属機関による各種届出(法第19条の18関連)
- 技能実習の計画変更・記載事項変更に伴う届出等
- 登録支援機関の変更届出、支援業務の休止・廃止の届出、定期報告
- 監理事業の休止・廃止の届出
- 監理団体による定期監査・訪問指導の実施
- 指定外部役員や外部監査人による確認・外部監査業務の実施
2.令和8年熊本地震に伴うその他の特例措置について
法律上の免責措置(特措法)とは別に、入管では被災した外国人労働者や受入企業を救済するための柔軟な運用上の特例措置を実施しています。
(1)個別対応の実施
通常、在留手続きは定められた期間内に行う必要があります。しかし、今回の地震で被災したことにより、在留期間内に申請ができなかった方については、入管は、当面の間、在留期間を経過した場合であっても個別に手続きを行うとしています。「期限が切れてしまったから不法滞在になってしまうのではないか」とご不安に思われるかもしれませんが、慌てる必要はありません。
災害というやむを得ない事情が考慮されますので、まずは身の安全を確保し、お近くの入管に申請のための相談を行ってください。
(2)申請先についての特例
通常の手続きでは、ご自身の住居地を管轄する地方出入国在留管理局で申請を行うのが原則です。しかし、被災したことにより、本来の住居地から一時的に移動や避難をされている方については、現在の滞在先を管轄する入管で申請を行うことが特例として認められています。
手続きのために、交通機関が麻痺している中を無理に元の住所地の入管へ戻る必要はありません。上記取扱いに関してご不明な点がある場合は、お近くの地方出入国在留管理局にお問合せいただくことで、皆様の事情に寄り添った対応を受けることができます。
(3)会社被災等に伴う「資格外活動許可」の特例付与
今回の地震の影響で勤務先の事業所が被災し、本来の在留資格に基づく就労活動が一時的に困難となった外国人の方(就労ビザ保持者)に対しては、生活維持および就労機会を確保するための救済措置として「資格外活動許可」の特例付与が行われます。
- 他社での一時的な就労: 勤務先の休業等により働けない期間中、一時的に他社でパート・アルバイト等の就労を行うための資格外活動許可が柔軟に付与されます。
- 簡便な申請手続: 被災地の状況に配慮し、郵送やFAXなどによる手続対応や、迅速な審査が行われています。
(4)技能実習生による事業所等の復旧作業についての特例
今回の地震の影響を受けて、実習実施者(受入企業等)の事業所(敷地および周辺道路等を含む)が被災した場合、技能実習生が当該事業所における活動として瓦礫等の片付け作業や復旧作業に従事することについての特例が認められています。
この特例により、本来の技能実習計画に含まれない復旧作業であっても、技能実習を行うための環境を整備する目的であれば、当面の間、別途資格外活動許可を受けることなく当該復旧作業に従事することができます。
(5)在留カード再交付・受入機関の届出等の取扱い
災害等により過酷な状況におかれている外国人の方や受入機関に対し、手続面での柔軟な配慮がなされています。
- 在留カードの紛失・破損への対応: 地震により在留カードを紛失・焼失・著しく汚損した場合、本来の申請期限にとらわれず、安全が確保された段階で速やかに再交付申請を行えば問題ありません。
- 所属機関に関する届出等の延長: 勤務先や通学先の変更・休業等に伴う届出についても、災害の影響により期限内に行うことが困難な場合は、落ち着いた段階で理由を添えて提出することで柔軟に対応されます。
(6) 熊本出張所の窓口状況と最新情報の確認方法
地震発生に伴い、安全確保のため一時窓口業務を中止していた「福岡出入国在留管理局 熊本出張所」では、すでに窓口業務が再開されています。
ただし、今後の余震の状況やインフラの復旧状況等によっては、開庁時間や窓口業務の運用が急遽変更・調整される可能性があります。手続きのために窓口へ向かわれる際は、無理な移動を避け、事前に福岡出入国在留管理局の公式X:@immi_fukuoka(外部リンク)などで最新の開庁・受付状況をご確認のうえ、安全を第一に行動してください。
3.地域社会に定着する外国人への支援
災害時にこのような柔軟な特例措置が迅速に取られる背景には、地域社会において外国人の方々が重要な一員として深く定着している実態があります。この章では、熊本県に定着する外国人についての現状と、今回の地震を受けての支援について触れます。
(1)熊本県における在留外国人の現状
入管が公表した「令和7年末現在における在留外国人数について」によりますと、2025年末時点での日本全国の在留外国人数は総数4,125,395人に達しており、前年末から9.5%もの増加を記録しています。
今回の被災地である熊本県においても、令和7年末時点での在留外国人数は32,372人となっており、対前年末増減率は10.2%増と、全国平均を上回るペースで増加しています。熊本県内で生活されている外国人の方々の在留資格別の内訳を詳しく見てみますと、特に目立つのが「技能実習」の10,007人と「特定技能」の8,151人で、県内の在留外国人全体の半数以上を占めています。
そのほかにも、「永住者」が3,612人、「技術・人文知識・国際業務」が2,801人、「留学」が1,892人、「定住者」が478人となっており、多様な背景を持つ方々が地域社会に根付いて生活されています。
熊本県への世界的半導体製造大手・TSMCの進出と、それを契機とした九州各県での半導体関連産業の急速な集積が挙げられます。この産業集積は外国人材の増加に直接的に寄与しており、熊本県の資料によれば、2023年の時点ですでに、製造業において「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「高度専門職」、「経営・管理」等の専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人労働者は、2022年の816人から約2倍(1,660人)へと急増しています。
なお、今回の地震を受けてTSMCは7月29日、「工場内の水や電力供給システムは正常に稼働している」と発表しました。製造装置に関わる検査や調整作業を続けていますが、地震の揺れが大きかったため、調整には一定の時間を要する見込みとしています。
(2) 外国人向け避難所の開設
このような地域のパートナーである外国人の方が安心して避難できるよう、支援の輪も広がっています。 熊本市中央区の熊本市国際交流会館では、今回の地震を受けて、外国人向けの避難所を開設しました。災害時には言葉の壁が大きな不安要素となりますが、同館では日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語を用いて、「地震で被害を受けた方、不安で自宅にいたくない方などが避難することができる」と案内を行っています。避難の際は、着替えなどを各自で持参するよう呼びかけています。企業の皆様におかれましても、従業員の方々にこうした多言語対応の避難所情報があることをぜひお伝えいただき、安全確保にお役立てください。
(3) 被災時に役立つ多言語ツールと公式相談窓口
避難生活中の情報収集や在留手続きに関する疑問については、以下の公的ツール・窓口を活用できます。
遠隔医療通訳サービス「mediPhone」の無料提供
専用Webサイト(外部リンク)または電話(050-3196-8719)で利用可能です。避難先や救護所、病院で外国人が体調を崩した際、言葉の壁を解消する手段として活用できます。
多言語生活・医療サポートアプリ「GTN Assistants for Biz」の無料提供
災害情報(緊急地震速報・避難情報等)のプッシュ通知や避難・生活情報の提供のほか、医療機関の案内・医療通訳、専門コンシェルジュやAIチャットによる多言語での生活相談に対応しており、被災地での安心安全な生活支援および企業の外国人対応サポートとして活用できます。前述した「mediPhone」とも連携しています。
防災アプリ「Safety tips(外部リンク)」(観光庁監修)
外国人在留支援センター(FRESC / フレスク)
(以下タブレット端末使用のうえ対応)韓国語、ポルトガル語、 スペイン語、タガログ語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語、 ネパール語
4.「命と安全」を最優先に
今回の地震発生以降、被災地では生活インフラや交通網の調整が段階的に進められているものの、避難生活を送られている方々をはじめ、依然として厳しい状況が続いています。
このような非常事態において最も大切なのは、皆様の「命と安全」です。「ビザの更新期限が迫っているから」「届出を出さなければならないから」と無理をして危険な道のりを移動したりすることは、絶対に避けてください。第1章・第2章で解説した通り、特定非常災害の指定(特措法第4条)に基づく11月27日までの免責措置や、入管による個別の柔軟な手続き対応が公式に認められています。
まずは安全な場所にとどまり、熱中症等を防ぐためにも体調管理に努めてください。生活の安全が確保されることが、何よりも最優先されるべき事項です。
5.行政書士法人第一綜合事務所でのサポート
行政書士法人第一綜合事務所では、地域社会の重要な一員である外国人の方々や、その方々を受け入れてともに働く企業の皆様を全力で支援しております。
被災地や避難先での在留についてお悩みやご不安があれば、当事務所までご相談ください。特例措置の活用方法から、具体的な入管への事情説明に至るまで、専門家として皆様に寄り添い、サポートさせていただきます。
被災された皆様が一日も早く穏やかな日常を取り戻せますよう、心よりお祈り申し上げます。




