マレーシア人の帰化申請で必要な国籍証明書の特殊性について
帰化申請は,日本国籍を取得する手続です。
そして,日本国籍を取得するということは,「戸籍」を作成するということです。
この「戸籍」とは,法務局の定義では,「人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので,日本国民について編製され,日本国籍をも公証する唯一の制度」となっています。
こちらの定義をよりかみ砕いて説明すると,戸籍とは,その人物がいつ・どこで・誰との間に生まれた子なのか,誰と結婚・離婚をしたか,子供はいるかといったパーソナル情報のことを言います。
このパーソナル情報を確定する上で,申請者の国籍国の書類(以下,「本国書類」と言います。)は必ず必要であり,本国書類が揃えられなければ帰化申請を進めることが出来なくなるケースもあります。
今回は,本国書類が少し特殊なマレーシア人の帰化申請にフォーカスして,詳しく解説していきます。
Index
1.マレーシア人の帰化申請で必要となる本国書類
①マレーシア人の帰化申請で一般的に必要となる本国書類の種類
先に述べたように,帰化申請をするためには,申請人がどのような人物であるかとうパーソナル情報を確定させる必要があります。
そして,このパーソナル情報を確定するために本国書類が必要となります。
では,どのような本国書類によってパーソナル情報を確定するのでしょうか。
実は,この本国書類は,戸籍制度を採用しているかどうかで種類が変わってきます。
現在,戸籍制度を採用している国は,日本と台湾です。
台湾を例にすると,台湾人が帰化申請するときは,基本的には「戸籍全部謄本」の1種類で足ります。
なぜなら,この書類の中に,帰化申請で必要となる国籍や出生の事実,両親や家族構成など,帰化申請で必要となるパーソナル情報が全て含まれているからです。
しかし,戸籍制度を採用していない国では,国籍証明書や出生証明書,結婚証明書などのそれぞれの事柄を証明する書類を収集し,総合的に判断することにより帰化申請で必要となるパーソナル情報を確定させることになります。
そして,マレーシアは戸籍制度を採用している国ではありません。
そのため,マレーシア人が帰化申請をするためには,数種類の本国書類が必要となります。
必要となる本国書類の種類は,申請人の事情によって異なるので,ここでは,マレーシア人が帰化申請するうえで必要となる一般的な本国書類についてご紹介します。
- 国籍証明書
- 出生証明書
- 両親の結婚証明書
- 申述書
②それぞれの書類の内容
上述した書類の内容について,簡単にご説明します。
〇国籍証明書
国籍証明書は,申請人がマレーシア人であることを証明する証明書のことです。
こちらは東京にある駐日マレーシア大使館にて取得可能です。
詳しくは後述しますが,正確にはマレーシアでは国籍証明書という名の証明書は発行されておらず,また,諸外国のように「申請人が国籍国の国籍を有している」という内容の文言はありません。
〇出生証明書
出生証明書は,申請人の出生を証明する証明書のことで,申請人本人だけでなく,兄弟姉妹がいらっしゃる場合は,その全ての方の分も必要となります。
こちらは,マレーシア本国にある出生及び死亡登記庁にて取得可能です。
〇両親の結婚証明書
両親の結婚証明書は,その名の通り,両親の結婚を証明する証明書のことです。
こちらも,マレーシア本国にある結婚登記庁にて取得可能です。
なお,申請人自身が結婚している場合,申請人自身の結婚証明書が必要となります。
また,両親が離婚している場合や,死亡している場合は,それらの事実を証明する証明書も追加で求められます。
〇申述書
申述書は,申請人が申請人の両親の子どもで間違いない,ということを両親が手書きで作成する書類を言います。
また,申述書の内容は各法務局で若干違うため,事前に確認する必要がありますが,どの法務局でも,申述書が送られてきたときに使用された国際郵送の封筒を申述書と併せて提出するように案内されます。
そのため,申述書そのものがあれば良いのではなく,国際郵送の封筒とセットで初めて申述書として有効となるということを覚えておいてください。
2.マレーシア人の帰化申請で必要となる国籍証明書の特殊性
①マレーシア人には国籍証明書がない!?
国籍証明書は,申請人の国籍を確定する上で重要な書類です。
書類の名称は各国によって違いますが(例えば,中国は「領事証明」と言います。),マレーシア周辺のベトナムやタイでは,国籍証明書というタイトルで証明書の取得が出来ます。
しかし,マレーシアには「国籍証明書」というタイトルの書類はありません。
では,マレーシア人の帰化申請で「国籍証明書」が必要ないのかというとそうではありません。
マレーシア人は「国籍証明書」の代わりに「帰化宣誓書」という書類の取得・提出が必要となります。
では,この「帰化宣誓書」はどのように取得できるのでしょうか。
取得方法について,詳しく解説していきましょう。
まず,こちらの書類を取得するためには,以下の書類を本国から準備し,東京にある駐日マレーシア大使館へ直接申請しに行く必要があります。
現在は,コロナウイルス感染拡大を受け,完全予約制を採用していますので,申請をする際は,電話かメールで必ず事前に予約を取りましょう。
また,帰化宣誓書は,申請人「本人」が駐日マレーシア大使館に取りに行く必要があるため,遠方にお住まいの方は,手続きを煩わしく思われるかもしれません。
しかし,帰化をするためには必要なことですので日程を調整して対応しましょう。
- 申請書(駐日マレーシア大使館に備え付けられています)
- 帰化宣誓書申請時に有効なマレーシアパスポートの原本
- マレーシア政府発行の身分証明書の原本とコピー
- マレーシア政府発行の出生証明書の原本とコピー
- 在留カードの原本
- 証明写真(2枚)
※身分証明書と出生証明書は,帰化申請の結果が出るまで大使館で預かられます。その際,大使館から預かり証が交付されるので,大切に保管してください。
次に,帰化宣誓書取得の申請を終えると,即日発行は出来ないため,後日,改めて駐日マレーシア大使館へ発行された帰化宣誓書を取得しに行く必要があります。
以上が,帰化宣誓書を取得する方法となりますが,この帰化宣誓書を取得するうえで気を付けて頂きたいことが1つあります。
それは,申請人の出生証明書の枚数です。
上述したように,帰化申請をするためには,国籍証明書と出生証明書が必要となります。
そして,法務局は,多くの国では国籍証明書や出生証明書は何度でも発行できると考えているので,帰化宣誓書を取得するために駐日マレーシア大使館に出生証明書を提出し,そこで預かられていることを説明しても,「もう1枚用意して下さい。」と案内される可能性が高いです。
そのため,マレーシア人が帰化申請を進める場合,他の国籍の人は自身の出生証明書は1枚で良いところ,2枚以上ご用意頂き,なるべく一回の国際郵送で全ての本国書類の収集が出来るよう気を付けて頂きたいと思います。
②「帰化宣誓書の取得」は「国籍離脱の手続き」とは違う!
マレーシアの場合,日本への帰化申請が許可されたからと言って,自動的にマレーシア国籍を失うのではなく,マレーシア国籍を喪失するための国籍離脱の手続きをする必要があります。
取得した帰化宣誓書の内容を簡単に説明すると,「申請人はマレーシア国民ですが,それらの権利を放棄できることを証明する。」というものです。
内容だけ見ると,「放棄」という言葉があるように,その書類を取得することによってマレーシア国籍を離脱したように感じられるかもしれません。
しかし,先にも述べたように,マレーシアの場合,国籍離脱のための手続きが別にあるので,帰化宣誓書を取得したからと言って,マレーシア国籍からの離脱が完了したわけではありません。
国籍離脱の手続きは,帰化申請の審査が進む中で,法務局より指示がありますので,帰化宣誓書の内容を見て焦るのではなく,法務局からの指示を待ちましょう。
3.まとめ:マレーシア人の帰化申請で必要な国籍証明書の特殊性
今回は,マレーシア人の帰化申請で必要となる一般的な書類と国籍証明書の特殊性にフォーカスしてご説明しましたが,いかがだったでしょうか。
基本的には,今回ご説明した本国書類を集めることが出来れば,帰化申請で必要となる本国書類として十分なはずですが,法務局によって案内される本国書類は変わります。
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