行政書士法人第一綜合事務所

帰化申請を自分でするメリット・デメリット

毎年,約1万人(※1)もの外国人が,日本国籍を取得するため帰化申請手続きを行っています。
中には,ご自身で申請を行った方も,はじめから行政書士にサポートを依頼した方もいらっしゃるかと思います。
これから帰化申請を考えている方の中には,自分で手続きをしようか,それとも行政書士に依頼しようか,と迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本コラムでは,専門行政書士の視点から帰化申請を自分でするメリットとデメリットを解説し,加えて,どのような方が自分で申請をすべきか(又は行政書士に依頼をすべきか)という点について検討していきます。
 
※1 直近5年の帰化許可申請者数

平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和2年
1万1,477人 1万1,063人 9,942人 1万0,457人 8,673人

データ引用元:法務局WEBサイト「帰化許可申請者数、帰化許可者数等の推移

1.自分で申請する場合の帰化申請全体の流れ

帰化申請を自分ですることのメリット・デメリットを説明する前に,そもそも自分で帰化申請をすると,申請の受付までどのような流れで手続きが進むのかを確認しておきましょう。

(帰化申請受付までの流れ)

  • 法務局に電話で相談予約
  • 法務局での事前相談(平日訪問)
  • 必要書類の収集(日本の役所,海外の役所)
  • 申請書類の作成(9~10種類,全て手書き)
  • 法務局に電話で相談予約
  • 法務局での点検及び修正指示(平日訪問)
  • 追加の資料収集及び作成書類修正
  • 法務局に電話で相談予約
  • 法務局での受付前点検(平日訪問)
  • 書類最終修正
  • 法務局に電話で相談予約
  • 法務局で申請受付(平日訪問)

このように,帰化申請は入管での在留諸申請とは違い,何度も法務局で予約を取り,実際に足を運ばなければなりません。
帰化申請とよく比較をされる永住許可申請を比べると,取得しなければならない証明書の種類が格段に多いことも帰化申請の特徴です。
そのため,自分でビザ更新をしてきたから,あるいは自分で永住も取れたから,という入管申請の実績ベースで帰化申請手続きを考えるのは得策ではありません。
帰化申請は,入管の在留諸申請とは全く異なる手続きです。
これまで入管の在留諸申請が出来たから,帰化申請も出来るだろうと考えてしまうと,手続きの違いを感じ,後に苦労することになってしまいます。

なお,帰化申請手続における必要書類についての詳しい説明についてご覧になりたい方は,「帰化申請の必要書類は?」を参考にしてみてください。

2.帰化申請を自分でするデメリット

ではここから,本題である帰化申請を自分でするメリット・デメリットについて説明していきます。
本チャプターではまず,行政書士に帰化申請を依頼した場合と比較して,自己申請のデメリットについて説明します。

・平日に仕事を休む必要がある
自分で帰化申請をする場合は,ご自身で法務局に度々行く必要があります。
さらに,法務局はお昼休みの時間帯の対応がないため,お昼休みに相談に行くことはできず,少なくとも半休を取得して法務局を訪問しなければなりません。
また,帰化申請の書類収集段階においても,役所への不明点の問い合わせは基本的に平日日中の対応となります。

なお,公文書請求自体は郵送でも可能ですが,郵送請求での手数料納付に必要となる定額小為替購入のためには,平日日中に郵便局に行く必要あります。
そのため,いずれにせよ平日に時間を作る必要があることに変わりはありません。

・申請受付までに時間が掛かる
次に,自分で全ての帰化申請の準備を行う場合,書類の収集や作成に慣れていないため,全ての工程で大きな時間がかかります。
また,自分で帰化申請準備を行うと,取得書類の不足・申請書作成方法の間違いなどに気が付かないまま,法務局での点検を受けることになります。
そのため,見落としがちな問題点を指摘され,書類収集や作成のやり直しが重なり,点検のために必要以上に法務局へ行かなければならない,ということがあります。

さらに厄介なのが,法務局の帰化申請の相談予約は,管轄によっては1ヶ月先まで一杯というのはよくある話です。
そのため,点検の回数が増えるにつれて,帰化申請が許可されるまでの期間も長期化することを認識する必要があります。

・精神力を消耗する
最後に,自分で帰化申請をすることのデメリットとして「精神力の消耗」を挙げておきます。

法務局の相談員は,いつ何時でもあなたを助けてくれるパートナーではありません。
せっかくあなたが必死の思いで揃えた書類も,少しの不備で容赦なくやり直しを告げられます。

「また役所に行かないといけないの?」
「また手書きでこれを書き直すの?」
「また仕事を休まないといけないの?」と,不満をこぼしたくなる時もあると思います。

しかし,自分で帰化申請をする場合には,誰も助けてはくれませんので,その点は覚悟のうえ臨む必要があります。

3.帰化申請を自分でするメリット

ここまで,自分で帰化申請を行うデメリットを多く説明してきましたが,本チャプターでは自分で帰化申請することのメリットもご説明しておきます。
ただ,先にお伝えしておくと,ここまで見てきたデメリットの大きさと比較すると,メリットはごく僅かです。

・書類取得実費を除いてお金がかからない
行政書士に依頼をしなければ,当然帰化申請の業務報酬は発生しません。
そのため,極力お金をかけずに帰化申請をしたいという方にはこの点はメリットといえるでしょう。

実はこの1点を除くと,あえて自己申請をするメリットは他に考えられません。
当社にご依頼いただくお客様の中には,自己申請した際に掛かる時間と労力を想定し,行政書士に依頼することで浮いてくるその時間と労力分を何か別のことに使った方が,むしろコスパが良いと判断される方も多くいらっしゃいます。

そういう意味では,帰化申請の業務報酬がかからないことが必ずしも安上がりになるとはいえず,むしろ自分で帰化申請をしたことで,想像以上の時間と労力が掛かり,結果的に損をしていたということも考えられます。
とはいえ,帰化申請を自分で行う方がいらっしゃるのもまた事実です。

そこで次チャプターでは,自分で申請をしても良いと思えるケースと,行政書士への依頼を強くお勧めするケースをご紹介します。

4.こんな人は帰化申請を「自分でする」のがおすすめ

・時間はあるが帰化申請の費用を抑えたい人
具体的には,専業主婦(夫)など,フルタイムでの仕事がなく,平日でも時間を自由に使える方が挙げられます。
時間的に余裕があり,役所とのやり取りや度重なる法務局への訪問が苦にならないという方であれば,自己申請をすることに特段問題はないでしょう。

・帰化申請の内容がシンプルな人
長年会社勤めで,過去に婚姻歴もなく家族は本国の両親2人だけといったような,シンプルな案件ですと,帰化申請に添付する書類の種類も少なく収まることから,比較的スムーズに申請が完了することが見込まれます。
この場合も,1回で帰化申請が受理になることはないでしょうが,それを理解の上であれば,自己申請にトライしてみても良いかもしれません。

5.こんな人は帰化申請を「依頼する」のがおすすめ

・仕事が忙しく,平日に時間が取れない人
仕事が忙しく,平日に時間が取れないという方は,帰化申請手続きを行政書士へ依頼することを強くお勧めします。
なぜなら,仕事が忙しい方によくある傾向として,帰化申請の手続きを途中で挫折してしまう方が多いからです。

実際に当社へ帰化申請をご依頼いただいたお客様の中にも,途中までは自己申請で進めていた方もおられます。
なぜ行政書士に帰化申請を依頼することになったのか理由を尋ねると,最初はやる気に満ち溢れていたものの,仕事の都合などで思うように準備が進められなくなり,一度中断してしまうと,その後はやる気も湧いてこなくなり,そのまま放置状態となった,といった理由が大半です。

ご自身も似た境遇になることを想像されるのであれば,初めから行政書士とタッグを組み,確実な帰化申請の手続きを進める方が良いでしょう。

・会社役員,個人事業主
次に,会社役員や個人事業主の方も行政書士に帰化申請の手続きを依頼するメリットが大きいといえます。
その理由はシンプルに,給与所得者の方に比べ,会社役員や個人事業主の方は必要な公文書や帰化申請の作成書類の種類が増えるからです。

また,多くの経営者は多忙であり,前述の「仕事が忙しく,平日に時間を取れない人」にも当てはまります。

以下に,会社役員特有の必要公文書と帰化申請の作成書類を掲載しますので,参考にしてみてください。

  • 履歴事項全部証明書 @法務局
  • 法人税納税証明書(その1,その2,各3年分) @税務署
  • 消費税納税証明書(その1,3年分)@税務署
  • 法人事業税納税証明書(3年分) @県税事務所
  • 法人県民税納税証明書 @県税事務所
  • 法人市民税納税証明書 @市役所
  • 社会保険料納付確認書 @年金事務所
  • 事業の概要 @作成資料

・韓国籍,台湾籍の方
最後に,韓国籍や台湾籍(つまり,戸籍制度があった国・地域)の方も,行政書士へ帰化申請を依頼することをお勧めします。
というのも,身分関係確定のために法務局に提出する本国書類は国籍国によって様々ですが,韓国籍や台湾籍の方は,本国書類の量が圧倒的に多いからです。

特に年齢が高くなればなるほど,過去に遡って戸籍を取得する必要があります。
日本人の多くが日本の戸籍の読み方を知らないように,韓国・台湾の方も本国戸籍の読み方に慣れていない方がほとんどで,解読に難儀することは必至です。

特に韓国籍の方であれば,本国書類の取得まで行政書士に依頼ができるので,享受出来るメリットはより一層大きいと言えます。

6.帰化申請を自分でするメリット・デメリットまとめ

ここまで読み進めて頂きありがとうございます。

帰化申請を自分でするメリットとデメリットはイメージいただけたでしょうか。

大切なことは,帰化申請全体のボリュームを知ることです。
自分の場合は,どのくらいの書類が必要で,いくつの役所に何回訪問しなければいけないのか,また,帰化申請の書類作成にはどれくらいの時間が掛かりそうで,それに対して自分の時間は十分に確保できるのか。

まず,このように自己申請での実現可能性を考えていただき,次に,行政書士に依頼することのメリットを考えてみてください。

行政書士に帰化申請手続きを依頼することで,まとまったお金が必要となる一方,あなたの貴重な仕事やプライベートの時間を守り,無駄な心労を減らすことができます。

一度きり,且つ,膨大な書類が必要になる帰化申請では,上述のとおり,自分が申請することが「損」になる方が圧倒的に多いといえます。

この記事が,帰化申請を自分でするかお悩みの方にとって,違った視点から再考できる一助になれば幸いです。