外国人のペット同伴入国手続き完全ガイド|ビザ申請と並行すべき理由と検疫の注意点

日本での生活をスタートさせるにあたり、「大切な家族であるペット(犬や猫など)を一緒に連れて行きたい」とお考えになる方も多くいらっしゃるでしょう。
2025年末時点で、日本に滞在する外国人は過去最高の412万人を突破し、ペット同伴に関するご相談も増えております。
しかし、日本の動物検疫は世界でもトップクラスに厳格です。手続きを少しでも間違えると、「自分は入国できたのに、ペットは空港で何ヶ月も隔離されてしまった」「母国に送り返された」という悲劇が起こり得ます。
本コラムでは、国際法務を専門とする行政書士の視点から、外国人の方がペットを日本へ連れてくるための手続きと、絶対に知っておくべき実務上の注意点を分かりやすく解説します。1章から3章では犬・猫について、4章で犬・猫以外について取り上げます。
Index
1. 日本の犬・猫輸入は厳しい?
日本は、世界でも数少ない「狂犬病が発生していない国」です。しかし、周辺国を含む世界のほとんどの地域で依然として発生しており、日本は常に侵入の脅威に晒されています。そのため、海外から狂犬病ウイルスが侵入することを防ぐため、農林水産省(動物検疫所)によって極めて厳しい水際対策が敷かれています。
出発国による2つの区分:指定地域と指定地域外
犬・猫の入国手続きは、来日前に滞在していた国が「指定地域」か「指定地域外」かによって難易度が劇的に変わります。世界のほとんどの国は「指定地域外」に該当するため、高度な準備が求められます。
| 区分 | 対象となる主な国・地域 | 必要な主な手続き(犬・猫の場合) |
| 指定地域外 | 上記以外のすべての国・地域(アメリカ本土、欧州、アジア諸国など) | マイクロチップ装着、狂犬病予防接種(2回)、抗体検査、180日間の待機等 |
| 指定地域 | アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム | マイクロチップ装着、指定地域での在住証明等 ※抗体検査やその後の180日待機は不要ですが、指定地域に180日以上滞在している等の条件があります |
2. 【犬・猫】ペットを日本に連れてくるためのステップ
犬や猫を日本に輸入するための手続きは、出発国が「指定地域」か「指定地域外」かによって大きく異なります。それぞれのルートにおける公式なステップを解説します。
(1) 「指定地域外」から連れてくる場合の7つのステップ
「指定地域外」から犬や猫を連れてくる場合、以下の7つのステップを必ず順番通りに進める必要があります。一つでも順序を間違えると、大幅なスケジュールの遅れや追加の検査・接種が発生し、最悪の場合は最初からやり直しになるリスクもあるため注意が必要です。
順番を間違えてマイクロチップ装着前にワクチンを打ってしまった場合の救済措置(条件付き受け入れ)などの例外も存在しますが、この原則の順番通りに進めることが最も確実で安全です。
- マイクロチップの装着
国際規格(ISO 11784/11785)に適合するチップを、現地の動物病院の獣医師に埋め込んでもらいます。この時に発行される識別番号が、今後のすべての申請書類の「身分証明」となります。 - 狂犬病予防接種(計2回)
チップ装着が完了したら、次に同じ現地の動物病院で「狂犬病の予防接種」を合計2回受けます。1回目を接種した後、30日以上の間隔を空け、かつ1回目の有効期限内に2回目を接種しなければなりません。接種後、担当獣医師からワクチン名や製造元、有効期限が明記された「狂犬病予防注射済証」を必ず受け取って保管してください。 - 狂犬病抗体価検査
民間病院ではなく「日本の農林水産大臣が指定する検査機関」に対して「狂犬病抗体価検査」を申請します。現地の獣医師にペットの血液(血清)を採血してもらい、獣医師が記入した検査申請書とともに指定の検査機関へ郵送します。後日、この機関から「抗体価検査結果証明書」が返送され、基準値(0.5 IU/ml 以上)をクリアします。 - 180日間の現地待機
前ステップの採血日を「0日」として、現地で180日間待機します。 - 事前届出
日本到着の40日前までに、到着予定の空港・港を管轄する動物検疫所に「輸入届出」を行います。 - 出国直前の臨床検査と政府証明書
出発直前に獣医師の健診を受け、現地の政府機関(米国のUSDAなど)から裏書き(エンドースメント)を取得します。 - 日本到着時の輸入検査
日本に到着した際、税関の手前にある「動物検疫所カウンター」にて輸入検査を受けます。ここで、現地政府から取得した「エンドースメント完備の証明書原本」、事前に取得した「届出受理書」、そして機内で記入する「携帯品・別送品申告書」のすべてを検疫官に提出します。空港で書類とチップの照合を行います(問題がなければ通常は数時間、遅くとも12時間以内には一緒に帰宅できます)。
(2) 「指定地域」から連れてくる場合の7つのステップ
農林水産大臣が指定する狂犬病清浄国・地域(アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム)からの輸入です。指定地域外の場合に課されるワクチン接種や抗体検査、180日の待機といったハードルの高い手続きは免除されますが、代わりに「指定地域での厳格な滞在歴」と「安全な輸送」が厳しく問われます。
特に注意すべきなのが「180日」ルールです。指定地域からの特例として認められるには、その地域に「出生以来」または「輸出前180日間以上」滞在している必要があります。この180日の滞在期間を満たしていない場合は「指定地域外」からの輸入扱いとなります。
公式には以下の7つの手順を踏む必要があります。
- マイクロチップの装着
国際規格(ISO 11784/11785)に適合するチップを、現地の動物病院の獣医師に埋め込んでもらいます。この時に発行される識別番号が、今後のすべての申請書類の「身分証明」となります。 - 滞在証明
「出生以来」「輸出前180日間以上」「日本から輸入して以来」のいずれかの期間、指定地域のみに在住していたことの証明が必要です。 - 事前届出
日本への渡航日が決まったら、日本到着の40日前までに日本で到着予定の空港・港を管轄する「動物検疫所」へ「輸入届出」を行います。これはインターネット上の「動物検疫システム(NACCS)」、またはFAXや郵送を使って「犬・猫の輸入の届出書」を提出する手続きです。内容に問題がなければ、日本の動物検疫所から「届出受理書」がデータ等で発行されるため、必ず印刷して手元に用意しておきます。 - 出国前の臨床検査
出発前の健康診断であり、可能な限り出発直前(原則として出発前10日以内)に現地の動物病院(獣医師)で行うことが望まれます。ここで狂犬病やレプトスピラ症(犬の場合)などの臨床症状がないかを確認し、獣医師に診断書を作成してもらいます。 - 輸出国政府機関の証明書取得
出国直前、輸出国の政府機関(オーストラリアならDAFF、ハワイならHDOAなど)へ赴き、手続きを行います。現地の民間獣医師が作成したこれまでの書類や日本の動物検疫所指定の推奨様式(Form A、Form B)を提出し、輸出国政府機関による裏書き(エンドースメント)が完備された証明書を取得します。政府の公印(エンドースメント)が押されることで、初めて公式な書類として認められます。 - 輸送に関する規定
経由地での感染リスクをなくすため、輸送ケージが政府機関によって封印(シール)されている等の規定を満たす必要があります。 - 日本到着時の輸入検査
日本に到着した際、税関の手前にある「動物検疫所カウンター」にて輸入検査を受けます。ここで、現地政府から取得した「エンドースメント完備の証明書原本」、事前に取得した「届出受理書」、そして機内で記入する「携帯品・別送品申告書」のすべてを検疫官に提出します。空港で書類とチップの照合を行います(問題がなければ数時間で一緒に帰宅できます)。
(3) 在留資格手続きとの「スケジュール同期」が成否を分ける
実務上、難易度が高いのは「ビザ申請」と「ペットの検疫手続き」のスケジュールを合わせることです。
出入国在留管理庁へのビザ申請(在留資格認定証明書:COEの取得)には通常1〜3ヶ月かかります。一方で、ペットの準備には最低でも7〜8ヶ月(180日の待機を含む)が必要です。
「ビザが下りてからペットの準備を始める」のでは、入国日に間に合いません。入国予定日から逆算し、ビザ申請とペットの検疫手続きを並行して進める意識が不可欠です。
3. 【犬・猫】書類不備と「係留検査(隔離)」のリスク
ご自身で手続きを進めた方が、日本の空港で足止めされるケースが多くあります。この章では「よくある失敗事例」をご紹介します。
事例①:現地政府の証明書(エンドースメント)の文言ミス
最も多いのが書類の不備です。「マイクロチップ番号が1桁間違っていた」「ワクチン接種日の日付フォーマット(DD/MM/YY等)が混同されていた」「現地政府機関の公印やサインが漏れていた」といった些細なミスでも、日本の検疫は一切妥協しません。
事例②:待機期間「180日」の計算ミス
「採血日を0日とする」というルールを知らず、採血日を1日目と数えてしまい、待機期間が179日になってしまった事例です。たった1日足りないだけでも、不足分は日本の空港で隔離されてしまいます。
書類不備や待機日数不足があった場合、ペットは空港内の検疫施設に最長180日間、強制的に隔離(係留)されます。
この期間中のエサ代、施設利用料、お世話の費用はすべて飼い主の自己負担となります。数十万円単位の高額な出費になるだけでなく、慣れない環境で長期間過ごすペットのストレスは計り知れません。
なお、意図的に検疫を受けずに入国させた場合、関係法令により罰則の対象となる可能性があります。
4. 【犬・猫以外】うさぎ・小鳥・ハムスターなどのペット手続きは別物
持ち込まれるペットのほとんどは犬・猫ですが、ごく稀に「うさぎ」や「小鳥(インコなど)」「ハムスター」「爬虫類」などを連れてきたいというご相談もあります。
結論から言うと、犬・猫以外の動物は厚生労働省や経済産業省など、全く異なる法律・行政管轄となります。犬・猫のような180日待機はありませんが、日本への持ち込みは困難ではあります。
(1) 動物の種類によって変わる「4つの行政管轄」
犬・猫以外の場合、まず「そのペットがどの法律の対象か」を切り分ける必要があります。
| ペットの種類 | 準拠する法律 | 管轄する省庁 | 主な規制・手続き |
| うさぎ(家兎) | 家畜伝染病予防法 | 農林水産省(動物検疫所) | 1日間(実質2泊3日)の係留検査、輸出国政府の衛生証明書 |
| ハムスター・フェレット・小鳥など | 感染症法(動物の輸入届出制度) | 厚生労働省(検疫所) | 輸出国政府の衛生証明書、日本到着時の届出 |
| カメ・トカゲなどの爬虫類 | ワシントン条約(CITES) | 経済産業省 | 絶滅危惧種に該当しないことの証明、輸出許可書 |
| サル・プレーリードッグなど | 感染症法 | 厚生労働省 | 原則輸入禁止 |
(2) なぜ犬猫より難しい?「衛生証明書」という高すぎる壁
ハムスターやフェレットなどの「小哺乳類」やインコなどの「鳥類」を日本に連れてくる場合、厚生労働省への届出が必要です。しかし実務上、一般の外国人が個人のペットとして日本に連れてくるのはかなり困難とされています。
厚生労働省の「動物の輸入届出制度」をクリアするには、「輸出国政府機関が発行した衛生証明書(原本)」が必要です。しかし、現地の政府(動物愛護や検疫の機関)は、個人のペットであるハムスターや小鳥に対して、わざわざ日本の厳しいフォーマットに合わせた政府公認の証明書を発行してくれないケースが多いです。特に、海外で飼育していた個体は出生や保管のルートが公的に証明しづらいため、門前払いになってしまうケースがあります。
さらに、ハムスターなどは「感染症のない政府指定の保管施設」で育てられた証明が必要であり、小鳥(鳥類)は現地の「鳥インフルエンザ」の発生状況によって日本への持ち込みが全面禁止になるリスクも孕んでいます。
(3) カメやトカゲなどの爬虫類は「ワシントン条約」に注意
爬虫類や両生類、魚類などは、厚生労働省や農林水産省の「感染症検疫」の対象外であることが多いため、一見すると入国は簡単そうに思えます。しかし、ここで注意すべきなのは「ワシントン条約(CITES)」です。
海外で普通にペットとして売られているカメ(リクガメなど)やトカゲ、カメレオンですが、これらは種類によっては、ワシントン条約の規制対象種に指定されています。指定されている動物を日本に持ち込むには、輸出国政府が発行する「輸出許可書」が必須です。これがない場合、日本の税関で没収されるだけでなく、最悪の場合は関税法違反等で処罰されるリスクがあります。
5. 信頼できる専門家にサポートを依頼するメリット
大切な家族を危険に晒さず、確実に日本へ連れてくるためには、国際法務と行政手続きに精通した行政書士などの専門家への依頼を強くお勧めします。
(1) 入管手続きと動物検疫(農水省)の一元管理
ご本人の「就労ビザ・家族滞在ビザの申請(入管)」と、ペットの「輸入検疫手続き(農水省)」という管轄の違う2つの手続きを、一つの窓口で完全にコントロールできる専門家に依頼しましょう。スケジュール調整のミスを防ぐことができます。
(2) 現地政府機関や獣医師との英語・多言語による調整代行
現地の獣医師や政府機関が、日本の複雑なフォーマットを正しく理解してくれるとは限りません。現地の機関との英語でのコミュニケーションや、発行される証明書の事前のリーガルチェック(記載内容の整合性確認)を徹底して行うことのできる専門家に依頼することで、空港でのトラブルを未然に防ぎます。
(3) 外国人雇用企業の「人事・総務担当者」の負担を大幅軽減
優秀な外国人材を招聘する日本企業の人事・総務担当者様にとって、内定者のペットの手続きまでサポートするのは実務上ほぼ不可能です。専門家に依頼することで、担当者様は本来の受け入れ業務に専念できます。
6. ペット入国に関するよくあるQ&A
実務の現場で外国人の方からよくいただくご質問を解説します。
A:その動物が日本に持ち込むリスク(防ぎたい目的)が法律ごとに全く異なるからです。犬や猫は「狂犬病」の国内流入を防ぐため農林水産省(動物検疫所)が管轄します。一方で、ハムスターなどの小動物は「ペスト」などの人獣共通感染症を防ぐために厚生労働省が管轄し、ワシントン条約に絡む希少な爬虫類などは国際取引の観点から経済産業省が管轄します。このように「防ぐべきリスク」に応じて適用される法律(家畜伝染病予防法、感染症法、外来生物法など)が異なるため、窓口が縦割りになっています。
A:日本の空港で行われる動物検疫そのものの検査手数料は原則無料です。ただし、そこに至るまでの「マイクロチップの装着」「狂犬病ワクチン接種」「抗体価検査(血液検査)のラボ費用」「出国前の獣医師による健康診断」などはすべて現地の病院での実費負担となります。また、万が一書類不備で空港の施設に「係留(隔離)」された場合、その期間中の飼育管理費用(エサ代や部屋代)はすべて飼い主の自己負担(数万円〜数十万円)となります。
A:利用する航空会社や路線のルール、および機材によって対応が分かれます。一部の外資系航空会社では、小型の犬・猫に限り「一定サイズ以内のケージに入れて座席の足元に置く」という条件で客室同伴を認めているケースがあります。しかし、日系航空会社(JALやANAなど)の国際線では、原則としてペットは客室への同伴ができず、飛行機の貨物室(空調管理されたペット専用スペース)での輸送となります。事前に利用予定の航空会社へ必ず個別確認が必要です。
A:原則として日本に到着する直前(通常は出国前10日以内)に取得します。なぜなら、政府証明書を発行してもらうための大前提である「獣医師による出国直前の臨床検査(健康診断)」が、日本の規定で「出国前10日以内(可能な限り直前)」と定められているからです。現地の政府機関(アメリカのUSDAなど)は予約が混み合うことも多いため、直前のタイトなスケジュールの中で確実に予約を押さえ、書類を発行してもらう段取りが実務上の最大の難所となります。
A:最長180日間の隔離(係留)、母国への返送(強制送還)、別の国への転送の対象となります。書類の致命的な不備や待機日数の不足が発覚した場合、大半の飼い主様は高額な費用を負担して「①空港施設での隔離」を選択しますが、隔離期間中は自由に会うこともできず、ペットに大変な負担がかかります。このような事態を防ぐためにも、渡航前の段階で書類が完璧であるかを専門家にリーガルチェックしてもらうことが極めて重要です。
まとめ:大切なご家族とのスムーズな日本生活をスタートさせるために
外国人がペットを連れて日本に入国するための手続きは、非常に複雑で長期間を要します。特に「180日間の待機」(犬・猫の場合)や「正確さが求められる書類作成」は、ご自身で行うにはリスクがあります。
愛するペットに空港での長期間の隔離という辛い思いをさせないためには、「1日でも早い準備の開始」と「確実な書類作成」がすべてです。
行政書士法人第一綜合事務所では、外国人ご本人のビザ(在留資格)取得の手厚いサポートを提供しております。
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