冨田 祐貴

経営管理ビザの要件を総まとめ|流れや許可要件,審査ポイントを解説

経営管理ビザの要件を総まとめ|流れや許可要件,審査ポイントを解説

当社では,毎年多くの経営管理ビザの申請を行っています。
経営管理ビザを取得するためには,多くの要件がありますが,1つでもエラーがあれば不許可になってしまう可能があります。
本ページでは経営管理ビザの要件を出来るだけ簡単に解説しています。
ぜひ最後までご覧いただき,経営管理ビザの取得を目指してみてください。

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1.経営管理ビザとは?

経営管理ビザとは,日本で貿易その他の事業の経営を行い,又は当該事業の管理に従事する活動を行う方が,一定の要件を満たす場合に認められるビザです。

経営管理ビザは,平成26年の法改正により従前の投資経営ビザを改正して作られたもので,投資経営ビザとは異なり,外国人による投資が必須要件ではなく,投資をすれば取得できる,というビザではありません。

2.経営管理ビザの流れ

本チャプターでは,経営管理ビザの申請までの流れを簡単に説明します。

まずは,以下のチャートをご覧ください。

① 会社の本店所在場所となる事業所の確保(個人名義での契約)

② 会社設立手続き

③ 会社設立後,税務署等への開業届出の手続き

④ 事業に必要な営業許可の申請

⑤ 会社の本店所在場所となる事業所について会社名義へ名義変更

⑥ 経営管理ビザ申請書類の準備

⑦ 経営管理ビザの在留資格認定証明書交付申請/在留資格変更許可申請

少し工数が多いと感じるかもしれませんが,
こちらはあくまでも会社設立から始めるケースのチャートです。

設立済みの会社の役員となるケースでは,上記の①~⑤が不要となります。
また,そもそも会社を設立せず,個人事業主として経営管理ビザを取得する場合には,②と⑤が不要となります。

なお,事業内容によっては,経営管理ビザ以外に許認可を要しないこともあります。

3.経営管理ビザの要件【アウトライン】

経営管理ビザに限らず,就労ビザと呼ばれる多くの在留資格では,原則として2つの要件を満たす必要があります。

1 行おうとする活動がその在留資格に該当するかどうか(在留資格該当性)
2 その在留資格について求められる基準に適合しているかどうか(上陸許可基準適合性

そして,上記を経営管理ビザの要件に当てはめると,次のように分解できます。

【在留資格該当性】
① 事業の「経営」または「管理」業務を行うこと
② 事業が適正に行われること
③ 事業が安定的・継続的に行われること

【上陸許可基準適合性】
④ 事業所が存在すること(もしくは確保されていること)
⑤ 一定以上の事業規模があること
⑥ 「管理」業務に従事する場合,3年以上の経験があること
⑦ 「管理」業務に従事する場合,日本人と同等以上の報酬を受けること

当社へのご相談者の中には,経営管理ビザの要件について,「500万円あれば経営管理ビザが取れる」と誤った理解をされている方もいらっしゃいます。

しかし,その500万円の要件というのは,上記で言うところの「⑤一定以上の事業規模があること」の一つの要件に過ぎず,経営管理ビザの要件としては不十分です。

それでは,次のチャプターからは,経営管理ビザの要件を掘り下げて見ていきましょう。

4.経営管理ビザの要件【在留資格該当性】

まず解説をするのは,「在留資格該当性」です。
読んで字のごとく,行おうとする活動が在留資格に該当するか,という要件です。

ただし,実際には「在留資格該当性」があるかどうかの判断には,行おうとする活動が在留資格にマッチしているだけでなく,その活動が適法に行われ,かつ,安定的・継続的に行われることも審査されるので注意が必要です。

4-1.事業の「経営」または「管理」業務を行うこと

入管法では,経営管理ビザの活動内容を次のように規定しています。

「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」

上記の条文が意味するところは,予定する活動が事業の「経営を行う活動」または「管理に従事する活動」であるか,ということです。

「経営を行う活動」とは,事業の経営に実質的に参画する者(代表取締役,取締役,監査役等の役員)として,事業を運営する活動を指します。

「管理に従事する活動」とは,企業の部門を統括する職員(部長,工場長,支店長等)として,当該部門における事業活動を管理する活動を指します。

まずは,これらの活動に従事するということを,十分に入管に立証しなければなりません。

4-2.事業が適正に行われること

次に,立証が必要となるのが「事業の適正性」です。

経営管理ビザで行おうとする事業の内容には,入管法上は特に制限はありません。
しかし,その事業は法律に従い,適正に運営されなければなりません。

具体的には,許認可等が必要な事業を行う場合は,許認可の取得が要件になります。

例えば,宿泊事業をする際の旅館業法に基づく営業許可や,飲食店を営業する際の飲食店営業許可などです。
また,職員を雇用する場合には労働保険や社会保険に加入する,といった法令に適合した対応が求められます。

4-3.事業が安定的・継続的に行われること

在留資格該当性の3つ目の要件としては,「事業の安定性・継続性」が求められます。

予定する活動が安定的・継続的に行われることは,経営管理ビザに限らず,どの在留資格においても求められます。

しかし,経営管理ビザにおいては,特にこれらの判断が事業の実態,業績と直接的に結びついており,会社が安定的に利益を出し,事業が継続的に行われていることが重要視されているのです。

これは,既に初回の決算報告を終えている既存の会社であれば,決算報告書によってその実績を証明することが出来ます。

しかし,特に設立間もない会社においては,将来に向かっての事業の継続性を示すには,事業計画書などよって主張する他なく,立証方法の良し悪しが経営管理ビザの許否を左右するといっても過言ではありません。

なお,決算書が提出できる会社であっても,売上総利益の有無,営業利益の有無,財務状況等によってはビザの更新が出来なかったり,長期の在留期間が付与されないといった不利益が発生する可能性があります。

経営管理ビザの更新の詳細は,以下のコラムにてご確認ください。
>>経営管理ビザ 更新 はコチラ

 

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5.経営管理ビザの要件【上陸許可基準適合性】

次に,経営管理ビザの要件として解説をするのは,「上陸許可基準適合性」です。

こちらは,「上陸許可」という表現通りに受け取れば,日本に上陸する際にのみ必要となる要件と考えてしまうかもしれません。
しかし,「上陸許可基準適合性」は,日本に上陸する場合のみならず,ビザの変更や更新の際にも求められる要件です。

また,経営管理ビザにおいては,事業の「経営」を行う場合と事業の「管理」を行う場合があるところ,「管理」を行う場合には,追加の要件が求められる点にも注意が必要です。

5-1.事業所が存在(もしくは確保)されていること

経営管理ビザの上陸許可基準の一つの要件として,日本国内に「事業所が存在する(もしくは確保されている)」ことが必要です。

そして,「事業所が存在する(もしくは確保されている)」と言えるためには,専有の「独立したスペースが確保」されていること,そして,事業所として機能するために十分な「物的・人的設備が確保」されていることが求められます。

まず,事業所が「独立したスペース」であると言えるためには,それが固着した壁面で物理的・機能的に専有部分が区切られていなければなりません。

「固着した」とは,パーテーションのように容易に移動可能なものではなく,天井から床までしっかりと固定されている必要があるということです。

この事務所の独立性について,オフィス形態毎に具体例を示すと,例えば,バーチャルオフィスは一般的に専有スペースが存在しないため,事業所として認められません。
一方,シェアオフィスのように,共用部分とは別に,他の事業者が使用するスペースと明確に区分された専有スペースがあれば,要件を満たすことになります。

次に,「物的・人的設備が存在している(確保されている)」とは,事業を運営する上で必要な人やモノが確保されているということを意味します。

この判断は事業内容によって異なります。

例えば,在庫をかかえないオンデマンドの貿易取引を事業とする場合には,事務設備が備わっていれば事業所として機能します。
対して,飲食店を経営する場合には,厨房設備はもちろん,カウンターや客席の設置も求められることになります。

基本的には,会社設立の準備をする際には,上記の基準を満たすように事務所を契約して設備を整えることになります。

よくあるケースとして,「自宅の一部を事務所として使用して良いか?」というご質問を受けることがあります。

考え方としては,新たに物件を借りる場合も,自宅兼事務所として使用する場合も同じです。
ただし,自宅兼事務所の場合に特に意識すべきは「独立したスペース」というポイントで,居住スペースと事業のために使用するスペースを明確に区分しなければなりません。

リビングの一画を事務所として使用する場合は専有部分が不明確ですので,事業所を確保しているとは認められません。
例えば,1階は事務所,2階は住居といったように明確に区分することができるのであれば,事業所として使用できるでしょう。

経営管理ビザの事業所の要件は論点を多く含み,上記以外にも数多くの注意事項があります。
詳細は,以下のコラムで詳しく解説していますので,ご参照ください。
>>経営管理ビザ 事務所 はコチラ

5-2.一定以上の事業規模があること(イ・ロ・ハのいずれかに該当していること)

次に解説をするのは,「事業規模」に関する要件です。
経営管理ビザの申請を検討されている方の多くがご存じの「500万円」は,この要件の問題です。

色々な方からのご相談を受けていると,この「500万円」をめぐっては,多くの方が誤解を持っているように感じます。

まず,「必ず資本金が500万円ないといけない」という認識の方がいらっしゃいますが,そういうわけではありません。

「事業規模」の要件は,以下のように資本金の要件を含む複数の要件のうち,いずれか1つに該当していれば足りるためです

申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。
イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。
ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。

以下において,各要件を簡単に解説していきます。

5-2-イ.本邦に居住する2人以上の常勤の職員が従事して営まれるものであること

ここでいう「常勤の職員」には,入管法別表第1の在留資格をもって在留する方は含まれません。
つまり,日本人・永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の従業員が2人以上必要ということです。
なお,経営管理ビザを申請する本人は,カウントされませんのでご注意ください。

また,「常勤」というためには,パートタイマーやアルバイトでは足りず,週5日以上で1週の所定労働時間が30時間以上の方でなければなりません。
ちなみに,派遣や請負などの雇用形態の者は,含まれませんので注意をしてください。

実務上は以下の資本金500万円の要件により,経営管理ビザを申請するケースがほとんどです。

なぜなら,仮に常勤職員2名を雇用した場合,それぞれの月給が20万円だと想定すると,従業員2名へ支払う給与及び社会保険料等の総額は,年間500万円を優に超えてしまうため,スタートアップ企業には不向きだからです。

つまり,常勤従業員の要件で事業規模を立証する場合には,会社設立当初にまとまったキャッシュがいらない代わりに,事業開始時から大きな人件費の負担を負うことになるため,この方法は敬遠される傾向にあるのです。

他方,常勤従業員の要件によって事業規模の要件を満たす場合の代表例は,飲食店の経営です。

飲食店を経営する場合には,日常的に調理・接客業務が発生するところ,店舗での調理・接客・販売等は現業活動と言われ,経営管理ビザの“経営活動”には該当しません。

このように,経営管理ビザでは,調理・接客・販売活動を行う現業活動は原則として認められず,これらの現業活動は,従業員に任せる必要があるため,常勤従業員の要件により事業規模の要件を満たすことが多いのです。

5-2-ロ.資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること

この要件は,事業が会社形態で営まれる場合(例えば株式会社や合同会社)を前提としています。

この点,出資者が経営管理ビザを取得しようとする外国人本人でないといけない,と思っている方が多くいらっしゃいます。

しかし,資本金の額又は出資の総額が500万円以上であれば足りるため,必ず申請人が500万円以上を出資しないといけないわけではありません。

つまり,この要件はあくまで事業規模の要件であり,申請人の出資を求める趣旨ではないということです。

ただし,出資の割合が事業を行う上での意思決定に大きく影響することから,経営活動の信ぴょう性という観点からは,「申請人=出資者」という構図は有利に働きます。

事業規模要件も事業所要件と同様に奥が深く,上記の他に「出資金をどのように形成したか」といった,大変重要な論点もあります。
詳細は,以下のコラムで詳しく解説していますので,ご参照ください。
>>経営管理ビザ 資本金 はコチラ

5-2-ハ.イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること

個人事業の形態で,従業員を2人以上雇用する予定のない場合には,この要件を満たす必要があります。

「準ずる規模」と認められるためには,営まれる事業が実質的にイ又は口と同視できるような規模でなければなりません。

常勤従業員がいない場合には,500万円以上を出資して営む事業であれば,この要件を満たします。
常勤職員が1人の場合には,もう1人の常勤職員を雇うのに要する費用(概ね250万円程度)を出資して営む事業であれば,この要件を満たします。

ここでいう出資とは,事業を営むために必要な人的・物的設備に投下された資金の総額を指します。

具体的には,事業所を確保するための資金として,敷金・礼金等の初期費用が,事業所を維持するための資金として,事業所の賃料等が,その他の費用として,職員の給与などが,これに当たります。

5-3.「管理」業務に従事する場合,3年の経験があること

最後に,ここからは「経営」ではなく「管理」業務に従事する場合に特有の,上乗せ要件を解説していきます。

まず,何の実務経験・学歴も必要としない「経営」に対して,「管理」業務に従事する場合は,3年以上の実務経験を必要としています。
この実務経験には,実際に「経営・管理」にあたる業務に従事した期間に加えて,大学院で経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含みます。

そのため,「経営・管理」業務の実務経験が3年無くても,例えば,大学院のMBA課程に3年間在籍していた方は,この要件を満たすことになります。

5-4.「管理」業務に従事する場合,日本人と同等以上の報酬を受けること

次の上乗せ要件は,日本人が同業務に従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を受けることです。
これは,国籍を理由とした不利益的取り扱いを禁止する趣旨で設定されています。

会社に賃金規程があれば,日本人同様にそれに従った報酬が支払われる必要がありますし,賃金規程が無ければ,その職務内容や責任の程度等から,比較対象となる日本人の報酬額を考慮し,合理的な金額の報酬を支払わなければなりません。

6.経営管理ビザの要件のまとめ

本コラムのまとめとして,経営管理ビザ申請を成功に導く秘訣をお教えいたします。

経営管理ビザ申請の成功の秘訣は,ずばり「事前準備」です。
何の事前準備が必要かというと,それは「事業の計画」と「経営管理ビザの要件の把握」です。

事前に「事業の計画」を練らなければ,申請の際に具体的な事業計画や必要な資料を入管に示すことが出来ません。
また,事前に経営管理ビザの要件を把握していなければ,会社設立の入り口の事務所契約でさえも失敗し,将来の経営管理ビザの申請に大きな影を落とすことになります。

経営管理ビザは,最も難しいビザと言われています。
しかしながら,事業計画がしっかりしており,要件に沿った準備が出来ていれば,経営管理ビザはそれほど難しいビザではありません。

当社では,外国人起業家の皆様が開業準備に集中できるよう,ビザの観点からリスクを察知し,最短ルートで経営管理ビザの取得をサポートしております。

英語,中国語,ベトナム語にも対応しておりますので,経営管理ビザのご相談をご希望の方は,当社の無料相談をご利用ください。

この記事の監修者

行政書士法人第一綜合事務所

行政書士 冨田 祐貴

・日本行政書士会連合会(登録番号第19261319号)
・東京都行政書士会(会員番号第14030号)
兵庫県出身。東京オフィス長として,企業向けのセミナーにも登壇。外国人ビザ申請,国際結婚,帰化許可申請など国際業務を専門としている。

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